急(無理やり)な幻想入りと、登場人物達の記憶と気持ち。その二つを主に書いております。タグにもつけているヤンデレは、まぁ、徐々にって事で。
二話は少し短めです。それでは、どうぞ。
「何時からと言われても分からないです。気がついたらさっきの部屋にいて・・・・・・ッ!」
「あら、どうしました?」
「指がやられてしまいまして」
感覚こそもうないが、絶え間なく痛みが響き渡る。右手の人差し指は完全にやられていて、酷く腫れ上がっていた。
「先に手当てをしておいた方が良さそうですね」
そういうと、メイドはその場から一瞬で消えて、数秒後に姿を現した。何が起こったのかと目を点にしているとメイドは苦笑し、いいですかというと、一呼吸置いて説明を始めた。
「一つ話しておきたい事があります。それは、恐らくここは貴方の住んでいた世界ではないということ」
「世界が違う?」
「はい」
手慣れた手つきで俺の右手を応急手当するメイド。窓から差し込む太陽の光が、彼女の顔を明るく照す。
「世界が違うというより、住む場所が違うと言った方が宜しいですね。この世界はとある結界によって貴方のいた世界から隔離されています。そしてこの世界には人間の他に妖怪、神、妖精など様々な種族が住んでいる。・・・・・・ここまで大丈夫ですか?」
「・・・・・・信じがたいけどな」
「それでは、説明を続けますね。此処は結界によって隔離されていると先程言いましたよね?ですから、外から此方の世界の存在は知られることも無く、入られる事もないです。しかし、とある条件によって此方の世界に入ることができます。それは結界を管理している二人の存在が結界を弄るか、結界が何らかの原因で歪み、その歪みによって此方の世界に来るか。」
長々と話続ける彼女は指の応急手当が済むともう大丈夫と小さく呟くき、俺の手を優しく撫でた。
「他にも此方に入る方法は存在するのですが、私の考えでは貴方はきっと後者の方で此方の世界に来たのだと思います。それで一つ聞きたいのですが、貴方が外で最後に見た光景はどうでしたか」
「最後に見た光景・・・・・・」
途切れ途切れの記憶をたどり、最後に見た景色を思い出す。たしか秋の紅葉を楽しむためにガイドと一緒に歩いて・・・・・・。
「朝早く集団で紅葉を観光しようとしていました」
「それであんなに沢山・・・・・・。それにしても謎が多すぎますね」
「謎?」
「ええ。まず貴方に怪我を負わせた少女、妹様は精神が不安定な方でして。でも、狂気が妹様の精神を犯しても、普段なら自分で押さえられるのですが・・・・・・先程のは異常でした。なにが原因で・・・。それともう一つ。何故あのような所から此方の世界に来たのか」
「そちらの事情は良くは分かりませんが、あの子は普段あんなことしないって事でいいんですよね?」
「ええ。誓って妹様はあのようなことはしません」
朝ということもあるのか、冷たい風が横切った。今の季節は秋と言っても、そろそろ冬が近づいてきている。まさか紅葉を楽しみたいという感情が死をもたらすとは。
「では、行きましょうか」
「何処に?」
「この館の主、お嬢様の所にです」
そういうと、彼女はゆっくりと歩き出した。その後について歩いていくが、一つどうしても聞きたいことがあった。
「あの」
「はい、どうなされましたか?」
「名前・・・・・・」
忘れていたのか、あぁという表情をする彼女。
「申し遅れました。私の名前は十六夜 咲夜 と申します」
「俺の名前は 田中 桂 っていいます」
「宜しくお願いしますね。桂さん」
あれ、私は何であんなことをしていたんだっけ。
ふと、自分の体を見る。身体中を血塗れで、足や服には血が飛び散った後があり、手にいたっては真っ赤だった。部屋中全てに血の後があり、人間の死体が転がっていた。腕がない者、足がない者、首から上がない者、人の形すら保っていない肉片。
こんな事をする気なんてなかった。私は別に人を襲いたい訳じゃない。ただ、ただ、遊びたいだけなのに。
何でこんな事になってるの?
何で私はこんなことをしてしまったの?
何で私は楽しんで殺していたの?
絶え間なく沸き出る疑問と後悔が入り交じり、絶望に生まれ変わる。
何時もは抑えられていた狂気が抑えられなかった。
不意に目から大粒の涙を流していることに気が付く。これじゃあ、外には出られない。このまま外に出たら同じ様な事をしてしまう。私は外に出てはいけない。
「うっ・・・・・・ひっく・・・・・・」
止まることのない涙を流し続け、転がっている死体に謝った。何回も、何回も。返事が返ってくる訳でもなく、それで後悔が消えることもなく、ひたすら無くなることのない絶望が心で渦巻いていた。
「あの人は無事かな?指は大丈夫かな?」
先程の記憶が蘇る。その時自分がしてしまった行動が脳裏に焼き付き、その事ばかり考えていた。きっとあの人は辛い想いをしているだろう。肉体的にも、精神的にも。
私は生きていていい存在なのかな。
そんな考えが頭の中に浮かんできた。狂気を抑えられない子なんて最初からいない方が自分のためにも、人のためにもなるのではないか。
溢れる涙が未だに流れ続けていて、胸の奥底から熱い想いがジワリジワリと心を蝕んでいくのを実感した。
私はこれでも四百年以上は生きている。でも、今日ほど自分を殺したいと思ったことは今まで一度もなかった。
私は自分を殺したい。でも、そんな勇気なんてない。
私は死にたい。でも、生きていたい。
自分の中で自問自答していく中で産まれる矛盾。私はいったいどうしたいのだろうか。
私は生きたい。私は楽しく生きたい。人を愛したい。愛されたい。そう、私は誰かに助けてほしいんだ。でも、助けてくれる人なんて居るのかな。
溢れていた涙は流れの激しさを無くし、最後の一滴が頬をゆっくりと流れていった。
「お願い。誰か私を助けて」
誰にも聞こえる筈もなく、少女の願いは部屋の中で小さく響き渡るだけだった。
ここまで重くする気はなかったが、何故かこうなってしまう。
誤字、感想、アドバイスなどありましたら気軽にどうぞ。それでは、次回で。後、この物語は十話位まで毎日投稿する予定なので、もし少しでも楽しみにしてくれている人がいれば、少しだけ期待して待っていてください。