ザフトとの戦闘が終わりもう日が完全に昇って朝となった現在、戦闘に乱入してきたレジスタンスとの会談をする事となった。
アークエンジェルの面々はレジスタンスを警戒しており相手側に見えないよう武装した乗組員を待機させている。アークエンジェル側の代表はマリューとムウであり今丁度話を始めたところである。
「しかし、いつまでコックピットに居ればいいのやら…」
オレとキラは戦闘が終わってからずっとコックピットの中にいる。何かあった時の為にコックピットで待機していてほしいなどと言われてそれを実行していた訳だがはっきり言って暇だ。体はあまり動かせないし漫画やテレビの類を持ち込んでいる訳でもないからだ。やることといえばモニターで外の様子を眺めるくらいだがそう見応えのあるものはないからな…。
そう考えている内に会談は始まったようだ。それぞれ自分達の紹介を始め、そこから駆け引きに発展したが完全にサイーブ・アシュマンというバンダナを付けた恰幅のいいレジスタンス“明けの砂漠”のリーダーの男にペースを握られてしまったようだ。会話を聞く限り配置した乗組員の事もバレているようでアークエンジェルの情報もかなり持っているようだ。まあアークエンジェルの情報はカガリからのものだろう。さすがに極秘計画だったヘリオポリスの件が普通に地球の一レジスタンスにまで知れ渡っていては情報だだ漏れにも程があるし。
結局オレとキラは会談の中で機体から降りてくる事が決まった。
『悠凪さん、ヤマト君、降りてきてちょうだい』
通信でマリューに言われたのでハッチを開け、乗降用ケーブルを使って地上へと降りていく。外はコックピット内と違って空調などない為、炎天下の中空気は乾いていてはっきり言うと暑い。砂漠はこういうものだとはわかってはいるがやはり長時間はいたくない場所だな…。まあ、原作と同じように進むだろうからしばらくはこの気候の中過ごさなきゃいけないんだが……。
明けの砂漠の面々を見てみると何やら驚いているようだ。何を驚いているのか気になったので、その目線の先を見てみるとそこにいたのは地上に降りた後ヘルメットを外したキラだった。
「まだガキじゃねぇか」
「何であんな子供をMSに乗せてるんだ?まさかコーディネイターじゃ…」
「いやいや、地球軍に入るコーディネイターなんて聞いた事ねぇよ」
「しかし、あのもう一人の方は何でジンに乗ってるんだ?あいつがあの地球軍のMSに乗ればいいんじゃないか?」
「傭兵かそこいらだろ。あの艦傭兵や子供を使う辺りよっぽど人手不足なのかねぇ…」
…明けの砂漠の面々がそれぞれ何か口々に言っているのでよく耳を澄まして聞いてみると何かかなりの言われようだった……。まあ、さすがに子供が乗ってるなどとは誰も思わないか…。というかオレもなんか言われてるし……。
そんな中一人明らかに他の面々とは比べものにならない程の驚愕の表情でキラを見つめている者がいた。カガリ・ユラ・アスハだ。彼女は拳を握りしめながらその目線を鋭くし、キラの元へと向かっていく。
「お前…」
「えっ…?」
恐らくヘリオポリスで別れたキラがストライクに乗っている事に驚いているんだろう。原作でも確かそんな主旨の事を言っていた筈だ。
ムウはカガリの様子に何か不穏なものを感じたのか腰の銃を抜こうとする。しかしそれを阻むように浅黒い肌の偉丈夫が立ち塞がる。あれは確かキサカか、オーブの軍人らしいがお姫様の付き添いとは大変だな、ホントに。
「お前が何故あんなものに乗っている!!」
キラの前に立ったカガリはそう言い放ってキラに殴りかかった。キラはすんでの所でそれを受け止める。近くでカガリの顔を見た事でヘリオポリスでの事を思いだしたようで、とても驚いているようだった。
「君、あの時モルゲンレーテにいた…!」
「放せ、このバカ!!!」
