「転生特典をもらっても全て得になるとは限らない」   作:野鳥

12 / 28
第11話

 第11話

 

『総員第一戦闘配備。総員第一戦闘配備…』

 

 艦内に鳴り響いた放送によってオレは目を覚ました。

 現在の場所は自分の部屋だ。食堂の一件があった日より数日後、第八艦隊より派遣された先遣隊の暗号通信を受信、それからまた一日経過してアークエンジェルは先遣隊と合流できる程の距離まで近付いたのだが…

 

「ついに来たか」

 

 原作だと9話にて起こるクルーゼ隊と第八艦隊の先遣隊による戦闘。この戦闘だと確かイージスとジン数機が出てくる筈だ。そして先遣隊の艦にはフレイ・アルスターの父親、ジョージ・アルスターが乗っている。

 原作ではこの戦闘で先遣隊と共に死亡し、フレイがキラを使ったコーディネイターへの復讐を志す動機になったりするんだが…しかし、何故先遣隊に付いてきてたんだろうな?大西洋連邦の重要ポストで連合軍のスポンサーであるブルーコスモスの一員だからって軍艦にそう簡単に乗れたりするもんかね?まあ、今考えても仕方ないか。とにかくまずはさっさと格納庫へ急がねばな。

 すぐさま服を着替え、パイロット控え室へ向かう。

 

「しかしアルテミスに行かなかったのに、ちゃんと何のズレもなく原作と同じ戦闘が起こるとはな…」

 

 パイロット控え室まで走って向かいながら、オレはついそんなことを呟いた。

 アルテミスに向かわなかったのでアークエンジェルは原作よりも早くユニウスセブンまでたどり着いた。その影響でもしかしたらクルーゼ隊が追いついてくるのが遅れたり、先遣隊と合流するのが早くなったりしてこの戦闘は起こらない場合もあるんじゃないかとも思っていたんだが杞憂だったようだ。

 まあ、戦闘が起これば撃墜数を稼ぐことができるし、何よりジンが出てきてくれれば尚都合がいい。兎にも角にも頑張りますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「兄ちゃん、早く乗りな。機体の調整は済んでるぜ!」

 

 控え室でパイロットスーツに着替え、格納庫のジンが置いてある場所にたどり着いた。そこには数名の整備斑と一緒にいるマードックがいた。

 

「フラガ大尉とキラは?」

「大尉ならもうメビウスに乗り込んだ。坊主はまだ来てねぇ!」

「了解!」

 

 マードックとの会話を終了し、オレはジンのコックピットに乗り込む。コックピット内の各機器を立ち上げ、出撃準備を整える。

 

『ジン、カタパルトデッキへ』

 

 五分程経過した後格納庫内にそんなアナウンスが流れ、カタパルトデッキまで運ばれる。

 リニアカタパルトに設置された直後に通信が入る。相手はミリアリア。

 

『悠凪さん。敵はナスカ級にジン三機、それとイージスです』

「了解」

 

 敵はやはりクルーゼ隊か。油断は禁物だが、イレギュラーな奴が出てくるよりはまだいいな。

 そんなことを考えていると、前方のハッチが開く。どうやら出撃体制が整ったようだ。

 

『ジン、発進どうぞ!』

「よし、悠凪・グライフ。ジン、発進する!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リニアカタパルトより射出され、宇宙空間へと飛び出す。その先で行われていたのは連合軍とザフトの戦闘だった。

 連合軍の戦力は戦艦が三隻、恐らくあれが先遣隊だろう。そしてその三隻から出撃した二十機近い数のMA部隊だ。一方ザフトは戦闘が行われている場所より少し離れた所に戦艦が一隻見受けられる。クルーゼがいるであろうナスカ級だ。それより出撃しているのはMS四機。イージスに全て同じ武装、M68キャットゥス500mm無反動と重斬刀を装備したジンが三機。

 普通に見れば数で勝っている先遣隊が勝つと思うだろうが、状況は全くの逆。MA部隊と三隻の戦艦はたった四機のMSに翻弄され、次々とMAが撃墜されているという状況だ。特にイージスはヘリオポリスで奪取されたGシリーズの一機。ジンとは元から性能が違う上にパイロットの腕も相まって、戦艦より発射されるミサイルやビームを軽々とかわし、MAを撃墜していっている。

