彼らの異世界ライフ モモンガさんがやっぱり苦労する話 作:やがみ0821
一気にいくぞ!
月に一度の定例会議が帝国にはある。
皇帝であるジルクニフをはじめとし、バハルス帝国の主だった面々が集まるものだ。
出席者がそれぞれの部門のトップであり、非常に忙しいということもあって、会議の時間は早朝から2時間以内に終わらせられるよう、事前に資料や議題などが回覧される。
今回の会議で最も重要で、そして難しい議題がメリエル対策だ。
敵対なんぞできもしない、しかし、むこうは気まぐれで敵対してくるかもしれない、という最悪の相手だ。
使節団の感触では女好きというのが唯一の弱点であるような気がしないでもないが、ハニートラップに掛かってくれるようなレベルではないことは確かだ。
報告書によれば、女神の如き容姿であり、魅入らぬ者はいない、とまで断言している。
そんなメリエルをどうにか帝国の味方――はムリなので、何とか友好関係を保つという会議だ。
会議が開かれる場所は警備上、もっとも警備がし易い、城の奥まった場所にある。
また会議中は四騎士をはじめ、近衛兵が過剰ともいえる程にガッチリと警備を固める為、蟻一匹、入れないと言っても過言ではない。
ジルクニフが会議室の前まで来ると、ちょうど他のメンバーも集まっていた。
フールーダをはじめ、合計で10人程度だ。
これもいつも通りのことだ。
定刻通りに会議を始める為、同じような時間に会議室前に到着することになる。
全員揃って会議室に入るのはルールという程でもないが、何となくそうなっている。
「待たせたかな?」
「いえ、我々もつい先程、来たばかりですので」
フールーダの言葉にジルクニフは軽く頷いて、告げる。
「それじゃ、入って始めるとしようか。おそらくは帝国始まって以来の、難題だ」
ジルクニフの言葉に近衛兵が会議室の大きな扉を開く。
いつもと変わらぬ会議室――ではなかった。
誰も彼もが息を呑んだ。
ジルクニフが座るべき場所に、女神の如き容姿の女性が座っていたからだ。
彼女はとても親しげに手を上げて、にこやかに微笑んだ。
「はじめまして、帝国の皇帝及び官僚の皆さん」
その綺麗な声に、弾かれたように四騎士達がジルクニフ達の前へと進み出、各々得物を抜いた。
やや遅れて、さらに近衛兵達もまたジルクニフ達を取り囲み、剣を抜く。
それを見、メリエルは今度は口元を歪め、悪魔かと見紛う程の邪悪な笑みを浮かべた。
そして、ゆっくりと片手を上げ、指を弾いて鳴らす。
瞬間、彼女の背後の空間が揺らいだ。
「バカな……」
呆然と呟く声は誰のものであったか。
数多の剣が、斧が、槍が、短剣が――およそ武器と分類されるものがジルクニフらに向けられた。
ジルクニフは思考を巡らせていた。
しかし、彼がどうこうするよりも早く、口を開いた者がいた。
「空間に武具を収納しているとでもいうのか……! それも、あんな……あんな神話に出てきそうなものを、あんなに!」
フールーダは絶叫した。
魔法の専門家であるが故に、それがどれほどにとんでもないことであるか、即座に理解できてしまったのだ。
空間から顔を覗かせている武器の数々に込められた膨大な量の魔力も同時に感知してしまう。
彼は直感した。
メリエルの扱える魔法は第10位階であると。
探知妨害系の魔法やマジックアイテムを使用しているのか、彼の眼にメリエルのオーラは見えなかったが、それでも理解できてしまった。
だが、同時に彼は聡明でもあった。
今この状況で教えを請うために飛び出すのは極めて拙い。
飛び出した瞬間に、神話の武器に串刺しにされるのがオチだ。
そう思考したところで、声が響いた。
「お前達、剣を下ろせ。状況は、理解できるだろう?」
ゆっくりと諭すようにジルクニフは告げた。
それにより、四騎士達がまず得物を鞘に納め、ついで近衛兵達が続いた。
「あら、残念ね。神話に出てくる武器に貫かれて死ぬなんて、滅多にできない死に方だったのに」
そう言いながら、彼女もまた武器を収納した。
「あいにくと、会議室で死にたくはないのでね。剣を抜いた非礼を詫びたい。バハルス帝国の皇帝、ジルクニフだ」
「メリエルよ。あなた方が私にどうしても会いたい、会って利用したいとか考えているらしいから来てあげたわ」
そう言い放ったメリエルにジルクニフは冷や汗が流れる。
利用したいとか微塵も考えていないけれども、普通に考えれば相手側はそう受け取るのは当然である為に。
「いや、そんなことはないさ。ところで席に座らせてもらってもいいかな?」
「ええ、構わないわ。ああ、ごめんなさいね、ちょうど目の前にあったから座ってしまって」
「あなたのような方に座られるなら、椅子も幸福だろうから問題はないとも」
メリエルがジルクニフの席から退き、恐る恐るジルクニフは進んでその席に座った。
つい先程までメリエルが座っていたこともあり、ほのかに温かく、また同時に良い匂いが漂ってきた。
メリエル、嫁にできないかな?