キラはカガリに声を掛けるが、当のカガリはそれを無視して掴まれた腕を無理矢理動かして裏拳でキラを殴りつけた。それを見て皆呆然としていたが…
「カガリ、何をしている!!」
サイーブが声を荒げてカガリを叱りつけた。そりゃ会談の場で相手側の人間を殴りつけるなんてあってはならない事だしな…。
「ちょっと待ってくれサイーブ、これは…!」
「お前は今がどういう時かわかっているのか!」
…絶賛カガリがお叱りを受けています。そういや原作だとあの後どうしたんだろうなこの出来事? SEEDってそこいら辺を省いてるから全然わかんないだよなホントに。
「大丈夫かキラ?」
キラの元に近寄り声を掛けておく。…止めれば良かっただろうか、今の出来事は? しかし、奴の件程止める必要性は全くなかったからな…。
「大丈夫です。大した怪我にもなってませんし」
そう言うキラの顔を見てみるが確かに殴られた箇所には痣などは特にない。やせ我慢とかではなく本当に大丈夫みたいだ。
「それにしてもいきなり殴るってお前何かあの娘と因縁でもあるのか?お前の方もあの娘の事知ってるみたいだが」
もう答えは知ってるんだが一応聞いておく事にする。原作と隔離した状況になっている可能性もあるし、まあ確認作業みたいなものだ。
「ヘリオポリスで会ったんです。ザフトの襲撃に一緒に巻き込まれて、彼女は何とかシェルターに逃がす事はできたんですけど……でも何でレジスタンスに…」
「成る程な。まあ後で聞いてみればいいんじゃないか?人に聞かせてもいいものなら普通に話してくれるだろうよ」
こう言っといてなんだが理由が理由だけに黙りを決め込むだろうが。
そうしてキラと雑談をしていたのだが、こちらに近付いてくる人物がいた為そちらの方を見てみるとやってきたのはキサカだった。なんだ?と思ったが、キサカはこちらの前まで来るとキラに向かっていきなり頭を下げながらこう言ってきた。
「すまない、うちの者が迷惑を掛けた。後で本人に謝らせに行くのでできればそれで勘弁してやってほしい。身勝手な頼みだとはわかっているが…」
キサカはカガリの代わりに謝罪を述べ、キラはいきなり頭を下げられて一瞬呆然としていたがすぐに慌てながら
「…いえ、別にそこまで気にしていませんから…あの、顔を上げてくれませんか?」
とキサカに告げる光景がオレの前で展開された。因みにキラを殴った当の本人であるカガリは未だサイーブと揉めている最中だ。
「わかった。頼みを聞き入れてくれて感謝する」
「なあ、あんたちょっと聞きたい事があるんだが」
「…何だ?」
「いや、あの娘いつもあんなに喧嘩っ早いのかなと思ってな。事と次第によってはあんたらと共闘する事も有り得るから聞いときたくてな」
キサカはどう答えるかを考えているのか少し悩む素振りを見せた後こう言いだした。
「…そうだな。確かに彼女はとても我慢強いとは言えないな。すぐに先走るので毎回止めるのに苦労させられる」
「ああ…、やっぱり」
…ああ、やっぱりあんた気苦労が絶えないんだなぁ………。となると勝手にスカイグラスパーを使ったりとかもやらかすんだろうな…、カガリみたいなタイプの奴は色々と面倒だからな。これからどう対応していくかを考えると本当に憂鬱になるばかりだ。
その後、話は纏まりアークエンジェルは明けの砂漠と共闘する事が決定し、オレ達は明けの砂漠のアジトに案内される事となった。いや、正確には前線基地か。
前線基地の場所は谷の底の洞窟などを使用しており、その谷の道幅はアークエンジェルの横幅ではかなりギリギリのものだったと言っておこう。
その後、オレは様々な作業の手伝いに追われ気付けばもう夜になっていた。もう夕食時も過ぎアークエンジェルや明けの砂漠の面々は未だに作業に没頭する者もいれば焚き火の傍で談笑する者もいた。
それに対しオレは現在人気のない崖の上の岩場にいる。念の為近くにいる者がいないか確認したが誰もいなかったので大丈夫だと思われる。この後も忙しくなるしさっさとやってしまおう。
