ウルトラマンが、降ってきた   作:凱旋門

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七十三話 懐かしき記憶

「セヤッ!」

 メビウスはツルギに殴りかかる。しかしその拳はツルギが体の前でX字に組んだ腕に阻まれる。そしてしまったと思った次の瞬間にはメガリュームクラスタが放った光線がメビウスの横っ腹に突っ込んでいた。

 既にめちゃくちゃとなった渋谷の町にメビウスの体が背中から打ち付けられる。その強さはかなりのものでメビウスは息が止まり、一瞬目の前が真っ白になりかけた。

「……ゼャァ」

 メビウスは肩で息をしながら立ち上がる。いつの間に動いたのか、メガリュームクラスタはヒカリの背中に隠れるようにしている。あれでは攻撃することが困難だ。

 ツルギにはもはや小細工は通用しない。奴は強いのだ。お世辞ではなく、本当に奴は強い。

 そして奴から見た俺は……どうなのだろうか? 強いと思っているだろうか? 頭がいいと思っているだろうか? 正々堂々としか戦わないと思っているだろうか? ……もしも奴が俺のことを正々堂々としか戦わないと思っているのなら、二対一というこの状況を、打破できる。

 メビウスは左手にあるメビウスブレスのクリスタルに右手を当てて、その後、両手を鋭く左右に広げる。

 そこからは円を描くように――メビウスの両手から優しい炎が溢れながら――頭の上へと持っていく。

 そこまでいって初めてツルギがヤバい、という顔をした。

――悪いな。俺は男には容赦しないんだ。

 心の中で謝罪し、メビウスはそのまま胸の前で十字を組む。そして『光』が渋谷を包み込んだ。

 

 見えたものはただただ光だった。

 どこまでも輝いていて、淡い橙色の光を放っていたそれは、自分の体を包み込みんだ。

 聞こえたのは、鼓動のような光の音だった。

 いや、正確には鼓動なんてものではない。しかし、そんな感じが……生きている感じがした。そしてその光を、俺は知っていた。

 子どもの時、まだ東京に越してくる前の話。友達と隣町の夏祭りに出掛けた帰り道、街灯一つもない田んぼ道を、とぼとぼと歩いていた。田舎ということもあって周囲に点々とある民家も寝静まっていて、また、聞こえるのも虫のなきごえだけで、まさに闇がそこを支配していた。

 もしかしたら誘拐されるのではないか、幽霊がでてくるのではないか。そんな不安に押し潰されそうになりながら早足で家に帰ったことを今でも覚えている。

 怖くて怖くてたまらない中のこと、家の近くにつきようやく見えたその光。遠かったがしっかりと見えたその光は、暖かく、自分を包んでくれた。

――そうか。この光は、

 

 

 

 

 太平洋、上空3万5000フィート。

 ウルトラマンゼロは日本へ向かって飛行を続けていた。

 大気の薄い空間を切り裂くように進み、どんどんスピードを上げていく。

 順調に行けば後1分ほどで目的地へたどり着けるはずだ。

――そう。順調に行けば。

 それは、一瞬の出来事だった。なにやら紫色の光線のような物がどこからか発射され、それがゼロの体の少し手前で弾ける。突然ということで回避する術がなかったゼロはそのまま、弾けた光線が……そう。まるでメタフィールドのように展開し、自分の体を包んでいくことを、ただ見ていることしかできなかった。




 ※この話はフィクションであり、実在の人物、団体、国家などとは何の関係もありません。そして、もしも誤字などがありましたらご報告をお願いいたします。感想お待ちしています。
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