ウワァァァァァァァァ
✳︎やってみたかっただけです。反省はしてます....
女の名前はさつきといい、この山の麓にある集落に住んでいたらしい。
先程の巨大な百足は数年以上前からこの山に住み着き、度々集落が襲われ、多くの人が食われたという。
勿論村人たちは何もしないわけではなく、討伐隊なども編成して、百足に挑んだが悉く失敗し多くの人命を失ったとさつきは語った。
「なるほど。それは災難だった」
「気にしないで。こちらこそ同じ力を持っているからって勝手に化け物だなんて決め付けてごめんなさい」
「ああ、そのことなんだが、よく俺が妖怪って分かったな。髪の毛と瞳の色以外は人間にそっくりなんだがな」
「見えるのよ、私。生まれつき他の人とが見えないものまで見えてしまうの」
「霊感...ってやつか?」
「そうなのかしら?村の人たちからは"呪い"って呼ばれてたわ」
「"呪い"ね...」
女が岩に縛られていた場面を思い出す。複数いた男の中で一人が呪いと言っていたな。
「それでさっきの男たちは?」
「...村の青年衆よ。討伐隊も兼ねてたわ」
「成る程。んで、なんでそいつらはお前をこの岩に縛り付けてたんだ?」
「...色々と話せば長くなるけど、簡単に言うと私の持つ力、貴方の言う霊感になるのかしら?それがあの百足を呼び寄せていたらしいの。そんなのもあって"呪い"と呼ばれていたのかも」
「随分簡単にまとめたな。まぁ、いいが。...それでこれからどうするんだ?」
「...分からない。本当ならここで終わっていたのだから」
「そうか。両親はどうしてるんだ?」
「物心がついた時には両親はいなかったわ。それに私を育てくれた人たちも百足に襲われて死んでしまったわ...」
「悪いことを聞いたな、すまん」
「気にしないで」
幾ら百足の脅威が無くなったとはいえども、おそらく村にこの女の居場所はないだろう。このまま女を返すのは得策ではない。また別の妖怪などから狙われる可能性もある。
「ふーむ...」
「...かまわないわよ」
「...何がだ?」
「本来ならこの命はもうない。だけど貴方のおかけでまだ生きている。だから私の命は貴方のもの。邪魔だと思うのなら今すぐに殺してくれてかまわないわよ」
さつきは俺の目をしっかりと見据えて、一つ一つの言葉をしっかりと紡いでいく。その瞳には覚悟が見て取れた。先程まで岩の陰で隠れていたときのような怯えはない。さつきは顔も端正に整った美少女だが、その雰囲気も相まって見惚れてしまうほどであった。ここで失うにはあまりにも勿体無い。
「良い瞳をしている。...美しいな」
「...そんなこと言われたのは初めてだわ」
俺が素直な感想を述べたところ、さつきは予想もしていなかったのか少し視線を外して照れている。そういうとこは年齢相応で可愛らしい。
「よし。決めた。お前の命は俺が預かる」
「...え?」
「とりあえずお前が安全に暮らせるようなところを見つける。ここにいても何もならないからな。すぐに見つかるか分からんから、長い旅路になるかもしれん。それでも良いか?」
さつきは言葉で返事はしなかったものの、首を縦に振った。
俺はそれを了承と受け取り、何処に向かうべきかを思案しながら、さつきの格好を確認する。これから先の旅路のことを考えるとあまりにも不適切な格好であった。
「まずはその格好をどうにかしなきゃならんな」
「...ごめんなさい」
「謝ることでもない。さてどうするか...」
俺は数分思案した後にあることを思いついた。
どうせこの地を離れることだし、多少派手にやっても問題ないだろう。
「さつき、村は確かこの山の麓にあるんだったな?」
「...何をする気なの?まさか」
「なに、ちょっと挨拶をしてくるだけよ」
「人は...殺さない...わよね?」
「今のところは予定はないな。自分の命に関わるとなったら分からんが」
「...この山を降りてすぐのところにあるわ。周囲を塀で囲ってあるわ」
「そうか、ちょっとそこの岩の近くで待ってろ。岩を中心に障壁を張るからその中にいれば大丈夫だ」
「...分かった」
さつきが岩の近くに移動したのを確認した後、妖力を使って障壁を展開する。百足はもう始末したのでそこまで心配することもないのだが念のためだ。
そして、人間の姿で行くのは効率が悪すぎるので本来の狼の姿に戻る。
その時後ろから息を飲むような声が聞こえた気がしたが気のせいだろう。
「さて、派手に行こうかね」
俺は山の麓に向かって全速力で駆け降りる。
山の中には人間たちが整備したと思われる山道があったので比較的降りやすかった。
数分走るとさつきの言っていた通り、なにやら木材で作られた塀らしきものが見えてきた。ところどころ壊れているところもあり、おそらく百足に壊されたものであろう。門と思しき場所には見張り用のためか、櫓のようなものまであった。
「正面突破だな」
俺はそのまま門に向かって走る。
ちょうど森が開けたところで人間たちも俺の存在に気づいたらしく、なにやらかなり慌てているのが遠目でも分かった。
打鐘のような乾いた金属音を叩くような声も聞こえる。きっと他の人間たちに異常を知らせているに違いない。
俺は全くそれを意に介さず、あと少しで門にぶつかるというところで勢いよく上にジャンプして塀を軽々超える。
村の中心に丁度他よりも大きい建物があったので、その屋根の上に着地する。そして村全体を見渡す。
打鐘の音を聞いた人間たちが次々と家から出てきてこちらを見上げている。先程さつきを縛り付けていた青年衆も見え、手には何やら弓のようなものが見えるが特に撃ってくる様子はない。
俺はある程度人間たちが集まり出したことを確認してから、口を開く。
「人間たちに告ぐーーー」
天高く輝いていた太陽は大きく傾き、西の地平線へと沈もうとしていた。
俺が村で下手な一芝居を打った後、先程の場所に戻るとさつきが岩にもたれ掛かって夕焼けの赤さと夜の漆黒が混在する空を見上げていた。特に何かあったということはなさそうだ。俺は今、人間の姿になっている。
「待たせたな」
「...おかえりなさい。...それは?」
声を掛けるとすぐに返事をし、俺が手に持っている袋に気がつく。
「人間たちから無期限拝借してきたものだ。女性の着替えなんかが入ってるよ」
「無期限拝借...」
「なに気にすることはない。遠慮なく使ってやれ」
「はぁ...」
「さてさて今日も暗くなって来たし、寝床でも探すか。ほれ、行くぞ」
「えっと...」
「ん?何だ?」
「これはどうするの?」
さつきが指を差した先には百足の上顎が転がっていた。改めて見るとよく気持ち悪い。
「それは明日、村の人間たちが見に来るだろうからそのままにしておく。百足を屠ったという証拠になるからな」
「なるほどね。...改めて、村とこの命を救ってくれてありがとう」
「あー、そのことだが村を救ったのはお前ということになってるんで、よろしく」
「...どういうこと?」
「まぁ、そういうことだ。そんなことよりもさっさと寝床を見つけるぞ」
「...本当に変わった妖怪」
「そらどうも」
「...褒めてないわよ」
俺はさつきを連れて暗くなりつつある森の中へと分け入っていった。
夜の帳が降りつつある西の空には一つの星が明るく輝いていた。
あいも変わらず不安定すぎる文章を皆様の貴重な時間を割いてまで読んでいただき、誠にありがとうございました!
私がリスペクトしている方(✳︎お気に入り参照)のような読者を物語に引き込むような文章を書きたいですね!
今後も善処しますのでどうぞ御愛読をお願い致します!!