懐から小型の通信機を取り出し、通話の為電波を特定のものに合わせる。答えるのは約三週間ぶりとなるあいつの声だ。
『久々だな。大体三週間ぶりか』
「ああ、元気にしてたかハロ」
『元気も何もワタシに体調の変化など元より無いのは知っているだろう。それよりも現在はどこにいるのだ?』
「アフリカ共同体に落ちて明けの砂漠と共闘状態に入ったところだ。もう少しすればバルトフェルド隊がタッシルを焼き払ってるって報告がくるだろうよ」
『そうか。それで特に問題は起きなかったのか?』
「問題………まあフレイ・アルスターの企みを阻止したら一時期キラが精神的に不安定になって戦えなくなった事とクルーゼ隊に目つけられたっぽい事かな…」
『…洸、前々から思っていたがお前は色々と厄介事に恵まれる体質のようだな……』
「やめてくれ…、そんな巻き込まれ型の主人公みたいな体質お断りだ」
そんな体質誰がなりたいものか。幸運に恵まれるのは良いがそんなもの損しかしないじゃないか………。
『自覚していないようだがまあいいだろう。それでは本題に入ろうか』
「…何が何でも認めないからな。それで、機体の製作具合は順調か?」
『ああ、60%は仕上がった。戦艦の方はまだまだだがな』
「まあ戦艦は最初から時間がかかるのは承知の上だからいいが、機体の方はもうそこまで進んだか。てか早過ぎないか?」
せいぜい基地に帰還する頃には終わっているだろうと思ってたがこれだとそれよりも早く終わりそうなんですが…!?
『ワタシを舐めてもらっては困るな。これ位の事で手こずるような腕ではないよ』
「……早いに越した事はないし、ちゃんと造ってもらえば問題ないがあんまり無理すんなよ」
『全く、体調の変化などないと先程言ったと思うが?』
「……お前なぁ、こういう時はお世辞でもいいからわかったって言っとけよ………む?」
そうハロに対して話していると何やら崖の下が随分と騒がしくなってきた。これはまさか………
『どうやらバルトフェルド隊が事を起こしたようだな』
「そのようだ。じゃあまた折を見て連絡する」
『了解。ではな』
「ああ」
そうして連絡を切り崖の下へと急いで戻る。しかしハロの奴全く変化ないな。いや、たった三週間で何かが変わる訳がないが。
「まあ、あいつらしいちゃあいつらしいか」
しかし、出来れば出撃したいところだが、今回は目的地まで遠いから難しいか?
「オレは留守番か…」
「しゃーないだろ?ジンはストライクと違って全く飛行できないんだから」
現在、オレは格納庫でストライクの発進準備を手伝っている最中だ。あれから原作と同じような流れでタッシルの町が焼かれ、住民は事前の勧告で避難ができたので無事だったものの食糧、弾薬、家屋は全て焼失しそれで感情を押さえきれなかった一部の明けの砂漠の面々がバルトフェルド達を追って飛び出してしまったのだ。
見捨てる訳にもいかず、結局救援に向かう事になりムウがタッシルの救援で手一杯なので、短時間ながら単体での飛行が可能なストライクを駆るキラが行く事になった。
「それはそうなんだけどな…」
隣で同じく発進準備に勤しんでいるマードックの言葉に相槌をうちながらも、何か出撃する方法がないかと考える。
アンドリュー・バルトフェルド。指揮官としても、一パイロットとしても優秀な男だ。できれば戦っておきたいのだが、ジンだと飛行できるストライクとは現場に到着できるスピードがかなり違う。例え出撃許可が下りたとしても到着する頃には戦闘は終わっているだろう。それでは意味がない。オレはバルトフェルドがどこまでのものか。そしてバルトフェルドに決戦の際にキラではなくオレを戦う標的として見てもらわねば困るのだから…
何か良い案はないかと作業をしながら考えていると、ふと格納庫のある区画が目にとまった。そうだ、これなら…!
