「転生特典をもらっても全て得になるとは限らない」   作:野鳥

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第20話 その1

「ああ。一号機にランチャー、二号機にソードだ。…何でって、換装するより俺が乗り換えた方が早いからだよ!」

 

 通信装置で格納庫にいる整備員達に指示をだしているムウの声がパイロット控え室内に響く中、急いでパイロットスーツへと着替えていく。

 

 しかし今の言葉を聞くにムウは本気でフレイ・アルスターを使う気はないようだ。まあ、まだ訓練を始めてそう月日が経っていない奴をパイロットに起用する訳にもいかないしな。原作だとカガリが二回程スカイグラスパーに乗っていたが、あいつは既に操縦時のGに耐えれるだけの基礎的な体力は身についてるようだし、ただでさえ戦力が足りてない状況というのもあったからだろうよ。

 

 そんな事を考えながら着替えが完了させたところに、それを見計らっていたのかムウがキラとオレに視線を向けて話しかけてくる。

 

「連中には悪いが、はっきり言ってレジスタンスの戦力は当てにならん」

「ええ」

 

 キラがそれに同意し、オレも頷きで返す。

 

「となると俺達が踏ん張らなきゃならない。特にMSに乗ってるお前達二人にはかなり負担が掛かるだろうが……もっとも、悠凪の操縦技術やあの夜の時のストライクの動きを見る限りだと心配ないと思うけどな」

「ああ、任せておけ。まあ大船に乗ったつもりでいろよ」

「大きくでたな。それじゃ頼むぜ、こっちも踏ん張るからよ」

 

 ムウの言葉に相づちをうちながら後ろへ振り返り、格納庫へ向かう為控え室を後にする。そして数分後、オレは格納庫に到着し一直線にジンの元へと走って行く。

 

「おい、兄ちゃん!装備はこれまでと同じでいいか?」

 

 その途中でマードックがオレを発見して大声でそう聞いてきた。バルトフェルド隊の主力はバクゥなので、やはりいつもも装備の方が機動力があっていいだろう。

 

「ああ。それで頼む!」

 

 マードックにそう返してすぐに移動を再開し、オレはジンの元へと辿り着いた。そのままコックピットに乗り込んで各機器を起動させ出撃の時を待つ。

 

 ………しかし、大船に乗ったつもりでいろ、か。ムウにああ言ったものの、実際はあまり自信はないな…。

 あの時のバルトフェルドとの戦闘。あれはジンではなくスカイグラスパーでのものだったとはいえ、中破レベルの損傷を受けた上に、今日までシミュレーションで奴の駆るバクゥと何度も戦ったがどれも勝って辛勝といったところだ。それに今回あちらはバクゥの上位機種「ラゴゥ」でくるとわかっているだけにどうしても不安が拭えない。

 

 ……全く、クルーゼと戦う前はこんな風に思う事はなかったってのに。これじゃオレもキラの事をどうこう言えないな。オレもまだまだ未熟って事か。

 

 そう考えているとジンがリニアカタパルトに運ばれ始めた。もの思いに耽っていた為気付かなかったが、もう外では戦闘が開始されているらしく、敵の攻撃が艦の装甲に着弾しているのか今も中に振動が伝わっている。

 ──どうやらうじうじしている暇はないらしい。まあ、丁度良かったかな。悩んでたってこの艦に乗っている時点で戦う事になるのは確定だったんだ。この数日間どうするか散々考えたが打開策は全く思い浮かばなかったんだ。それなのに今更どうこうできる訳でもない。……だったら余計な事は考えず当たって砕けろでいこうじゃないか!

 

 カタパルトに接続され前方のハッチが開かれる。発進可能を示すランプが点灯し、すぐさま発進シークエンスに移る。

 

「悠凪・グライフ。ジン、発進する!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アークエンジェルのカタパルトから飛び出したオレを待っていたのは上空から機銃を撃ってくる敵の戦闘ヘリだった。

 

「ちぃ!手洗い歓迎だなオイ!!」

 

 毒づきながらもすぐに機体を横に捻らせてぎりぎりで銃弾を避け、お返しにヘリに向けて突撃機銃を撃つ。

 側面から銃弾を浴びて戦闘ヘリが爆散するのを確認しながらオレは砂漠に降り立った。だがすぐにセンサーに敵にロックされていると表示され、即座にそこから飛び退く。

 するとそこに上から銃弾が撃ち込まれていき、そのままこちらまで連続して撃ってきた。

 それをスラスターの向きを調整し後方に移動する事で回避しモニターで攻撃の主を確認する。案の定その主は戦闘ヘリでありそれも二機もこちらに張り付いていた。

 確認した後すぐに突撃機銃を戦闘ヘリに向けに放つ。しかし、二機は左右別々に逸れる事でそれを避け、尚も機銃での攻撃を続けてくる。

 戦闘ヘリにあまり時間を掛けていられない為精神コマンドを使おうかと思ったその時、右から一筋のビームが二機の内一機を貫きそのままそのヘリは爆発した。

 それを見てかもう一機はビームが放たれた方向に向け移動し、そこへミサイルを放つ。ミサイルは何かに着弾し爆発するが爆発による煙の中からヘリへ銃弾が放たれ、それを当のヘリは回避しようとするが叶わず呆気なく爆散したのだった。

 煙が晴れそこにいたのはストライクだった。どうやら今の銃弾はイーゲルシュテルンでの攻撃だったようだ。

 

