ウルトラマンが、降ってきた   作:凱旋門

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四十四話 怒り/Zero

「クッソッ!!」

 宇佐美は通話をきられたことに気がつくと、即座に叫んだ。

 辺りは消防隊員や警察官、自衛官が慌てた様子で走り回り、大声で話しているので、宇佐美のことを気にかける者など一人もいなかった。

「宇佐美……」

 見ると、神原の手が肩に置かれていた。

 自分が情けなく思えた。ウルトラマンなどというものでありながら、自分はしょせん子ども一人さえ助けることができない。何がウルトラマンだ。ダメダメじゃないか。心も体も弱いじゃないか。

 悔しさが込み上げてくる。涙が溢れそうになる。今まで溜めてきた涙を一気に放出したくなる。俺はどうすればいいんだよ。何をどうすればいいんだよ。なぁ、誰か教えてくれよ。

 今の世界は子どもをここまでさせる世界になってしまったのか? ……いや、違う。世界はもっと昔からそうだった。大人はしょせん自分のことしか考えず、一度しかない子どもの青春や、その他すべてをばっさりと切り捨てていた。大人、俗に言う教師だ。奴らは最低だった。部活中、うまくできないと体罰まがいなことをされ、高校の所持品検査では、女子の、触ったら明らかにいやがられるであろう場所まで触っていた。世界は昔からそうだった。ただ、今はそれより悪化しているだけだ。本質は何も変わっていない。相変わらず大人は大人自身のことしか考えていない。子どものために自分のすべてを捨てられる奴など、一人もいなかった。

「俺は許せねぇよ」

 宇佐美は言った。神原が不思議そうな顔をしている。宇佐美が初めて顔に激しい怒りの表情をうかべている。

「何が生け贄だ。何が死にたいだ。……あいつは全部自分で背負おうとしてるんだよ。俺たち大人が間違えてきたことを全部!! それなのに俺は……俺たちはなんだよ。子どものために何もできてねぇじゃねぇか!! それなのに昔から俺たち大人は自分にできもしねぇことを平気で押し付けて、子どもの笑顔を奪ってる!! いつも表面だけいいように思われるようにだけ行動する。楽に生きる。大人はいっつもそうだ。生け贄に選ばれた奴に対しては、何の言葉もなく、俺たち大人全員、ただただ拒絶しただけだっただろ!!」

 一度爆発した感情はもう止まらない。

「それなのに、俺たちはなんでこんなのうのうと生きていんだよ。ほとんどの大人が、今、この瞬間も子どもを拉致してる。誘拐してる。やってやがる。傷つけてる。ド畜生以下のゴミムシどもがだ。俺はもう大人を許せねぇよ。今ここで言ってやるよ。俺は、例え奴が目覚めようとも、楓を助けるまでは倒さないからな!!」

 叫び声が響き渡った。

 みんながこちらを見ている。頭上で、航空自衛隊の警告を無視して現場上空に来ていたテレビ局のドローンが、宇佐美の声を、姿を捉えていた。

 世界が変わったことなどただの一度もなかった。第二次世界大戦が終わり、一時的に日本が戦争から遠ざかってから、この日本という世界は悪くなる一方だ。

 なぜ、人間はこうまでも愚かなのだろうか。人の幸せを願えないのだろうか。しょせんみんな自分のことだけで精一杯だからではないか。だから楓はああなってしまった。そして今、死のうとしている。俺は彼女を止めなくてはならない。いや、止めてやる。子どもに罪はない。これは大人の責任だ。あのとき、星人の誘惑に負けた人間が弱かったのだ。

 俺はお前を救うぞ。絶対に。

 

 火星。

 ゾフィーはジャックとエース、二人の兄弟を見て、()()()()()()()

 その笑い方はとても不気味だ。しかし、彼からしてみたら、おかしくておかしくて堪らないのだ。自分に騙され、ろくなエネルギーもなしに、タイラントに挑んだバカな宇宙警備隊が。

 彼は動かずに、地面に横たわり続けるエースを蹴り飛ばす。腕を踏みつける。姿こそはゾフィーそのものだが、彼がこんなことをするわけない。

 まさか誰も、自分たちが信頼するゾフィー殿が偽者だなんて気がつかない。お前らウルトラマンは外からの攻撃には強いが、中からの攻撃にはめっぽう弱いではないか。それに気づかなかった自分たちの愚かさを思いしれ。だいたい仲間と敵の区別がつかない者共に負けるような俺じゃない。

 うっひっひ。

 彼は笑う。その内、腹を抱えて笑い始める。

「恨むなら、俺を怒らせたお前らの弟を恨めよ?」

 かちこちに凍ったジャックに向かって、彼は拳を構える。凍っている分、ジャックの体は砕けやすいだろう。

「――ッ!?」

 拳を突き出そうとしたその時だった。

 緑色の細い光線が、彼の背中に直撃する。今まで、直接として受けたことはないが、それがなんなのか、彼にはわかる。

――エメリウム光線。

 ということは、セブンがここまで来たのか? 彼は振り返る。しかし、そこには何もいない。

 が、しかし、その時、耳に空気を切り裂くような音が聞こえた。慌ててその方向を向いた彼は急いで、一歩後ろにステップした。

 するとそこには、また見たことがあるもの、アイスラッガーが地面にぐさりと刺さっていたのだ。

「ウルトラセブン、いるなら出てこい!!」

 また、耳に風切り音が聞こえた。

 そんなバカなっ!? セブンのアイスラッガーは一つだけのはずだ!!

 慌てて先ほどアイスラッガーが刺さった部分を見るが、相変わらずそれはそこにある。

 バカな……!? なら誰なんだ。今ここにいるのは、誰なんだ!?

 彼はただ逃げた。見えない恐怖から逃げる。

 グサッと地面に二つ目のアイスラッガーが刺さる音が聞こえて、ようやく足を止め、振り返った。

 そこにいた者に、ただただ絶句した。

 二つのアイスラッガーが地面からすらりと抜けて、その者の頭部へと戻っていく。

 ウルトラマンとしては珍しい青い体。セブンのものとよく似ているプロテクター。ああ、奴だ。

「見つけたぞ! ババルウ星人!!」

 そう、ゾフィーの姿をした何かに指を指している若きウルトラ戦士――ウルトラマンゼロ。セブンの息子が、そこにいた。




 はい。というわけでまさかのババルウ星人です。ちなみにバードンと戦ったのは偽者ではなく、本物のゾフィーです。

 ※この話はフィクションであり、実在の人物、団体、国家などとは何の関係もありません。そして、もしも誤字などがありましたらご報告をお願いいたします。感想お待ちしています。
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