「…なあ、マードック」
「どうした?」
「…スカイグラスパーってまだ一機余ってたよな」
「って、お前さんまさかあれに乗って出るつもりか!?」
「そうだが、何か問題があるか?」
そう。スカイグラスパーは第8艦隊からの補給物資の一つであるがその機数は二機。一機目はムウが使っているがもう一機は乗り手がいない為予備機として格納庫で眠っていたのだ。こいつならストライクと同じスピードで現場に辿り着く事ができる。
「いや、そりゃ別に問題は特にないけどよ。その前にお前MAに乗れるのか?」
マードックはオレの発言に驚きながらも、整備兵として聞いておくべき事であろう疑問を口にした。ああ確かに今までMSに乗っているところしか見た事がないのでオレがMAに乗るなんて夢にも思わなかったのだろう。だが…
「大丈夫だ。MSに乗る前は戦闘機にも乗ってた時がある。何も支障はないよ」
「そうは言ってもな……。とにかく艦長達の指示を聞いておくべきだぜ?」
「わかってるよ。ちょっと連絡してくるわ」
そうして格納庫にある通信機にて出撃許可をもらう為ブリッジに連絡をとる。
「ちょっといいか?」
『悠凪さん、どうしたのかしら?』
通信に出たのはマリューだ。あまり時間も掛けていられない為艦長が答えてくれるのは手っ取り早い。早々に要件を伝えるとしよう。
「予備のスカイグラスパーで出撃させてほしい。言っておくがMAでの戦闘経験はあるから問題はない」
嘘は言っていない。もっとも本職のムウに比べたら微々たるものでしかないし、その上何回もお釈迦にしたという内容ではあるが。
しかし、今回は今後の為にもどうしても出ておく必要がある。何が何でも出撃許可をもらわなくてはならない。
『しかし、そうは言ってもそう簡単に許可をだす訳には…』
マリューは判断を決めかねているようでなかなか首を縦には振ってくれない。チィ、やっぱりこうなるか。自分でもかなりごり押しの方法だとはわかってはいるがここで引く訳にもいかないんだよ。
「救援はできる限り多い事に越した事はないでしょう。それに決してスカイグラスパーを撃墜させるような事にはさせませんよ」
それからマリューは大分迷っている様子だったが最終的に今の状況だと出撃させた方がいいと判断してくれた。
『………わかりました。それでは準備が済み次第すぐに発進してください』
「了解した」
渋々といった感じではあったものの許可をもらう事に成功した。すぐに通信を切り、マードックに許可がとれた事を伝えに戻る。
「許可はとったぞ。パイロットスーツに着替えてくるから発進準備頼む。ストライカーパックはランチャーで」
「…わかったよ。オイ、お前ら聞いたな!グラスパーの準備急げ!!パックはランチャーだ!!!」
それから控え室に赴きパイロットスーツに着替え終え戻ってきた時には既に発進準備が粗方完了しており、この艦の整備兵の仕事の早さに改めて感服したのだった。
「見えてきたな」
スカイグラスパーを駆りキラと共にアークエンジェルから飛び立ってから十数分後、目についたのが二機のバクゥに対して攻撃を仕掛けるも、目立ったダメージを与える事もできずに踏み潰され、蹴飛ばされ、無惨にも散っていくジープに乗った明けの砂漠の面々の姿だった。
…ん?一機足りないぞ? ああ、そういえば確か明けの砂漠の攻撃で一時的に動かなくなったバクゥがいたんだったな。遠目で見てみるとかなり遠くの方にバクゥらしきシルエットがあるのを発見する。だが、今回の本命はあれが動くようになってから登場するのだ。今は放置しておいた方がいいな。
『…何だってこんな……!!』
キラはこの光景を見て何か思うところがあったのかそう叫んでいた。今のキラの言葉はバルトフェルドの部隊に対して言ったんだろうか?はたまたこの戦いを仕掛けた明けの砂漠の連中に言っているのだろうか? まあ、オレがそれを知ったところで何がどうなる訳でもないし、それに今はこの状況をどうにかするのが優先事項だ。さっさと始めよう。
「キラ、仕掛けるぞ。このままだとあいつらは全滅する」
『はい…!』
キラは返事と共にビームライフルをバクゥへと向けその引き金を引いた。だが、発射されたビームはバクゥより僅かに逸れた方向に向かっていった。
『熱対流か!なら…』
