彼らの異世界ライフ モモンガさんがやっぱり苦労する話   作:やがみ0821

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微エロあり。


真の姿で愛でられる者達

 

 

 メリエルは自室で、のんびりとしていた。

 つい先日、彼女は帰還した。

 

 竜王国からビーストマン達を叩き出し、そのまま隣接していた彼らの国に攻め込んで、圧倒的な武力を背景に、無条件降伏へと追い込み、そして魔導国の領土へと編入した。

 後始末と復興はデミウルゴスと、モモンガに頼んで派遣してもらったパンドラズ・アクターに丸投げした。

 

 既に実質的に休暇に突入しているのだが、それでも一応の期日というものはある。

 もし万が一、編入した領土で何か起きた場合はメリエルが出ることになっている。

 

 アルベドからの手紙をメイドが持ってきたのは、そんなときだった。

 

 深夜に2人きりでお会いしたい、と。

 

 その意味をメリエルは悟る。

 彼女の性格から、よくも今の今まで、我慢したものだとメリエルとしては称賛したいくらいだ。

 

 性的に襲ってきたりとか、飛びかかってきたりだとか、そういうことは一切なく、完璧な守護者統括として振る舞ったのだ。

 

 メリエルとしても、ユリとモモンガをくっつけたので、そろそろ自分も、という思いがそれなりにはあった。

 

 彼女はアルベドの手紙に対して、返事を書いた。

 

 部屋で待っている、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「夜分、遅くに申し訳ありません」

 

 深夜にメリエルの下を訪れたアルベドはそう頭を下げた。

 メリエルは手をひらひらと振って、構わない、と言い、そして更に言葉を続ける。

 

「ちょっと、行きましょうか。良い場所を知っているの」

 

 メリエルに誘われるがまま、アルベドはメリエルが開いた転移門(ゲート)を彼女と共に潜った。

 

 

 

 

 

 転移先はナザリックの外であった。

 左手には小川が流れ、右手には林が見える。

 月明かりに照らされ、夜だというのに程よく明るい。

 

 そして、小川と林の間に立つメリエル。

 

 アルベドは、美しいと心から感じた。

 

 黄金の長い髪が月明かりに照らされて 淡く輝き。

 そして、アルベドを見つめる、メリエルの瞳。

 

 アルベドと同じく、その瞳は黄金であるが、アルベドは自分などよりもメリエルの瞳の方が美しい、と断言する。

 

 メリエルとアルベドの背丈は同じであり、視線の高さもちょうど一緒。

 そうである為に、互いが互いの瞳がよく見えた。

 

「アルベド、あなたからすれば私がいるから美しいと思うだろうけど、私がいなくても自然というのは美しいわ」

 

 そう言って、くすくすとメリエルは笑う。

 アルベドがどのように言葉を返すか、一瞬悩むが、それだけでメリエルには十分だった。

 彼女は近づいて、アルベドの瞳を真っ直ぐに見つめる。

 

「ねぇ、アルベド。あなたが用件も書かずに、私と2人きりになりたい……その意味が分からない程、私は鈍くないわ」

 

 そう言いながら、メリエルはアルベドにゆっくりとその両腕を背中に絡ませる、

 間近でアルベドを見つめながら、彼女は更に言葉を紡ぐ。

 

「よく今の今まで、暴走せずに我慢できたわね」

 

 にこり、とメリエルが微笑んだ。

 ごくり、とアルベドは唾を飲み込んだ。

 

 メリエルはアルベドの耳元に口を寄せ、告げる。

 

「お前を私のモノにしたい。お前の全てが欲しい、お前の全てを支配したい」

 

 アルベドは熱い吐息を口から漏らし、メリエルの背中へと両腕を回す。

 

「もちろん、勿論ですとも。私を支配してください。私の全てをあなたに捧げます。永遠に」

 

 そうアルベドは答えた。

 彼女の下腹部は熱を持ち、また疼く。

 

 淫魔としての本能が、女としての本能が叫ぶ。

 今ここでまぐわいたい、と。

 

