インフィニット・ストラトス 〜月夜が照らす亡国者〜 作:セイイ
「「「海だぁぁああああ!!!」」」
7月5日 私たち一年生はIS学園の臨海学校に来ていた。
初日の午後の自由時間、生徒のほとんどが水着を来て、海水浴を楽しんだ。
「いやー海に来るのも久々だな〜」
「それより一夏! 海泳ご!」
「おぉ、いいぜ!!」
「元気ね・・・」
鈴と一夏は海に泳ぎに向かう中、私はビーチパラソルの下で太陽の日差しを遮っていた。
実は私は、こういう強い太陽の光は苦手だった。
「あの・・・・心月さん・・・」
「ん?どうしたのセシリア?」
「あの・・・・よ・・・・よろしければ・・・お・・・オイルを塗っていただけるかしら?」
「ん? いいわよ」
「ほ、本当ですか!?」
セシリアは嬉しそうにサンオイルを渡す。
私はオイルを手に塗し、しっかり温め、俯けになったセシリアの背中にゆっくりと塗り始める。
「あ・・・・・ん・・・・」
なんらか気持ちよさそうにしている、よかった。
私はそのまま、肩、二の腕、太もも、足と丁寧に塗りたくる。
「んん・・・・・いいですわ、心月しゃん・・・」
「心月しゃん?」
そんなに気持ちよかったのか、下が回っていないようだった。
「うわ・・・・セシリア気持ちよさそうだね・・・」
「うん、見ているこっちまでドキドキしてきたよ。」
周りに徐々に女子生徒が集まる。
「・・・・なんでしょうか、私・・・恥ずかしくなってきたわ・・・」
「そこ・・・いいですわ・・・・」
セシリアが満足するまで塗った後、私は海に泳ぐことなく、海岸沿いを歩いていた。
すると正面から二人の少女が近ずいてくる。
「あ・・・心月」
「ん? ああ、シャルロットちゃんと・・・」
スパイに失敗し、結局正体を明かして、改めて女子として入学してきたフランス代表候補生『シャルロット・デュノア』と
隣に、タオルをぐるぐる巻きにしている背の低い少女がいた。
「あ、ほら、ラウラ、タオルとんないと?」
ラウラだった。
あの事件以降、なぜかクラスメイトの前で一夏を自分の嫁だと宣言していた。
彼女に何が起きたのか、一夏のことが好きになったらしい。
「む!? す・・・すまない・・・その声・・・心月か? あの時は悪かった!心から謝罪する。」
「うん、謝るのはいいけど・・・それ、取らないのかしら?」
「・・・だって・・・恥ずかしいだろ・・・」
これが本来の彼女であろうか、以前の殺気に満ちた態度から一変していた。
これも、織斑一夏の純粋な思いがもたらした結果なのだろうか。
「ふふ・・・・かわいいとこあるのね?」
「かわ・・・・私がかわいいだど!? ・・・失礼する!!」
ビューんと、なぜか走り出す。
「わぁ!?ラウラ待って!! ごめん心月、私も行くね」
シャルロットもそのまま、ラウラを追いかけていく。
「賑やかね・・・・」
みんな、明るい・・・本当に・・・・。
いずれ彼女らを裏切らないといけないと思うと、なぜか恐怖心が生まれた。
また、これだ。
いい加減にしろ・・・私。
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その晩 私は気を休めるため温泉に浸かっていた。
ちょうどいい湯加減が私の精神を落ち着かせる。
「ふーー」
「あ、心月さん、やっぱここに居たんだ。」
「ええ・・・」
一夏も温泉に入ってくる。
「いやー、泳いだ泳いだ・・・今日は疲れたな・・・」
「明日、特別訓練があるのよ?無駄な体力の消耗は避けなさい・・」
「あははは、そうだな・・・すまんすまん」
しばらく無言で、温泉の暖かさを感じる。ふと、思い出す。
そういえば明後日7月7日は箒ちゃんの誕生日だ。
「一夏くん、明後日何の日かわかる?」
「・・・・おう、箒の誕生日だろ?」
「・・・・ふふ、よく覚えているじゃない?」
正直意外だった。
「当たり前だ、幼馴染だし・・・プレゼントも用意したしな」
「プレゼント?」
「おう、リボンだ」
リボン、彼女はいつも同じリボン 小学生の時一夏にもらったリボンをつけていた。
「ふふ・・・箒ちゃんも喜ぶわ」
「おう」
なんやかんやで彼も、箒ちゃんのことを大切にしているみたいだった。
まぁ、まだ認めないがな。
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「よし、専用機持ちは全員揃ったな。」
次の日、私も含め、一夏、セシリア、鈴、シャルロット、ラウラ、簪の七人の専用機持ちと なぜか、箒ちゃんも呼び出された。
「まって、ください、箒は専用機持ちじゃないでしょ?」
鈴の言うとうり、箒ちゃんは専用機持ちではない。
「それは・・・・・」
箒ちゃんが言葉を積もらせる。
その瞬間、遠くの崖の上から、甲高い女性の声が響き渡った。
