彼らの異世界ライフ モモンガさんがやっぱり苦労する話 作:やがみ0821
蒼の薔薇のリーダーであるラキュースは当初、この依頼を受ける予定はなかった。
成金が他国から王都にやってきたという噂は彼女も当然に知っている。
彼女がひとえに、今回の依頼を受けたのは友人たるラナーの頼みもあったからだ。
メリエルの正体を探ってほしい、と頼まれてはラキュースに断る理由は特に無い。
何しろ、メリエルは怪しすぎた。
奴隷を100人も購入し、バカみたいに金をバラ撒くのは何かあると疑ってほしいと言っているようなものだ。
そして、今回、メリエルが提示してきた報酬も破格だ。
1人あたり金貨1万枚というのは子供が考えたような数字。
ラナーからは報酬は貰っていい、と言われていた為、ちょうどいい稼ぎとばかりにラキュースは思っていた。
「えっと、本当にいいんですか?」
ラキュースはメリエルにそう問いかけた。
この屋敷を訪れ、そしてこうしてメリエルに対面してから、ラキュースは何度目かになる問いかけだ。
ラキュースとガガーラン、その2人が正式に依頼を受けるという意思表示をすべく、メリエルの屋敷に訪れていた。
「構わないわ」
メリエルは鷹揚に頷いた。
「しかしよ、随分と景気がいいじゃないか? え、メリエルさんよ?」
ラキュースの隣に座るガガーランがそう問いかける。
「報酬全て前払い、それも全員分。こんな話、美味すぎて蝿も寄らねぇぜ」
ガガーランの言葉にメリエルは優雅にティーカップを手に取り、口をつける。
その仕草一つでラキュースにはメリエルがそこらの粗暴な輩ではないことが窺えた。
そもそも、メリエルはあまりにも美しすぎた。
その衝撃は一生忘れることはないだろう、とラキュースは確信する。
「私は蒼の薔薇というのは何者にも替えがたいと思っているわ。それなら、相応の報酬を用意するのが当然。こちらは新参者であるから、これくらいは誠意を見せないといけないと思った次第」
道理は通っている。
新参者はどこでも煙たがられる。
それ相応の誠意を見せねばならない、というのは確かにそうであった。
「まあ、報酬はいいが、何故、俺たち全員を1ヶ月間、屋敷に詰めさせない? 1日2、3人が詰めていればいいというのは幾ら何でもおかしいだろう?」
「簡単な話よ」
メリエルは微笑み、告げる。
「屋敷に1ヶ月も詰めさせるなんて、気が滅入るでしょ? だから交替で、息抜きしてほしいのよ。私は理解ある雇い主になりたいの」
「怪しすぎて、逆に困るんだが」
ガガーランは正直にそう告げた。
「そうかしら? じゃあこうしましょう。王都の全ての冒険者を私が雇って、護衛につけるようにする。その上で、さっきの1日2、3人詰めているという形にすれば……」
「いやそれ、屋敷に物理的に入らないからな? ていうか、その状態で誰から襲われるんだよ」
ガガーランは絶望した。
メリエルが非常識過ぎる、と。
「分かりました、メリエルさん。にわかに信じがたいですが、あなたがそう仰られるのであれば、こちらとしては構いません」
メリエルはラキュースに満足気に頷き、ところで、とずいっと顔を彼女へと近づける。
「仕事の話は終わりにして、ラキュースって可愛いわね。どう? 私の個人的な友人にならない?」
ラキュースは呆気に取られた。
ガガーランはくつくつと笑っている。
「おい、ラキュース。良かったな、口説かれて」
「え、いや、そういうのはお断りします」
えー、とメリエルは不満気に頬を膨らませてみせる。
「いいじゃないのよ。別に減るもんじゃないし。私だってお友達になりたい」
えー、とラキュースは困惑した。
さっきまでとは打って変わって、歳相応の少女のような振る舞いだ。
しかもそれが超がつく美少女がやっている。
ティアだったら即落ち間違いないわね――
ラキュースがそんなことを思っていると、おもむろにメリエルが口を開く。
