インフィニット・ストラトス 〜月夜が照らす亡国者〜 作:セイイ
「ふう・・・大丈夫か?心月さん・・・」
「えぇ・・・大丈夫よ・・・大丈夫」
実施訓練が終わり、更衣室で着替えをしていた。
嫉妬心のせいで、まさか血の涙を出すなんて思いもしなかった。
「そういえば、見てて思ったんだけど、シャルルのISスーツいいよな!」
「あ、うん。デュノア社製のオリジナルだよ。」
「デュノア?シャルルと同じ・・・」
「うん、お父さんが社長をやっているの。」
実際は、会社運営のほとんどは、デュノア夫人がやっている。
シャルルの父親は、ただ、夫人の言うとうりに聞いて動いているだけだ。
おそらく、彼女にスパイ活動を指示したのも・・・
「どうりで」
「どうりで?」
「なんていうか、貴賓というか、見た感じお偉いさんの息子って感じがするよ。」
「そう・・・なんだ」
彼女の表情が曇る。当然だろう。彼女は豊かな生活なんてしていない。
母が死んで、ずっと会社の奴隷のようなに扱われていたからな。
「そうだ!シャルル、心月さん。天気もいいし、お昼は屋上で食おうぜ?」
「いいわね、私もお弁当を作っていたから、ちょうどいいわ。」
「いいの?一夏?」
「あぁ!さっき箒に誘われたんだ。みんなで食う方が賑やかでおいしいぜ?」
・・・・箒ちゃんはきっと二人きりで という意味で誘ったんだろう。
本当、こいつは鈍感だね。
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「どうして、こうなった。」
箒ちゃんが、思わずつぶやいた。
昼休み学校の屋上で、私、箒ちゃん、鈴、セシリア、一夏、シャルルの順番で
円を描いて座っていた。
「抜け駆けしようとしたわね箒?」
鈴が箒ちゃんを睨む。
「心月さん、私も御誘い頂きあるがとうございます。」
「いいのよ、みんなで食べた方が美味しいって、一夏くんも言ってたしね?」
「ほ〜〜う?」
箒ちゃんが一夏を睨む。
「な・・なんだよ?」
「別に!」
箒ちゃん、激おこだ。
「まぁいいけど。」
鈴は、手に持っていた弁当を開いた。中には酢豚が入っていた。
「おぉ!! 酢豚じゃん!!」
「そうよ、一夏が前食べたいって言っていたのを、たまたま、思い出して、たまたま、作ったのよ!」
たまたまをなぜか強調する。素直になればいいのに。
「わ・・・私も、たまたま朝早く起きて、たまたま作ったぞ!!食べてくれ。」
といい、箒ちゃんが弁当箱を開ける、中には唐揚げ弁当が入っていた。
昔から、箒ちゃんは唐揚げを作るのは得意だった。
一夏に食べてもらいたかったから って練習してたっけな。
「おぉ、うまそうだな!どれどれ、まずは箒のを一口」
一夏の箸が箒ちゃんの唐揚げをつかみ、口に運ぶ。
「おお!! うまいぞ箒!!」
「そうか!!」
箒ちゃんが一夏に褒められ顔を赤くする。可愛い。
「ありがとな箒、お礼に俺のをやるよ。」
弁当を開け、中からソーセージを掴み、箒ちゃんの口元に運んだ。
これは、もしかして。
「な・・・なんだ?」
「ん? 俺のやるよ、あーん」
・・・・あーん・・・だと?
「うわ!?心月、目!目が充血してるよ!!」
シャルルが私の異変に気がつく。
しかし、彼女にかまっているほど精神的余裕がない。
「あ〜〜〜!! ちょ!! 一夏なにやってんの!!?」
「微笑ましいですわ。」
「?なんなんだお前ら? 箒はやく食え」
しかも無自覚だと!?クソが!!
