東方孤狼録   作:Mochi屋

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主人公の名前は"磨白"と書いて、"ましろ"と読みます!


別れ、そして...

俺はまず山の中に作った巣穴をシェルターとしての機能を持たせるための拡張工事に入った。

前世の人間のときに見た人類滅亡系映画では人々がこういった場合にはよく山にあるシェルターに逃げ込んでいたのを覚えていたのでそれを参考にする。

巣穴を掘る際は自分自身の力で掘ったが、シェルターになるというとそうは行かない。

そこで俺は初めて妖力を使うことになった。最初は初めて使うので上手く扱えなかったが、日々使ううちにだんだんと慣れていった。

そんな拡張工事を続けて2年。手製の避難用シェルターが出来た。5層からなる円柱形のシェルターで大きさは然程大きくはない。5層を基本生活スペースとして利用し、1〜4層は主に食料やその他のものを格納するスペースとして利用する。

それからさらに2年。俺は長期間の避難生活を考えて大量の食料の確保とその他の物資の確保、シェルターの細かい整備に時間を費やした。

そして4年の日々が経過し、ある程度シェルターの整備が終わったので久方ぶりに街を見渡せる場所へと赴いた。

 

「あまり大きな変化はないな...」

 

ただし、その街はどこか寂しい雰囲気に包まれていた。おそらく殆どの人間たちが既にこの地を離れているのだろう。

俺はしばらく街を眺め続けていた。数時間経ったときのことだ。空から何やら大型の船らしきものが降りて来て、街の一角に停泊した。俺はそれが輸送用の宇宙船であると勘づく。

少し離れていたため妖力を使い、視力を大幅に強化する。

宇宙船に人間が乗り込んで行くのが見える。しかし、人数は疎らでおそらくこの街に残っていた最後の人間たちの回収が目的だったのだろう。

そして、人間たちの最後の方に見知った顔を見かけた。服装は依然と違い、赤と青を基調にした変わったデザインのものであったが、永琳だ。

永琳はしきりに回りの様子を気にして、警備の軍人と思しき人間などにしきりに話し掛けていた。

 

「全くお前は本当に良い奴だよ」

 

俺は立ち上がり、肺一杯に空気を吸い込む。そして力の限り大きな声で遠吠えを上げる。

ウォォォォォン!!!

今までオオカミでありながら、そういったことはやったことが無かったが意外にも上手く出来た。

永琳は俺の遠吠えを聞くと、俺のいる方向に視線を向けてきた。

どうやら俺に気付いたようだ。

 

「またな、永琳」

 

聞こえるはずもないがそう呟く。

永琳もまた口は動かしていたが、何を言っているかは俺には分からなかった。

俺は宇宙船が空に消えるまで見送り続けた。空はいつもと変わらなく澄み渡っていた。

 

 

永琳を見送った後、これからのことに備えてまた俺は活動を始めた。

避難生活用の食料の追加やシェルターの最終整備など様々なことを行った。

 

それからまた1年の時が過ぎた。

俺はいつものようにシェルターの5層で寝ており、今日も朝から外に出ようと考えていた時、大きな振動が俺の身体を直撃した。俺はその振動で目を覚ます。

 

「まさか!?」

 

俺はそのとき直感した。

永琳が教えてくれた隕石の落下である。

振動は全く収まる気配はなく、避難用に作ったシェルターも所々損傷してきた。

俺は為す術もなく、ただ揺れが収まるのを静かに待った。

揺れが収まったのはそれから数十日後のこと。数十日間身体を揺られたことで平衡感覚がおかしくなりかけていたが、何とか5層目を出て、上へと続く階段のようなものを登る。

4層目、3層目、2層目と見て回る。所々に崩壊の後はあったものの、使える状態であった。

しかし、俺は1層目に行くことは出来なかった。上へと続く階段は崩壊した天井で埋まり、この様子だと1層目や外へと続く通路は完全に塞がっている可能性が高かった。

 

「生き埋めか...」

 

俺の心を絶望が支配しようとするが、頭を振ってそれを振り払う。

 

「とにかく生きねば...」

 

俺はそう呟くと5層へと戻り、長い揺れで消耗しきった体力を回復するために深い眠りについた。

それからは地下での生き埋めの生活が続いた。すぐに外に出なかった理由としては隕石の影響で外の環境がどのように変化してしまったかが分からず、かなり危険であると考えたからだ。

日々、妖力を上手く使いながら必要最低限度のエネルギーで生活した。一日の大半は寝て過ごした。

そんな生活を続けて長い時間が経過した。もうどれくらい地下にいたかは分からないが、精神的にもかなりまいってきていた。

 

「もうそろそろ外の様子を見に行くか...」

 

それは一種の賭けであった。

もし外の世界が予想を遙かに超えた過酷な状況であった場合、それは死を意味する。

だが、このまま永遠に地下の生活を続けるのにも限界があり、その限界が訪れた。

俺は意を決して2層目まで行き、天井が崩壊して塞がっている通路の掘削作業を始める。

妖力を使って掘っているとはいえ、長い地下生活もあってか思うように身体動かずかなり苦戦した。

掘っては休み、そしてまた掘るという作業を繰り返す。

数日間掛かって掘り進めると、次第に風の流れを感じるようになった。外気が流れ込んできているようだった。

俺は警戒をしながら、その流れ込んでくる外気を嗅ぐ。

特に体調を崩すことはなく、危険はないようだ。ただその外気はかなり冷たく身体の芯まで冷えそうになる。

さらに掘り進めてようやく地表に達した。地表は分厚い雪で覆われているようでそれを除去するのにも数日掛かった。

 

