ウルトラマンが、降ってきた   作:凱旋門

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二十七話 ヒカリ/release

 メビウスは襲いかかるヒカリの剣を間一髪で横に転がり、かわす。

 メビウスの体を剣がかすり、ゾッとした。あれが一撃でも直撃したら、おそらく即効でお陀仏だろう。それほどまでにその剣は恐ろしく見える。

 メビウスはかわした後、すぐにメビュームブレードを出現させ、立ち上がる。

「フンッ!」

 そこにヒカリが再び襲いかかってくる。

 ヒカリの剣がメビウスを縦真っ二つに斬ろうと、完璧に殺す勢いで迫りくる。

「ファッ!」

 メビウスはそれを出現させたメビュームブレードで受け止めるが、少しメビウスのほうが押されぎみだ。

 ヒカリの剣の技術は、メビウスよりもかなり上だ。宇佐美は一瞬にしてそれを感じとる。剣で襲いかかってくる時、一切の無駄がない。相当の腕だ。

 それと同時に、宇佐美の頭の中には『なぜ?』という思いがあった。

 今目の前にいるのはどこからどう見てもウルトラマンだ。

 だとしたらなぜ襲いかかってくる? 昔、ゾフィーがメビウスを連れ戻しに来たことはあったが、その時は暴力は抜きで、話し合いでどうにかしようとしたはずだし、何よりもゾフィーはもう諦めたようだった。

「ハァッ!」

 メビウスはこのままではマズイ、とヒカリの腹を蹴って、その瞬間、一気に距離をとる。

 剣術で勝てる気がまったくしない。

 と、その時、空自のF-15J数機からミサイルがヒカリ目指し発射される。

「ヌゥッ!」

 しかし、ヒカリはそれを振り返ることなく気がつき、そのまま青いバリアを出現させてその攻撃を防ぐ。

 そして――、

「フンッ!」

 空を飛行するF-15Jに向かって剣を振るった。

 剣……ナイトビームブレードの剣先からブレードショットと呼ばれる光弾が発射され――

――ドガーンッ!!

 F-15Jに命中して一瞬で機体を木っ端微塵にした。

 それによる爆発の風圧で近くを飛行していたF-15Jが一瞬バランスを崩す。

「フンッ!」

 そこに再びブレードショットが、まるで、中世の時代。地上からたくさんの人々が放った弓矢のように襲いかかる。

 いくら高機動力をもった自衛隊機でもそのすべてをかわしきることはほぼ不可能。

 自衛隊はなんとかして戦闘空域から離脱しようとするが、無理。

 爆発。機体が紅蓮の炎に包まれるのがメビウスの目にうつる。

 それを止めようとメビウスはヒカリに向かって走る。

「――ッ!?」

 しかしそんなメビウスにもブレードショットが襲いかかってくる。

 胸に直撃し、メビウスは吹っ飛ばされる。

 邪魔者がいなくなり、ヒカリは再び自衛隊に攻撃を再開。全機、爆発させた。

「…………」

 ヒカリはゆっくりと、地面に仰向けに倒れているメビウスの方へと向く。

 その表情からは何も感じ取れない。いや、ウルトラマンの表情は変わらないのだが表情ではない。雰囲気……というものだろう。何もない。無機質の物体。しかしそれが恐ろしい。なぜ自衛隊の戦闘機を攻撃したのか。なぜ自衛隊員たちを殺したのか。今までの怪獣にはしっかりした理由があった。食うため。気に入らないから。たまたまそこにいたから。それが目的だから。しかしこいつだけはわからない。ウルトラマンとしての肩書きがあるのなら攻撃されたぐらいで人間を殺すとは思えない。

 ならばこいつの腹底にあるのはなんだ? 何を考えている? 何も見えない。それが恐ろしい。

 いつもの宇佐美なら攻撃するチャンスをじっと見極めようとしただろう。しかし、それは宇佐美が冷静な――いわゆる平時の考え方だ。自衛隊という、よおやく掴みかけた希望を木っ端微塵にされた今の宇佐美の気持ちは――、

「セヤッ!」

――戦時だ。

 メビウスは何の策もなしに、自分よりも明らかに強いヒカリへと向かっていく。

 力一杯、大きくメビュームブレードを振るが、そんな攻撃ヒカリにかすることすらない。すべて最小限の動きでかわされる。

「ヤッ!」

 そしてメビュームブレードで攻撃しようとしたメビウスの腹に、

「フンッ!」

 ヒカリは蹴りをいれる。

 メビウスは腹を押さえながら少し後退してしまい、攻守が逆転する。

 今度はヒカリがメビウスに剣を振る。

 メビウスのそれと違い、キレがある。一閃一閃が計算しつくされていて、無駄がない。

――ギチンッ!!

