青森県。
交番に勤務している
『平和』と言っても少しひっくり返せばそこらじゅうに助けを求めている人たちがいるわけなのだが、そういうのがすっかり定着してしまったこの国のこの現状においては、助けたところで交番に爆弾を投げられたりして終わりだ。そんなのがわかっていてわざわざ助けに行く正義のヒーローは、とっくの昔に絶滅した。
「ん……?」
そんな風に空を見ていると、遠くの空から何か黒い物体が物凄いスピードで飛んでくるのが目にはいった。
超低空で飛行する無数のその物体は、まるでSF映画で宇宙人が乗っている
一瞬、夢かと思ったそれは、しかし更にスピードを上げてどんどん――、
樋村は頭で考える前にまるでひったくるかのような動作で腰に下げた無線機手に取り、叫ぶ。
「――!! こちら
それが頭上を通過したとたん、何かが降ってきた。それを見て、樋村はまるでこの世が止まったかのように世界がスローモーションに見えた。
光も寄せ付けないような真っ黒い色をしたそれはどう見ても爆弾。重力に従うままに大地に近づき、そして炸裂する。
しかし爆弾というのは慣性の法則のに従うから樋村の真上で落とされた爆弾は樋村を通り越し、爆発。凄まじい爆発と爆音が樋村の体を吹き飛ばす。
体重70kgはある樋村の体が軽々と風に持ち上げられ、そして飛ばされる。
同じく爆風で飛んできた金属片が体をかすめ、飛ばされてわけがわからずとも激痛が走ったことがわかる。
そして樋村の体はどこかのビルのコンクリートに叩きつけられ、その後地面に打ち付けられる。
咳をこむように血液を吐き出して、激痛のためその場から動けない。
自分の姿を見ると、青いワイシャツが血で黒く染まっているのが見えた。舌を使って口の中を探ると硬いものが触れてそれを地面に吐き出す。
「あ……ああ……」
血液と一緒に埃が積もった地面に吐き出されたそれは、自分の歯だったのだ。
空を見ると、少し煙で見辛かったが、さっきと同じような黒い飛行機が何機も飛んでいくのが見えた。
黒い飛行機が通り、遅れて轟音が耳に届く。
腹部からは、止まることなくおびただしい量の血液が溢れている。
涙が、溢れてきた。
死ぬという恐怖がこんなに怖いとは思ってなかった。
こんなにも、痛くて、辛くて、苦しい……。
こんな思いが、自分たち警察官が見捨ててきた人たちが感じてきた思いなのかと思ってしまうのは、警察官としての最後の誇りがそうさせてくれているのだろうか。
樋村は吹っ飛ばされた時になくなってしまった帽子を探した。
少し離れたところに埃にまみれてしまっている帽子を見るけると、すぐに這ってそこまで行き、それを掴んで大事そうに胸に押し付けた。
「ちきしょぉ……」
今までの自分が悔しくて、悔しくて涙が溢れて止まらない。
警察官なのに、守れた命は今までなかった。何もできてなかった。泣き叫ぶ人たちを見殺しにしただけだった。
いつまでそうしていただろうか。気がつくと、パトカーや救急車のサイレンが聞こえた。しかし、頭上ではまだ何機もの黒い飛行機が飛んでいて、たまに真上を飛ぶ。
樋村は嗚咽をあげながら腰のホルスターから拳銃を取り出し、空に銃口を向ける。
無駄だということはわかっている。でも意味はある。
「あああああああああああああああああああああッ!!」
空に向かって引き金を引く。
何度も、何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。
何度もッ!!
