「転生特典をもらっても全て得になるとは限らない」   作:野鳥

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第18話

 第18話

 

 戦場の舞台は砂漠。銃弾やミサイルが飛び交う中ここで、オレと敵MSの戦闘が行われていた。

 オレは敵の後ろに回り込み突撃機銃を発射する。が、相手はそれを当たる寸前で横に飛び退いて回避し、即座にミサイルポッドから大量のミサイルをこちらに向け放ってきた。

 

「ちぃ!!」

 

 うまく隙を突いたと思ったが見通しが甘かったようだ。オレは突撃機銃でミサイルを撃ち落としながら敵と距離をとる為後方に下がろうとする。

 だが、相手はこちらが後方に下がりきる前に高速走行の態勢になりミサイルを迎撃した後に起きた硝煙を抜け急速接近してきた。

 この行動は予測できていなかった為突撃機銃を接近してくる敵に向けるのに若干のタイムラグが生じ、放った銃弾は最小限の動きで避けられてしまう。敵はそのまま突撃を敢行し、オレはそいつの体当たりをモロに食らってしまった。

 

「ぐうぅ!」

 

 敵は間髪入れずにミサイルを発射。最大スピードで回避するが完全に避けきる事は叶わず左腕を持っていかれてしまう。

 このままで終わる訳にはいかない。必ず墜としてみせる!砂地へ着地した瞬間、突撃機銃を放り投げ腰部からナイフを引き抜く。オレは相手が反応してくる前に倒すべく、避けた時のスピードのまま敵へと突っ込んだ。

 あちらも同じ事を考えていたようでその四本の脚で地を蹴りながらこちらへともう一度突進してくる。

 接近しながらどんどんモニター上で大きくなっていく敵に確実に一撃を繰り出せるようタイミングを見計らう。そして敵が目と鼻の先にまでなった瞬間ナイフを勢いよく突き出す!

 

「!」

 

 だが、その攻撃は敵の息の根を止めるには至らなかった。攻撃は確かに当たったが、その当たった箇所は敵の翼の部分だった。

 そこから敵はすぐさま右前脚にてこちらを蹴りつけ、その反動で機体の方向を転換。オレには反撃する暇もなく、敵にミサイルを撃ち込まれ目の前が真っ暗になったところでその戦闘は終わりを迎えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ…、負けたか」

 

 シミュレーションを終了させた瞬間、集中力が切れたようでどっとと疲れが湧いてきた。

 あの戦闘の後オレはアークエンジェルに戻るとすぐさまスカイグラスパーから戦闘データを引き抜き、ジンに移してこの数日間バルトフェルドが乗っていたであろうバクゥとの模擬戦に明け暮れていた。バルトフェルドと戦えるチャンスはあと一度きり。もう数日経てば起きるであろうバルトフェルド隊との決戦の時のみだ。できる限り勝率を上げる為こうしてシミュレーションをやっている訳だが…

 

「大体勝率が半分あるかないかって……」

 

 いや、バルトフェルドはザフトのエースパイロットの一人だ。勝率がこれだけあるというのは十分凄い事なのだろう。だが、そう遠くない未来に訪れる本番ではバルトフェルドはバクゥではなく、その上位機種であるラゴォに乗って現れるのだ。勝率が半分程では安心など全くできない。

 

「しっかし、これだとクルーゼと戦った時に奴を退けられたのは運が良かっただけか…?」

 

 そう思うとますます不安になってくるが今考えても仕方ない事だ。とにかくにできる限り修練を積んで本番での戦いに臨むしかないのだから。

 そんな時、コックピットのハッチがオレは何もしていないというのに勝手に開いていく。恐らく外で誰かが外側にある非常用のハッチ開閉機構を使ったんだろう。

 コックピットが完全に開き、目の前にいたのはマードックだった。

 

「マードック、一体どうしたんだ? 何か仕事か?」

「手伝ってもらいたい事があってな。飯の後でいいから手貸してくれるか」

 

 そう言われてコックピットに備わっているデジタル時計を見てみると、既に時刻は十二時をとうに過ぎていた。どうやらオレはシミュレーションに集中し過ぎて全く気付いていなかったらしい。

 

「もうそんな時間か。了承する前にまずその仕事ってのは一体何なんだ?」

「副長たちが仕入れてくる物資の仕分けだよ。予定だとあと一時間程度で帰ってくる筈だからそん時に作業に加わってくれ」

 

 ああ、朝からザフトの占領地になってる町まで行ってるんだったな確か。だが待てよ、それってキラとカガリも行ってたよな。となるとバルトフェルドとのあのイベントの日か。

 ……予定より確実に遅れてくるとは分かってはいるがこれはオレ以外に知りようがないし、OKしておいた方がいいか。

 