一瞬、ジルクニフはそんなことが脳裏に過ぎった。
帝国の守りは盤石となり、経済的にも財政は好転する。
それが実現不可能であるという点に目を瞑れば、とても良い案だった。
そんな馬鹿な妄想は余所に追いやり、メリエルに視線をやると彼女は全体が見渡せる、適当なところにどこからともなく椅子を出して座った。
それを見て、ジルクニフは他の者達にも着席を促し、また同時に四騎士以外の近衛兵に外に出るよう告げた。
反論する者はなく、全員が着席し、扉が閉められたところでメリエルが切り出した。
「さて、皇帝陛下。今回、私が来たのは帝国にとって、とても良いものを持ってきたからよ」
「その良いものとは何かな?」
メリエルは4本の指を立てて示した。
「1つ目、帝国を滅ぼす予定は今のところ存在しないこと。そっちがやることを察知したら、予防的に先制攻撃してこの世から消し飛ばすけど、それ以外はやんないわ」
ジルクニフ以下、帝国側の出席者は心の底から安堵した。
「それはとても嬉しいことだよ。ただ恥ずかしいことだけれど、帝国の全ての組織を統制できているとはとても言えない」
「ああ、勿論、正式なあなたの命令だと確認できない限りはやらないわ。私としては帝国には存続し、繁栄してもらいたいと思っているのよ」
破格の条件だ――
ジルクニフはそう思った。
同時に対価に何を要求されるか、震えそうになったが何とか平静を装う。
「2つ目としては今度、国を作るのよ。それの国家としての承認と国交の樹立、あと通商条約とかその他諸々、互いにとって良い結果となることを行いたい」
どこに国を作るのか、とジルクニフは聞きたかったが、とてもではないが聞けない。
彼女が作るといったら、作るのだろう。
帝国の領土をよこせ、と言われないだけマシだと考えた。
「それはめでたいことだ。ただ、我々とて無条件にアレコレ差し出すわけではない。たとえ、あなたが世界を滅ぼせる程に強大であったとしても、通商上のことは精一杯に抗わせてもらう」
「勿論よ。それに、交渉事に失敗したとしても癇癪起こしてそっちを潰すようなことはしないわ」
それだけの自信があるのか、とジルクニフは思いつつ、メリエルに対する評価を上方修正する。
ただの野蛮な輩ではない、と。
「ただ当然のことであるけれど、我々の経済活動保護、国民保護の為に軍事的な行動も視野に入れた制裁を国家として行使させていただくわ」
「それは当然のことだ。ただ、まずは対話を行うべきでは? 我々は野蛮な土人ではなく、あくまで制裁行動は最後の手段であるべきだと考えるが」
「無論のこと、対話による解決をまず模索する。あくまで、どうしても仕方ないという場合よ」
ジルクニフは再度、安堵した。
これでいきなりの制裁を食らう心配はない、と。
「実務レベルの話に関しては建国後に担当者を派遣するから」
「よろしくお願いするよ。両国の発展の為に、良い協議となること期待したい」
メリエルが満足げに頷いたのを見て、ジルクニフは凌いだことを確信する。
ぶっとんだ要求がくるかと思いきや、そんなことは全然なかった。
「3つ目だけど、王国とそちらが比較的近い将来にカッツェ平野で戦うみたいね」
「ああ、そうだとも」
毎年の恒例行事であるカッツェ平野での戦いだ。
メリエルが知っていても、別段おかしくも何ともない。
「私の軍勢……見たい?」
小首を傾げて問いかけられた。
「見たいか、見たくないかでいえば見たいかな」
純粋にメリエルはどの程度であるか、それを知る必要はある。
ジルクニフは勿論のこと、騎士などの戦いの専門家も同じ意見だろう。
「じゃあ、カッツェ平野には私が勝手に参戦するけど、あくまで帝国側とは別の勢力として参戦するから。ああ、勿論、帝国には手を出さないから安心して」
「それは楽しみだね。ヒントなどはあるかな?」