「それじゃ、どうやったらお友達になれるかしらね。八本指でも潰せばいいかしら」
さらりと出てきた単語にラキュースは目を見開く。
その反応に、メリエルはくすりと笑う。
「私は新参者だから、詳しくは知らないけど、八本指とかいうのが威勢が良いらしいわね。王国の貴族や商人と結びついて、アレコレやっているとか何とか」
ラキュースは直感する。
コイツはヤバイ、と。
新参者とか言いながら、既にそこまで把握しているのか、と。
メリエルはかなり深いレベルで八本指を把握しているように、ラキュースには思えた。
当のメリエルは自身の髪を指でくるくると巻きながら、言う。
「もう分かると思うけど、私、八本指の六腕から狙われているっぽいのよ。だから、あなた達を護衛に依頼したの」
いったい、メリエルは何をやったのだろう、とラキュースは不思議に思ったが、それを聞いてもうまくはぐらかされて終わりそうな気がした。
「何だ、ちょうどいいじゃねぇか。俺らも八本指にはちょいとばかし用がある……それと、俺とは友達になりたくねぇーのか?」
ガガーランにメリエルはにっこりと告げる。
「あいにくと私はあなたが好みじゃないわ。来世からやり直して頂戴」
あんまりといえばあんまりな物言い。
あまりにも失礼過ぎる言葉であったが、ガガーランとしては真っ向からこんな風に言われるのは中々に新鮮であった。
彼女は盛大に笑い、告げる。
「よし、俺は一方的にお前を友人と思うぞ。というわけでメリエル。酒だ、酒寄越せ。お前は上等な酒を持っているだろう?」
「黙れ筋肉ダルマ。そこらの泥水でも飲んでいろ」
メリエルはにっこり笑顔でそう言うが、手近に控えていたメイドに酒を用意するよう命じる。
えぇ、とラキュースは困惑する。
なぜか意気投合しているように見えるガガーランとメリエル。
何でそうなるの、とラキュースは思ったが、どっちも常識はずれという共通点があった。
ともあれ、彼女としてはとりあえずうまく纏まり、ホッとした。
「それじゃ、明日からよろしく頼むわ。あと、筋肉ダルマはさっさと酒もって帰れ」
メリエルはガガーランを睨みつけるが、当のガガーランは笑うだけだった。
「畏れながらメリエル様。あのような雑魚共に任せずとも、我々で処理をしますが……」
ラキュースらを見送った後、ソファでくつろぐメリエルにソリュシャンは告げた。
「そうね、ただ潰すだけなら一瞬よ。エイトエッジアサシンあたりを送り込めばいい」
だけど、とメリエルはソリュシャンに優しく言葉を続ける。
「それじゃあ楽しくないでしょう。結果が分かりきった勝負などつまらないわ。同レベル帯の者同士の戦い程、面白いものはない」
「申し訳ございません、メリエル様の娯楽に対し、私は失礼な言葉を……」
構わないわ、とメリエルは言い、立ち上がる。
そして、ソリュシャンの頬へと手を伸ばし、優しく撫でる。
「もっとも、私は自分の力を誇示することも好きだけどね」
ソリュシャンは恍惚な表情と化すが、メリエルは彼女とルプスレギナの失態を忘れてはいない。
「ま、当分はお預けね」
その意味を察し、ソリュシャンは絶望した。
過去の自分を殴りたいところだが、さすがに過去に戻る魔法など存在しない。
そんなソリュシャンの心を見透かしたかのように、メリエルは告げる。
「これからの頑張り次第よ。ところでクレマンティーヌはどうかしら?」
「訓練開始後、既に40回死んでます。それなりに動きは良くなってきております」
「そうね、とりあえず100回死ぬまでやってみましょうか。そんだけ訓練すれば、まあそこそこのレベルにはなっているでしょう」
メリエルとしてはたとえクレマンティーヌがレベル100となったところで、どんな奇襲を掛けられようとも、打ち倒す自信があった。
ゲーム上のものといえばそれまでの話であったが、現実化した今となってはメリエルはおそらく歴史上に類を見ない程に多数の強者――ワールドチャンピオン達――と同時に戦った経験を有している。