「...なんだこれは?」

 

地表に出た俺の視界に飛び込んできたのは、色のない白の世界であった。

見渡す限りの銀世界であり、動植物などの生命の息吹は一切感じられなかった。

空には暗雲が立ち込め、世界をさらに冷たくさせていた。

その冷たさに俺は耐えきれなくなり、再びシェルターへと戻る。

 

「この様子だと当分は外に出ても意味もないな...」

 

冷たい外気が入り込まないように念入りに蓋のようなものを幾重にも重ね、5層へと戻る。

このまま地下での生活を続けると考えると発狂する気がした俺は、"冬眠"することを決意する。

2層から4層で保存しておいた食料の全てを腹一杯に詰め込み、俺は妖力で自分自身に強力な催眠を掛けて、決して短い時間で起きないような深い眠りについた。

 

 

それから幾許の時が過ぎたであろうか。

俺は目を覚ます。冬眠する前と比較してかなり痩せこけ、殆ど身体に力も入らない。

このままでは危険な状態であると感じた俺は、死に物狂いで地表を目指した。

冬眠前に通路に設置した蓋を一つ一つ壊して進む。

 

「もう...少し。あともう少し」

 

俺は掠れた声で呟きながら前へ前へと進む。

そして最後の蓋を壊す。すると今まで外界と隔離されていた通路に外気が流れ込んでくる。流れ込んできた外気は冬眠前のそれとは異なり、暖かいものだった。

 

「...あたたかい!!」

 

俺は外に出たいという逸る気持ちを抑え、通路に入ってくる光で徐々に目を光に慣らしていく。

ある程度慣れたところで、地表へと顔を出す。丁度出口付近に木陰が出来ており、日光によって目を痛めることはなかった。

 

「...色がある」

 

冬眠前に見たあの色も何もない世界ではなく、緑や黄、赤といった様々な色で飾られた世界が目の前に広がっていた。遠くで鳥のような鳴き声も聞こえ、大地に生命が溢れている。

俺はすぐさま駆け出したい気持ちで一杯であったが、消耗しきった身体は言うことを聞かないので俺はまずは体力を回復させることに専念した。

基本的にはオオカミであるため肉食ではあるが、消耗しきった身体で狩りなど出来るはずもないので俺は食えるものであれば何でも口にした。

木の実や果物は勿論のこと、タンパク質を補うために昆虫も口にした。体力が戻り始めると狩りも再開し、再開後はみるみる回復していった。

 

それからまた数十年の月日が流れる。その間俺は妖力をさらに使いこなすために独学ではあるが、色々と研究を行った。

また妖怪としての力以外に何か特殊な力はないのかを色々と興味本位で試してみた。

それらの試みを続けた結果、2つのことがわかった。

まず一つは妖力の使い方についてだが、様々な要素(火や水等)については日常生活を送る上では申し分ない程操ることができた。その中でも電気に関することについてはまるで自分の身体の一部のように扱うことができ、少ない妖力で膨大な電気を生み出すことが出来た。また空気中の電子の流れ等を操作することで指向性のある雷を落とすことが出来た。おそらく人間であったときに、雷に打たれたことが影響しているのではないかと俺は考えた。

もう一つは直感が異様に優れていることだ。狩りを行うときなどに標的の居場所が"なんとなく"分かるのだ。またここは危険であるなども"なんとなく"分かるのだ。若干不確かな要素が多いながらも、自分自身では『直感が優れている程度の能力』と勝手に決定した。

さらに今後人間と再度接触をすると考えた場合、今度は積極的に関与しようと考えていたため妖力を使って擬人化する訓練を重ねた。最初のうちは上手くいかず色々と苦戦を重ねたが、最終的には以前の人間の姿形になることが出来た。しかし、幾ら試行錯誤を重ねてもアルビノの特徴である白髪と赤い眼は隠すことは出来なかったために仕方なく諦めた。

人間の姿でも生活出来るように日々を過ごしてみたが、オオカミのときと比べるとかなり不便なことが多かったが、以前人間であったことなどを思い出してそれなりに楽しむことが出来た。

 

「さて、あとは人間がどこにいるかだな...」

 

以前、隕石が落下する前の永琳たちが住んでいた場所を確認したが一切その痕跡が無くなっており、初めから何も無かったようになっていた。

おそらく長い長い時間を経て、風化してしまった可能性がある。

この地域に留まり続けても人間などには会えないだろうと感じた俺は再び旅に出ることを決意した。

 

地平線へと沈もうとする夕日に向かって旅を始めた。

 




皆様の貴重なお時間を頂きましてありがとうございます!

今回は説明するような文章が多めです。
文字の羅列が続いたので飽きてしまったかもしれません...

今後はそのことを踏まえて改善をしていきたいと思います。
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