正村島羽である。
地上本部襲撃事件の翌日。
まさかここまで簡単に地上本部襲撃を成功されるとは。
今、俺は地上本部襲撃時に戦闘機人に撃墜されたベルのお見舞いに来ている。
「ごめんなさいですの。私がしっかりしていれば」
「んなこと言うな。今はしっかり休んどけ」
さっき聞いた話によるとベルを撃墜したのはナンバーズの10、ディエチだろう。
ディエチって原作じゃなのはと砲撃勝負して負けたイメージしかねえんだけど。
「私と交戦した敵のことはアンタレスが記録してくれてますわ。私はあの時敵の攻撃で意識をほとんど失ってましたので。……私は役立たずですわね」
ベルが俺にアンタレスを渡しつつ自虐に走り始めたんだが。
「あなたにデバイスも届けられないで、誰も捕まえられず撃墜されて、ギンガにはあんな偉そうなことを言っておいてこの有様ですわ……」
「そんなこと言ってる暇あったら寝てろ」
珍しくベルが落ち込んでいるなあ。
あ。もうそろそろ仕事に戻らねえといけねえ時間だ。俺は椅子から立ち上がりつつ聞く。
「さてと、俺はもう仕事に戻るが、なんかやっとくことはあるか?」
「ありませんわ……」
「そうか……ああ、そうそう」
「?」
「役立たずなんてお前に一番似合わねえ言葉だろ。少なくとも俺にはベルが必要だからな。……とりあえずさっさと体を治して、俺を助けてくれ」
なんか恥ずかしいこと言った気がするが気にしない。それが俺、正村島羽のスタンスだったりする。……今決めたからな!!
とりあえず、現在の状況を整理してみようか。
地上本部の襲撃とほぼ同時に機動六課も壊滅的な被害を受ける。結果として六課を守っていたシャマルさんとザフィーラさん、ヴァイス師匠が倒れる。
原作知識で、それを知っていた俺としては機動六課に向かった戦力を迎撃するためにレストを送ったんだが、途中でヴィータが撃墜されたヴィータを助けたり、逃げ遅れた人をまとめて守ったりして六課にたどり着けなかったらしい。
結果としてザフィーラさんとヴァイス師匠は重症。シャマルさんは比較的に軽傷。他の六課ロングアーチメンバーもそれぞれ軽傷だった。
六課フォワード陣は、スバルはつい先ほどまで意識不明でエリオは左腕の骨折。キャロは軽傷でティアナは無傷。
スバルのデバイスであるマッハキャリバーも内部部品を激しく損傷。エリオのストラーダにキャロのケリュケイオン、ティアナのクロスミラージュは破損部位なしであった。
ヴィータはほぼ無傷だが、グラーフアイゼンは損傷がひどく、リインも意識不明。
なのは、フェイトは無傷。フェイトはナンバーズのトーレとセッテが相手だったらしい。本気ではないとはいえレストと互角に戦ったトーレと原作との能力値変動が不明なセッテ。このフェイトがこの二人を同時に相手して無傷ってことはは本気を出してないということか?
