ウルトラマンが、降ってきた   作:凱旋門

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九十話 補食

 宇佐美――メビウスが紋別の町へと降り立つと、そこには自然も町も人の姿もなく、ただ無機質な岩があるだけだった。そして、そんな不気味な異様の中に、白い怪獣が一体。

 その怪獣は、ただただ不気味だった。

 辺りが霧に包まれているせいもあるが、それだけではない。怪獣がとてつもなくデカかった。メビウスの身長の3倍を余裕で上回る大きさだ。

 その異常な大きさに、メビウスはたじろいだが、気を引き締め直してウララに構える。

「セヤッ!」

 メビウスが走り出そうとした、その時だった。

 ウララの後頭部の辺りから触手が天に飛び出し、その先端から青いビームのようなものが発射された。

 メビウスは前転をしながらそれを避け、ウララへ接近しようとする。

 しかしその瞬間に、いきなりウララの後ろから新たに2本の触手が飛び出してきて、メビウスを捕まえようとする。

 ビームだけならまだしも、それ以外に迫り来る触手をかわしながらウララに接近をすることは不可能に近かった。

 メビウスはなんとかビームと触手の両方をかわしていくのだが、ついにメビウスの体にビームが当たってしまい、怯んだところを触手に拘束されてしまう。

「ゼアァ……ッ!」

 体の動きを制限された上で無数の攻撃を避けられるはずもなく、無数のビームがメビウスに命中し、火花が飛ぶ。

 エネルギーをごりごりと削られていき、そのままでは危なかった。

 中にはメビウスの体を外れて地面に当たったビームも多数あり、たちまちメビウスの体は土煙に包み込まれる。

 もはやダメだと、普通なら誰もがそう思うだろう。

 しかし次の瞬間、赤い炎とともに煙りがはらわれた。

 触手もその爆風にちぎれて吹っ飛び、メビウスの拘束はなくなった。

 メビウスの姿は、メビウスバーニングブレイブへと変わっていた。

 彼はバーニングブレイブへと変身し、ほんの一瞬のメビゥームダイナマイトにかなりのエネルギーをつぎ込むことでそれは爆発ようなものとなり、メビウスの周りの物を吹き飛ばしたのだ。

「…………」

 メビウスはメビゥームブレードをブレスから出現させる。刀身がうっすらと赤く燃えるその剣にはどこか神秘的な美しさまで感じられる。

「セヤッ! ……ヘアッ!」

 メビゥームブレードは迫り来る触手を切り裂くのだが、いかんせん触手が多すぎてまるで減っているようには見えない。

 そして、メビウスのカラータイマーが鳴り始めた。

 いつもより明らかに早すぎる警告に、メビウスは一瞬驚くが、今はそれどころではなかった。

 メビゥームブレードに切断されたウララの触手は、切られたそばからどんどん新たな触手がウララから生えてくるため、まったく意味があるようには見えない。

 それに、斬られた触手が、まるで意思があるかのようにうにょうにょと動き出して、それは細いアネモス――ウルトラマンガイアに登場した怪獣、以下ウララ・アネモス――のように変化した。

 メビウスはウララ・アネモスに囲まれてしまい、もはや地上戦では不利だとわかると、両手を広げて空に飛び立った。

 しかしウララから伸びる触手は空を飛ぶメビウスをものすごいスピードで追いかける。そのスピード自体は速くないのだが、数が多い。避けるために方向を変えても行く先々に触手が待ち構えており、それらをかい潜ってウララに攻を加えることは至難の技のように思えた。

 飛びながらメビゥームスラッシュを無数に放つが、どう見ても焼け石に水だった。

 そうして当てもなく逃げ飛び回っているうちにも触手の数はどんどん増えていき、その一つがメビウスの足を絡め捕った。

 それでメビウスの速度が低下すると、どんどん触手が腕や足、胴に巻き付いた。それがギリギリと体を締め付けてメビウスは苦しそうに呻く。

 そしてそのまま、メビウスは触手によってウララの本体へと一気に引っ張られていき、ウララの口が一度、大きく開いたかと思うと、そのままメビウスを足から口にほおりこんだ。

 

 

 上半身だけがウララの口から出ていて、ウララを殴るという無駄な抵抗を続けるという、メビウスのあまりに滑稽な姿を見て、ヒルカワはニヤリと笑った。シャッターを何度も切り、その光景をカメラに収めている。フラッシュの光が闇夜に光っている。

 窓を開けっ放しにしている車の中からは、楓のくぐもった泣き声に近いうなり声が聞こえた。

 愉快だ。

 かつて俺を社会のどん底にまで堕としてくれた憎き光の巨人。そいつの命を今は俺が握っている。俺があのスペースビーストに命令さえすれば、やつは死ぬ。

 それが愉快で仕方がない。

 だが、俺だって鬼ではない。

 ヒルカワはニタニタと笑いながら車の後部座席に続くドアを開ける。泣き続ける楓を強引に車外に引っ張り出し、メビウスに見える位置まで連れだした。

「おいメビウス!!」

 そう叫んだ声は、わずかに残る霧の中を進み、メビウスの頭をこちらに向けさせた。そして、俺の足元で転がるガキを見て、明らかに動揺した。

「全部お前が悪いんだからな! あの時俺のことをコケにしやがって! でも安心しろよ。このガキもすぐに後を追わせてやるから!」

 メビウスが楓を求めているのか、届きもしない手を必死に伸ばしている。届きもしないのになぜそんなに求める?

 ヒルカワは嗤った。

 ばかなメビウス。お前がいくら必死になろうと、その手は決して届かない。

「やっちまえ!!」

 そう言った瞬間、ウララはその大きな口でメビウスを飲み込んだ。




 ※この話はフィクションであり、実在の人物、団体、国家などとは何の関係もありません。そして、もしも誤字などがありましたらご報告をお願いいたします。感想お待ちしています。
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