ザギは遂に本気で怒りだし、またツルギも、もうザギに抗えるだけの力がなかったため、ザギが何度も攻撃しているうちにツルギは吹っ飛ばされ、半壊した警視庁にのめり込むようにして、完全に動かなくなった。
地下にも入れずに、地上を逃げていた人たちは思わず息を飲む。しかしその時、空から新たに赤い球体が地上に落下した。
その赤い球体は地上に着地すると共に弾け、光が空に飛び散った。
そしてその光の中心に、メビウスがいた。
そして警視庁にめり込んだツルギの姿と、町のそこら中に倒れる人々の死体、そしてこちらに向かって咆哮するザギとを見て、静かに拳を握りしめた。そして一瞬のうちに姿をメビウスバーニングブレイブへと変えた。
変身が解けた時、今度は本当に死ぬのかもしれない。死にたいと思えるような痛みがまた襲ってくるかもしれない。でも、そんなこと知ったこっちゃねえ。こいつは……こいつだけは――絶対に殺す。
「セヤッ! ハァァァァァ!」
メビウスは一度構えた後、ザギに向かって駆け出す。
こいつだけは、許すわけにはいかない。何者かはわからない。もしかしたらウルトラマンの一種なのかもしれない。だかそんなことは関係ない。こいつはたくさんの人を殺し、俺の友をあろうことか警視庁にめり込ませやがった。
一人の人間として、元警察官として、友として、断じて許せる行為ではない。
メビウスは拳を振るうが、ザギは後ろに下がりいとも簡単にかわしていく。メビウスは連続に素早く振るったが、答えは同じだった。しかし、それでも諦めるわけにはいかなかった。
かわされては、拳を振るう。そしてまたかわされる。イラつかないわけがない。自分の全力がまったく通用しないことほどイラつかないことはない。
だからメビウスは少しでもリーチを長くするためにメビゥームブレードを出現させ、それで攻撃する。それでも当たらな ということはわかっている。こいつは別格なのだ。自分の敵う相手じゃない。
だが、そうだとわかっていながらも自分は戦わなければならない。どんなに傷つき、苦しんでも戦う。今は、それがウルトラマンとしてやるべきことだと思うから。
ザギの拳が腹にめり込み、メビウスの体は吹っ飛ばされる。
地面に背中から落ち、一瞬息ができなくなる。そしてそこにザギの光線が降り注ぐ。
距離があったためか一発も当たらなかったが、近くで爆発するとやはりひやひやした。
腹が痛すぎて、腹筋にまったく力が入らなかった。そのせいで立つことすらできない。そしてさらにはカラータイマーも点滅を始める。たった一発のパンチでカラータイマーが点滅を始めるということは、やはりこいつは次元が違う。
だが、諦めない。いくらこいつが強かろうが、勝ち目がなかろうが、そんなこと知ったこっちゃない。気にくわないやつはぶっ飛ばせばいい。気にくわない未来はぶっ壊せばいい。理不尽な暴力とは徹底的に戦えばいい。負けなんてあり得ない。例え自分が死んでもそれは負けじゃない。俺が負けたと認めない限り俺は負けてない。
大人げない? 勝手に言え。俺は大人げないんだ。この戦いに勝つためにみっともなく大人げない戦い方をしてやる。そして必ず勝つ。
戦えないすべての人に代わり、その人の分まで泥を被ってまで戦う。
俺はそんなめんどくさいことをしなきゃならないウルトラマンなんだ。だから少しくらい大人げなくてもいいだろ?