 これを見ると、ザフトのMSと連合のMAの性能の違い。そしてザフト兵の練度の高さがよくわかるな。

 後方を確認するとエールパックを装備したストライクがアークエンジェルより出撃したのが見えた。そんな時

 

『悠凪、キラ。ちょっといいか』

 

 先行して出撃したムウからオレとキラに通信が入る。恐らくあの四機のことだろうな。

 

『はい』

「何だ?」

『ああ、イージスの相手だが誰が行く?まずはジンをどうにかしないと始まらないしな。奴を援護できないように引きつけておく必要がある』

「オレはパスだ」

 

 今回はイージスはどうでもいい存在だ。オレじゃなくてもMAに乗ってるムウはともかくキラは色んな意味で大丈夫だろうしな。なので断らせてもらおう。

 

『理由を聞いてもいいか?』

「まず性能差だ。イージスはPS装甲で実弾は全く効かない。G三機と戦った時はデブリに隠れながら時間稼ぎに徹していたからどうにかなったが、今回は周りに障害物は無い状態での戦いになる。この条件じゃとてもじゃないが勝てるとは思えないからな。フラガ大尉もさすがにMAで奴の相手をするのは無理があるだろう。消去法で同じGに乗ってるキラに頼みたい」

『僕ですか!?』

「心配するな。ジンの排除が終わったらすぐ援護に向かう」

「…わかりました」

『じゃあそれでいくか。悠凪、キラ、またアークエンジェルでな』

 

 その言葉と共にオレ達はそれぞれ戦場へ散っていった。さぁて、んじゃやりますかね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 スラスターを最大加速で噴かせ、戦闘が行われている宙域へ向かっていく。

 モニターで戦場を見回してみると、先遣隊の戦艦の一つに攻撃を行っているジンを発見した。そのジンへ挨拶代わりに突撃機銃を放つ。

 こちらの放った攻撃は敵に気付かれ、横に移動することで回避される。そして敵は装備していた武装、M68キャットゥス500mm無反動砲をこちらに向け弾頭を発射してきた。

 これを横に大きく逸れることで避け、また牽制用に突撃機銃を放つ。

 敵もやはりこれを避けるが、オレはスラスターを最大限に噴かせ一気に敵に突っ込んでいく。

 迎撃の為、無反動砲を発射しようと相手も構えるも今回はオレの方が早い。余っていた右手で腰に付けていた重斬刀を握り、敵に切りかかる。

 オレに切りかかられる瞬間に敵も重斬刀を握りしめ、オレの攻撃を何とか防いだ。互いの刃と刃がぶつかりあい、コックピット内にも聞こえる程の衝突音が辺りに響き渡る。

 あまり時間がないんでな。さっさと墜とさせてもらう!

 オレは敵がここから次の行動に移る前に、こちらから仕掛けることにした。左足による膝蹴りだ。

 蹴りは見事、相手のジンのコックピット部分に当たった。ジンがその衝撃により動きが鈍った瞬間、畳み掛けるように突撃機銃を連射しジンの頭部を破壊する。

 頭部の爆発により若干態勢を崩す敵のジン。その隙を見逃さずオレは重斬刀で敵の無反動砲を持っている右腕部分を切り飛ばした。

 だが、敵も衝撃から回復したようだ。残った左腕の重斬刀でこちらに切りかかってくる。

 それを右に回避、そしてすぐさま突撃機銃をジンに向け放った。

 このような至近距離で、尚且つ攻撃を行った直後の態勢のまま銃撃を避ける等まず無理だろう。敵のジンは何の対応もできずに弾丸を浴び続け爆散した。

 

「まずは一機」

 

 残り二機のジンの相手もしなくてはならないが、その前にあれを回収しなければな。

 モニターで辺りの様子を見てみると、すぐ近くにそれを発見できた。

 

「無事に残ってたな」

 

 それの前まで移動し、状態を確認する。先程ジンから切り飛ばした無反動砲を握った右腕のパーツである。

 両手に持っていた武器を腰に取り付け、右腕のパーツから無反動砲を取り外す。

 何故これを欲しがっているかというと、前回の戦いでブリッツにより基地から持ってきたバズーカを破壊されてしまったからだ。アークエンジェルにはザフト製の武器の類は置いていなかった。なので予備も無い上に弾薬の補給も不可能。なのでできる限り武器や弾薬を消耗せず戦っていかなければならないのだが初っ端から持ち合わせの武器を失う羽目になってしまった。

