ウルトラマンが、降ってきた   作:凱旋門

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 タイトル思いつかない……


二十一話

 日本海洋上、時刻20時34分。

 F-15Jイーグル二機が西方向に飛行中。

「イーグル・リーダーよりCCP、その浮遊物はあのお方たちではないんだな?」

 彼らは洋上に大きな浮遊物がある、という海上保安庁からの連絡を受けてここに来ていた。

 なぜ海上自衛隊ではないのかと問われれば、連絡をしてきたその海保の巡視船との連絡が途絶えたからだ。

 このことより上は、まず戦闘機に偵察。偵察により危険と判断した場合は即、対象に攻撃しろ。という命令を出した。

 CCPからは、間違いない。という返事がきた。

『木部さん、相手はなんですかね』

 隣を飛行するイーグルが尋ねてきた。

「わからん。しかし機銃装備の海保の巡視船がやられた可能性が高い。ヤバい奴かもな」

 直後、パイロットは、ん……? と、何かを疑問に思うかのように声を出した。

『木部さん、どうかしたんですか?』

 イーグルパイロットが聞いてくるが、木部は答えない。それどころかどんどん顔を真っ青にしていく。

『木部さん話を聞いて――』

「――回避行動急げ!!」

 直後、木部の乗るイーグルは回避行動に移る。隣のイーグルパイロットも急いで回避行動をとる。

 次の瞬間、二機がいた場所に大きなタコの触手みたいなものが殴りかかってきた。

 二機があのままあそこにいたら間違いなく撃墜されていただろう。

「井上!! なぜレーダーを見なかった!!」

『い、いや、僕のレーダーには何もうつってない……』

 井上は困惑しながら答えた。

 これがマシントラブルなのか、触手の主によるものなのかはわからないが、自分たちは最悪に会ってしまったらしい。

「イーグル1よりCCPッ! 敵発見!! タコのような触手をもっている!!」

 しかしCCPからの応答はない。

「イーグル1よりCCPッ!! CCP応答せよ!!」

 どうやら通じないらしい。ならば一人が囮となって、もう一人が戦線離脱。基地に戻って報告するしかない。

 この場合基地に報告するべきなのは井上機だ。レーダーに異常があるのに囮役は危険すぎる。

「井上! お前は戦線離脱! 基地に戻ってこのことを報告しろ!!」

 了解、という声が井上機から聞こえた直後だった。レーダー上で何かが高速で井上機に迫っている。

 井上は何も気がついていないのか、回避行動をとらずに飛行している。

「避けろおおおおおおお!!」

 その叫びもむなしく、井上機はそれによって貫かれ、爆発した。

 やはりタコの触手だった。

「井上!!」

 木部は叫んだ。

 あれじゃおそらく脱出できなかっただろう。

「クッソォッ!! イーグル・リーダー、エンゲージ!!」

 木部の怒りは頂点だった。

 何がいるのか、木部は触手の根元に近づく。そしてそいつを見た。

「――んなッ!?」

 木部は思わず声がもれた。

 目の前にいるそいつは、本当の怪獣だった。

 タコのような怪獣。

 木部機が距離をとってミサイルを発射しようとした瞬間、黒い墨が木部機にふりかかる。

 機体は真っ黒になり、前も見えない状態になる。

 レーダーからは機体に触手が迫ってくることがわかる。

 今ならまだ間に合う。脱出できる。しかし、脱出したとしてこの怪獣が存在するこの海のどこに逃げ場があるというのだ。脱出したところで自分は死ぬだけだ。それならいっそのこと希望なんて捨てて死んだ方がマシだ。

 木部機は、なんの抵抗もなくタコの触手に掴まれ、そしてぎりぎりと握りつぶされた。

 その怪獣の名はタガール。本来では電波の妨害などの能力はない。しかし、これが一種の進化だった。

 奴は餌である人間を求めてさ迷っていたのだ。

 

 時刻21時。

 イージス艦みょうこうは、連絡がとれなくなったF-15Jを発見するため、ちょうど二機の光点が消えたと思われる位置まで来ていた。

 空には空自のE-767、F-15、UH-60Jが飛行している。これほどまでの大規模な捜索をしているにも関わらず見つからないということは、おそらくもう墜落しているのだろう。