 しかし、アルベドは理性でもってそれを完全に抑え込む。

 さすがにそれでは品がなさすぎる、と。

 

「アルベド、けれど、あなただけでは満足ができないわ。私は欲深いから」

 

 メリエルの言葉はアルベドにとって、予定通りのものだった。

 

 ハーレムも大好きだからな、メリエルさんは――

 

 一番重要だ、と性癖を記入したノートを手渡すときに教えてくれたモモンガの顔がアルベドの頭に思い浮かぶ。

 そして、その為に必要な手は既に全て打ってある。

 積極的に、特にナザリックのシモベ達の中で、メリエルに対してそういう関係になるべく、とうの昔から動いていた。

 勿論、その際、正妻は自分である、という要求を受け入れさせている。

 

 メリエルの行動からハーレムが好きだということは容易に予想がついていたが、それでもモモンガにお墨付きをもらったことはアルベドに安心をもたらした。

 

 

「構いません」

 

 アルベドの答えなど決まっている。

 

「ああ、安心して。あなたが気絶するまでやってからだから」

 

 アルベドは予想外の言葉に理性が飛びそうになった。

 だが、守護者統括のプライドにかけて、堪えた。

 

「ありがとうございます。気絶するまでなんて……」

 

 理性は飛んではいないが、それでもアルベドの頭に展開される様々な妄想。

 アルベドは処女ではあったが、自身の体力などから数回程度では気絶しない自信があった。

 

 ということはつまり、数回程度では収まらない程に、様々なプレイが展開される可能性が高く――

 

 

 もうダメ、襲いたい――

 

 

 アルベドは息を荒くし、このままメリエルを押し倒してしまおうかと考え始める。

 そのとき、アルベドの唇に柔らかい感触。

 

 思わずに、目を見開いた。

 

 アルベドの思考は完全に止まる。

 ようやくに彼女が目の前の光景を現実だと認識したときには、ゆっくりとメリエルが離れていた。

 

 口づけをしていただいた――

 

 驚き、そして、喜びが一気に湧き上がってくるが、アルベドはメリエルの次の言葉に、再度、思考を停止させる。

 

「ねぇ、アルベド。あなたの本当の姿が見たい」

 

 アルベドの真の姿は醜悪の一言に尽きる。

 今まで、ただの一度も誰にも、それこそ創造主のタブラにも見せたことはない。

 

 純粋に、ユグドラシル時代にも、そうするだけの機会がなかっただけだったりするが、アルベドにはそんなことは分からない。

 

「そ、れは……」

 

 アルベドは恐れた。

 メリエルから嫌われることに。

 

 メリエルが醜悪なものを好まない、というのはモモンガから渡されたノートにあった。

 下品な女は好きだけど、純粋に醜いのは嫌いなのではないか、と。

 断言はされていなかったが、その可能性があるというだけでアルベドにとっては警戒すべきものだった。

 

 だからこそ、アルベドはどれほどにメリエルとの愛を育んだとしても、自分からは絶対に真の姿に関しては触れないつもりだった。

 メリエルもまた、醜いのが嫌いならば、触れることはない、とそういう確信があったのだ。

 しかし、その予想は脆くも崩れ去った。

 

「……メリエル様、私は、あなたに嫌われたくはありません」

 

 故に、アルベドは拒絶する。

 彼女がこのように拒むのは生まれて初めてのことだ。

 

「夢見る国の化け物。確か、ガグだっけ?」

 

 メリエルの言葉に、アルベドはびくりと体を震わせる。

 

「見せてくれないと、嫌いになるわよ?」

 

 アルベドはメリエルの言葉に絶望を覚えた。

 進むも地獄、退くも地獄、と。

 

 彼女は伏し目がちになり、ぎゅっと、口を閉じて、両手でドレスの裾を握りしめる。

 メリエルは決して急かしたりはせず、返答を待つ。

 

 5分程したときに、ようやくにアルベドは口を開いた。

 

「……もし、醜悪だと、嫌いだと思われたら、私を殺してください」

 

