某国、航空宇宙局。
あのお方たちに宇宙開発の許可をもらったその国のそこにはたくさんの精密機械が並び、素人が見ただけでは何がなんだかわからない機械ばかりだ。
そこにいる人は緊張した面立ちの人が大勢おり、その様子から何やら普通ではないことが起こったということが読み取れる。
ある者はキーボードのようなものによくわからない文字を打ち込み、ある者はヘッドセットマイクを使ってどこかに必死に言葉を投げ掛けている。
そこに一人の白髪の男が入ってくる。
高そうな背広を着て、片手にカバンを持っている。
その者を見ると五人ほどの人間が駆け寄ってくる。
「状況は?」
白髪の男が尋ねる。
「デルタ
デルタ
数日前に地球を離れ、無事火星に着陸した。そこまでは順調だった。
しかし着陸の数分後に突如交信が途絶えた。そのことをまだ国民は知らない。というか知られるわけにはいかない。某国はこのためだけに一時税をあげたのだ。それをするほどに某国は今回のことに自信があった。失敗するはずはないと誰もが思うほどまでに完璧だった。それなのに国民がもしもこのことを知ったらどう反応されるだろうか? 答えは簡単。恐ろしいことがおこる。
そして局員たちの努力も虚しくそのまま2日が経ち何の進展もないまま現在に至る。
「局長、アメリカの宇宙探査機、レンジャーに妙なものが写っているとの連絡がありました」
局員の一人が白髪の男……航空宇宙局の局長に言った。
それを聞いて局長はすぐに、
「モニターに映せ」
と言った。
すると次の瞬間には部屋にある二階建ての家ほどの高さがあるモニターにその画像が映し出される。
ぼやぼやしていて、何がなんだかよくわからない。しかし画像の中心辺りに何やら惑星の上にある岩石とも違う大きな物体が見える。
画像がそこを拡大し、クリーンされ、それを見てそこにいた全員が息をのむ。
ある者に至っては体が震えてしまっている。
「怪……獣……」
誰かがそう言った。
それを始めとして部屋の中がざわめく。いや、ざわめきなんてものではない。うるさくなる。
その表情から読み取れるものは恐怖。その画像に写ってしまっているものへの明らかな恐怖。驚愕。
――そこに写ってしまっていたものは、某国の宇宙船を、腹にあるその大きな口のようなもので丸飲み……喰っている怪獣の姿だった。
横浜。
メビウスはメビュームシュートを射とうとし……その手を止めた。
メビウスの中にある『これでいいのか?』という気持ちがその手を止めてしまった。一瞬の躊躇、相手を殺すという行為への躊躇がその手を止めさせてしまったのだ。
ヒカリを確実に倒すことができる唯一の状況。これから先作れるのかどうかわからないチャンスをメビウスの気持ちが潰してしまったのだ。
そこにヒカリが剣を突きつけてくる。メビウスの喉元ほんの数メートルだ。
「……あまいな」
それがヒカリが初めて言った言葉だった。そしてその声にメビウスは聞き覚えがある。
「そのあまさがいつかお前自身を滅ぼすぞ。いろんな意味でな」
メビウスは反撃しようと頭の中で次の動きを考えるが、体は動かない。
そして、ふっとヒカリが剣を下ろした。そしてメビウスに背を見せてそのまま歩く。
絶好のチャンスだ。今ならやれる。しかし、それを心は許さない。体が動かないのもあるし、それはまるで騙し討ちで卑怯だ。
そしてヒカリは歩きながら徐々にその姿を消していき、最後に残ったのはメビウスだけだった。
ヒカリがいなくなるとメビウスは立て膝になり、地面に手を置く。そして今まで鳴るのすら忘れていたかのように、カラータイマーの色が赤に変わり、ピコンピコンと鳴る。
そしてメビウスはふっと力がぬけて倒れ、幽霊のように消えた。
横浜の町。
辺りには多少の死体が転がっているのみで、生きている人間は二人しかいない。
一人は灰色っぽい瓦礫の上似転がっている。傷だらけだ。もう一人は暗い顔をしてそんな男に背を向けている。
「磯崎ィィィ……!!」
宇佐美はそう言いその男に傷だらけの手を伸ばす。
「お前はこれから己のそのあまさで苦しむことになる。心を鬼にしない限り、お前は次の怪獣に勝つことはできない」
磯崎と呼ばれた男は冷たくいい放つ。そしてそのままどこかへ歩き出す。
「待て……待てぇぇぇぇぇ!!」
宇佐美はそう叫ぶが磯崎の足は止まらない。そのままどこかへ行ってしまった。そして宇佐美も気を失い、そのまま死んだような眠りについた。
宇佐美はこのときまだ気がついていなかった。磯崎の言った意味を。この後彼は彼自身のそのあまさで本当に苦しむことになることを。
知っていたなら、まだあそこまで苦しむ必要もなかっただろう。
同じく横浜の町。
今回F-15Jのパイロットとして戦った、またウルトラマンを援護をするように命令した鈴山はうめき声のようなものをあげながら、その目をうっすらと開けた。
目に飛び込んでくるのは強い日光。
一瞬ここは天国か? などと思ってしまう。いや、思ってしまうなどではなく、本当にそう思った。なぜなら自分は突如現れたもう一人のウルトラマンらしき巨人によって殺されたはずなのだから。
機体に迫り来る光弾……思い出しただけで恐ろしくなる。
「……異常なし」
鈴山は立ち上がって自分の体を触り、どこも痛む場所がないとそう言った。
どうやら怪我一つない奇跡の生還のようだ。
「あいつらは……」
鈴山は同じイーグルドライバーたちを捜す。あんな状況だ。いないなんてことはわかっている。死んでいるなんてことはわかりきっている。しかしそれではこの気持ちがおさまらない。
もしかしたら自分と同じような奇跡が起きていたら。という淡い期待もあったかもしれない。
「――!?」
そしてキョロキョロと辺りを見渡した時、
いた。
一人ではない。もっと……数えると全員いる。パイロットの服を着た奴らが倒れている。
奇跡。あり得ない。あり得ていいはずのない奇跡がそこにはあった。まるでダメな小説のワンシーンみたいだ。現実的なものから100%目を背けた作品。そんなものをじっさいに体験している。自分は遂におかしくなったのか? そう思って頬っぺたをつねるが、ただ痛いだけ。事実。事実である。あの状況で全員が生きている。頭がまだ理解できていない。理解できていないが事実。
そして、鈴山は自身の目から涙が流れてくるのを感じた。
嬉しい。嬉しすぎる。
鈴山は服で必死に涙を拭く。しかし拭いても拭いても涙が溢れてくるのでキリがない。
全員顔の一部が煤で黒くなっていたりするが生きている。
鈴山はこの後、攻撃に関わったすべての者の責任をたった一人でとり、自衛官を辞めさせられ、秘密裁判にかけられた後に独房に23年間入ることとなるが、彼はその生涯を終えるまさにその時まで、この日のことを悪く言うことはなかったし、彼は刑期を終えた後に出版した自伝でも、この日この時は最高の瞬間だったと明言している。
そんな彼らを助けたのは果たして誰なのだろうか? その真相は助けた本人にしかわからないことだろう。
モロボシダンは彼らのその光景を見届けた後、その場から立ち去る。
しかしその表情は、いつもの小難しい表情よりかは、少し微笑んでいるようにも見えた。
彼らを助けたのは誰なんでしょうね。そこら辺はご想像におまかせします。
※この話はフィクションであり、実在の人物、団体、国家などとは何の関係もありません。そして、もしも誤字などがありましたらご報告をお願いいたします。感想お待ちしています。