「あぁ・・・・あ〜〜ん・・・・うん、美味しい・・・いいものだ。」
あーん顏の箒ちゃん可愛い!! 写メを撮りたいが!!相手が一夏と思うと・・・
「・・・・・・・・ぐぁぁああああ!!!」
「わ!?心月!?どうしたの!!」
「私も作ってきたわ!!、ペペロンチーノ!!! さぁ一夏くん食べてちょうだい!!」
私は丁寧に刻んだ唐辛子だけを集め、一夏の口に無理あり突っ込んだ。
「ちょ!? 心月・・・・モグモグ・・・・かれぇええええええええ!!!」
「ははは!!」
唐辛子を大量に突っ込まれて、辛さにもがく一夏。
ざまぁない。思わず笑みがこぼれる。
「に・・・兄さん・・・」
「な〜にやってんのあいつら・・・」
「賑やかですわね」
「うん・・・そうだね」
私は見逃さなかった。微かにシャルルから、黒いものを感じたことに。
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「え〜と、今日も転校生を紹介します。」
次の日、また転校生が来るという。
二日連続でなんて、どういうことだ。本部からそのような情報はなかったはず。
「入れ」
千冬の指示で、少女が教室に入ってくる。
銀色の髪に美白の肌。第一認証は
「美しいわね。」
そう思った。彼女のような美人は今まで見たことがなかった。
しかし、顔女の右目の眼帯、見たことがある。
おそらく、ドイツのIS配備特殊部隊「シュヴァルツェ・ハーゼ」の一員だろう。
「ラウラ、挨拶しろ。」
「はい、教官」
たしか千冬は一年近くドイツの軍隊で教官をしていたな。
「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」
「「「・・・・・・・・・・・・」」」」
「あの・・・それだけですか?」
名前だけの紹介か。彼女は私たちクラスメイトと仲良くするつもりはなさそうだ。
ラウラ、山田先生の言葉を無視し、一夏のところに向かった。そして、
「貴様が!!」
バシ!!
一夏の頬を叩いたのだった。
まさかのことに、クラスメイト全員が絶句する。
そして、彼女が言う。
「認めない・・・貴様が、あの人の弟となど、私は認めないぞ!!」
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「大丈夫だったかしら?一夏くん」
「あぁ・・・」
放課後、私と一夏は鈴、セシリア、箒ちゃんと一緒にISの訓練をするため、更衣室でスーツに着替えていた。
一応、私を心配し声をかけた。
彼は、少し思い当たりがある表情をしていた。
「彼女に打たれることに、思い当たりが?」
「ああ・・・多分、あの時のことだろうな・・・」
「あの時?」
「俺が、第二回モンド・グロッソ大会で誘拐された時、千冬ねぇが、試合を放棄し助けに来てくれたことだと思う。」
「・・・・・・」
織斑一夏誘拐事件・・・第2回モンド・グロッソ決勝戦当日。織斑一夏が正体不明の謎の組織に誘拐され。千冬は弟を救出するために決勝戦を棄権。ISを使い現場に直行し、一夏を救出。
千冬は第1回モンド・グロッソの優勝者であり、誰もが連覇を期待していたが、不戦勝で敗退してしまった。
「俺がいたから、千冬ねぇが連覇を逃した・・・。そのことだと思う。」
「・・・・・済んだことを気にしていても意味ないわ。彼女と仲良くなりたいなら、認めさせられるように頑張りなさい。」
そう一夏に言った。
この事件の裏には、私たち、ファントム・タスクが関わっている。
何を隠そう、この一夏誘拐の作戦を立てたのは
この私だ。
アメリカのとある選手が、私たちに直々に依頼をしてきた。
内容は、単純に『優勝がしたい』とのことだ。
報酬もよく、我々は快く受けた。
この大会で、一番の強者 織斑千冬の弟を誘拐させることによって、彼女の不戦敗を狙い