「悪い。助かった」

『いえ、大丈夫ですか?』

「ああ。……だがそれよりも、出てきたみたいだぜ」

 

 キラにそう告げながらモニターで戦場の状況を確認すると、こちらの前方。それもかなり遠くからアークエンジェルへと向かってきている二つの陸上戦艦から五機のバクゥが出撃しているのが見えた。

 ジープに乗った明けの砂漠の面々が手持ちの火器で迎撃しているが、やはりというかバクゥの装甲にダメージを与える事は出来ず、次々とこちらに向かって接近している。

 迎撃したいところだが艦が危険な場合はそうも言っていられない。念の為アークエンジェルの様子を見てみると、戦闘ヘリが艦の周りを飛び回り機銃やミサイルで攻撃し、また前方の陸上戦艦からの砲撃に晒されている姿が見えた。

 が、アークエンジェルはイーゲルシュテルンやヘルダート、バリアント等の兵装を使いこれを迎撃しており、またムウの駆るスカイグラスパーも戦闘ヘリを相手に空中戦を仕掛けており、正に一進一退の攻防と言える戦いを繰り広げていた。

 

 あれならオレ達が離れてもそう易々と墜とされはしないか。なら、バクゥの迎撃に行かせてもらおう。

 

「キラ。それぞれであいつ等を叩くぞ」

『はい!』

 

 キラの返事を聞いた瞬間オレはスラスターを噴かしバクゥのいる方へと突っ込んで行く。オレのジンとキラのストライクを視認したバクゥ達はレールガンやミサイルをこちらに向け撃ってくるが、それを最小限の動きで避けながら左手に突撃機銃を持ち敵に向け発射する。

 だがあちらも銃弾を滑るようにして回避し、五機の内三機がオレを取り囲むように陣形を組んだ。

 囲まれてすぐに腰に帯刀してあった重斬刀を握り、三機の内一機に突進を仕掛ける。そのバクゥはレールガンを撃ちながらオレと一定の距離を保とうとしているのかこちらが接近していく毎に後方に下がっていく。他の二機の援護射撃もあり中々距離を詰められず、敵の射撃を回避していく。

 

 面倒だな。これは時間を掛けてオレを潰す算段か?あまり時間を掛け過ぎるとキラとバルトフェルドの戦いが始まってしまうぞ。……なら

 

「直感」

 

 精神コマンドを使い、今度はスラスターの出力を先程よりも上げて再度バクゥへ突撃を仕掛ける。

 バクゥはレールガンをこちらに放つが、それを微妙に機体を動かしながら直進したまま回避。そして突撃機銃を腰にマウントしナイフを取り出してバクゥ目掛けて投げつける。

 ナイフは見事バクゥの頭部に突き刺さり、相手が怯んだ隙に敵に飛び乗って直接突撃機銃の銃口を胴体に付けながら引き金を引く!

 頭に突き刺さったナイフを回収しながら火花を散らしながら倒れる機体から離れてすぐにコックピット内にも衝撃がくる程の爆発を起こしてバクゥは跡形もなく消え去った。

 その時こちらへ向けて大量のミサイルが発射された。突撃機銃でそれ等を迎撃するが、幾つか銃弾をすり抜けこちらに迫ってきたためその場から離れる。

 砂漠へと着弾したミサイルは次々と爆発していく中、重斬刀を握りながらミサイルがやってきた方向に向け移動を開始する。

 すると、向かう先に一機のバクゥがいた。さっき撃墜した奴と同じような戦法をとるかと思ったが、そのバクゥは頭部の両側からビームサーベルを発生させてそこから飛び上がりすれ違いざまに切り捨てるつもりかこちらに突進してきた。

 だが、甘い!とオレは機体を沈み込ませ、バクゥが目と鼻の先まで来た瞬間、重斬刀をその胴体目掛けて突き刺す!

 

 ビー!ビー!ビー!

 

 レーダーがけたたましく鳴り響く。どうやら敵の砲撃らしいが、オレは即座にレーダーの示す方角へ勢いよく突き刺さったままのバクゥを投げつけた。

 バクゥは見事に敵の砲撃に命中し爆散。盾代わりにしっかりなったのを確認して、今の攻撃の主であろう三機目のバクゥを探す。

 そのバクゥはすぐに見つかり、オレは接近しながら突撃機銃を放った。銃弾はバクゥの背中に装備されたレールガンに直撃。それで態勢が崩れたのを見逃さず、胴体を狙って突撃機銃を撃ち続ける。

 発射された銃弾はバクゥに何の行動も起こさせずその装甲を貫いていき、弾を全て撃ち尽くしたところでバクゥは横向きに倒れながら爆散したのだった。

 

「これで全機撃破」

 

 後はバルトフェルドと戦うだけだが………あれは!

 モニターで周囲を見回すと、ストライクがMSと戦っているのを発見した。しかもそいつはバクゥと似通った姿だが、少し違いがあり、何より機体の色がオレンジで染まっていた。

 もう始まってたか。だったら早く……と、その前にストライク達のいる方向とは別の方を見る。

 そこには廃工場に翼が引っかかって身動きがとれないでいるアークエンジェルの姿があった。しかも、前方に二隻の陸上戦艦。そして後方に恐らく伏兵に別の戦艦がいたんだろうが、二方面からの砲撃に晒され明らかにピンチと言っていい状況に追い込まれていた。

 

 状況は運良くオレの都合のいいように動いてくれているらしい。これならキラの説得も容易になるかもしれない。さて、それじゃあ乱入させてもらおうか!

 

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