バクゥはビームを撃ってきたストライクに対してミサイルを放ってくるが、それをキラはイーゲルシュテルンで撃ち落としながら再度バクゥに向けビームライフルを撃った。そこから撃ち出されたビームは今度は逸れる事はなく吸い込まれるように見事バクゥの背中にあるミサイルポッドに命中した。どうやら今の台詞を聞く限りこの短時間でビームがこの砂漠地帯でも対応できるようOSを組み替えたらしい。
ミサイルポッドが爆発した衝撃によりバクゥに生じた隙を見逃さずオレは機体をバクゥの方へ向け、中口径キャノン砲と砲塔式大型キャノン砲を使って一気に畳み掛ける。その砲撃をバクゥは咄嗟に避け何とか撃墜は免れたものの左前脚に一部被弾したらしく僅かに損傷が見られた。
ビー!ビー!ビー!
レーダーに反応が見られ即座に横に回避運動をとると先程いた場所をミサイル群が通り過ぎていった。ストライクは先程攻撃したバクゥの相手をしておりこちらを援護する余裕はないようだ。
「本命が来る前にさっさと仕留めておきたいところだが…な!」
すぐに後方に旋回し20mmバルカン砲をバクゥに向け発射。が、それをバクゥは横に跳びながら回避し、もう一度ミサイルをこちらに放つ。それをバルカン砲で迎撃しつつオレはバクゥの進行方向を狙って対艦ミサイルを発射した。
ミサイルはバクゥの少し前辺りに着弾し、その爆発の衝撃で辺りに砂が撒き散らされる。あちらが撒き散らした砂で視界が悪くなっている内にすかさず中口径キャノン砲を連射してバクゥの動きをさらに牽制していく。こちらの攻撃にバクゥは全く動けない様子だ。ここで一気に畳み掛けようとしたその時
「…!? 来やがった!!」
遠方よりこちらに迫るミサイル群の存在をレーダーが知らせる。咄嗟に操縦桿を右に切り機体を逸らす事で何とかミサイルを避ける事に成功した。避けた瞬間に反撃の為にトリガーを引きミサイルを放ってきた存在に向けてアグニを発射する。が、それを敵は難なく避け先程のバクゥと共に再度ミサイルを大量に発射してきた。それをこちらがバルカン砲で迎撃しながら避け続けている間に二機は猛スピードで残り一機の相手をしているストライクの方へと向かっていった。
…今のはやはりバルトフェルドの駆るバクゥだな。しかしやっと来たかと思ったらこっちよりもストライクの方を優先するとは………
「その選択、間違っていた事を教えてやる」
バルトフェルドの駆る機体を含めたバクゥ三機はストライクを取り囲みミサイルを放って、時に突撃を仕掛けたりと完全にストライクを翻弄していた。キラもビームライフルで迎撃しているが全く当たる気配はなく、接近戦を仕掛けようにも常に一定の距離をとられ、あちらが突撃を仕掛けてきてもすぐにその場から離脱する為攻撃する暇もないと為す術がない状態だ。
すぐさまその場に急ぎ、全砲門を開いてからストライクへ通信回線を開く。
「キラ、今すぐ上空に跳べ!!」
『!? …はい!』
その指示に最初は驚いた様子だったがそれも一瞬で、キラはすぐにオレの言った通りにスラスターを噴かせ上空へとストライクを跳ばしていた。
ストライクが跳ぶモーションに入った時点でオレは今スカイグラスパーに装備されている全ての武装を使っての一斉射撃をバクゥ達がいる場に放った。スカイグラスパーから放たれるバルカンやミサイル、アグニのビームはバクゥ達へ降り注いでいき三機の内二機には残念ながら避けられたが最後の一機は逃げ遅れ諸に集中砲火の餌食となって爆散していった。
ストライクはそこから急降下しエールストライカーからビームサーベルを引き抜いて二機の内ミサイルポッドがない機体に切りかかる。そのバクゥは掠りはしたもののビームサーベルを避ける事には成功するが、切られた衝撃で仰向けに転倒してしまう。
「させるか!」
残り一機。恐らくバルトフェルド機が救援に向かおうとするがそうはさせまいと中口径キャノン砲で牽制を仕掛ける。バルトフェルド機はいとも簡単に攻撃を避ける。そこまではいい。いや、良くはないが、その後なんとこちらに飛びかかってきた。
「なっ!?」
急の事に驚いたが何とかギリギリでバルトフェルド機の突進を避ける。バルトフェルド機はそのまま着地した瞬間にこちらに振り向きミサイルを発射してきた。こちらも避けようとしながらも咄嗟にアグニを発射する。そのアグニのビームは見事相手のミサイルポッドに直撃したが、こちらも避けきれずミサイルが左翼に当たってしまった。
ドガァァァン!!!
