管理局に封鎖された道路を走っている人影。
青いロングヘア。紫のリボン。青っぽい全身タイツのような服の上から、小さいジャケットのようなものを羽織っている。左手にはアームドデバイス、リボルバーナックル。両足にはローラースケートのようなデバイス、ブリッツキャリバー。
スカリエッティ一味に連れ去られた、ギンガ・ナカジマ陸曹である。
スカリエッティ一味によって洗脳された彼女は、前方に突然姿を現した人影二つを視界にとらえた。
青いショートヘア。右手にはギンガの物とよく似たアームドデバイスを、両足にはローラースケートのようなデバイスを装備したバリアジャケットを纏った女。
オレンジツインテール。両手に拳銃のようなデバイスを持った、バリアジャケットを纏った女。
時空管理局機動六課所属でありギンガの妹でもあるスバル・ナカジマと、その友達であり同じ部隊に属するティアナ・ランスター。
両方ともギンガがよく知る……否、知っていた人物である。
こちらを向けデバイスを構えているティアナ。そこに真横から不意打ち気味の跳び蹴りを放ち、ティアナを吹っ飛ばしたのは、赤髪の戦闘機人ノーヴェ。
ぎりぎりで、防御するティアナだが勢いを殺しきれず、ビルの中に窓を割りながら突っ込む。
[ティア!?]
スバルがティアナの名を念話で呼ぶが、返事はない。ティアナの吹き飛ばされた廃ビルに、戦闘機人の現場指揮担当であったオットーが結界を張ったのだ。
そして、一対一で対峙することになったのは、スバルとギンガ。
「ギン姉……」
スバルは悲しげに姉を呼ぶ。しかし、すでに洗脳されているギンガにはその言葉は届かない。
今の彼女にできることは目の前に立ちふさがる
姉の名を呼ぶスバルと、無言のギンガ。
そして次の瞬間、姉妹はぶつかり合った。
一方、戦闘機人に吹き飛ばされ、廃ビルに閉じ込められたティアナは戦闘機人と交戦していた。
赤髪のスバルに似ており、足にはローラーブレード『ジェットエッジ』、右手には籠手のような武装『眼ナックル』を装備した、戦闘機人ナンバー9、ノーヴェ。
長い赤髪を後ろでまとめており、巨大な盾のような武装『ライディングボード』を装備した、戦闘機人ナンバー11、ウェンディ。
長い茶髪にカチューシャ、双剣『ツインブレイズ』を両手に持つ、戦闘機人ナンバー12、ディード。
(スバルと分断された!?)
三人の戦闘機人の標的はおそらく初めから自分だった、とティアナは予測する。
機動六課フォワードの中でのティアナの役割、センターガードは味方に指示を出しサポートを行うというものだ。
つまり、このポジションはチーム戦での根幹を担う役割である。逆に言えば、ここを倒せれば他を倒すのは容易いということ。
(三人がかりで私を倒して、スバルたちは一人一人順番に撃破しようってこと?随分と私も子評価されたわね)
幻影魔法を用いて距離をとろうとしても、簡単に幻影は見破られる。
ウェンディが巨大な盾から放つエネルギー弾を撃ち落としつつ、敵の戦力を分析していく。
だが、ティアナに比べ戦闘機人は機動力で大きく勝っている。3人中、2人が移動用の固有武装を装備しているのだから当然ともいえるだろう。
ノーヴェの『ジェットエッジ』が高速でティアナとの距離を詰め、『ガンナックル』から放たれる弾丸がティアナに迫る。
が、弾丸を放つ瞬間にティアナのデバイス『クロスミラージュ』からワイヤーのついたアンカーが射出され、廃ビル一階の天井に開いていた小さな穴の奥に突き刺さる。弾丸が、ティアナのいた場所に到達したときには、すでに彼女の姿はそこにはなく、ワイヤーが元に戻る作用でティアナは二階へと上がっていた。
さらに、ティアナはニ階に上がりきる直前にワイヤーを消し、それまでの運動エネルギーを維持したまま、空中で魔力弾を後方に撃ち出す。
それが当たったのかどうか、ティアナは確認しない。もとより今放ったのは、戦闘機人が追ってくるのを防ぐために放った威嚇用の弾である。
(幻影は見破られているけど、戦闘機人は視認しなければ幻影だとわからないようね。結界を破るには私じゃパワー不足だし、ここで全員拘束しないといけない、か)
