「転生特典をもらっても全て得になるとは限らない」   作:野鳥

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第16話

 第16話

 

 リニアカタパルトより出撃した直後、重力によりジンは射出された勢いのまま砂地へと落下していく。スラスターを噴かせ倒れ込まないようバランスを取りながら無事着地に成功する。

 そのすぐ後にランチャーストライカーを装備したストライクもアークエンジェルより出撃し、オレと同じようにバーニアを使ってバランスを取りながら着地したが、こちらと違う点はストライクの足が砂地に対応できず埋もれてしまいそれによって膝をついてしまった事だ。

 

「…! ちぃ!!」

 

 その直後、アークエンジェルを襲撃した犯人である戦闘ヘリ三機がストライク目掛けてミサイルを発射した。

 オレはそのミサイルを左手に握っている突撃機銃で迎撃。ミサイルを全て撃ち落とし、そのまま戦闘ヘリにも銃撃を仕掛けるが即座に戦闘ヘリ達は砂丘へと後退し身を隠す事でそれを避ける。

 

「キラ、出来れば今の内にOSを砂地に対応させておけ!」

 

 ストライクに通信を入れ、キラにそう指示を出す。

 

『今ですか!?』

「ああ、敵は恐らくあれだけじゃない。今のストライクだと格好の餌食になるだけ…と、そう言ってたら早速来やがった!」

 

 砂丘の向こう側からやって来たのは450mm2連装レールガン、400mm13連装ミサイルポッドを標準装備し、赤いモノアイを光らせながら砂漠を滑るように疾走する四足歩行の獣型MSバクゥ五機だ。

 すぐにバクゥを迎撃しようとするがそれを見越していたらしく戦闘ヘリは全機ジン目掛けてミサイルを撃ち込んできた。

 

「…!」

 

 後方に退避する事でそれを避ける。砂地に当たったミサイルは派手な爆発を起こし、こちらの視界が舞い上がった砂で塞がれる。全く面倒な事をしてくれる…!

 上空に上がって突撃機銃で戦闘ヘリを狙って弾をばらまく。三機の内二機はそれぞれ左右に分かれる事で回避に成功したが残り一機は避けきる事ができずにプロペラ部分に被弾。そのまま砂地に落下し爆発を起こして消えた。

 残った戦闘ヘリは後方に退避しながらもこちらにミサイルを撃ち込むのは止めていない。オレは砂地に着地しながらすぐさま突撃機銃でミサイルを迎撃。ミサイルは全て上空で爆発し、オレは突撃機銃を右手に持ち替え腰部からナイフを取り出す。

 

「直感」

 

 念の為精神コマンドをかけておき即座にその場から移動を開始する。戦闘ヘリはミサイルが爆発した直後に移動を始めたがまだこちらの動きは爆発によって視界が遮られたせいなのか把握していないようだった。

 その隙を見逃さず二機の内左側のヘリにナイフを投降する。ナイフは見事ヘリの側面へ命中。爆発を起こし残った最後の一機はミサイルを撃ちながらこちらの追撃を逃れようと後退し始める。

 大量のミサイルをフルスピードで前進する事で置き去りにし、突撃機銃を上に構え戦闘ヘリに向けて引き金を引く。戦闘ヘリは左に逸れながら回避していくがこちらも戦闘ヘリが逸れる方向に体の向きを転換しながら銃撃を続いていく。

 最終的にヘリは銃弾を避けきれずにコックピットに被弾。爆発を起こして残骸も残らず消えていった。

 それを一瞬確認した後すぐに爆発で壊れず砂地に落下して埋もれかけているナイフを発見、回収してストライクのいる方向を見やる。

 

「やっぱりああなったか…」

 

 バクゥ五機はストライクを取り囲むように疾走しながらレールガンやミサイルを発射し翻弄している。ストライクは右肩の120mm対艦砲や頭部のイーゲルシュテルンでバクゥを攻撃するが、元々バクゥは砂漠用に開発された機種だ。砂に足を取られて思うように身動きの取れないストライクの攻撃など避けるのは至極簡単な話だった。