スカイグラスパーの左翼と敵のミサイルポッドの爆発。そしてキラが敵機を撃墜したのはほぼ同時だった。オレは必死に機体制御を行い左翼が爆発した影響で燃え上がる中、砂漠に何とか突っ込む事なく着地に成功した。
もしや攻撃してくるのではと思いバルトフェルド機の方を見るとあちらはこっちに何もする事なく早急に撤退を開始した。
こちらはオレが戦闘不能になったが、未だに五体満足のストライクがいるのに対して、あっちは残り一機の上に武装が破壊されている。なら撤退して当然か。
『悠凪さん、大丈夫ですか!?』
…またやっちまったな。ああ、これは後でマードックとかに色々と言われるだろうな……。
後の事を考えて思わず溜め息をついていると、キラが通信でこちらの安否の確認をしてくる。
「心配ない。体の方は傷一つないよ。…機体の方はアークエンジェルまで運んでもらわなきゃならないが」
『ああ、はい。それは大丈夫です。まだストライクのバッテリーは十分残ってますから。それよりも…』
「あいつらな…」
ハッチを開け、外に身を乗り出しながら遠くを凝視する。見つめる先には明けの砂漠の今回運良く生き残った面々が集まっているのがいた。
『あの人達の事…どうします?』
「今回のような暴走をまたされても困るし…一応釘差しとくか。利くかどうかは知らないが」
『そう…ですね』
ん? 何だかキラの様子が変なんだが。奴らの行動に口出しするのにあまり気乗りじゃないようだな。気になるし理由を聞いておくか。
「どうした。あまり気乗りしてないようだが?」
『いえ、そういうんじゃないんです。…ただ』
「ただ?」
『…今回あの人達がやった事は擁護できないけど、町を壊されて怒ったり、悲しんだりする気持ちは何となくわかる気がして…』
…そういや学生組は今まで住んでいたヘリオポリスが戦闘の結果無くなってしまったんだったな。それが今回タッシルの町を焼かれたあいつらとだぶって見えたってところか。ただ原作ではそんな事思う事なくあいつらに口出ししてたんだかな。キラは。これはオレが色々としゃしゃり出た結果か?
まあ、原作とこっちとキラを取り巻く環境がかなり違ってきてるからこういう事になったのかねぇ…。これが後々吉と出てくれる事を願おう。
「確かにオレも故郷を壊されて怒る気持ちはわからなくはないがな。だが今回はそれを考慮したとしても、結局はただでさえ少ない人員を無駄に使い潰しただけだ。そこいらへんを自覚してもらわないとこっちにも被害が飛び火するやもしれんしな」
キラもそこはわかっているようでモニター越しに頷いて答えていた。
正直言うとあちらがまともに聞くかは微妙なところだが、何かしら言わなきゃいけないだろうからな…。
スカイグラスパーを出て、砂漠を歩き始める。目指すは明けの砂漠の連中の場所までだ。