メリエルはとても楽しそうに笑い、告げる。
「真正面からぶつかったら、世界最強よ」
世界最強とは大きく出たが、それを否定できないジルクニフがいる。
だからこそ、曖昧に笑って楽しみだと言うに留める。
「ああ、それと4つ目なんだけど、国家元首の紹介を。ちょっと衝撃的かもしれないけど、まあ、良い奴だから」
「あなたが国家元首ではないのか?」
「私はそういうのに向いていないので」
ジルクニフは初めてメリエルの声色からその気持ちを確信した。
これ、面倒くさいから誰かに押し付けているやつだ、と。
「それじゃ、ご対面ということで」
メリエルがそう言うと、彼女の横に何の前触れもなく、唐突に現れた。
ジルクニフらはその姿に言葉を失い、唯一、フールーダは目を大きく見開いた。
「はじめまして、帝国の皆さん。私はアインズ・ウール・ゴウン。メリエルの言う、国家元首です」
「私とだいたい同じくらいの実力があるので、あと、アンデッドだけど、そこんとこよろしくね」
嘘だろう、とジルクニフ達は叫びたかった。
なんでこんなに化物がいるんだ、と。
「は、初めまして。帝国の皇帝のジルクニフだ。ゴウン殿はメリエル殿とどういうご関係で?」
ジルクニフは震える声で問いかけた。
もしかしたら、メリエルに対する抑止力とかになってくれる存在かもしれない、と一縷の望みをかけて。
「一応、上下関係です」
「私がアインズに対して反旗を翻すときは事前に書面に提出するから、安心してほしいわ」
ジルクニフ達を絶望させるには十分すぎる返事だった。
「で、最後の用事というか、まあ、善意というかそういうものなんだけど、そこのあなた」
メリエルは突然に四騎士の1人を指差した。
やや薄めの金色の髪をした女性だ。
彼女の顔の半分はその長い金髪に覆われている。
突然に指名されて、彼女は目をパチクリとさせる。
メリエルはそんな彼女の前にゆっくりと歩み寄って、やがて手をかざした。
「まったく、顔は女の命だというのに、もったいない。だから、その呪い、解くから」
女性――レイナース・ロックブルズは耳を疑った。
呪いを解くと目の前の輩はそう確かに言ったのだ。
彼女が何かを言うよりも早く、メリエルは唱えた。
彼女が唱えたそれは第10位階に属する解呪魔法だ。
ついで、大治癒《ヒール》が唱えられ、青く優しい光がレイナースの顔を包む。
「はい終わり」
そうメリエルは言いながら、どこからともなく手鏡を取り出してレイナースに渡した。
夢でも見ているかのような、不思議な感覚に囚われながら彼女は手鏡を受取り、恐る恐るに顔半分を覆っている髪をどかした。
膿を分泌する呪いなど、最初からなかったかのように極々普通に顔が映っていた。
「あ、あぁ……!」
レイナースはゆっくりと崩れ落ちた。
そして、嗚咽を漏らしながら、涙を流す。
「うんうん、これもまた善行ね」
メリエルのその言葉でジルクニフはようやく我に返った。
どうやっても解けなかった呪いを、いとも簡単に解呪してしまったメリエル。
ジルクニフから見ても、それがどれだけ規格外であるか十分に理解できた。
彼は立ち上がった。
「皇帝として、あなたに礼を。よく配下の呪いを解いてくれた。ありがとう」
ジルクニフは深く頭を下げた。
「構わないわよ。何なら、彼女を連絡役として私の傍に置いてくれてもいいけど、まあ、それはそっちで検討して頂戴」
「前向きに検討させてもらうよ」
快い返事をもらえたことでメリエルは満足げに頷きながら、アインズへと視線をやる。
それを受けて、アインズもまた心得たとばかりに頷いた。
「じゃ、私達は帰るので」
「ああ、道中気をつけて」
ジルクニフの言葉を受けて、2人は消え去っていった。
「……まったく、とんでもない連中だ。頭が痛いが、良いこともあった」
ジルクニフの思考は、かつてない程に加速している。