幻影魔法を行使する。造りだした複数の幻影を二階に残し、ティアナはワイヤーを駆使した移動で三階に駆けあがる。
どれと同時に、二階の床が切り裂かれ、ディードが飛び出してくる。無論、三階に上がったティアナを見つけることはできず、複数の幻影を一つ一つ視認する。
「ノーヴェ姉様。二階は全部幻影のようです」
「くそ、あのオレンジ頭!うっとしいことばっかしやがって!」
苛立ちを隠さず、ノーヴェは『ガンナックル』から、弾丸をばらまき幻影を消す。
「ノーヴェもそんなにイライラするもんじゃないっすよ。オットーの結界のおかげであっちはここからは逃げられないっスから」
そう言いながら、戦闘機人たちはティアナを追って三階へと上がる。
規格外のロストロギア『聖王のゆりかご』の中に乗り込んだのは、機動六課スターズ分隊の分隊長である高町なのはと副隊長ヴィータ。
高町なのはは『ゆりかご』に捕らえられたヴィヴィオの保護。ヴィータは『ゆりかご』の駆動炉の破壊。
それぞれの任務を果たすため、二手に分かれ『ゆりかご』の内部を飛ぶ。
なのはは『ゆりかご』の通路にいるガジェットドローンを多数撃墜しながら進む。
『ゆりかご』の内部は高濃度のAMFフィールドが展開されており、並の魔導師では魔法を使うことすらできない状態となっている。そんな中でも難なく魔法を使っているように見えるなのはだが、実際は威力も相当落ちている。
それでも、ガジェットを全機残さず撃墜し、傷一つ負ってないのは流石エース・オブ・エースといったところか。
だが、そんな彼女の行く手には、ある戦闘機人が待ち構えていた。
ナンバーズの10番、ディエチ。
彼女はなのはが進む通路の先、通路の曲がり角を曲がった先にいた。
固有武装、イノーメスカノンを構えエネルギーを蓄え始める。
「あんたに恨みはないけど……これもドクターの目的のため……!」
ディエチの前、虚空に映し出されている画面は、なのはの魔力反応が自分に向かってくるのを示している。
「IS発動!へヴィバレル!」
高速で飛ぶなのはが曲がり角を曲がるのと、ディエチが自らのISを使用するのはほぼ同時だった。
軽くSランクに到達するエネルギーの砲撃がなのはに迫り、
「エクセリオンバスター!!」
なのはの砲撃と衝突する。
AMF環境で威力の落ちたなのはの砲撃と、戦闘機人の性質故にAMF下でも問題なく攻撃できるディエチの砲撃。
どちらが強いかは言うまでもなく、じわじわとディエチの砲撃はなのはの砲撃を圧し始める
しかし、
「ブラスターシステム、リミット1リリース!」
なのははここで切り札を切る。
『ブラスターシステム』。なのはとそのデバイス『レイジングハート』に対する多大な負荷と引き換えに、限界を超えた威力を生み出す強化を施すための新システム。
目に見えて威力が上がるなのはの砲撃。
その威力はディエチの砲撃を圧し返し始める。
「IS+、
その瞬間、ディエチの砲撃が消え去った。
『protection.』
レイジングハートが展開した防御魔法が、なのはの真後ろに一瞬で移動したディエチのイノーメスカノンにようる殴打を間一髪で防ぐ。
「ッ!IS、へヴィバレ」
「シュート!!」
その状態から、後方に飛び退き、再び砲撃を放とうとするディエチ。
しかし、なのはの射撃魔法『アクセルシューター』の速度が勝り、ディエチを吹き飛ばした。
一方、そのころヴィータは、ガジェットドローンを殲滅していた。
「きりがねー。……ッ」
ガジェットを全てスクラップにし、油断した。してしまった。
ヴィータは背後から刃が貫いた。
「ッ!ああああああぁぁぁ!!」
振り向かず、自身のデバイス『グラーフアイゼン』を振り抜く。背後の何かが砕ける音。
その瞬間振り向き、ソレを確認する。
そこには、複数の足を持つ機械兵がいた。周囲を見回すと十数体はいる。
「こいつら……!」
ヴィータはそれを見て気が付いた。
なのはが撃墜された時のことを。その原因となったアンノウンがいたことを。
なぜなら、その機械兵は、
「残さず、ぶっ壊す!」
なのはを撃墜したアンノウンと変わらない形状をしていたのだから。
(なぜ、崩れない?)