 これから戦っていく敵は強敵ばかりだ。もしかしたら前回の戦いと同じように武装を破壊される可能性もあるし、何より補給の目処がない。

 そんな状況をどうやって打破するか考えた結果、“敵の武装を奪う”ことに決めた。

 特に奪う対象となるのはジンだ。同じ機体同士の武器なら手間もかからず使うことが可能だから丁度いいのだ。なので今回の戦闘ではイージスと戦うのを辞退した。GAT-Xのビーム兵器は威力はあるがバッテリーを多く消費する上にまずGAT-Xシリーズ、またはアストレイシリーズでないと使えない仕様になっているので奪っても全く意味がないのだ。

 無反動砲を左手に持ち、オレは他のジンを探すことにした。移動しながら周りをモニターで確認してみるが、戦場はすでに撃墜された機体等の残骸で溢れていた。まあ、それが全て連合のMAや戦艦のものだというのは連合側からすれば直視したくない光景だろうが。

 そんなことを思っていると少し遠くで爆発が見えた。モニターの倍率を上げ確認するが…

 

「なっ!」

 

 そこに映ったのは二機のジンの攻撃によりガンバレルを失い、煙を上げながら敗走しているムウのメビウス・ゼロだった。

 原作でも確かこんな場面はあったがムウは何とかアークエンジェルに帰還できていたので驚く程のことではないかもしれない。

 だが問題は、二機の内一機は、残っているMA部隊と先遣隊の旗艦であるモントゴメリの撃破を優先しそちらへと向かっていったが、残りの一機はメビウス・ゼロの追撃を行っているのが見えたのだ。

 メビウス・ゼロに残っている装備はリニアガンしかない。あれに装備されているリニアガンは威力がジン相手でもあまり見込めないレベルのものだ。その上メビウス・ゼロの優位性はオールレンジ攻撃にあるといういうのに、その肝心のオールレンジ攻撃を行うガンバレルがなければはっきりいって“ただの動く的”状態になってしまう。 

 オレは推力最大でムウのところへと向かう。戦闘の様子を見てみるとジンが無反動砲を撃ち続け、それをメビウス・ゼロが必死に避けている状態だ。こんなところでムウを死なせる訳にはいかない。

 

「直感!」

 

 精神コマンドを使い、ジンへ向けて無反動砲を構える。狙うはジンの背中の真ん中あたり。こいつの試し撃ちの的になってもらおうか。

 狙いを定め無反動砲の引き金を引く。発射口より白煙を上げながら弾頭が発射され、その反動で機体全体が揺れた。

 ジンはメビウス・ゼロに夢中で、自分に向けて放たれた弾頭に気付いたのはもう避けられない位置に迫った時だった。

 

 ドガァァァン!!!

 

 ジンは呆気なく藻屑となって消えた。さすがは大型目標用に開発された武器だ。並のMSなら一発ということか。

 

「大丈夫か?フラガ大尉」

 

 オレはムウへ通信を入れることにした。機体はアークエンジェルに戻る位は何とかなりそうだが、パイロットも無事とは限らないからな。

 

『ああ、何とかな…』

 

 オレの言葉にムウはそう答えた。モニターに映るコックピット内の様子を見ても、コックピットに破損は無いし、ムウ自身も特に外傷等は見受けられない。

 

「そうか。だが機体の状態からして早くアークエンジェルに戻った方がいいぞ。そんな状態じゃ戦闘は無理だろ」

『ああ、わかった。…悠凪』

「ん?」

『…すまんな、後は頼む』

『…了解した』

 

 ムウはそう言い残してアークエンジェルへと戻っていった。

 …やっぱり普段は飄々とした感じで軍人とはあまり思えない印象だが、やはり任務を遂行出来ずに撤退しなくてはならないというのは悔しく思うのかね。

 人間というのは基本的に勝てば嬉しく感じるし、負ければ悔しいと思う。これに当てはめればムウのあの様子は至極当然と言えるな。

 なら、先遣隊を守りきらなければな。託された身としてはそれくらいできないでどうするっていう話だ。

 残っている戦艦を目指して移動を開始する。奴らの狙いは先遣隊の殲滅。だったら確実に残った敵の方へと向かうだろう。

 案の定、ジンは戦艦へと攻撃を行っていた。武装を粗方破壊され、もうあの戦艦は撃沈も時間の問題だろう。

 重斬刀を抜き、最大加速で接近しジンへと切りかかる。

 あちらもすぐに気付き無反動砲で応戦してくるが、そういうバズーカ系の武器は撃つまでのモーションが長くなりやすいので高速で移動している相手には避けられる場合が多い。それも正面で放たれたものだ。避けるのは容易かった。

 弾頭を横に避けた瞬間、一気にジンの懐まで迫り重斬刀を振り下ろす!

