「転生特典をもらっても全て得になるとは限らない」   作:野鳥

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第7話

 第7話

 オレは検査の後、格納庫に向かっていた。

 確か原作の展開だとこの後クルーゼ隊の赤服四人が駆るガンダムが襲ってくる筈だ。一応機体の整備はハロに教わっているので整備斑を手伝うつもりだ。

 格納庫の様子を見ると整備斑はストライクとメビウス・ゼロの整備に付きっきりのようだが、オレの機体はこの艦にくる前にストライクに襲われはしたものの特に損傷はないためほぼ誰もいないみたいだ。

 ジンのある場所まで行くと何だか見たことのある人物が機体の前にいた。あちらもオレに気づいたのかこちらを向いて話しかけてくる。

 

「おっ、兄ちゃんか、このジンのパイロットは」

 

 その人物は髪を後ろで括った肌の浅黒い中年男性だった。

 

「あんたは?」

「おう、俺はこの艦の整備長やってるコジロー・マードックだ。よろしく頼むぜ兄ちゃん」

「悠凪・グライフだ。あんたのいう通りこの機体のパイロットだ。よろしく」

 

 やっぱりこの人がマードックか。他の機体そっちのけでオレの機体の所にいるとは、そんなにオレの機体に興味があるのか?

 

「ああそうだ。早速だがこの艦はオレの機体の武器の規格に合う弾薬なんかは積んでるのか?一応補充は持ってきてるが」

「それが、この艦はGの運用を前提に造られたから、ザフト製の機体でも整備なんかはできるが、弾薬の補充なんかになってくるとちょっとな…」

 

 予想はしてたけどやっぱりか。できれば補給はできてほしかったが…、まあ連合の艦だし仕方ないか…。

 

「しかし、いいのか?他の整備斑はそのGとあのMAの整備に付きっきりなのに、整備長のあんたがこんな所にいて?」

「あの二機の整備ならもう大方終了してるから大丈夫だよ。俺はちぃぃとこの機体に興味があってな、兄ちゃんが来たんならちょっと聞きたいことがあるんだ。」

「…聞きたいこと?」

「ああ。この機体、見た目はジンだが中身はかなり改造されてる。機動性に関しては最新型の筈のGと同等かそれ以上の性能だ。こんな機体を持ってるなんてあんた、ホントにただの傭兵なのか?」

 

 ………もうそこまでバレたか。本職をナメすぎたかな、こりゃ。ここは言いふらされないように言っておくしかないか。

 

「…ちょっと訳ありでな。誰にも知られたくないんだ。だからこの機体のことは誰にも言わないでくれるか?ここの艦長とかにも」

「…まあ俺はいいぞ。でも、戦闘になればあんたの機体がただのジンじゃないっていうことはすぐバレると思うぞ?特にあのメビウス・ゼロのパイロットのフラガ大尉辺りには」

「……それはその時考えるよ。あんたみたいに黙っててくれるとありがたいが」

「それで大丈夫なのかぁ…?まああんたがいいならそれで構わないが…」

 そうは言われたって見た目がジンなら何とかなるんじゃないかって思ってたからな…。オレの考えが甘過ぎたか。

 

「そういや、何の用でここに来たんだ?別に戦闘が始まったわけじゃねえだろ?」

「いや、やることないから整備手伝おうかなって思って」

「ん?整備できんのかあんた」

「ああ。自分の機体の整備ができなきゃいざって時やばいからな」

「確かにそうだわな。でも、さっきも言ったがあの二機の整備はほぼ終わってるし、兄ちゃんの機体も特に問題ねぇから大丈夫だぞ」

「ああ、そっか…」

 

 それだと、クルーゼ隊がくるまで何もやることないな…。

 そうなるとこれからどう暇をつぶすか考えていると、マードックはオレの背中に腕を回してバンバン叩きながらこう言ってきた。

 

「まあまあそう気を落とすな。戦闘が終わったら否が応でもでも手伝ってもらうさ」

「えっ、マジで?」

「おう、人手が足りないんでな。整備ができるんなら兄ちゃんの機体はもちろんのこと、メビウス・ゼロの方も手伝ってもらおうか」

「…まあオレのジンのこと黙ってもらうわけだしな。…わかった。手伝わせてもらうよ」

「よし!そんじゃよろしく頼むぜ!」

 