 金属同士がぶつかり合うような音が響く。

 メビュームブレードとナイトビームブレードがぶつかり合った音だ。

 しかし、その力の差は歴然である。

 ナイトビームブレードはメビウスのメビュームブレードよりも強い。それに加え、ヒカリの方が剣術の腕も上。警察学校で剣道をかじっただけの宇佐美に勝てる要素はまったくないのだ。

「なぜ殺したッ!」

 今の宇佐美の感情はおさえられない。

 思ったことを言う。

 しかしヒカリは答えない。それが余計メビウスを怒らせる。激怒させる。警察官という職業になり、死体を見てきた宇佐美だから死という意味についてはわかっている。だから宇佐美を怒らせる。頭の血管がブチブチと音をたてて破裂させそうなくらい怒らせる。

「彼らにはこれからの未来があったはずだ。こんな世界でも恋をして、結婚して子供をつくる。楽しい時は笑いあって、悲しい時は悲しんで、怒った時には怒る。そして死ぬ。そんな未来が彼らにはあったはずだ。それなのに……貴様はなぜ彼らを殺した!」

 人は自ら、または誰かに殺されてはならない。それが宇佐美のモットーだった。

 人というものはこの世に存在し始めてから、その人生が自然と終わるまでは死んではいけない。例えそれがどんなに苦しいものでも、どんなにつらいものでも、人生を壊してはならない。それが人間の使命のようなものだと宇佐美は考えている。

「…………」

 しかしヒカリは相変わらず無機質なままだ。心にまったく動揺がない。まるで機械のようだ。

 それが宇佐美をより怒らせる。

 メビウスは左腕の力を一気に抜く。突然のことに驚いたヒカリはそのままバランスを崩す。その間にメビウスは体を低くしてそこから距離をとる。

 そしてその間にメビウスはもう一つ行動していた。メビュームブレードを引っ込め、左腕のクリスタルサークルを回転させる。

 そして体勢を急いで直し、メビュームシュートを……。

 

 

 光の国……の大気圏外にある牢獄。

 かつてウルトラ警備隊として宇宙を守っていた者の一人、ウルトラマンエースはそこにいた。

 そこにあるのはただひたすらな闇。光は一切入ってこない。そんな状況でもエースが今まで生き延びてこられたのは、ここが光の国に近いからプラズマスパークタワーからのパワーがなんとか届いているからだろう。エースはそう判断していた。

 ここほど厳重な警備の場所は他にない。24時間警備員がいるし、牢獄の壁は特別な素材でできているらしく、光線を放ってもびくともしない。こんな素材が今まで光の国にあったなどということは、ウルトラ警備隊のエースでさえ知らなかった。

 こんな素材は聞いたこともないし見たこともない。なんでもウルトラの父が持ってきたらしい。ということだけは知っていた。

 と、突然外が騒がしくなった。誰かの叫び声が聞こえ、何かが壊れる音がする。

 なんだろう? こんなことは今まで一度もなかっ――

――ドガーン!!

 その音と共にエースの牢獄の屋根が破壊され、誰かが入ってきた。

 その人物を見て、エースは驚いた。

「――兄さん!!」

 そこに立っていたのは25年前の戦い後、行方不明となっていたウルトラマンジャックだったからだ。

 ジャックは何も答えないままエースの足についていた足かせを外す。

「兄さんがなぜここに!?」

 エースは尋ねるが、ジャックは、話は後だ。とにかく行くぞ。と言っただけだった。

「行くとはどこに!」

 エースは今起こったことを理解しきれずに困惑しながら言った。

――火星だ!

 ジャックの口からその言葉が返ってきたのはすぐ後だった。




 ※この話はフィクションであり、実在の人物、団体、国家などとは何の関係もありません。そして、もしも誤字などがありましたらご報告をお願いいたします。感想お待ちしています。
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