正村島羽だ。
『人質をとった立て篭もり犯を狙撃せよ』これが今回、師匠……ヴァイス一等陸士に与えられた任務だった。いつも通りの任務。しかし、その人質が問題だった。
『ラグナ・グランセニック』それが人質の名前だ。グランセニックの性でわかると思うが、ヴァイス一等陸士の妹だ。……原作通りならヴァイス一等陸士はミスショットをしてしまうだろう。そんなことを見過ごせるはずがない、と俺はシグナム指揮に抗議しに行った
「シグナム指揮!!!なにを考えているんですか!!?身内が人質にとられてるのを見て、冷静に撃てるはずがないじゃないですか!!!」
「……確かに私もそう思う」
「だったらどうして……」
「ヴァイス一等陸士からの要望だ。ヴァイス一等陸士が弟子に対しての伝言を頼んできた。弟子っていうのは正村三等陸士、君のことだろう」
「……聞かせてください」
「『自分のことは自分で片を付ける。それに誰かが狙撃に向かってミスをしたら、俺はそいつを許せなくなる。俺はそんなことしたくない』だそうだ」
「師匠……」
俺は何も言えなかった。そして―――――
ヴァイス一等陸士はミスショットをしてしまい、武装隊をやめた。
武装隊の宿舎の前、ヴァイス師匠は荷物をまとめて出ていくところだった。
「ヴァイス師匠……」
「……ああ、正村か」
「……」
「まったく情けねえよな。あんなことをてめえで言って飛び出して行った挙句ミスショットだ。情けないにもほどがあんだろ」
それは静かな声だった。だが、俺にはその中にある後悔、怒りといった負の感情が伝わってきた。
「もう俺はお前に師匠なんて呼ばれる資格はねえよ。そもそも二か月前から、お前の腕は俺より上なんだ。もうお前に教えることなんてねえんだ」
「……」
「じゃあな」
そう言ってヴァイス師匠はバイクに乗る。ヴァイス師匠に俺が言えることは……
「いつまでも俺にとってはあなたは師匠ですよ」
「……」
「安心してください。俺は『やめないでください』なんて言いませんよ」
「……」
「俺が言えんのは一つです。……待ってますよ」
「……」
ヴァイス師匠は何も言わなかった。そしてヴァイス師匠はバイクを出した。
[神様]
[なんじゃ]
神との念話。念話を覚えたらすぐにできるようになったものだ。
[俺ってなんなんでしょうか]
[さあのう]
[起こるとわかっていた悲劇すら止められない。そんな力に何の意味があるってんだ!!!]
[意味のない力などあるまい。悲劇を止めたいというのなら、とにかく頑張るしかないじゃろう。おぬしの力は世界を変える力じゃ。その世界で努力をすればすべて救うこともできるじゃろう]
[そう、ですかね?]
[無論。神に間違いはない]
[……わかりました。取り乱してすみませんでした]
[まあ。困ったらいつでも呼ぶといい。その世界に送った責任があるからのう]
[ありがとうございます。神様]
俺はそう言って念話を切った。
(やるしかねえよな。本当にこの体に世界を変えられるだけの力が眠っているっていうんだったら)
そう思いながら、星空を見上げる。都会とは思えないほど綺麗な星空だった。
たくヲです。
主人公の後悔。原作開始まで3年半。