 …あーあ、余計なこと言っちまったなぁオレ。なんか損なことばかり起きてる気がするよホントに………。

 

 

 

 

 

 

 

 マードックと別れ、どうせなのでオレはストライクの所へ行くことにした。ヘリオポリスの残骸で鉢合わせた時はじっくり見るどころじゃなかったからな。何気に転生して二番目に見たガンダムだしな、じっくり見ておきたい。

 そうしてストライクのハンガーまで着てみるとそこにはキラがいた。何やら考え込んでいるようだが…。

 様子が気になったのでオレはキラに話しかけることにした。

 

「よっ」

「あっ、悠凪さん…」

「どうした?こんな所で?」

「………」

「ああ…、オレで良かったら相談にのるぞ」

 

 キラは暫くどうするか悩んでいるようだったが、結局話す事にしたらしく重い口調で話し始めた。

 

「…言われたんです。ムウ・ラ・フラガって人に。この機体に乗って戦えって…」

「ああ、そういえばお前この機体の正規のパイロットじゃなかったんだっけ。」

「はい…。僕はヘリオポリスの学生で、この機体に乗ったのも成り行きでなんです」

「まあ、本来のこのMSのパイロットはザフトに襲われた時点で死んじまったみたいだからな…。今はただでさえ厳しい状況だし、扱える奴がいるなら例え民間人でもいいから乗せときたいんだろう。」

「…でも、MSに乗れるからって戦争ができるわけじゃないでしょう!?僕は…、僕は戦いなんてしたくないんです!!」

 

 …戦いたくないか……。まあそれが普通の反応だろうな。

 そう考えると自分から戦いたいなんて思うオレは一般的に見てやはり異常な部類に入るんだろうな…。守りたいものもなく、何か志があるわけでもないし…、かなり不純な動機で戦ってたんだな……。

 

「あの…どうかしたんですか?」

 

 もの思いにふけっているとキラが心配そうにオレに話しかけてきた。

「いや、大丈夫だよ。ちょっとどう答えようか考えてただけだよ。」

「そうですか…?」

 

 全く、オレが相談にのってた筈なのに、こっちが心配されちゃ世話ねぇな。

 

「…確かにな。お前のいう通りMSに乗れるから戦争ができるってわけじゃあない」

「だったら…」

「じゃあ一つ質問だ。お前はヘリオポリスの時この機体に乗って戦ったと聞いた。じゃあ何でその時は戦おうと思ったんだ?」

「…それは、さっきも言ったように成り行きで…」

「本当にそれだけか?今までただの学生だった奴が、成り行きだけで戦えるとは思えない。何かしら他の要因があるんじゃないのか?」

「他の要因…?」

「そうだ。例えるならそうだな……守りたいものとかだな」

「守りたいもの…」

 

 何か心当たりがあるのかキラは何やら考え込み始めた。オレは原作知識でアークエンジェルに乗っている友人を守るために戦うのを決意したことは知ってたからな。それらしいことを言えば大丈夫だとは思う。

 

ヴー! ヴー! ヴー!

 

『敵影補足、敵影補足、第一種戦闘配備。各乗組員は全員持ち場につけ。繰り返す、各乗組員は全員持ち場につけ』

 

 アラームが鳴り響き、艦内放送により敵が近づいていることが告げられる。ついにきたか、この時が。

 

「悠凪さん…」

「キラ、もし戦うんなら成り行きなんかじゃない、お前自身の戦う理由を確認してから来い。」

 

 オレはそう言って格納庫から出るため通路に向かった。出来れば早めに戦う決意をしてくれる事を祈りながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オレはキラと別れた後、ブリッジに向かっていた。多分原作と作戦はそう違わないだろうが一応聞いておく必要はある。

 ブリッジの扉の前まで来て、中に入ろうとするが、急に扉が開き中から金髪のが出てきた。

 オレを見てその男はこう言って話しかけてきた。

 

「おっ、あんたもしかしてうちに雇われた傭兵か」

「ああ。あんたの言った通りだ。名前は悠凪・グライフ。よろしく頼む」

「おう、俺はこの艦に積んであるMAのパイロットのムウ・ラ・フラガだ。こちらこそよろしく」

 