「でも、クレマンティーヌとは仲良くしたいわね。殺ったり殺られたりの関係じゃなく、こう、ラブでイチャイチャな……」
やれやれとメリエルは溜息を吐く。
「ところでメリエル様、本日の夕食は何になさいますか?」
「お肉が食べたい。分厚いのがいい」
「畏まりました」
「もうそんな時間なのね」
メリエルが窓の外を見れば、夕日が顔を覗かせていた。
「まあ、簡単に終わるでしょう」
エルヤー・ウズルスはワーカーであり、天武のリーダーだ。
しかし、その天武は彼以外は技能持ちのエルフの女奴隷で構成されている。
要するに、彼のワンマンチームであり、エルフの奴隷達の扱いは悪い。
彼が法国出身であることにより、扱いの悪さは拍車がかかっている。
しかし、彼の実力は本物であり、そこは誰もが認めるところだ。
もっとも、彼はその尊大な態度から他のワーカーからも煙たがられていた。
今回、彼らがやってきたのは王都郊外にある1軒の屋敷。
依頼内容はここの屋敷の主であるメリエルの暗殺。
報酬は金貨5000枚という破格のもの。
それだけの重要人物とのことだが、護衛は剣士1人だけで、あとはメイドしかいないと依頼主から彼は聞いていた。
正確な情報を集めてから、行動に移すべきであったが、彼としてはいざとなれば奴隷達を盾にすればいい、と考えており、また彼は実力に自信があるからこそ、どのような待ち伏せがあろうと切り抜けられると確信していた。
とはいえ、さすがの彼も真っ昼間から突撃する勇気はない。
故に、夜を待ったのだ。
あたりは静まり返っており、時折、冷たい夜風が彼の頬を撫でる。
他のワーカー達はまだ来ていないようだ。
屋敷の門の前へと来た段階で、彼は視線を女奴隷の1人に向けた。
「おい」
さっさとしろと言わんばかりにそう彼が声を出せば、女奴隷は怯えながら門の周囲に罠がないかどうか探る。
彼女はレンジャーであった。
「罠は、ありません。人の気配もしません」
まあ、そうだろうな、とエルヤーは思う。
故に、彼はそのまま彼女に扉を開けさせ、先頭を歩かせる。
暗く、よく見えはしないが、非常に整った庭園であると彼は感想を抱く。
よほど屋敷の主は金持ちなのだろう、とも。
今回依頼主からはメリエルを殺しさえすれば、彼女の財産については好きにして良いとも言われている。
他のワーカーも今回のメリエル暗殺には参加するだろうからして、エルヤーは受けるなりすぐに帝都を出立し、強行軍で王都にやってきていた。
それが功を奏した。
「期待できますねぇ」
知らず知らず、頬が緩む。
既に彼の頭の中ではこれから得られる富をどう使おうかという算段だ。
そして、メリエルは素晴らしい美貌を誇るという。
殺す前に抱くのもいいだろう、とエルヤーの頬はますます緩む。
「人がいます」
唐突な奴隷の声に、エルヤーは舌舐めずりをする。
彼は前に立つ女奴隷を邪魔だとばかりに、蹴飛ばし、前へと進み出る。
月明かりに照らされていたのは金髪をショートカットにした、猫のような女だった。
エルヤーはその女に見覚えがあった。
「あー、だっる。さっさと終わらせたいから、かかってきなさいよ」
すんげぇかったるそうに、スティレットを手で弄びながら、女は言った。
「これはこれは……まさかあなたがこんなところにいるとは思いませんでしたよ」
エルヤーはそこで言葉を切り、獰猛な笑みを浮かべる。
「漆黒聖典第9席次、クレマンティーヌ・クインティア」
そう呼ばれたクレマンティーヌはきょとんとした顔になり、すぐに嬉しそうな顔になる。
「なんだー。あんた、法国の関係者?」
「法国出身です。色々やり過ぎましてね」
「ふーん……んじゃ、同じとこ出身のよしみで教えてあげるけど、この屋敷には手を出さない方が良いわ。地獄より酷い目に遭うわよ」