 その直後、アークエンジェルからスレッジハマーが数発発射されバクゥのいるエリアに着弾した。身動きができずに地に伏していたストライクの事はお構いなしの攻撃だったがバクゥには全く当たらず、周りに着弾して砂煙を巻き上げるだけに終わってしまった。ストライクはPS装甲のお蔭で目に見えるダメージは負っていないのがせめてもの救いといったところだ。…まあ、原作通りナタルの判断なんだろうが結果論でいえばミスだな、これは。

 バクゥ達がストライクへの攻撃を再開しようと動き出した為オレはストライクを援護する為突撃機銃を放ってバクゥに対し牽制を行う。丁度二機がこちらの銃撃に当たりそうになり咄嗟に回避行動をとる。その二機は他の機体にストライクの相手を任せたようで砂漠を走りながら攻撃を仕掛けてきた。

 

「そのままこちらに引きつけられていろ。そうすればあっちの負担が減る」

 

 その攻撃をスラスターを噴かせて回避行動を取りながら腰に装備していた重斬刀を抜く。

 オレのジンは「荒廃した世界」で砂漠での戦闘経験があった為既に砂地に対応できるようOSを調整しているが、それでも所詮ジンは砂漠での戦闘を想定した機種ではない。あちらは元よりこの環境下で戦えるよう設計されておりこの戦場では絶対的有利になれるスペックを持っている。この状況でバクゥに射撃戦を挑むのは例え撃墜できても無駄に弾を消費してしまうだけだ。

 敵の砲撃をスラスターを使って急速に移動する事で避けながらタイミングを見計らう。無闇に突っ込んでも集中砲火を喰らうだけだ。だから攻撃するなら確実に仕留められる時でなければならない。

 その瞬間は何回か敵の砲撃を避け続けてから訪れた。後方に廻ったバクゥが飛び上がりながら突進を仕掛けてきた。砲撃が全く当たらないのに痺れを切らしたのか?だがこれはチャンスだ…!

 バクゥがギリギリまで近づいてくるのを待ち、あちらが前脚でジンに殴りかかってきた瞬間、その攻撃を機体の重心をバクゥが襲いかかってきた方向へ反らす事で回避。そのままの勢いで胴体へ重斬刀を突き刺してもう一方のバクゥがいる方角へ投げつける!

 バクゥは重斬刀から外れて飛んでいき、もう一方のバクゥのいる地点に衝突し爆発を起こして消え去った。

 そのもう一機は投げつけられたバクゥをすんでのところで回避しこちらにレールガンを放ってきた。

 後方に下がりながら、時に突撃機銃で迎撃しながら回避していくが、唐突に爆発音がストライクのいる方向から聞こえてきた。

 咄嗟に確認してみるとそこにはさっきまで砂地に対応できずにいたストライクが縦横無尽に動きまわりバクゥが発射したミサイル群を右肩の120mm対艦砲で撃ち落としている光景が映し出された。

 あれはキラの奴、OSを砂地に対応させるのに成功したか。さっきの爆発音はバクゥの数が一機減っているので原作と同じくバクゥをアグニで撃墜したんだろうな。

 その時だ。アークエンジェルへ遠くから砲撃が飛んでいくのを視認したのは。

 

「レセップスの砲撃か…!」

 

 すぐに迎撃を行いたいところだが、それを未だにこちらに向けての砲撃を続けるバクゥのせいでそれができそうにない。ちぃ、さっさと片付けなければ…!!

 そうしている間にも刻一刻と砲撃はアークエンジェルに迫っている。アークエンジェルの方は砂漠から浮き上がり砲撃を回避しようとするが、回避するよりも砲撃が当たる方が早いだろう。

 これは駄目かと思われたその時、ストライクがバクゥを砲撃がやってくる方角に弾き飛ばし、そのバクゥはやってきた砲撃の一部に着弾。派手に爆発を起こして消滅した。続けて残った砲撃を320mm超高インパルス砲「アグニ」を数回発射。アグニから放たれた数発のビームによって砲撃は見事消し飛ばされ事なきを得たのだった。

 …あの動き、アークエンジェルの危機が鍵となって“SEED”が覚醒したか。仲間のピンチに秘められた力を覚醒させる辺りまさに主人公といったところか………。

   

    だが、その活躍ぶりはいつまでも続かなかった。

 