レストは無傷。ベルは軽傷……おそらくバリアジャケットといっしょに俺のデバイス、サラマンダー(待機状態、防弾ジャケット型)を着ていたからだろう。
こちら側の戦力は大きく削られている。それに比べ敵戦力をほとんど削れていないのは問題だろう。
敵戦力、ナンバーズ。
1番、ウーノはスカリエッティのアジトにいるためまず無傷だろう。
2番、ドゥーエはおそらく管理局に潜伏中。
3番、トーレはフェイトと戦って逃走。
4番、クアットロは目撃証言も映像もないため何とも言えないがどうせ無傷なんだろうな。
5番、チンクはなのはとティアナの証言によると普通に立ってたらしいからほとんど無傷。傷を負っていたとしてもかなりの軽傷。
6番、セインはチンクを連れて逃走したらしい。なのはとティアナによるとこちらも傷を負っている様子はなかったとのこと。
7番、セッテはフェイトと戦闘後逃走、無傷らしい。
8番、オットーは機動六課を襲撃し逃走。シャマルさんによると一度も攻撃できなかったとのことなのでこれまた無傷。
9番、ノーヴェはスバルのIS『振動破砕』の攻撃をまともに受けたらしい。逃走時に右腕をかばっている様子をある局員が確認した。
10番、ディエチはベルと交戦してまさかの無傷。
11番、ウエンディはノーヴェとともに逃走。エリオが一撃加えたらしいから多少は負傷しているはず。
12番、ディードはオットーとともに機動六課を襲撃、後に逃走。
原作ではここで退場していたチンクが無傷。ノーヴェのダメージはスカリエッティなら簡単に治せるだろう。
こちら側から与えたダメージは皆無ともいえる。
ひとつだけ気になることがあるとすれば、ゼストとアギトが監視カメラ、局員、どちらにも見つかっていないことだ。ガジェットを大量転移させたのは召喚士ルーテシアだろうが、ゼストとアギトは動きがない。ゼストはレジアス中将に話があるはずだからこの機会に原作通り一気に攻めてくるかと思ったんだが。
原作で立ちはだかったヴィータもいないからたどり着けたと思うんだが……まあいいか。
とかなんとか考えている暇に一つの病室にたどり着いた。
隔離された部屋。医者のみ立ち入ることができる部屋の扉にむけ言う。
「すみません、ヴァイス師匠」
こんなことに意味はない。が、やめる気もない。
「5年前の一件。実は俺が早く動いてれば避けられたんですよ。俺の能力で弾丸を犯人に当てれば」
くだらないことだが意識を切り替えるのには十分だ。
「そして今回。俺は同じ失敗を二度も繰り返してしまいました」
今からするべきことを。
「でも、もう大丈夫です。もう、悲劇なんて起こしません」
俺にできることを。
「最後はみんな笑ってられるハッピーエンドにしてやります」
5年前に誓ったことを。
「そのために俺は、あなたの弟子としてではなく、中将として言わせてもらう。最初の命令だ、ヴァイス陸曹。早く目を覚まして俺に協力しろ」
全て成し遂てやるために。
「あんたがあの悪夢から覚めんのを俺は5年前から待ってるよ」
俺は病室を後にする。目指すのは地上本部。いやその前に俺の家に寄って行こうか。とってくるものもある。
『主よ。どうするつもりですか?』
「ん?いや、特にこれと言って考えているわけじゃねえよ。……ただ」
『ただ?』
「この事件を終わらせるために、本気出してやろうってだけだ」
地上本部。ここには地上本部襲撃前から今まで会っていなかった使い魔がいる。
「……とうは」
言わずと知れた最速の使い魔、レストである。
「……ごめんなさい!!……私はあなたの命令を守れなかった」
ベルに続いてお前もネガティブか。
「……そのせいで六課が……」
「おい、レスト。昨日のことグダグダ引きずってんじゃねえよ。命令なんざこれから守れ。そんなことより、訓練場行ってこいつを使えるようにしておけ。午後4時までだ」
そう言って、俺は家からとってきた、とある60センチほどの短いベルトを渡す。
「……わかった」
そして俺は立ち去る。
4時。
レストを呼び出した場所で待っていると。
「……とうは」
いつの間にか背後をとられていた。
振り向くと先程渡したベルトを首に巻いて首輪にしたレストがいた。……いやどこにつけるかなんて俺は言ってけどなあ。……まあいいか。
「行くぞ。レスト」
「……うん」
すぐそこにある扉を開く。そこは、今回の事件に対して作られた緊急対策本部。
「だれですか?って、正村中将!?いったいどうしました?」
「いや、ちょっと犯罪者の捕縛にな」
「はい?」
俺は対策本部の中に入り、ある機械に立ち上がったまま向かっている女性に歩み寄る。女性が振り返り口を開く。
「何の御用ですか?」
「今回の事件の、主犯であると思われるジェイル・スカリエッティへの情報の提供、聖王教会の聖遺物の盗難の容疑がお前にはある。同行してもらおうか。ナンバーズ2番、ドゥーエ」
「!?」
その瞬間、女性……ドゥーエの右手の親指・人差し指・中指から鉄爪が飛び出し、俺に向け振るわれる。
「セットアップ」
その鉄爪が俺を切り裂く直前、レストが弾いて砕き、俺が腹部に掌底を叩き込んで吹き飛ばした。
いや自分から後ろに跳んで威力を殺したのか?