この声、思い出したくもない、甘い声・・・・まさか・・・
「ちーーーーーーーちゃぁぁーーーーーーーん!!」
女性が崖から常人とは思えないスピードで駆け下り、千冬に抱きつく。
「ふん・・・」
しかし、彼女を片腕だけで止め、そのまま受け流した。
彼女もしつこく抱きつこうとするが、千冬は拒否する。
「やぁやぁ、会いたかったよちーちゃん、はぐはぐしようよ!はぐはぐ」
「黙れ、束!!」
千冬の鉄拳が彼女に命中し、頭をかかえる。
「いっどいーい、相変わらずのアイアインクローだね」
「あの人って・・・もしかして・・・」
「篠ノ之束・・・・ね」
そう、私がこの世で最も恨んでいる人物『篠ノ之束』まさか、再会するとは思ってもみなかった。
顔も見たくないこの女と。
「やぁ、どうも箒ちゃん!」
「・・・・どうも」
「こうして、会うのも数年ぶりだなねーー大きくなったね箒ちゃん・・・」
「・・・・特におっぱいが!」
「ふん!!」
「あん、箒ちゃんひどーい」
「・・・・・・・・・・・」
「ん?やぁやぁ我が弟、しんくん! 元気にしていた?」
「・・・・・・・どのツラ下げて私たちの前に現れた・・・」
「ん〜〜〜このつら〜〜〜?」
「・・・・っく!!」
私は本来の口調を忘れ、思わず彼女の胸ぐらをつかむ。
「!?心月」
簪が驚く
「貴様に俺たち兄妹に会う資格はないんだよ・・・失せろ・・・」
家族全員を引き裂き、彼女の罪で、ISが生んだ世界の歪みで、私たち兄妹が苦しめられた。
そして、この女は私の親友を歪んだ愛で殺しかけた。
こいつだけは、許せない。
「え〜〜〜でも、私箒ちゃんに頼まれたもの届けに来たんだけど〜〜」
「はぁ!?・・・・え?・・・どういこと、箒ちゃん?」
まさかの理由に私は困惑した。
まさか・・・なぜ・・
「・・・・それは・・・」
箒ちゃんははっきりと答えない
「うんとね、箒ちゃんが欲しがっていた専用機を持ってきたよ!」
専用機・・・まさか
「専用機・・・・箒ちゃんまさかあなた・・・」
「兄さん、私も、一夏や兄さん、みんなみたいに力が欲しいんだ!」
「だめよ箒ちゃん、あなたには、まだ・・・」
「あーあーあー ほら空見てちょうだい!!」
あいつが私の言葉を妨げる。
空中から巨大なクリスタルが落ちてくる。
その中から、見たことも無い赤い新型ISが現れる。
「これが箒ちゃんの専用機の『紅椿』!! 全スペックは、現行ISを上回る、束さんのお手製だよ〜なんたって
紅椿は、天才束さんが作った第四世代型ISだよー」
「第四世代だと!?」
「そんな・・・やっと各国で第三世代の試験機ができた段階ですわよ」
「なのに・・・もう・・・」
私も密かに驚愕する。
ファントム・タスクの新規のデータベースにそのような情報はなかった。
まさか、彼女が密かに開発したのか・・・新型を。
「ささ、乗って箒ちゃん、設定ちゃちゃっと済ませちゃうから!」
「まちなさ・・・!!」
私は箒ちゃんを止めようとする。
すると千冬が肩にぽんと手を置く。
「落ち着け、篠ノ之兄・・・お前らしくない」
「・・・・・・っ」
落ち着くわけない。今のあの子にはまだ、膨大な力を持つには未熟すぎる。
いずれ、取り返しのつかないことになる。
「ささ、これで思い通りに動くはずだよ!」
「はい・・・・」
箒ちゃんは紅椿を飛ばす。
機動性は異常なまでな高性能、現ISの中で紅椿を超える機体は無いほどにだ。
私は、その様子を密かに胸に付けているカメラで録画する。
第四世代という、新型ISの情報をファントム・タスクに送るためだ。
しかし、そのカメラは、うまく起動しない。まさか・・・・
私は、密かに、あいつを睨む。
すると、こちらの視線に気づいたのか、手を振る。
っち、邪魔をしやがって。
「大変です!!織斑先生!!」
山田先生が、走ってこちらに向かってくる。
なにか、慌てているようだった。
なにかの緊急信号が出ている、端末を千冬に渡す。
千冬「・・・・・特例任務A・・・・現時刻で対策を始められたし・・・
試運転は中止だ! お前達にやってもらいたいことがある」
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試運転は中止され、私たちは旅館の中に緊急に建てられた司令室に集められた。
アメリカとイスラムが合同で開発していた。無人IS『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』が何者かのハッキングを受け
暴走し、管轄エリアを離脱したと情報が入った。
衛星カメラの調査により、ここ(臨海学校)から数キロ先を通過することがわかり、私たち専用機持ちが対処することになった。
「時間にして50分後・・・学園上層部からの通達により我々がこの事態に対処することになった。