 だが、敵もそれなりに腕はあるようだ。咄嗟に後ろへ引くことでダメージを装甲にかする程度に済ませた。

 そして相手も重斬刀を抜きこちらへ切りかかってきた。オレはそれを自分の重斬刀で受け止め、即座に弾き距離をとる。

 無反動砲をその場に捨て、移動しながら突撃機銃をジンに撃ち放つ。

 ジンはそれを回避しながらこちらに接近しようとしている。射撃が駄目なら接近戦でということか。ならば…

 オレは徐々に機体のスピードを緩めていく。相手がそれに気付かないよう慎重に。それに気付かぬまま敵のジンは突撃機銃を避けながらこちらに接近していき、ついに重斬刀の間合いまで迫ってきた。そして大きく重斬刀を振りかぶり…ここだ!

 敵の重斬刀をスラスター等の微調整で機体を斜めに逸らし回避した。かなりすれすれの状態で。

そのままの状態で突撃機銃を敵の胴体向け、引き金を引いた。

 

 ズガガガガガ!!!

 

 突撃機銃より放たれた弾丸に耐えきれず、ジンはその胴体の全てを穴だらけにしながら活動を停止した。急いでその場から離れ、その姿が少し小さく見え始めた時、ジンは風船が破裂するかのような勢いで爆発した。

 …これで残るはイージスとナスカ級だ。ならキラの援護に………

 

ドガァァァン!!!

 

「!」

 

 後方で爆発があった、それもかなり巨大な。後ろを向くと先遣隊の最後の艦が盛大な爆発を起こして撃沈したのが目に映った。

 

「そうか、ナスカ級の砲撃…」

 

 くそっ!一歩遅かったか!……ムウになんて言えばいいんだかな。

 だが、感傷に浸っている暇などなかった。ナスカ級からジンが六機発進し、ナスカ級はアークエンジェルに対して攻撃を開始したのだ。

 

「!ちぃ!!」

 

 無反動砲を回収し、アークエンジェルへと急ぐ。

 アークエンジェルもゴットフリートやバリアントを撃ち応戦しているが、ジンが全機攻撃に加われば何時まで保つかわからない。

 キラはまだイージスと戦っているのか戻ってくる兆しは全くない。

 アークエンジェルの近くまで戻り、オレは無反動砲を移動中ジンの内の一機に向け発射する。避けられたが向こうはオレの存在に気付いたようだ。何機かがこちらに向かってくる。

 

「よし、こっちに来い…!」

 

 数を分散することには成功した。あとはアークエンジェルが保ってくれることとあいつらを相手に生き残れるかということだが…やってやるさ。

 近付いてくるジン達。戦闘になるのは確実だと思われたその時

 

『ザフト軍に告ぐ!こちらは地球連合軍所属艦アークエンジェル。当艦は現在、プラント最高評議会議長シーゲル・クラインの令嬢ラクス・クラインを保護している』

 

 アークエンジェルよりナタルから発せられる放送がオープンチャンネルで響き渡った。その放送によりジン達とナスカ級は攻撃を中止し、動きを止める。

 

 

『偶発的に救命ポッドを発見し、人道的立場から保護したものであるが、以降当艦への攻撃が加えられた場合、それは貴艦のラクス・クライン嬢に対する責任放棄と判断し、当方は自由意志によってこの件を処理するつもりであることをお伝えする!!』

 

 その言葉を聞いたジン達は少しした後、ナスカ級へと戻っていった。帰艦命令がでたのだろう。まあ、ラクスは最高評議会の議長というお偉いさんの娘であると共にプラントで絶大な人気を誇っているからな。そりゃ殺す訳にはいかないし、誰も好き好んでそんなことをしようとは思わないだろうな。

 しかし、ここも原作通りになったな。一応助かったが、ラクスを人質にして脅すのを考えたのがフレイと思うと…、有効な手ではあるがな…。

 

 こうして後味の悪い幕切れでこの戦闘は終わりを迎えた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。