交差点近くの広場。
宇佐美たちはベンチに座り、親を探していた。
『臨時ニュースです。今日未明、ウルトラマンにより衛星が破壊されていたことが政府への取材で明らかになりました。衛星を破壊したのは先日より日本で破壊活動を続けているウルトラマンメビウスで、これにより地球に接近する怪獣や隕石の発見が困難になったとのことです』
ビルに設置されているテレビの中のニュースキャスターがそんなことを言っていた。
またこれだ。
わからない感情が腹の底で煮えたぎる。怒りではない何かだ。
「ねぇお兄さん」
少女が話かけてきた。宇佐美は単純に、なんだい? と返す。
「うるとらまんって、悪い人なの?」
単純な質問だった。しかし、宇佐美はその質問に答えられない。
「なんでそう思うんだい?」
「だって、うるとらまんは悪いお人だってテレビの中の人が言ってるから」
「……わからない」
わからない。自分にはそんなこと。自分が果たして悪い人なのかどうかわからない。わからない。
「なんで?」
なんでと言われても、わからないからだ。自分の戦う理由もわからないのに、そんなことわからない。それに――、
「たくさんの人から嫌われてるってことは……その人たちから見たら悪い人なんだよ。絶対に許せないくらい。悪い人なんだよ」
なんで俺はこんな言葉を出したのだろう。悪い人なのかどうかわからないと考えておきながらも、なぜ自分は答えを知っているのだろうか。
「うるとらまんは、たくさんの人を殺しちゃうの?」
「……殺さないさ。絶対に」
「どうして?」
「ウルトラマンは、人を守るためにいるから」
「お人を守るために頑張っているのに悪い人なの?」
「……ああ」
「それじゃ、なんでうるとらまんはお人を守っているの?」
難しい質問だ。
誰かに求められているわけではない。それでも戦うのは――、
「今の人たちには、ヒーローが必要なのさ。今の……生きる希望がないということからすら目を反らしている人たちには、生きる希望を探すことを教えなくちゃダメなんだ。だからヒーローが――ウルトラマンが必要なんだ」
「……よくわかんない」
あらま。いいこと言ったつもりだったのに。
「でも、そんなことをしてうるとらまんは苦しくないのかな」
「えっ?」
少女が発した言葉に、思わず声を漏らした。
「みんなうるとらまんが嫌いなのに、うるとらまんはお人のことを嫌いにならないのかな?」
「……さぁ」
多分、嫌いだ。大っ嫌いだ。殺してしまいたいくらい……俺は人間が嫌いなのかもしれない。いや、今の俺の気持ちは嫌いとは違う。それが何なのかはわからないが。
「……なあ、君は――」
その時だ。何の予兆もなく鼓膜が破れてしまいそうな轟音が鳴り響き、衝撃波が来る。
なんだ。何が起こった。訳もわからぬまま吹っ飛ばされる。
わからない。本当にわからない。何が起こったんだ。
砂煙が辺りを覆いつくす中、そして自分が宙を舞うなか、宇佐美は目を開き、状況を確認する。自分と同じように宙を舞う人がたくさんいるのが見えた。
――ドスンッ。
背中から地面に落ちて、そのままの勢いで後頭部を強打する。息が一瞬できなくなり、少しパニックになる。
目を開けて立ち上がり、何が起こったのか、と辺りを見回す。
ふと頭を触ると、血が出ていることに気がついた。
辺り一面は砂ぼこりだらけで、よく見えない。ただ、ところどころに人が倒れているのが見える。
ふと、何かが宇佐美の脳裏に稲妻の如く走る。
こんな光景を自分は昔にも見たことがある。何かが空から降ってきて、その衝撃波で吹っ飛ばされた。そう。ウルトラマンが降ってきたあの日だ。これはまるであの日に戻ったようだ。
あの少女を探す。自分よりも軽いから、遠くへ飛ばされたはずだ。原因究明よりもそれが先だ。宇佐美が足を進めたその時。
「――ッ!?」
見えた。あの少女だ。地面に横たわっていてピクリともしない。
「おいっ! 聞こえるか、おいっ!!」
宇佐美は駆け寄って声をかける。しかし反応はない。少女の胸に耳をつけて心臓の音を聞く。
――ドクン……。
かすかにその音が聞こえた。よかった。この子はまだ生きている。しかしこの場所は危険だ。早くどこかに非難させなければならない。
辺りでは悲鳴などが飛び交っている。
パトカーなどのサイレンの音はまだ聞こえない。何をやってるんだ警察はッ!!
宇佐美は少女を抱き抱えて走ろうとする。その時、
「…………」
見知らぬ金髪の女が宇佐美の前にたっていた。怪我をしている様子もなければ着衣が乱れている様子もない。この状況ではあり得ない。
「誰だお前はッ!」
女はニヤリと笑う。まがまがしい感じがする。
「メビウス、貴様は今日死ぬ」
「なに? お前はなんだ。なんの目的で俺の前に現れた!」
宇佐美は直感でこいつは人間ではない何かだと判断した。
「私はあのお方たちだ。貴様の前に現れたのは、貴様が今日死ぬということを教えるためだ」
どういうことだ。あのお方たちだと?
「死にたくなければ人間を守るのを止めろ。貴様も薄々気がついているはずだ。人間に守る価値などないと」
「――ッ」
その言葉に宇佐美はドキリとした。まるで体中の血管の中の血が跳び跳ねたようだ。
その言葉がそこまで衝撃的なものに聞こえたのは一体なぜなのか。わからない。わかりたくない。
「無視か……いいだろう。タイラント、ウルトラマンメビウスを殺せッ!!」
女がそういうと、咆哮と共にその暴君がビルとビルの間から姿を見せた。
すごく凶暴な印象を受ける。
女は狂ったように笑いながら煙のように姿を消す。
宇佐美は抱き抱えている少女をどうするべきなのか迷った。警察はまだ本格的には動いていないようだし、こんな場所に置いていたら戦いに巻き込まれて死んでしまうかもしれない。
「大丈夫ですかー!!」
と、誰かが走りながらそういった。
制服警官だった。こんな状況でも動いているし、正義感は強そうだ。
「この子を」
最高のタイミングで制服警官が来てくれたことに感謝しながら宇佐美は警官に少女を託した。警警官はその行為を不思議に思ったことだろう。なぜなら託した宇佐美にはその場から立ち去ろうという雰囲気がまったくないのだから。
「あ、あなたは――」
言い終わらない内に宇佐美はその左腕にメビウスブレスを出現させる。
「うおおおおおおおお!!」
宇佐美は叫び、左腕を天に向けてあげる。
淡い橙色の光の渦が宇佐美を包み込む。彼は変身する。その胸に確かな疑問を持ちながら。
※この話はフィクションであり、実在の人物、団体、国家などとは何の関係もありません。そして、もしも誤字などがありましたらご報告をお願いいたします。感想お待ちしています。