帝国に敵対する意思がないこと、帝国との良い関係を築きたいということが確認できただけでも大収穫だ。
「で、じい。どうだった?」
「……率直に申し上げるのならば、あの御方達の下に馳せ参じたいですな」
「だろうな。人間を遥かに超越した存在だ。魔法に関しても、じいを超越している」
その言葉にフールーダは無論、他の者達もまったく異論はない。
帝国と対等な関係を築きたいと言っていたが、実質的には向こうに天秤は傾いており、こちらは従属するという形にならざるを得ない。
経済力も軍事力も圧倒的に格上であるなら、そうなるのは必然だ。
「……彼らはどちらも第10位階の魔法を行使できるでしょう」
フールーダは静かに告げた。
彼のタレントについてジルクニフは知っている。
またタレントを知らぬとしても、あのフールーダ・パラダインがそう告げたならば、その説得力は絶大だ。
何よりも、メリエルが実際に誰も解けなかったレイナースの呪いを簡単に解いてしまった。
それが何よりの証拠だった。
「例えばの話だが、我が国が彼らの国の下につく、従属すると決断したとして、止める者はいるか?」
ジルクニフの問いに対して、誰も答えない。
「……少なくとも、この場にいた者で反対する者はおらんでしょう。私の見立てですが、メリエル様かゴウン様、そのどちらかが戯れに僅かに力を行使しただけで帝国は消し飛ぶでしょう。勿論、それは戦場で我々の軍団が消し飛ぶという意味ではなく、文字通り帝国が全て。はてさて、我ら帝国においてもっとも強大な戦力である四騎士達は、そのような、至高の方々を相手に回して抵抗できますか?」
フールーダの問いは返答を求めたものではない。
彼は熱に冒されたように、言葉を紡ぎ出す。
「あの方々はそういう方々なのだ。地形を変え、天候を操り、いとも簡単に国を土地ごと吹き飛ばせる。私など、魔法を習い始めた坊主に過ぎない。四騎士と帝国の全軍を向かわせたところで、あの方々の前では数分保てば御の字。本気を出されれば数秒で誰一人残さずこの世から消えるだろう。そうだとも、抵抗など無意味……否、あの方々からすれば我々の抵抗など抵抗にも思われない……」
「ああ、そうだとも俺も全く同意見だ。だが、こちらからわざわざ従属するという選択をする必要はない。しぶとく、ずる賢く、泥水でも啜って生き延びることができれば御の字だ」
ジルクニフの決意の言葉にフールーダはとても愛しく思う。
だが、彼とて譲れないものはある。
しかし、それすらもジルクニフは見透かしていた。
「じいのその様子からすると、すぐにでも彼らの下で魔法の研究でもしたいだろうが、今抜けられるのは困る。じいのように正確に相手の力量を見抜ける者がいない。無論、彼らとの取引でじいの魔法研究を飛躍的に向上させることを確約する……向こうは貿易をしたいと言っているんだ。マジックアイテムやら何やらを買い取ってやろうじゃないか」
「……まあ、それならばしばらくは待ちましょう。ただ、そこの騎士は我慢できないようですぞ」
フールーダに言われて、敢えて見ないことにしていたレイナースへとジルクニフは視線をやる。
既に泣き止んでいるが、今度は別の感情が出ていた。
誰か退室させろよ、とジルクニフは思ったが、そのようなことにまで気が回せというのは酷な話だ。
それほどまでにメリエルとアインズがもたらした衝撃は強かった。
「あー、その、なんだ。連絡役、行ってくれないか?」
メリエルに寝返るだろうな、と確信しながらジルクニフは言った。
「はい陛下。それでは早速、準備を整えてきますので」
表情こそ、いつもとかろうじて変わらないが、それでも喜びは隠しきれていない。
彼女は軽やかな足取りで会議室を出ていった。
「……四騎士の穴埋めから始めないといけないか」
やれやれ、とジルクニフは溜息を吐いた。
「あれで良かったんですか?」
