ザギは紫色の天に向かって野獣のように大きく吠えた後、ゼロに向かって右手を拳をつき出す。するとその一瞬後にはザギ・シュートがその手から放たれていて、いきなりのことにきょとんとしていたゼロはそのままその牽制技に当たってしまっていた。
しかし、牽制技であるにも関わらず、光線が数発当たったゼロはそのまま大きく吹っ飛ばされてしまう。
あり得ないほど宙を高く飛び、背中から岩の地面に叩きつけられる。あきらかに牽制技の威力ではない。立派な必殺技だ。
その一撃だけで、もはやゼロはかならのダメージをおってしまったらしく、立ち上がろうともがいているものの、うまく力が入っていないようだった。
「クソォ……ッ」
だが、それでもゼロはなんとか立ち上がると、少し肩を上下させながら息を整えると、頭に着いたゼロスラッガー二本を掴み、先ほどのダメージが嘘のように思えるほどしっかりとした足取りでザギに向かっていく。
それに対して、ゼロも野獣的な動きでゼロに向かって走る。
武器を持っている分。ゼロは少し自信があった。しかし、その自信は次の瞬間には崩されることとなる。
「――ッ!!」
腹に走った衝撃は、ザギがソバットを繰り出したことへの痛み。
それで一瞬怯んだゼロに、ザギは今度、回し蹴りをくりだした。それでも痛みを耐え、余裕を感じさせるゆったりとした動きを見せるザギを拳で殴りかかるが、それは簡単に掴まれ、次の瞬間には右手で首を絞められていた。
痛い。頭に酸素が巡らず、何も考えられなくなってくる。
ゼロはその手を必死に引き剥がそうとするのだが、ザギの力は強すぎる。まったくびくともしないのだ。
「たかだがイギリス人が……ッ! 俺を殺せると思うなッ!」
だから、ゼロは手を引き剥がそうとするのをやめ、エメリウムスラッシュを炸裂させた。これにはさすがにザギも驚いたのか、首を絞めていた手を放した。その隙にゼロは一気に距離をとる。
「イギリス人のくせに調子のってんじゃねぇぞ……」
彼にそう言わせるのは、25年前まで世界の警察だった時のプライドがまだ残っているからだろうか。それとも、単にイギリスが嫌いなだけなのか。
それにしても、とブライアン中佐は思う。
これ、どうすればいい?
まったく勝てる気がしない。まだ少ししか戦っていないというのに圧倒的な力の差さえもう感じている。
結局戦うしかないということは、自分が一番よくわかっていながらも、ブライアン中佐……ゼロはそう考えるしかなかったのだ。
宇佐美は泣いた。泣いて叫んで地面を殴った。拳から血がでてきたが、構わず殴り続けた。
意味がないなんてこと、自分が一番よくわかっている、でも、こうでもしていなければ自分を殺してしまいそうだった。
この世界は数学のように明確な答えがあるわけではない。悩んで悩んで、やっとたどり着けたと思った答えですら間違っていることがよくある。答えがあるのかどうかすらわからないこの世界を、それでも自分たちは答えを探して生きている。本当は誰もがわかっているというのに、それでも人間は答えを探し続ける。苦しいのに、悲しいのに、痛いのに、俺たちは探し続けている。その行為が正解なのか。最善なのか、わかるはずがないこと 無限に考え続けている。意味のないことを、続けている。やめられないのだ。本当に自分は正しいのか、本当に大丈夫なのか。どんなに神経が図太い人間でも心配で仕方がないのだ。
でも、答えはでないんだ。悩んで、苦しんで、悲しんで、傷ついても、答えなんてものはでてこないんだ。結局どうすればいいのかわからないまま。残るのはどうすればいいのかわからずに焦る気持ちだけだ。
でも、どうすればよかった? 奴を殺さなきゃもっとたくさんの人が殺されていた。俺だって殺されていたかもしれない。俺だって悩んだ。あいつの言うことが本当は正しいんじゃないのか。綺麗事ばかりではダメなんじゃないのか。人間を殺すしかないんじゃないのか。悩んだんだよ。……でも、俺はたくさんの人間を殺してまで作る未来を好きになれなかった。
……本当は、ただ誰かに「もう頑張った。お前は正しい」と言われたいだけの言い訳かもしれない。でも言いたい……思いたいんだ。そう思わなければ本当に心が潰れてしまいそうだから。本当に自分を殺してしまいそうだから。
でも結局、なにも変わりはしない。俺はろくでもないクソ野郎だ。
※この話はフィクションであり、実在の人物、団体、国家などとは何の関係もありません。そして、もしも誤字などがありましたらご報告をお願いいたします。感想お待ちしています。