「わかった。それじゃあ飯食ってから手伝わせてもらうよ」

「おう、頼んだぜ。……それにしてもお前さんここ数日ずっとコックピットに入り浸ってるが、そんなに訓練ばっかする必要あるのか?」

 

 マードックは心底不思議で堪らないという風にオレに疑問を投げかけてきた。コックピットから出ながら、オレはそれに答える事にした。

 

「損をする事はないさ。オレはこれで飯を食ってるからな、腕を上げておけば生き残れる確率が上がるし、雇ってくれる雇用主が増えるかもしれないだろ。

 それに今回の相手はあの砂漠の虎だ。確実に生き残れるよう不安要素は消しておきたい」

 

 マードックはそれを渋い顔で聞いていた。どうやらオレの返答に納得できていないようだ。

 

「そういう事言いたいんじゃねぇんだよ。頼んでる側の俺が言う事じゃねぇんだろうけどよ、あんた出撃する時以外はいつも整備の手伝いとか、他には訓練しかしてねぇだろ?そんなんばっかで気が滅入らないのか。って思ってよ」

 

 なるほど。要は心配してくれてるって事か。確かにオレはこの艦に乗ってからマードックの言うような事しかやっていない。だがはっきり言ってもう他にやる事がないのだ。

 ここは軍艦なので娯楽の類はほとんど置いておらず、オレもここに来る際にそれらの物は全く持ってきていない。そう長い事いる訳ではないから持ってくる必要はないしな。なのでもうここでオレにとって娯楽と呼べるのはシミュレーターでの特訓ぐらいだ。マードックの気遣いは有り難いものの今の状況は多分ここを出るまで続くだろう。

 

「どうってことないさ。もう慣れっこだし問題はない」

「……はぁ。まああんた自身がそう言うならこれ以上言える事はないけどよ。…はあ、仕方ねぇか。じゃあこの後頼むぞ」

「おう」

 

 ……しかし、娯楽がMSのシミュレーターとか自分でいうのも何だが、どこかおかしい気はするがな。

 そんな事を思いながら、食堂に向かう為格納庫を跡にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オレは現在通路を歩いている。キラとカガリの件でこの後やる予定だった仕事は延期されたので部屋に戻って休息をとる事にしたからだ。まあまたシミュレーションをやろうとしたらマードックに止められ渋々といったところなんだが。

 ちなみにキラとカガリの件とは、パナディーヤに行っているメンバーから二人が町のどこを探しても見当たらないという内容だ。町ではブルーコスモスによるテロが発生したらしく、それに巻き込まれた可能性もある為現地のメンバーから報告を受けた際学生組のブリッジクルーはかなり動揺の色が見られたそうだ。

 まあ、恐らく無事ではあるだろう。原作通りなら今頃はバルトフェルド隊の拠点に招かれている筈だ。確かブルーコスモスに襲われた際バルトフェルドを助けたからそのお礼とかそんな感じだったかな?オレとしてもちゃんと戻ってきてほしいので、原作と同じようになっている事を祈るばかりだ。

 そんな事を思っていた時だ。丁度十字路のところに差し掛かり左へ曲がろうとすると…

 

「おわっ!」

「ととっ!…フラガ少佐、あんた一体何やってんだ?」

 

 走ってきたムウにぶつかりそうになり、両方共慌てて急制動をかけて何とか止まることに成功した。しかしこんなところで走るなんて余程急ぎの用でもあったんだろうか?

 

「いやー、悪い。ちょっと嬢ちゃんと走り込みをな…」

「ん?嬢ちゃん?」

 

 申し訳なさそうな様子のムウの話を聞いていると、ムウの後方から誰かが走ってくるのが見えた。その人物はジャージのような格好で、あまり運動が得意ではないのか大量の汗をかいて息も絶え絶えといった様子だった。ただ、徐々に近づいてくるにつれそれが誰だか分かると、オレは驚かずにはいられなかった。

 

「おい、どうした!そんなんじゃいつまでたってもパイロットにはなれないぞ!」

「……ま、まだ…いけます!」

「だったらここから外まで走って行け。それが終わったら一旦休憩だ!」

「…は、はい!」

「じゃあ悠凪、また後でな」

 

 そうして二人は去っていった。オレはあまりの衝撃にただただ立ち尽くすしかなかった。

 

 何故ならその人物とは………フレイ・アルスターだったからだ。

 

 どういう事だ。何故あいつがムウの指導を受けていた?いや、その動機については想像は容易いが、ムウはそもそもどういう経緯であいつに指導を施す事にしたのか………ああ、クソっ!完全にこんな原作と離れた状況になってるのはオレが原因だろうが色々と訳がわからない。とにかく、後でムウに聞いておくしかないか………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、キラとカガリが無事帰還しオレは早速フレイの事をキラに伝えた。キラは帰ってきても恐らくバルトフェルドとの会合が原因だろうが何か考え事をしている様子だったが、この事を聞くとどういう事なのかと詰め寄ってきた。……どうやらこいつも知らなかったらしい。