教員は訓練機で空域、海域の封鎖、よって本機撃墜はお前たち、専用持ちにやってもらう」
「は!?なぜ俺たちが」
「暴走状態の福音は、視界に入ったもの全てに攻撃を開始しする。しかも予想飛行ルートの先には日本の東京を通ることになっていた
一刻も早く撃墜しなければ、市民に危険が及ぶ。」
「そんな・・・・いったい誰が・・」
「いま追求している暇はない、これより作戦会議を始める。意見のあるものは挙手を」
「ハイ、目標ISの詳細のスペックデータを要求します」
「うむ・・・・だが絶対公開はするな」
スクリーンに福音の詳細なデータが表示される。
「広域殲滅を目的とした特殊射撃型・・・・私のブルー・ティアーズと同じオールレンジ攻撃が行えるようですわね」
「攻撃と機動を特化した機体ね・・・厄介だわ」
セシリアと鈴が言う。確かに無人機ならではの機動性だ。
「この特殊武装が癖者って感じがするね」
「このデータでは格闘性能が未知数だ・・・偵察は行えないのですか?」
「それは無理だ・・・この機体は超音速飛行をしているアプローチは一回きりだ」
「一回きりのチャンス・・・・一撃必殺の攻撃力を誇った機体で挑むしか・・」
山田先生が一夏を見る
一撃必殺の攻撃・・・・暴走・・・超音速・・・。
はぁ!?まさか・・・・。
「え? 俺が行くんですか?!」
「そうだ、それしかない」
「しかし・・・・・」
そう、一夏の白式しかない・・・・。
私が驚いたのはそこではない。この事件の犯人に気づいてしまったことだ。
「確かに、白式の零落白夜で落とせますが・・・あのISに追いつけ無いとおもんですけど・・・」
「はいはーい私にいい意見があります!」
突然、襖が開き、あいつが入ってくる。
「あのISに追いつくには、やっぱり現ISの中でも高スペックを誇る『紅椿』ならよゆーで追いつけるよー
つまり、いっくんを箒ちゃんが現地まで運ぶって作戦! 名ずけて紅白大作戦 なんつって!」
「・・・・ふむ・・・確かに、いまはそれしかないか、任せられるか篠ノ之妹」
千冬が納得する。しかし・・・
「はい! 任せてください」
「待ってください」
私は手を挙げ、その場に起立する。
「私は、その作戦に反対です。彼女はまだまだ、未熟です、行かせるのは危険かと思うわ」
「えーでも、紅椿は攻撃力も高スペックだよ〜〜?」
「たしかにそうだけど、この作戦、実戦初めての子には無理だわ」
「待ってください兄さん!私はできます。」
箒ちゃんも起立し私の前に立ちはだかる。
「だめよ・・・あなたは強くない・・・兄として、この作戦 あなたの参加は認めないわ」
「!!何を言う!? 私は第四世代のISを持っているのだぞ!!」
「・・・分からない子ね・・・よけい行かせられないわ」
「・・・・・なぜです、兄さん・・・・なぜ私を認めてくれないのですか!」
「・・・・・・・未熟者のあなたを認めるわけにはいかないわ・・・・」
「私は、強くなった!! いま誰も持っていない、最強のスペックを誇るISを持っている。第三世代など、足元にも及ばない!だから・・・・。」
「・・・・・・・・・あなた自身は強くない・・・むしろ・・・・弱くなったわ・・・・」
「っく!!」
バシ!!
私は箒ちゃんにビンタされた
「・・・・・兄さんだったら、わかってくれると思とおもっていた!!!」
箒ちゃんはそのまま、部屋を飛びだした。
「箒!?」
「・・・・・・・」
司令室に重い空気が流れる。
「篠ノ之・・・」
「あはは、兄妹喧嘩しないでよ〜〜お姉さん悲しくなっちゃうよ!」
バッゴ!!
「黙れ、ウサギ畜生・・・・」
「し、心月さん!?」
私は、フルスイングであいつの顔を殴る。
それでも、彼女は何事もなかったように、笑顔でその場に立つ
「・・・・・・・っち・・織斑先生 お言葉ですが、彼女には行かせられません・・・」
「・・・・・・他に作戦はあるのか?」
「・・・・・・・」
作戦は・・・・認めたくなかったが、あいつと同じ作戦しか思いついていなかった。
「篠ノ之兄・・・私も弟を持つ身、お前の気持ちもわからんでもない。しかし、今は一刻の猶予もない・・・。」
私は、誰にも聞こえない声で、千冬の耳に囁く
「しかし・・・貴方ならわかるでしょ?この事件明らかに・・・『あいつ』の仕業ですよ・・・」
「・・・ふむ・・・確かにそうかもしれんが・・・・今は、それを追求する時ではない・・・」
いまの彼女じゃ確実に失敗して、大怪我をする。それだけはさけたい。
兄として、彼女を守る義務がある。 こうなったら奥の手だ。
「・・・織斑先生・・・お願いがあります。」
その次の日の日の出、作戦が決行された。
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後編は箒が主人公です! 感想まってます!