メビウスは立ち上がり、その体に炎のベールを纏ってザギへ走っていく。つまり、メビゥームダイナマイトだ。
町を駆ける。傷だらけの人々がこちらを見ているのが自然とわかった。
その眼差しは不安と、期待だ。
勝手なやつらだ。ついこの間までは非難と蔑みだったってに、でも――、
「うおおおおおおおおおお!!」
俺は雄叫びをあげる。
そう。人間とは勝手だ。
どこまでも、とても勝手な生き物だ。でも、だからこそ守りたくなる。榊原楓も、とても勝手だった。死んだと思うが、死んだという確証はない。もしかしたらまだ生きてるかもしれない。死んだという連絡も何もないから俺は勝手な希望を持ってしまっている。そんな勝手を俺にくれている。
そう。誰もが勝手だ。みんな勝手だ。人間はみんな勝手さ。
だから喧嘩や戦争になる。
みんなが勝手だから誰かが傷つき、誰かが死ぬ。
そんな奴らを命をかけて守ることは嫌だ。悔しい。腹が立つ。逆に殺してやろうと思う。でも、それじゃ俺はただのアホだ。殺すだけじゃただのバカ野郎だ。嫌だが、俺はまだ見ていたい。この地球という惑星に生まれた生命体がどこまでやれるのかを。どこまで平和と平等をやりとおせるのかを。
だから守る。それを知りたいが故に俺は守るのさ。ろくでもない人間をな。
メビウスはザギにぶつかり、そのまま体を掴む。
次第にメビウスの温度は高まっていき、高熱のあまり周りのビルや、ビルのガラスが溶け始める。そしてその熱が最高まで後一歩手前というところでメビウスはザギを抱えて空に飛ぶ。
一瞬にして高度2000メートルまで行ったメビウスはそこで熱を爆発させた。
メビウスの全力の攻撃だ。
メビウスを中心に直径数百メートルの火球が作り出され、ザギとメビウスの体を焼き尽くす。そこから作られた衝撃波は地上すらも襲い、町に熱波が走る。
そしてその爆炎が収まらない内にメビウスは自身の体を光に変えて脱出、地上で体を再生させた。
地面に手をつき、メビウスは肩で息るする。
――やったか?
誰もがそう思った。しかし、次の瞬間だった。爆発の中から一直線の黒い光線がメビウスに打ち込まれた。メビウスは無駄だとわかっていながらも反射的に顔を隠した。
その光線はメビウスを飲み込み、その体を跡形もなく消し去るように思われた。だが、それは違った。
警視庁にめり込んでいたツルギが最後の力を振り絞ってメビウスの前に立ち、バリアをはる。
しかしその光線は到底バリアで防げるものではなく、バリアは次第にひび割れ、粉々に砕け散り、ツルギは黒い光線を体で浴びる。それでも一歩も後退しない。メビウスの盾になると決めたのだ。
ツルギの鎧すら砕け散り、ツルギはヒカリへと姿を変えた。
カラータイマーが点滅を始めても、一歩も下がらない。
「ヒカリ……おい磯崎やめろ!」
「俺は……俺はバカだった。バカだったが故に俺は奴らの話にのってしまった。……そんな俺よりも、お前が生き残った方がいいんだよ。この星を……任せたぞッ!!」
それだけ言うとヒカリは最後の力を使って光線を押し返し始める。じりじりと前に進み、そして、爆発した。
それが、磯崎健二、ウルトラマンヒカリの最期だった。
ヒルカワは突如鳴り響いた防災無線の音で深い睡眠の中から現実へとたたき出された。
そうして仕方なしに防災無線の内容を聞いていると、どうやらこの近くで黒い巨人と『ウルトラマンメビウス』が戦っているというものだった。
ウルトラマンメビウス。忘れるはずもない。30年前にこの俺の地位をすべてどん底に落とした悪魔だ。
あれがあったせいで俺は社会的に殺された。脅迫状が届くことは日常茶飯事で、闇討ちにも何度かあった。
そんな生活が5年ほど続いたときに、何かが変わった。よくは覚えていないが、なぜか俺が英雄になっていた。古くからウルトラマンの邪悪を見抜いた勇気ある男だと。
だが、それでも奴への恨みを忘れたことはない。
いくら英雄と讃えられようとも、奴にうけた屈辱は絶対に忘れられない。
だから、撮ってやりたい。やつが怪獣にやられる滑稽な姿を。そしてそれを全世界に流してやるのだ。
ヒルカワは、カメラを手に東京の町へ駆けだした。
※この話はフィクションであり、実在の人物、団体、国家などとは何の関係もありません。そして、もしも誤字などがありましたらご報告をお願いいたします。感想お待ちしています。