 アルベドは意を決して、そう告げた。

 彼女の言葉にメリエルはとても穏やかな笑みを浮かべ、軽く頷いた。

 

 それを確認し、アルベドはその姿を一変させる。

 醜悪な、夢見る国の化け物へ。

 

 みるみるうちに、彼女の背丈は大きくなり、メリエルは見上げる形となる。

 全身は毛むくじゃらとなって、女性の面影などまるでない。

 巨大な腕から鉤爪のついた手が2本ずつ、枝分かれしている。

 そして、樽くらいはありそうな大きさの顔には垂直に開く、特徴的な大きな口と無数の大きな黄色い牙。

 目はピンク色で顔の側面から飛び出している。

 

 言葉は話せず、表情で意思疎通を行うのだが……今、その表情は怯えであった。

 

 メリエルは、にこりと笑って手招きする。

 

 アルベドは手招きされるままに、その顔を近づけていく。

 メリエルの顔が目の前にきたところで、アルベドは何をするのだろうか、殺されるのだろうか、と思考する。

 

 しかし、アルベドの予想を大きく裏切ることを、メリエルは行った。

 その行動により、アルベドの表情は驚愕に染まる。

 

 メリエルはアルベドの口に顔を近づけて、そして、その牙を1本ずつ、丁寧に優しく舐めていた。

 やがて彼女はアルベドの大きな体に抱きついてくる。

 

 アルベドはメリエルの体を傷つけないよう、細心の注意を払って、恐る恐るその体を抱く。

 抱きつかれ、牙を舐められているアルベドが心に思うことは唯一つ。 

 

 

 この御方に、絶対の忠誠を、絶対の愛を――

 私の全てを知ってもなお、私を愛してくれる唯一の御方――

 

 

 メリエルは1時間程して、ようやくに全ての牙を舐め終えて、アルベドの口から顔を離した。

 その顔はとても満足したもので、その表情にアルベドもまた嬉しくなる。

 

「その姿になっても、アルベドの匂いは変わらなかった。だから、むしろ興奮した」

 

 メリエルの第一声はそれだった。

 アルベドは常日頃から体臭に気を配っていた過去の自分を最高に褒め称える。

 入浴時には人の姿は勿論、本来の姿に戻って隅々まで手入れをしており、一切手抜きはしていない。

 

「どうする? その姿でヤッてもいいけど」

 

 アルベドは雄叫びを上げたくなったが、無理矢理に抑え込んだ。

 そのために、変な唸り声が出たが、それでも雄叫びを上げるよりはマシだと彼女は思った。

 

 こんなことを言ってくれる人物など、世界中を探してもいないだろうし、またモモンガ様は勿論、他の見捨てた至高の御方々の中にもいない、とアルベドは断言できる。

 

 しかし、アルベドとしては初めてはちゃんと言葉で意思疎通をしながら、やりたかった。

 無論、慣れたら、本当の姿でも是非に抱いてほしいが、まずは普通にやりたいのである。

 

 

 アルベドは人の姿へと戻った。

 そして、改めてメリエルを抱きしめた。

 

「……初めてはこの姿で」

「分かったわ。それじゃ、部屋に戻りましょうか? ああ、それと今回の件、程よい時期が来るまで秘密で。誰にも言ってはダメよ? 恋人っていう関係を楽しみたいの」

「はい、勿論です。ただ、メリエル様、あなたが私の本来の姿でも愛してくれたこと、それをシャルティアにだけは伝えさせてください。彼女も色々と悩んでおりますので」 

「それなら構わないわ……でも、そうね、シャルティアにだけはあなたから上手いこと伝えておいて。私とあなたがそういう関係になったことを」

 

 メリエルの言葉にアルベドは微笑み、頷いた。

 そして、2人は来た時と同じように転移門(ゲート)でもって、メリエルの部屋へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 それから数日後、メリエルの下にシャルティアが本来の姿で突撃し、存分に愛でられるという光景が目撃されたが、些細なことだった。

 

 

 

 

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