 その時UH-60Jからみょうこうに連絡があった。海面に一部黒い場所がある。捜索を開始する。という内容だった。空自はまだそれを知らなかった。それがタガールの吐き出した墨だということに。

 UH-60が黒い部分を見ようと海面に近づいたまさに一瞬だった。

 タガールの触手が海面から突き出てUH-60の機体を貫き、UH-60が爆発。このことは海面にいたみょうこうにも爆発が見えていたし、空の空自にも見えていた。

 みょうこうCIC(Combat Information Centerの略。戦闘指揮所のこと)では、このことにより、自衛官たちがレーダーに血眼になって何度も見直していた。しかし、レーダーには何の反応もない。

 いや、反応があった。本当に突然現れた。

「レーダーに感あり! 3時の方向。距離20マイル、巨大な水上目標確認!!」

 一人の自衛官がそう言った途端、たちまちCICは慌ただしくなる。艦長に報告するものや、いざというときのためにロックオンの準備をする自衛官。皆気を引き締める。

 そしてCICの中にいる攻撃指揮官が言う。

「水上戦闘用意」

――カンカンカン。というアラームと共に自衛官たちが一斉に、自分の持ち場へと移動する。

 CICの自衛官たちはロックオンを開始する。

「水上戦闘、ハープーン攻撃始め」

 戦闘指揮官の声がかかり、ミサイル発射担当がミサイル発射の警告ベルを鳴らす。

「発射用意……撃て! バーズウェイ」

 あたごから打ち上げられたハープーンは正常に飛行する。

 ハープーンはそのまま飛行を続け、ロックオンされた通りにタガールに命中する。夜の真っ暗な闇に、明かりがついたように見えた。

「主砲、撃ち方始め! 用意……撃て!!」

 CICで、砲術長のその声が聞こえ、砲術士が主砲を発射するために拳銃の先っぽがなくなったような物のトリガーを引く。

 瞬く間に、みょうこうの54口径127mm単装速射砲の砲弾が発射され、タガールに次々と命中する。そして、同じようにして空自のF-15Jからもタガールへの攻撃が始まる。

 怪獣と自衛隊が本気で戦っている。まるでフィクションのようなことが、現実になった瞬間だった。

 

 宇佐美たちは山道を逃げまわり、一軒のほったて小屋のような場所に隠れていた。

 中は埃臭く、また、湿気がこもっていて、まるで蒸し風呂のように暑い。いるだけで汗が吹き出てくる。そんな中で宇佐美は壁に寄りかかりながら座っていた。そして右隣には少女がいる。

 撃たれたところからは未だに激痛が走っている。少女が止血してくれなかったらヤバかったかもしれない。

 暑さが二人の体力を奪っていく。そして宇佐美の顔色も悪い気がする。

 そんな状態でも宇佐美は考える。男たちの頭を正確に撃ち抜いたあの射撃の腕からして奴はプロだ。こんな目立つ小屋の中にいては殺されるだけだろう。そんなプロがなぜ自分を一撃で仕留めなかったのか、答えは絞られる。殺しをゲームか何かのように楽しんでいるか、この自分に相当の恨みがあって、苦痛を与えてから殺そうというものとかだ。

「う、宇佐美……」

 今まで無言だった少女……東鈴夏が自分の名前を呼んできた。

 呼び捨てなのはあの時と同じだ。

「なんだ……?」

「助けてくれて……ありがとな」

「ははは……礼なんて言わないでくれ。しょせん罪滅ぼしだ」

 宇佐美は乾いた笑みを浮かべてそう言った。

 消えない罪、しかし何もしないだけではただの罪。罪というのは自分が望んで死んだ時以外に初めて消えるもの。だから人間は生きている内にできる限りその罪の罪滅ぼしをしなければならない。後で後悔をしないように。

「怪我大丈夫か?」

「大丈夫だ……」

 嘘だ。全然大丈夫ではない。めちゃくちゃ痛い。しかし今それを言っても子供に余計な心配をかけるだけで、状況は打開されない。

「……人生ってなんでいつもこうなんだろうな」

 ふと、宇佐美のほうから少女に話しかけた。

 突然だったことと、話の内容に、少女は動きをとめた。

「いつもうまくいくのは最初だけだ。それ以外は例え自分が正しいことをしていても、ほとんどの奴らが敵にまわる。正しい奴らが命をかけて戦っているっていうのに、その事実は一般人に知らせられないまま、そいつが悪いっていう話になっちまう。じゃあそんな中で死んだ奴らは一体なんだったんだ………」