 で、二人でムウにこの件に関して問い質す事になり、今キラと共に食堂にムウを探しに来たのだが………

 

「いたな」

 

 夕食をのせたトレイを手に椅子に座るムウを発見した。オレ達はその場所へと歩いていき、ムウの真正面の椅子に座って話を切り出した。

 

「ようお前ら。どうしたんだ?」

「どうしたんだじゃありませんよ、フラガ少佐!どういう事なんです?フレイにパイロットの特訓をさせてるって!」

 

 キラがものすごい剣幕でムウに詰め寄る。その声に食堂にいた何人かが何事かとこちらを見ているが、今回は事が事なのでムウの返答だけに集中する事にした。この件は下手をすれば今後の行動の方針に関わってくるからな。

 キラの問いにムウは食べる手を止めこちらを見据えながら口を開いた。

 

「ああ、その事か。……そういや坊主は知らなかったな…」

「一体何があったんだ?そこんところ説明してもらいたいんだが」

「ああ、わかったわかった。説明するからちょっと落ち着けって」

 

 未だ興奮しているキラに対してムウは落ち着くよう促すとキラは軽く息を吐きながら椅子に座った。しかしその目は納得のいく説明を要求している風にオレには見えた。

 

「まず、そうだな………最初はこっちに降りてすぐだったか。嬢ちゃんが俺にパイロットの訓練を受けさせてくれ。って頼んできたんだよ」

「フレイが…!?」

「なる程な。…で、その時はどうしたんだ?」

「その時は断ったさ。パイロットは一朝一夕でなれるもんじゃないし、何だかその時の嬢ちゃんの様子は何か危なっかしい感じがしてな」

 

 やはりか…、奴の動機は復讐で確定だな。キラを使う作戦が駄目になったんでだったら自分でってところか…。まあ、今の奴にそれ以外の動機があるとは到底思えないんだがな。

 だが今の口振りだと断ってそれで終わりって感じなんだがまだ何かあるようだな。

 

「でも、その時に断ったんでしょう?だったらどうして…」

「…嬢ちゃんはその後も頼み込みに来たんだ。何度断っても諦めずにな。それで艦長達にも相談したんだがな、最終的に暴走されても困るから訓練は受けさせておくって事になった。

 途中で訓練に付いていけなくて諦めるならよし。もし訓練に耐えきって戦力として使えるようになったらそれはそれでよしってな」

「なる程な…。で、今のところどうなんだ?フレイ・アルスターの状況は」

 

 ムウにそう訪ねる際横のキラの様子を見てみると、何やら神妙な面もちで話を聞いていた。…今回の件が自分に責任があるとでも思ってるのか?だがそれは勘違いだ。明らかに今回の件、原因はやはりというか何というかオレが介入した事によるものだ。

 だが、オレにはこの歪みをどうにかする方法などない。だからこそ、奴が出撃する事になれば最悪の場合原作と完全に隔離した状況に陥る事も覚悟もしておかなければならないな。

 頭を掻きながらムウは困った様子でこちらの問いへ答えていく。オレはこの態度でこちらの望み通りの状況ではないのがわかってしまった。

 

「シミュレーションをやらせてみたんだが、最初の頃はすぐに撃墜されててとてもじゃないが出撃させれるレベルじゃなかったよ。ただそこからなんかこう……何かに憑かれてるみたいに特訓しだしてな、かなりの上達ぶりを見せてるよ」

「…じゃあ、もう出撃させても大丈夫なんですか?」

「いや、まだだ。嬢ちゃんの場合体力が圧倒的に足りてない。シミュレーターで腕が上がっても、実際に機体を扱う時にGに耐えられないようじゃ出撃なんてさせられないさ。少なくとも虎と戦う時に出す事はないだろうな」

 

 マズいな。伸びしろが無いのだったらどうにか止めさせられたんだろうがどんどん腕を上げてるとなると出るのも時間の問題か。ムウもそれで困り果ててるようだし。

 一方、その言葉を聞いてキラはほっとしたのか息を吐いていた。が、その後何か嫌な事でも思い出したかのようにその表情を曇らせた。

 ……虎と聞いてバルトフェルドの事を思い出したか。こいつバルトフェルド隊と戦う時ちゃんと戦えるのだろうか?まあ後でまた色々と相談に乗ってやるしかないかね。

 …いや、この様子ならバルトフェルドとはオレが戦うと言ってもいけそうだな。今の精神状態を理由に出せば大丈夫だろう。懸念材料もあるがとにかくやるしかない、な。

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