インテリジェンスデバイス『シルフ』。転生者、正村島羽が制作したレスト専用のデバイス。
本来、使い魔は基本的にデバイスを必要としない。それは、使い魔と呼ばれる存在のベースが道具を使わぬ動物であることが理由だ。
だが、正村は自らの使い魔であるレストにデバイスを与えた。
そもそも、レストはまともな使い魔とは言い難い。使い魔になる過程こそ、他と変わりないとしても使い魔になってからの行動が、他とは違う。
最大の要因として、料理があげられるだろう。手先が器用なレストは料理をこなす。それも一般よりはるかに上手に、だ。
そう。レストは道具を扱えるのだ。
つまり、デバイスを使えないということも、ない。
戦闘用に形状が変化した『シルフ』はレストの腕にかぎ爪のように装備される。
黒っぽい服からバリアジャケットに変化する。動きやすそうな印象を与える黒系にところどころに白のアクセントが入ったバリアジャケット。
「……シルフ。……行くよ」
『了解しました。マスター』
レストは前方の戦闘機人を見据える。
「ッ!IS、ライドインパルス!!」
「IS、スローターアームズ」
「IS+発動、
トーレがISを発動し高速でレストに迫る。セッテは『ブーメランブレード』を投擲しつつ接近。チンクの空気によって隠された『スローイングナイフ』を投擲し逃げ場をなくす。
「……」
『遅いです』
その瞬間。
三人の戦闘機人の身体は宙に浮いていた。
レストは、唯一高速戦闘が可能な戦闘機人、トーレにすら目視不可能な速度で三人の戦闘機人に接近し、すれ違いざまに蹴りつけただけ。
蹴り飛ばされた三人は完全に気を失っている。
「…………はあ」
『大丈夫ですか?』
「…………あまり…………大丈夫じゃ…………ない」
このことが示しているのは、三人の戦闘機人は呆気なく捕縛され、レストは戦闘不可能なレベルの体力を一瞬で消費したということだけである。
廃ビルの四階でティアナは戦闘機人に追いつめられていた。
戦闘機人たちが床を壊しながら四階に上がってきたため、戦闘機人に囲まれてしまったのである。
ティアナは『クロスミラージュ』を両手に構えながら考える。
(射撃型の戦闘機人の攻撃なら打ち落とせるけど、それだと他の戦闘機人を倒せない。ダガーモードで近接型の戦闘機人の攻撃を防ぐと、射撃型にやられる。なら、射撃型を先制攻撃で倒してから、接近される前に残り二人を倒すしか……でも、この作戦はギリギリ。躱されれば、私は殺される)
その時、思いだした。
『ティアナの長所は射撃の精密さと幻術が使えるところだ。特に幻術は個人戦でもチーム戦でも使える便利な魔法だ。だが、今まで鍛えていたのはチーム戦用の幻術。だから、この特訓では個人専用の幻術を鍛える』
『でも、そんな一朝一夕で身につくものではない気がしますけど』
『大丈夫だ。教えるのはたった一つだけだからな。一応戦闘機人戦までに間に合わせる。……ああ、そうだ』
『なんですか?』
『基礎は俺が組んでやるが、新しい方式の幻術って作れるか?』
(そうだ。あったんだ、一つだけ)
ここなら、おそらく確実に当てることができるだろう作戦が、ある。
正村島羽中将に教えてもらった、一対多の専門技が。
(これなら!)
ティアナは準備を始める。両手の『クロスミラージュ』に三つずつカートリッジをロード。
ある魔法を発動し一瞬で準備を終えたティアナ。
その瞬間、戦闘機人たちが襲いかかる。
ノーヴェとディードがティアナに挟み撃ちするように跳びかかり、ウェンディが『ライディングボード』を構えエネルギー弾を放とうとする。
そして、戦闘機人たちはティアナの作戦に気が付く。
ティアナの周囲に浮く大量の魔力弾に。
「クロスファイアー!シュート!!」
戦闘機人が直前まで気が付かなかったのは、ティアナが魔力弾を全て、戦闘機人が解析したものとは別方式の幻術で隠していたため。
大量の魔力弾が周囲にまき散らされる。
ディードとノーヴェが被弾し、戦闘不能。
しかし、ウェンディは盾にもなる固有武装『ライディングボード』で防いだため無傷だった。
「ノーヴェ、ディード!」
ウェンディは呼びかけても答えない二人の戦闘機人を見て、再び、ティアナを睨む。
ティアナがウェンディに『クロスミラージュ』の銃口を向ける。
ウェンディがティアナに『ライディングボード』の銃口を向ける。
その時、ウェンディを背後から一発の魔力弾が貫いた。
「あなたたちを保護します。って聞いてないか」
最後ウェンディを撃ち抜いた魔力弾は、クロスファイア―シュートで撃ち出した魔力弾の一つを誘導弾にしておいたためだ。
「島羽さんに教えてもらってて助かったわ。私がすることは……とりあえずスバルと合流ね」
「ギン姉!」
どれだけスバルが呼びかけてもギンガは応えない。
ギンガはなぜかドリルに改造されていた左手を振るい、スバルの発生させたシールドを砕く。