その時、近くにいた女性局員の首に左腕を回し、飛び出した左手の鉄爪を突き付ける。
あの鉄爪左手でも使えたのか。てっきり右手限定かと思っていたが。
でもってあれは人質のつもりか?だとしたら愚行としか言いようがねえぞ?
「こいつは人質です。私を逃がすならおとなしく解放しましょう」
「レスト」
「……なに?」
「任せた」
ドゥーエが吹き飛び、遅れて爆破音のような音が響く。吹き飛んだドゥーエを局員達が取り押さえる。人質を抱えてレストが戻ってくる。
「だいぶ使いこなせてるみてえじゃねえか」
「……うん」
「これで本気出せるか?」
「……やれる。……これなら」
スカリエッティの隠れ家。
「!?」
「!?貴様ッ!」
「ナンバーズ3番に5番、トーレ君にチンク君じゃないか。どうかしたのか?」
「ウーノを離せ!!」
サングラスをかけた男は右手でナンバーズ1番、ウーノの頭を掴んで吊り上げている。
「いや、言われなくても離すつもりだったけどね」
そう言ってウーノを放り投げる男。それを受け止めるトーレ。
「おいおい。そう怖い目をするのはやめないか?ウーノ君は離したじゃないか」
殺気をこめて男を睨む、トーレとチンク。そこにやってきたセッテ。
「な!?これは!?」
「……ちょうどいいところに来た。セッテ。ウーノを頼む」
トーレがセッテに抱えていたウーノを渡す。
スティンガーを両手に構えるチンク。
「IS、ライドインパルス」
両足と手首からインパルスブレードを発生させるトーレ。
「前からお前は信用していなかった」
「貴様は私たちが殺してやる」
ため息を吐いた男は肩をすくめながら言う。
「何を言うのも君たちの自由だと思う。でも君たち程度じゃ俺は殺せない」
その言葉に無言で動き出す、トーレとチンク。
男をにやりとした笑みを浮かべ……。
「だから言ったじゃないか。殺せないって」
転がったトーレと壁に体重を預けているチンクを見ながら男は言う。
「で、君も俺を殺したいのか?ナンバーズ7番、セッテ君?」
「ッ!!」
セッテはウーノを床におろし、ブーメランのような剣、ブーメランブレードを両手で構える。
「やめておくんだ。セッテ」
「!?ドクター!?」
セッテの肩に手を置き制止を促したのは、ジェイル・スカリエッティだった。
「ジェイル君じゃないか。次の襲撃の準備はどうした?」
「もうほとんど終わらせているよ。……トーレとチンクを助けてくれないか?」
それを聞いて男は眉をひそめる。
「悪いがそれはできないな。そもそもトーレ君とチンク君に俺は襲われた。原因は俺にあるが、確かな殺意がこもった一撃を向けられた」
「君とは長い付き合いじゃないか。そもそも、私の娘を助けなければ君はも損をするだけだろう」
「……はっはっは!まったく君らしくもないことを言うじゃないか!ジェイル君!」
突然、笑い出した男を、怪訝な表情を浮かべ見るスカリエッティ。
「いいだろう。トーレ君とチンク君は助けてやろうか。心配するな。気絶させただけで機械部品も肉体も損傷はさせてない」
「感謝するよ」
「だが、次の作戦は俺の指示した通りの動きをしてもらおうか。聞き入れないなら……そうだな、ジェイル君の娘たちを皆殺しにするとしようか」
「ッ!いいだろう」
そのまま男は立ち去る。
「ドクター……」
「セッテ。このことは君の姉妹には言わないでくれ」
スカリエッティはそう言って、トーレとチンクを起こしに行く。
その姿を少し見た後、セッテは床におろしていたウーノを再び抱えた。
作者のたくヲです。
本気を出しはじめた転生者回。状況整理回。
これから1・2話をはさみクライマックスへ?
これからも『リリカルでマジカルな世界で最強の狙撃手を目指す』をよろしくお願いします。