アインヘリアルに攻め込んだピンクの長髪の戦闘機人。ナンバーズの7番、セッテは考える。
いくら、アインヘリアルが地上本部にとって重要な武器とはいえ、ここの戦力は攻撃が始まってから未だに削れていない。
セッテは戦闘特化の戦闘機人だ。敵が管理局の、それも地上の戦力ともなれば、まさに無双が可能なほどの強さを持つ。その強さは先日の地上本部襲撃の時にいかんなく発揮された。
だが、目の前の部隊は崩れていない。
セッテは知らないことだが、その他のアインヘリアルの防衛にあたっていた部隊が、ここの部隊に合流していた。ただ、それでも彼女はさほど時間をかけずに蹂躙できるだろう。
連れてきたガジェットドローンは、敵の魔導兵器によって次々落とされている。
(こっちのダメージはなし。だが、向こうの戦力も減少していない)
固有武装『ブーメランブレード』を投擲するも、それは敵まで届かず、防御魔法で止められる。
セッテは理解していなかったが、ここにいる部隊の人間は、レジアス・ゲイズ中将より、ある命令を受けていた。
『攻撃を捨てて、防御に専念せよ』と。
いくらセッテが強いと言っても、地上本部のアインヘリアル防衛を任せられるほどの部隊の人間が50人以上で重ねて放つ防御魔法を貫くことはできないだろう。
(私一人では無理があるようです。しかし、トーレとチンクがもうすぐ到着するでしょう。そうなれば、崩すことは可能)
そう結論ずけ、セッテは攻め続ける。
「セッテ、何をしている」
「姉が加勢に来たぞ」
実際、セッテの憶測通り、彼女の姉である二人はすぐに現れた。
大柄で短髪の戦闘機人、ナンバーズ3番トーレ。
小柄な体型の銀髪眼帯の戦闘機人、ナンバーズ5番チンク。
この二人の合流によって、地上部隊側の戦力は一気にそぎ落とせる。
そう思い、合流直後から変わると思われていた流れは別の方向に流れ始める。
そもそも、地上部隊はなぜ、防御し続けて時間稼ぎに努めたのだろうか?
答えは単純だ。彼らの目的は最初から、時間稼ぎだったというだけ。
「IS、ライドインパルス!」
「IS、スローターアームズ」
ISを発動し地上部隊を攻撃しようとした、セッテ、トーレ。そして、味方を巻き込まないためにISを用いず、固有武装『スローイングナイフ』で斬りかかろうとするチンク。
だが、戦闘機人三人は後ろに
「ッ!?なにが!?」
地上部隊を守るかのように立ちふさがるのは猫のような耳を持つ女だった。
「……間に合った」
「『管理局最速の、使い魔』……!」
『管理局最速の使い魔』は、始めからそこにいたような態度でそこに立っていた。
「……地上のみんな……下がって」
「トーレ、いくら『管理局最速の使い魔』でも、三人がかりなら」
「近中距離三人で一斉にかかれば勝てるはずです」
「その通りだ、負けるはずはない」
そう言いながら、トーレの頭の中に嫌な予感がよぎっていた。
かつて、自分と互角だったこの使い魔は、ここまで余裕そうに自分の前に立っているのか。
「……たしかに」
使い魔が口を開く。
「……今までの私じゃあなたたち全員には勝てない」
戦闘時の速度が嘘のようにゆっくりと。はっきりと。
「……でも、今の私は違う。……それを。……見せる」
『管理局最速の使い魔』は首輪に手で触れる。そして……
「……『シルフ』セットアップ」
正村特製インテリジェンスデバイス『シルフ』が、起動した。
たくヲです。
スターズの動き回。
なんというタイトル詐欺。少なくとも『転生者と』ではない。
これからも『リリカルでマジカルな世界で最強の狙撃手を目指す』をよろしくお願いします。