それが、彼にできる最後の……、
……最後にできる警察官としての使命だった。
官邸地下、危機管理センター。
「というわけで、現在、青森県内に約130機の未確認飛行物体が飛行、そして無差別に攻撃をしかけています。これに関し、あのお方たちが先ほど犯行声明を表明しました。相手があのお方たちなだけに、政治問題になりえる可能性があるので航空自衛隊は戦えないのが現状です」
男の名前は
危機管理センターの中には各省庁のトップとその秘書たち、そして職員たちが慌ただしく動いていて、今がどれほど大変な状況にあるのかを知らせている。
そんな中、防衛省の統合情報部長が手を挙げた。
「なぜあのお方たちは日本を攻撃する?」
「おそらくですが、この間陸上自衛隊が倒したウルトラマンに化けていた宇宙人が原因と考えられます。おそらくあれを倒したことにあのお方たちは怒っていると」
南方のその言葉に各省庁たちは表情を曇らせた。おおよそ、そんな勝手な。とでも思っているのだろう。しかしあのお方たちの横暴は今に始まった話ではない。なにしろ奴らは、自分たちに背くような犯行したとある宗教を国教にしている国を飽和攻撃で滅ぼしたことがある。
「法務官、あのお方たちに対して我々は何ができる?」
防衛省長官の言葉に法務官はおずおずと喋り出す。
「なにもできません」
その言葉にセンター内にいた者たちが一斉に意味がわからないという表情をする。
「どういうことだ、法務官」
「法律で決まっているんです。言葉が難しいので噛み砕いて言いますが、日本はいかなる理由があろうともあのお方たちを攻撃できないと」
「そ、それなら前総理があのお方たちに対して防衛出動命令を下したじゃないか! あれはなんなんだ!」
財務大臣が声を荒らげて言う。
その言葉に法務官は一瞬困ったような表情をした。
「残念ながらあれはあのお方たちではなく、あのお方たちが呼び込んだ可能性があるタイラントに対して防衛出動命令をかけたのであって、あのお方たちにではありません」
各省庁の担当者たちは黙りこんでしまう。
しかしそんな時、統合幕僚長が発言する。
「分析官。
『敵』その言葉だけが鐘を打ったようにセンターに響いた気がした。
「おいおい今の発言は……」
外務大臣が顔を真っ青にして言う。しかしそんな外務大臣の言葉を幕僚長は遮る。
「明らかに敵だろう。現に我々は国家崩壊の危機にひんしているじゃないか!!」
「ふざけないでいただきたい! 敵だと? そんなことを言って許されると思ってるのか!」
二人は席を立って取っ組み合う。そんな二人を止めようと省庁のトップたちが立ち上がる。しかしそれでも二人は止まらず、押さえつけられながらも言い合いをする。
「許される許されないではないだろう!! 国民がもう殺されているんだぞ!! それに宣戦布告すらしていない!! これは明らかな国際法違反だ!!」
「あのお方たちは国家ではない! だから宣戦布告などする必要ないし、もとより彼らが国際法を守るわけないだろ!!」
各省庁トップたちの会議は終わりが見えない。
二日後。あのお方たちの航空機は無補給だというのにまだ青森県上空で飛行している中、護衛艦ふゆづきは日本海にいた。
あきづき型護衛艦の3番艦として建造されたこのふゆづきは、どこぞの国から大陸間弾道ミサイル。つまり弾道ミサイルが発射された場合に、イージス艦が弾道ミサイル迎撃にのみ集中できるよう、航空機など他の脅威からイージスを守るために造られた海上自衛隊の艦艇だ。
そんな護衛艦ふゆづきは、第3護衛隊DDH-181 ひゅうが、DDG-177 あたご、DD-112 まきなみ、DD-114 すずなみ。そして第7護衛隊DDG-175 みょうこう、DD-103 ゆうだち、DD-156 せとぎりとともに艦隊を組み第3護衛隊群として青森に向けて航行していた。
目的は、とつじょ攻撃を仕掛けてきたあのお方たちの航空戦力の撃退……と言いたいところだが、実はそうではない。
ふゆづきの艦長、風間は
国を守るために発足した自衛隊。たった今この瞬間に国民が攻撃を受けているにもかかわらず何もできない我々はいったいなんなのだ。この国は殴られても自分を守れないほど脆弱なのか。
世界中を探したところでこんな国、他にはないだろう。こんなにも弱腰で、国防に対する国民の意識も低い国、そもそも存在できていること自体がおかしいのだ。
そんな国に生まれた軍隊は、大変ったらありゃしない。他の国が普通にできることがこの国ではできない。
だからこそどこぞの国とかはたまたどこぞの国とかは日本になめてかかってくるのだ。
風間は目の前に表情されているどでかいモニターを見る。
艦隊は現在、LINK16を接続して艦隊ネットワークを構築。これを構築することで例えば、レーダーの探知能力が低い艦であっても、イージス艦などのレーダー探知能力が高い艦艇とのデータリンクにより、イージス艦のレーダーを借りて、本来その艦なら攻撃できない遠距離の対空攻撃が可能になる。ただ一つ欠点があるとするなら、それは水平線を越えた艦とはLINK16を接続をできないということだ。
「艦長、旗艦ひゅうが和泉艦長より通信です」
1人の海自隊員がそう言うと、風間はCIC内に設置された受話器を手に取る。
「こちらふゆづき艦長、風間」
『こちらひゅうが艦長、和泉。艦隊はこれより総理からの防衛出動命令を待つ。各艦、対空見張りを厳にせよ』
風間にはその声が、戦いを求める男の声に聞こえた。
もともと軍事とかはあまり知らないのでおかしな部分もあると思います。すいません。
そしてゼロについて感想欄で聞かれたのでここにも書いておきます。
この世界のゼロはプラズマスパークタワーを触ろうとする以前のゼロで、パラレルという解釈でお願いします。そのため、ウルティメイトブレスレットも所持していません。
作者自身、ゼロは大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIEを数回見た程度なのでこちらもおかしな部分がこれから出てくると思われますが、どうかその時は指摘していただけると幸いです。
※この話はフィクションであり、実在の人物、団体、国家などとは何の関係もありません。そして、もしも誤字などがありましたらご報告をお願いいたします。感想お待ちしています。