ウルトラマンが、降ってきた   作:凱旋門

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七十八話

 東京都、横田基地、在日米軍司令部。

 その場所では黒い巨人に対する攻撃の準備が行われていた。……いや、ここだけではない。日本中の全米軍基地でその準備が行われているのだ。今までまったく怪獣たちに攻撃をしていなかった米軍がなぜ動いたのか、その理由はもちろん海上自衛隊とあのお方たちとの戦闘によるものだ。

 あのお方たちの戦力がその程度であるなら、世界の警察官たる米軍がこれ以上黙っているわけにはいかないのだ。

 つまり、アメリカとしては今まで変な宇宙人に好き勝手やられていてめちゃくちゃ腹がたっていたので、そんなに弱いならさっさとぶちのめしてやろう、と思ったのである。いつもの冷静なアメリカならもう少し様子を見ていただろうが、今のアメリカは違う。いわゆるU.S.A.! 状態だ。

 今までたまっていた鬱憤。特に軍の上層部だからこそ知っていた25年前の真実。世界を守るために中心になってウルトラ戦士たちを殺すしかなかった怒り。その全てが彼らが戦う理由であった。

 

 彼らは黒い巨人から逃げるしかなかった。

 愛する人も、子どもも、友人とはぐれても、ただただ生きるために走った。たとえ隣にいた人が死のうが、逃げるしかないのだ。黒い巨人に恐怖してそこら辺にうずくまるしかない子どもたちを見ていながらも、逃げるしかなかったのだ。

 一気に人が流れ込んだ地下鉄の入り口では転倒する人が激増。その転倒した人の上を通って下敷きになった人が死亡するといったことが多発している。

 もはや警察も消防も何もできず、人々はパニックに陥っていたのだ。

 破壊されたビルの破片やガラスが弾丸のように降りしきり、その分だけ人が死んでいく。

 もはや誰もが希望を捨てた、その時だった。

 霞が関を青い光が包み込む。人々は何が起こったのかと顔をあげ、またザギも突如現れた光に注目した。

 その青い光は徐々に人形の姿を形成していき、最後には静かにその姿を現した。

 鎧を纏ったその姿は、やはりどこか人間に恐怖を与え、人々は敵が増えたのかと更に絶望する。だが、それは違うと彼らは次の瞬間に気づいた。

 青い巨人――ハンターナイトツルギは肩を上下させながらザギに向けて構えた後、全力を振り絞って駆けていく。

 走っている途中でナイトブレードを出現させようかと思ったが、しかしそれだけのエネルギーが既に残っていないことがわかると、諦めて素手で戦いに行く。

 勝ち目がないなんてこと……わかっている。赤ちゃんにもわかることだろう。だが、それでも戦わなければならない。犠牲者を一人でも少なくするために、戦うのだ。

 ツルギはザギに勢いよく拳をふる。しかしそれはザギに簡単にかわされてしまい、代わりに強烈すぎるほどのパンチが返ってきた。それによりヒカリは宙を吹っ飛び、東京駅に真上から激突した。

 レンガでできた東京駅はいとも容易く破壊され、瓦礫の残骸へと変わった。

 ツルギは痛みを耐えてなんとか立ち上がる。しかしその動きは怪しい。ふらついている。

 だがそれでも構え直したツルギは、再びザギへ向かっていく。

 ザギの体に抱きつき、少しでも時間を稼ごうとしているのだ。だからザギはヒカリの背中に強烈なエルボーを何度もくらわせる。しかしそれでもツルギはザギを離そうとしない。そこでザギはツルギの腹に膝蹴りをいれる。

 だがそれでもツルギはザギを離さない。ここで離すわけにはいかないからだ。ここでザギを離したら、それこそもう何もできなくなってしまう。距離をとられれば光線を放ってくるだろうし、一度逃げたザギを捕まえるのは至難の技だからだ。

 もちろん痛い。意識 ぶっ飛んでしまうくらいに痛い。

 ザギが怒り狂って咆哮をあげる。それでもツルギは離さない。死んでも離さない。

 

 同時刻、世田谷区。

 宇佐美は左腕にメビウスブレスを出現させる。

 さっきワンセグで確認したことだが、どうやら黒い巨人が霞が関に出たらしい。

 そしてテレビ局の中継にはそれともう一人。ツルギの姿も映っていた。やつはあの全力の光線をくらっても生きていたのだ。そしてそれだけではなく、あいつは今、あの黒い巨人と戦っている。

 やつがしていることは、明らかに今までとは違う。きっとあいつはあの黒い巨人を倒そうとしているのだ。そうとなれば、俺がいかない理由はない。

 さっさと敵を倒し、生きてたのに連絡よこさなかった磯崎……てめぇに説教してやる。

「うおおおおおおお!!」

 心の中でそう思って、宇佐美はメビウスブレスを左手を天に掲げた。




 ※この話はフィクションであり、実在の人物、団体、国家などとは何の関係もありません。そして、もしも誤字などがありましたらご報告をお願いいたします。感想お待ちしています。
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