『ストライクのパワー、危険域に入ります!』

 

 ミリアリアの通信によりストライクのエネルギーが残り少ない事が告げられる。当然か、アグニはコロニーの外壁に巨大な穴を開けられる程の威力を誇る反面、エネルギーの消費量が並大抵ではない。恐らくOSを調整し終わる前にも何回か撃ったのだろう。ならエネルギー不足になってもおかしくはない。

 

「くっ、しつこいな!」

 

 こちらに砲撃してくるバクゥは未だに健在だ。味方のやられ方を見て警戒しているのだろう。攻撃はしても常にこちらと一定の距離を保って近づいてこず、接近戦を仕掛けようにもすぐに後退して攻め倦ねている状態だ。キラの方もアグニが思うように使えずエネルギーも残り少ない状況でバクゥの相手をしている。本来ならここいらでレジスタンスがやってきて窮地を脱せられる筈だがまだ来ないのか!

 そう考えていたその時、突然ミサイルがバクゥに直撃し一瞬動きが鈍った。今だ…!

 突撃機銃でバクゥの足を狙って銃撃を行う。弾はバクゥの右側の前足に当たり軽い爆発が起こる。その間にバクゥ目掛けて急速に接近し避ける暇も与えずに重斬刀で真っ二つに斬り伏せた。バクゥは爆散し、オレはすぐに最後のバクゥの元へ向かう。

 最後の一機は何台ものジープに乗るレジスタンスが放つミサイルや車に積み込まれたバルカン砲での攻撃に翻弄され思うように動けないでいた。バクゥは前足でジープを踏み潰そうとするが運転手の腕がいいのか全て悉く空振っていた。

 そこにストライクがバクゥを狙ってアグニを構える。が、ストライクに狙われているのを悟ったバクゥはすぐにその場から後退を始める。バクゥはアグニの狙いから外れ窮地を脱したかと思っただろうが…

 

「だが、オレの存在を失念していたのが災いしたな」

 

 すぐさまスラスターを噴かせて上空に上り突撃機銃をバクゥに放つ。銃弾は後退していたバクゥの周りに着弾しその足を止める事に成功する。その瞬間、ストライクはすぐにバクゥに狙いを定め直してアグニの引き金を引いた。その銃口から発射されたビームはバクゥの胴体を貫き、大きな爆発を起こして最後のバクゥは四散した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…終わったな」

 

 敵を全て撃墜し、この戦闘は終了した。無事着地しストライクの方を見やる。ストライクはアグニを撃った事でエネルギーが完全に無くなりトリコロールの色鮮やかな装甲が全身灰色に代わっていた。そうだな、労いの言葉でもかけておこうか。あいつにとっては久しぶりの戦闘で、その上初の地上での戦闘だった訳だしな。

 

「お疲れさん、大丈夫か?」

『…はい、何とか』

 

 モニターに映るキラの様子はかなり疲れているように思えた。もっと何か気の利いた事を言うべきかと考えているとキラはオレにこう訪ねてきた。

 

『あの…彼らは一体何者なんですか?』

「ん、何者かって?恐らくここいらに陣取ってるレジスタンスだろうな」

『レジスタンス…?』

「ああ。この辺りを占領してるザフトに反抗している原住民って所だろう。…まあザフトと敵対しているがこちらの味方とは限らないし油断はしないようにな」

『はい…』

 

 レジスタンスは未だこの場から離れずストライクとジンの周りに居座っていた。そういえばレジスタンスにカガリ・ユラ・アスハとお目付役のキサカも参加してるんだったか。さてどこに…………あっ、いた。

 モニターを下に向けジープに乗っている人間を見てみるとストライクのすぐ近くの一台にこの辺りの人間ではないと一目で分かる金髪の勝ち気そうな目の女の子が乗っていた。あれがカガリだろう。カガリはストライクをじっと見ており、何だか嫌な物を見ている感じの目だなと思った。まああいつは本当はオーブのお姫様な訳だし中立国である筈のオーブが地球連合軍に協力した事で造られたストライクを見ればそういう目にもなるのかね…。

 

 空はもう日の出の時間だ。面倒だなとこの後の事を考えながら地平線から現れる太陽を眺めていたのであった。

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