 宇佐美が今までずっと疑問に思っていたことを口に出したのは初めてだった。

 宇佐美はずっと思っていた。あの撃墜された警視庁航空隊のヘリの乗務員たちは死の間際、何を考え、何を思ったのか。死を受け入れられた? そうではないはずだ。彼らだって『生きたい』そう思ったはずだ。彼らは死後も汚名をかぶり続け、それを知ったら一体何をどう思うのか。汚名共に死んだ彼らの人生とはなんだったのか。

「……宇佐美の言ってることはもよくわからないけど」

 少女が口を開いた。

「その人たちは自分の汚名がはれることを望んでいると思う……。誰かに自分の汚名をはらしてほしいと思っているんだと思う」

「……そうか」

――ガチャリ。ギィィィィィィ。

 予想通りほったて小屋のドアが開くような音がした。そしてそいつが目の前に来た。

「……久しぶりだな。宇佐美」

 こちらに拳銃を向けて、見下ろしているそいつは、同期の警官で死んだはずの磯崎だ。しかし今は驚けるほど心の余裕がない。今は怒りだけで精一杯だ。

 少女が宇佐美の右腕を、怯えるように掴んだ。

「磯崎……一体何のマネだ。俺を撃ったことといい、男たちをわざわざ殺したことといい……。何も殺す必要はなかったはずだ」

 宇佐美その言葉に、磯崎は鼻で笑った。

「人権がなくなり、奴らを逮捕することもなくなった今の時代、お前はまだそんな甘いことを言っているのか」

「何が言いたい……」

 宇佐美の表情がさっきよりも曇った気がする。

「奴らは誰がなんと言おうと、その行為をやめることはない。言っている意味がわかるか? わかるはずだ。お前は、俺が注意した奴に俺が刺されるところを見たんだからな。奴らはもはや人間ではない。子供すら自分の欲を晴らすための糧とし、人の人生をめちゃくちゃにぶっ壊していく。まだ幼い子供の夢すらもだ。貴様はそんな奴らを殺す以外の方法で止められると思うか?」

 宇佐美は答えられない。磯崎の言っていることは紛れもない事実だ。一つを除けば。

「そんな奴らは社会のゴミだ。自分のことだけを考えて誰かの人生をぶち壊す奴に何の存在意義がある。何の権利がある。そしてそんなゴミ共に何もできない俺たち警察はなんだ? ……誰もやらないならなぁ、誰かがゴミを被ってそれを排除するしかないんだよ」

「お前にそんなことを言う権利はない」

 宇佐美の言葉に磯崎が少し驚いた気がした。

「……そんな社会を作ったのは俺たち大人だろ。お前も、俺も、すべての人間が作りあげてきたこの汚れきった世界は俺たち大人が作ってきたものだ。俺たち全員に責任があるはずだ」

「俺たち全員に責任がある? なら俺たちが何かしようとして何かが変わったことがあったか? 何か一つでも変わったか? 自衛隊はお前に味方をしたか? いくら奴らを倒したところで国はお前の味方なんてしないんだよ」

 どうやらこいつは自分がウルトラマンだということすら知ってるようだ。磯崎は続ける。

「……もうすぐで一体の怪獣がこの地にやってくる。その時お前のその目で見ることだ。自衛隊が一体どっちに攻撃をするのかな」

 磯崎はそう言うと拳銃を地面に捨ててほったて小屋から出ていく。

「待て……」

 宇佐美の弱々しい言葉が磯崎の足を止めた。

「お前がなんで生きているのか俺にはわからないし、わかりたくもない。けど一つだけ聞かせろ。なぜ俺を殺さない……」

 磯崎は答えないままそこに立ち尽くす。

 しかし突然、しかしゆっくりと振り向いた。その視線は一度少女を見て、すぐに宇佐美へと向く。その瞳は、どこか寂しそうだ。

「……言ったはずだ。自衛隊がウルトラマンと怪獣、どちらの味方なのか見てみろとな」




 うーん。なんか違う。
 後、自衛隊のところは、これで本当にあっているかわからないので信用しないでください。

 ※この話はフィクションであり、実在の人物、団体、国家などとは何の関係もありません。そして、もしも誤字などがありましたらご報告をお願いいたします。感想お待ちしています。
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