実際に体験したクレマンティーヌからすれば、いくら強くなれるからと言っても、死んで蘇ってまた死んで、などと嫌な話だった。
「これはご忠告を感謝します。しかし、私も……」
不意に、エルヤーは刀を抜き放ち、そして、連れてきた女奴隷のうち、1人へ向ける。
そして、その女奴隷の腹へ刀の切っ先から突き刺した。
悲鳴を上げ、崩れ落ちる女奴隷。
他の奴隷たちは恐怖に怯え、固まる。
やがてエルヤーは突き刺した刃を引き抜き、血糊を払う。
「この女奴隷は胸が少し小さいので、買い替えようと思っていたのですよ。そこにちょうど、この屋敷の主の暗殺依頼がきたので」
「……あー、あんた知らないわよ」
クレマンティーヌは「やっちまったなー」と続けた。
反応はすぐにあった。
クレマンティーヌの脳裏に響く、彼女の飼い主の声。
すぐさま、クレマンティーヌは飼い主の言葉に承諾し、口を開く。
「良かったわね、あんた。メリエル様が直接相手してくれるって」
エルヤーが何か言うよりも早く、彼は瞬間的に背後に気配を感じた。
彼が振り返れば、そこには今さっき彼が突き刺した女奴隷の傍に寄り、治癒魔法を掛けている女の姿があった。
エルヤーは思わず、息を呑んだ。
その女は月明かりに照らされ、さながら女神が降臨したかのような美貌と幻想的な雰囲気を伴っていた。
しかし、と彼の頭には疑問が過る。
どのようにして、現れたのだ、と。
「これでもう大丈夫よ」
エルヤーが見守る中、メリエルは女奴隷にそう微笑みかけた。
すっかりと痛みもなくなり、出血により多少気分が悪いくらいな女奴隷は驚愕の眼差しでメリエルを見つめる。
「耳も治してあげるわ」
そう言ってメリエルが唱えると、半分程のところで切られた両耳がみるみるうちに再生していく。
エルヤーは舌打ちする。
高位の魔法詠唱者――
どれほどにそれが厄介か、彼は知っていた。
今、メリエルは無防備な姿を晒している。
しかし、彼は動けない。
クレマンティーヌがいるためだ。
とはいえ、クレマンティーヌには既に戦闘を行う気は全くなかった。
なぜならば、メリエルから手出し無用と言われたが為だ。
エルヤーの見ている中で、残る2人の奴隷達の耳も治したメリエルは、ようやくにエルヤーに向き直った。
「初めまして、私がメリエルよ」
「これはこれは、わざわざ出向いて頂き、感謝致します。しかし、あいにくとここで死んで頂きます」
直後、エルヤーは一目散にメリエルへと縮地でもって突っ込んだ。
その素早さたるや常人の目には見えぬ程であるが、しかし――
「なッ……!」
エルヤーは全く信じられない光景を目撃した。
彼の刃はメリエルによって、摘まれていたのだ。
決して手を抜いたわけでもない。
初撃で決めねば厄介、そうと判断したがゆえの攻撃は、しかし、呆気なくメリエルに防がれた。
それは決してまぐれなどではない。
少なくとも、エルヤーの知る限り、どんな輩であっても、摘むことなどできはしない。
「ごめんなさいね、あなたの攻撃では私に傷一つつけられないわ」
そう言って、メリエルは摘んだ刀身を離す。
エルヤーはすかさず連撃をメリエルに叩き込むが、彼女が言った通りかすり傷一つ、負わせることができない。
ならば、と武技である能力向上・能力超向上を使用し、空斬を叩き込む。
しかし、やはりかすり傷一つ、メリエルに負わせることはできない。
「なぜだ!」
エルヤーはメリエルに斬りつけながら叫ぶ。
彼は当然の反応だろう。
「簡単よ。あなたが弱いから」
メリエルはそう言い、現断《リアリティスラッシュ》でもって、エルヤーの片足を切り飛ばす。
バランスを失い、そして痛みに彼は絶叫を上げる。
「ち、ちゆだ! ちゆをよこせ!」
エルヤーの言葉にメリエルは鼻で笑ってみせ、彼女はエルフの女奴隷達のところへと行く。
「だ、そうだけど、どうする?」
問いに奴隷達は暗い笑みを浮かべ、口々に叫ぶ。
死ね――!