 こいつがムウ・ラ・フラガか。原作通りの実力ならかなり世話になることになるだろうな。

 しかし、かなり顔つきがいいな。そういや原作だとアークエンジェルが二回目にオーブに行った時に、さっき会ったマリュー・ラミアスと付き合うことになるんだよな。

 ………確かにお似合いだなこの二人は、まさに美男美女カップルだよ。つーか羨ましいわ、近い将来彼女できて…

 

「んっ?どうした渋い顔して?」

 

 ……顔に出てたか。考えたことをそのまま言う訳にもいかないから、とりあえず誤魔化しとくか。

 

「いや、何でもない。それより敵が接近してるって艦内放送で聞いたからどこの部隊か確認しに来たんだが…」

「ああ、それならオレが移動中に教えるさ、もう敵さん近くまで来てるからな」

「そうか。それじゃよろしく頼む」

 

 オレとムウはパイロットスーツに着替えるため、パイロット控え室に向かった。

 こちらに向かってきている部隊はやはりクルーゼ隊だった。

 移動中に作戦も説明されたが、オレやアークエンジェルが囮となり、その間にムウのメビウス・ゼロが敵艦を叩くという原作で行われた作戦と同じだった。キラが入っていないのは、まだこの戦闘に参加するかどうかがはっきりしていないからだ。

 そうして控え室に到着し、パイロットスーツに着替えようとしたその時だった。キラが控え室に姿を現したのだ。

 

「…見つかったか、お前自身の戦う理由が」

「はい……悠凪さんに言われて、考えてみたんです。僕は友達を守りたい。戦争はしたくないけど、戦うことでみんなを守れるなら…」

 

 どうやらちゃんと見つけられたみたいだな。まあ放っておいても確か自分で乗る決意を立ててたしあんまりオレが言う意味はなかっただろうが。

 ムウは戦うのを嫌がっていたキラがやる気をだしているのを不思議に思ったのかこちらに話しかけてきた。

 

「(なあ、お前何かしたのか?俺が話したときは大分戦うのを嫌がってたんだが)」

「(別に、ちょっと自分の戦う理由ってやつを考えさせただけだよ)」

「あの、二人共何を話してるんですか?」

 

 キラは小声で話しているオレ達が気になったのか話しかけてきた。

 

「いや、特に大したことじゃないさ。それじゃあフラガ大尉、キラに作戦の説明頼むぜ」

「えっ、あぁ。じゃあ作戦を説明するぞ」

 

 ムウはオレに話した作戦をキラに説明し始めた。その後、パイロットスーツに着替え終わり、出撃するため格納庫に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 格納庫にたどり着いたオレ達はそれぞれ自分の機体のところへ向かった。

 オレはコックピットに乗り込み、ジンを起動させる。

 ……これが初のザフトとの戦闘になる。今回は確かヘリオポリスのガンダム4機、つまりあのアスランをはじめとした赤服連中か。このジンはかなり改造してあるとはいえ一体どこまでやれるだろうか。

 あの4機の装甲にはPS装甲が使われているから実弾等の類は一切効かないと考えていい。攻撃を装甲に当て続ければバッテリーを消費して最終的には使えなくなるから無駄ということはないが…。まあ、いざとなれば精神コマンドの「直撃」があるしな。

 敵のガンダム4機への対抗策を考えている内にムウのメビウス・ゼロがリニアカタパルトに運び込まれ、発進した。

 それに続くためジンもリニアカタパルトに運ばれ、脚部をカタパルトに固定する。

すると、モニターに連合の制服を着たキラと同い年位の少女が映し出された。

 

「はじめまして。戦闘管制を担当することになったミリアリア・ハウです。よろしくお願いします」

 

 この子がミリアリア・ハウか。まあ、これから暫くここに厄介になる訳だし挨拶位はしておこう。

 

「ああ。よろしく」

「悠凪・グライフ」

 

 挨拶をしてすぐに、モニターにミリアリアと代わってナタルが映し出される。

 

「敵はすぐに仕掛けてくるだろう。フラガ大尉が奇襲を成功させるまでキラ・ヤマトと共に艦の護衛を頼んだぞ。なお説明はしておいたがGAT-XシリーズにはPS装甲が搭載されている。実弾の類は全く効かないからな」

「ええ、わかりました」

 

 まあ不安はあるがとにかくやるしかない。死ぬわけにはいかないからな。

 

「ストライク。ジン。発進どうぞ!」

 

 その言葉と共にジンは発進シークエンスに入る。

 

「よし。悠凪・グライフ、ジン、発進する!!」

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