「あれで良かったのよ。シャドウデーモンとか色々ばら撒いてきたし。命令一つで城は落ちるわ」
モモンガの問いにメリエルはそう返した。
帝国から帰ってすぐに2人はモモンガの私室で、くつろいでいた。
「で、今度は法国ですか……なんか帝国でのやり取りを見ていたら、すごく行きたくないんですが」
モモンガもまたメリエルと同様に初めから会議室にいた。
彼は魔法で姿を隠して、お膳立てが済むのを待っていたのだ。
すらすらとこっちの要求を相手に呑ませるメリエルの姿に感心したものだが、同時に自分では絶対にやりたくないとも思った。
「あらどうして? 例の番外席次?」
「いやー、だってメリエルさん、絶対番外を見た瞬間に斬りかかるでしょ? マトモな交渉とかになりませんからそれ」
「まず相手の最強戦力を粉砕した後に、にこやかな笑みを浮かべて交渉する。これがセオリーよ」
「うわぁ……」
モモンガはドン引きした。
わりと本気で。
「ともあれ、あなたの精神衛生上に悪いというなら、まずは私が行って潰して要求を呑ませた後、顔見せは後日とかでもいいわよ?」
「そうしましょう」
即決にメリエルはくすくすと笑う。
「ああ、それとレイナースの件は突然で申し訳なかったわ」
「いやさすがに突然はきつかったですよ。ただ、結果として取り込めそうですから、良しとしましょう」
特に相談もなく、レイナースを見た瞬間にメリエルが手に入れる宣言をモモンガにメッセージで送ってきたのにはモモンガは驚いた。
この場でそれですか、としかし、止めるわけにもいかない。
なぜなら、取り込んだ方が情報源として有益であったからだ。
デミウルゴスに情報収集をさせているとはいえ、それでも帝国の中枢に近い人物から聞いたほうが手っ取り早い。
「というか、本当に見せるんですか? 軍勢」
「見せるわよ。ただし、天使は出さないけども」
「……それでも十分過剰戦力なんですが」
「見せびらかしたいので」
「ですよねー」
私も魔法とか使いたかったんですが、とモモンガは続ける。
「絶対にあの山羊使うつもりでしょ? 下手に奥の手は見せないほうがいいわ。警戒されすぎると、色々と統治に問題が出る」
「むぅ……」
「今度、ビーストマンの都市、潰しにいきましょう? そこでなら存分に使っていいから」
「ええ、是非いきましょう」
モモンガは一転して、満足げに頷く。
「じゃあ、私は今度、法国に行ってくるから。お土産はたぶん番外席次とか色々……ああ、それと法国が終わったら、いよいよ世界征服に向けてホムンクルスでも作りましょうか」
メリエルは機嫌良さそうに、にこにこ笑顔でそう言った。
モモンガとしても、反対するものではない。
「新たに作成する場合、フレーバーテキストが適用されるかどうか、その他色々と興味深いことになりそうですね」
「ええ、そうよ。とりあえずは件の商会を纏められるだけの優秀な経営者でも作ろうかなと。デミウルゴスの負担を軽減すれば、その分、彼を別のことに使えるし。あとは戦士とか暗殺者とか色々……ぶっちゃけ穏便に世界征服するって言っても、正直ナザリックのシモベを総動員しても統治するには手が足りなさすぎる。現地人に委任するにしても、監督官は必要よ」
もっともな話だった。
人類その他全部皆殺しにでもするなら話は別だが、モモンガもメリエルもそういうのは望んでいない。
「そこらはメリエルさんに任せます。好きなだけはっちゃけてください。私も単純な労働力としてのアンデッド作成はちょこちょことやってますので」
モモンガはデスナイトを始め、ソウルイーターなどのいくつかのアンデッドの作成を日課にしている。
戦力があればあるほど融通は利くのは言うまでもない。
「ええ、そうするわ。あ、それとレイナースは法国の後、迎えに行ってくるから」
メリエルは機嫌良さそうに、そう告げた。