答えはそれで十分に過ぎた。
「あなた、人望がなかったのね。まあ、でもいいじゃない? まだ足が1本と両手が残ってるし、何より生きている。ほら、早く斬りかかってきなさい。早く! 早く! 早く!」
メリエルは両手を広げて、そう言ってみせる。
しかし、エルヤーは痛みでそれどころではない。
出血は当然止まらず、彼の命はすぐに尽きるだろう。
「しにたくない! たすけてくれ!」
メリエルはきょとんとした顔になり、そして笑い出す。
「面白い冗談を言うじゃないの。暗殺目標に、命乞いをするなんて、どこの三流よ? まったく、度し難い」
そう言い、メリエルはエルヤーへと近寄り、利き腕を思いっきりに踏みつける。
骨が砕ける音と共にエルヤーは絶叫する。
「クレマンティーヌは殺人大好きの狂ってる可愛い子だけど、もうちょっと骨があるわよ?」
いや、強制されてるだけだし、とクレマンティーヌは心の中でツッコミを入れた。
「さて、どうやって殺そうか? 一思いにやるというのはそれ以上苦痛を与えることができないという意味で駄目ね」
うわー、マジ外道ー、とクレマンティーヌは心の中で思ったが、当然口には出さない。
「そうね、私は別にそこまで恨みはないし、ただエルフの子達を保護したかっただけだから、あとは彼女達に任せましょう」
そう言って、メリエルは3人に短剣を1本ずつ手渡した。
それはなまくらの短剣だった。
「この短剣はどんな硬いモンスターにも必ず最小だけれどダメージを与えられるものなの。それをどうするか、ここであなた達が何をするか、自由にして頂戴。あなた達の生活については私が面倒みるから、安心して」
にこにこ笑顔でメリエルはそう言った。
メリエルの言葉にエルフ達は壊れた笑みを浮かべながら、エルヤーに向かっていき――
エルヤーを短剣で滅多刺しにし始めた。
「あー、良いことした後は気分がいいわ。これもまた善行ね」
その光景を見ながら、メリエルは満足気に頷きながら言った。
「善意なんだろうけど……善意なんだろうけど!」
それは違うとクレマンティーヌは全力で叫びたかった。
しかし、言ったところで無駄ということを彼女はよく知っていた。
「ま、明日からは蒼の薔薇も来るし、楽になるわねぇ」
メリエルはそう言いながら、滅多刺しを終えて、血まみれになったエルフ3人に声を掛ける。
「ねぇ、あなた達。一応聞くけど、帰る場所があるなら、そっちに行ってもいいわよ?」
エルフ達は顔を互いに見合わせ、首を横に振る。
「それじゃ、私の傍にいなさい。改めて、私がメリエルよ。私に絶対の忠誠を誓いなさい」
ふふん、と胸を張ってそう言うメリエルに、エルフ達はただ頭を垂れた。
クレマンティーヌはその光景を見、溜息を吐く。
また競争相手が増えた、と。
そんなクレマンティーヌの心など露知らず、メリエルは機嫌良く、にこにこ笑顔だった。