昔は人間を信じるものだと思っていた。でもそれは違った。バカ共は普通に約束を忘れ、俺たちを裏切る。こっちがどんな気持ちでいたのかも知らずに。そんな奴らを信じる必要性がどこにある? 人間どいつも同じ。汚くて、ただ汚物でしかない。人の心をズタズタに切り裂く汚物。女の前じゃいい奴ですアピールして、裏じゃ友達ってお前が勝手に呼んでる奴の約束を平気で、場合によっちゃ会ったことさえ忘れる。ふざけてやがるよ。くそったれが。犯罪者を産み出しているのは犯罪者ではない。今も平気な顔して生きてるお前らだ。この憎悪がお前らにわかるか? お前らに裏切られ続けてできた狂気だよ。殺してやりたくてうずうずするんだ。腹を刺して殺してやろうか。喉を斬ってやろうか。それとも鼻を抉ってやろうか。どれも悪くない。
そう思ったことがあった。高校生のときだ。信じた友達に裏切られ続けた。この考えが間違っているとは今も思わない。だからこそ、俺には磯崎の気持ちがわかる気がするのかもしれない。
運のないやつは、信じれば信じるほど裏切られる。ソースは俺だ。信じたやつには片っ端から裏切られた。約束は破られ、いつの間にかそいつに対しては憎悪しかわかなくなった。なぜそんなことを今でも覚えているかというと、俺がそいつを殺そうとしたからだ。
ザーザーの雨が降る日。俺はそいつの後をつけ、ナイフで背中を刺そうとした。心にあるのは憎悪だけで、やってはいけないという気持ちがありながらも、憎悪と比べればそれは微々たるものだった。その時に俺は知ったのだ。正義に憧れた者が、決して正義になるというわけではないと。いくら正義に憧れていても、それは人間の中に憎しみがあるといとも簡単にその堤防は決壊してしまう。
磯崎もきっと俺と同じだ。やつだって最初は正義だった。俺にできないことをやってのけた。しかし、人間に対する憎しみがたまってたまって、遂に決壊してしまった。奴を悪へと変えたのは奴自身なんかじゃない。この世界そのものだ。やつは絶望してしまったんだ。この世界に。守るべき者のないこの世界に。守るべき価値のない者たちばかりのこの世界に。
現に俺だってわからなくなってきている。あんな奴らに守るべき価値があるのか。守ったとしてそれが本当に正しいことなのかどうか。そして殺したくなる。人間の人生を壊す野郎共を。きっとそれが、俺たちみたいなウルトラマンの力を得た人間が思うことなのだ。
その時、宇佐美のスマホが音をたてて着信を知らせた。すぐに出るとあの五分刈りの男の声が聞こえ、こちらに何も言わせないようになのか、それとも急いでいるからなのか、かなりの早口で「やつが足立区の水田という教員を殺すと予告してきた。今その水田というやつを探しているがまだ見つかってない。おそらく荒川区の家に帰る途中のはずだ。すぐにそこに行け」と言うだけ言ってこちらの返事を聞かぬまま通話はきられた。
拳をギュッと握る。
俺たちウルトラマンはある意味悪と隣り合わせだ。守りたくない奴らも守らなきゃならない。そんなことを続けているとどんどん考えてしまう。価値なんてない。俺がなぜ人の人生を壊すやつを守らなければならない。この苦しみをわかる奴はいまい。
俺に奴を止める権限なんてどこにもないし……俺だってあいつのやっていることが正しいんじゃないかって思っている。今の時代に限ったことではなく、昔から教師は汚い。
人を守るということ。それはここまで難しいのか。宇佐美は今さらながらに気がついた。
そして宇佐美は軽く舌打ちすると、荒川区の方へと走っていった。
なんだかんだでほおっておけない自分を強く恨みながら。
アメリカ。テキサス州。
一枚の新聞が朝日の照らす街中を飛び回り、そして一つの街灯にその紙は打ち付けられ、その後風がやんで、ゆっくりと紙は道路に広がった。
『青い巨人出現!? 過去に出現したパワードとの関係は?
国防総省によると5月24日午前1時頃。テキサス州……に青い体のウルトラマンとおぼしき巨人が現れ、あのお方たちの基地を襲撃した。これに対し政府は許しがたき宣戦布告行為と非難し、国民の安全を守るためにデフコンレベルを2に上げた。
かつてアメリカに襲来したウルトラマンパワードはあのお方たちの同胞を殺しており、今回の青い巨人もその可能性が非常に高いと思われる。』
※この話はフィクションであり、実在の人物、団体、国家などとは何の関係もありません。そして、もしも誤字などがありましたらご報告をお願いいたします。感想お待ちしています。