(やっぱり、戦うしかない)
ドリルを避け後退したスバルに再びギンガが迫る。
ギンガの『ブリッツキャリバー』による蹴りとスバルの『マッハキャリバー』による蹴りが衝突し、重量の差からスバルが押し勝つ。
スバルの『マッハキャリバー』は先日の改造で重量が増している。それゆえの攻撃だった。
(戦法がいつものギン姉らしくない。やっぱり、何かされてる)
ギンガの攻撃にはいつものキレがない。本来のギンガはスバルに経験の差でも戦闘能力でも勝っているはずなのに、押し負けた。
洗脳の影響が戦闘にも出ているのだ。
スバルはウイングロードで空に駆けあがり、ギンガもそれを追うようにウイングロードを展開し空に駆け上がる。
ウイングロードでの移動。二人が交差する瞬間、両者の『リボルバーナックル』がぶつかり合う。
「ッ!?」
今度はスバルが押し負ける。そこに追撃の蹴りが放たれスバルは吹き飛ばされる。
ぎりぎりでウイングロードの上に着地。さらに追撃で放たれる右拳をシールドで防ぎ距離をとる。
「マッハキャリバー!ギア、エクセリオン!!」
『A.C.S. Standby.』
『マッハキャリバー』から左右に展開される魔力翼。
迫るギンガ。左手がドリルのように回転し、スバルを狙う。それをシールドで一瞬だけ止める。
シールドを砕いたドリルがスバルの腹部の前で空を切る。
その一瞬の隙を突き、スバルは左手で膨大な魔力スフィアを形成し、それを右手の『リボルバーナックル』で殴りつける。
「ディバインバスタアァァ!!」
威力が増した近距離直射砲撃がギンガの腹を撃ち抜いた。
ヴィータは肩で息をしながら複数の脚を持つ機械兵、高町なのはを過去に撃墜した『アンノウン』を叩き潰す。
受けた攻撃は最初の一回限り。それ以降は一度も攻撃を受けていない。
振り向きつつ、ハンマー型デバイス『グラーフアイゼン』を振るい、さらに一機をスクラップに変え、二機ほどをまとめて吹き飛ばす。
砕いた数は敵の総数の半分を超えた。
だが、その時、ヴィータの身に直感のようなものが走った。
虫の知らせともいえる嫌な予感。
カートリッジを一つロードしつつ転がりながらシールドを作る。
「あいつは……!!」
地上本部襲撃時、ヴィータを襲った機械のカマキリがそこにいた。
「ッ!アイゼン!」
シールドにありったけの魔力をつぎこみつつ、カートリッジを二つ込める。
砲撃。
シールドに衝突する。アンノウンを貫通、余波で吹き飛ばした砲撃は、カートリッジ一つ分以上の魔力をこめたシールドによって止められる。
『グラーフアイゼン』の形状が変わる。ハンマーの打撃部の片方から噴射口が現れ、もう片方からはスパイクが出現する。
『ラケーテンフォルム』。一度は高町なのはの防御すら貫き倒した火力と加速に優れた形態。
シールドが割れる。
ヴィータは一気にカマキリと距離を詰める。
その速度に対応できなかったのか先程までヴィータがいたところに向け放たれ、砲撃の余波がヴィータの身体を叩き、その衝撃がバリアジャケットを少し貫く。
「ラテーケンハンマァァァー!!」
ヴィータは衝撃にひるむことなく、スパイク部でカマキリを叩き砕いた。
見回すと先程の砲撃でアンノウンは殲滅している。
『聖王のゆりかご』を止めるため休むことなくヴィータは目的地である駆動炉を目指す。
時空管理局の査察官であるヴェロッサ・アコースと聖王教会のシスターであるシャッハ・ヌエラの二人はジェイル・スカリエッティの研究所前にいた。
周囲に転がるのはガジェットの残骸。ゆりかごが上がる前からガジェットと戦闘を行っていたため、体力と魔力こそ消耗しているものの傷を負っていないのは二人の実力によるものだろう。
「まだ、中にはまだ誰かいるだろうね」
緑髪の男、アコースは二体の魔力犬を従わせながら自身あり気に言う。
「その根拠は?」
バリアジャケットを纏い、トンファーのような双剣を構えたシスター、シャッハは問う。
「廃棄する施設の防衛システムを稼働させ続ける必要はないだろう?この施設の防衛用ガジェットを『ゆりかご』に移しておいた方が時間稼ぎはできるだろうしね」
「単純にこちらに人員を割かせるためのダミーという可能性もありますが」
「まあどちらにせよ、向こうも人員は足りてるみたいだし、ガジェットを広域殲滅魔法で落とせるはやても向こうにいるから問題はないと思うけどね」
アコースは
「今、フェイト執務官もこっちに向かっているらしいし、先に中を調査しておこうかな?査察官らしくね」
「いいでしょう」
作者のたくヲです。
タイトル詐欺回再び。転生者登場せず。
何気にアコース査察官初登場なんですよね。もっと描写増やせばよかった気がします……正村が知り合いっぽい発言はしていましたが。
これからも『リリカルでマジカルな世界で最強の狙撃手を目指す』をよろしくお願いします。