見事に作戦は成功したのだった。
つまり簡単に言えば、彼が叩かれたのは私のせい。千冬が優勝を逃したのも私のせい。全部私のせいなのだ。
「そうだな・・・よっし!絶対にあいつに認めさせてやる。」
「ふふ、その調子よ。」
私は正直、罪悪感などはない。
むしろ、彼を強くさせるにはいい餌だと思った。
自分の不甲斐なさを改め、自分を磨き、強くなる。箒ちゃんのためにも彼には強くなってほしいと思うばかりだ。
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「こう、ズァアアアトやってから、ガキんっと感じだ!」
「なんとなく分かるでしょ?感覚よ、感覚」
「防御の時は右半身を斜め上、前方に5度 、回避の時は後方に20度ですわ!」
「わからん!!」
一夏は箒ちゃん、鈴、セシリアからIS操縦のアドバイスを聞くが、理解ができなかった。
正直私も意味不明だった。
「なんでわかんないのよ!!!」
「そうですわ!!」
「まぁまぁ、落ち着きなさい?」
鈴とセシリアを落ち着かせた。
『一夏、心月』
ISから通信が入る。シャルルが第2世代IS『ラファール・リヴァイヴ・カスタムII』を展開していた。
「どっちか、僕と模擬戦してくれるかな?二人と戦ってみたいんだ。」
ISの情報収集か。あまりブロッサムのデータは取らせたくない。
「一夏くんどうぞ?」
「あ、あぁ!! よろしくなシャルル」
私は一夏に譲った。
「うん、じゃあ行くね。」
二人が空中に飛び模擬戦を始めた。
周りで練習していた生徒も全員注目する。
結果は、一夏の負け、原因は一夏が銃の特性いを分かっていないとのことだった。
シャルルの説明は、他の三人に比べて分かりやすく、結局、三人を無視して
シャルルのアドバイスを聞いていた。
「うそ!?あれドイツの第三世代じゃない?」
ドイツの第三世代・・・・女子生徒の声を聞き、その方角を見る。
ピットの上にラウラ・ボーデヴィッヒが第三世代『シュヴァルツェア・レーゲン』を展開していた。
「織斑一夏・・・私と戦え」
目的は、やはり一夏だった。
「嫌だ・・・理由がねえ・・・」
「ならば・・・無理矢理でも戦ってもらう!!」
大口径レールカノンを一夏の方に向けて打ち込んだ。
私は、一夏の前に立ち、ISを展開させた。
そして、エネルギーを左腕に集中させ、レールカノンの弾を打ち払った。
「落ち着きなさい、ボーデヴィッヒさん。」
「ふん、貴様は篠ノ之心月だな?邪魔をするな。」
「そんな性格じゃ、せっかくの可愛い顔が台無しよ?」
「な!?私が・・・可愛いだと!?・・まぁいい、邪魔をするなら容赦しない!!」
私に目掛けてレールカノンを向ける。
『そこの生徒!なにをやっている!!』
アナウンスが入り、私たちの行為を注意した。
「ふん、まぁいい・・・命拾いしたな・・・」
ラウラがISを解除し、その場を去っていった。
「大丈夫かしら?一夏くん・・・」
「ああ・・・助かったぜ」
今度の学年別トーナメントになにかしらの事件の匂いを感じた。
根拠はないが、なぜかあのIS『シュヴァルツェア・レーゲン』に妙な気配を感じた。
自分でもそれはなんなのかは分からなかった。
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私はISの整備室にいた。彼女に会うためである。
「こんにちは、調子はいかがかしら?」
「・・・・篠ノ之?」
「心月でいいわ」
更識 簪 である。
彼女を、今後のため、引き入れることにしたのだ。
言い方をかなり悪くすれば、人質だ。
楯無を動きを鈍らせるために、妹である彼女には、私のそばにいて欲しいのだ。
これは、私のことを調べたら、簪に何かをする。というメッセージが込められている。
「IS・・・完成しそう?」
「・・・・まだまだかかる」
見た感じパーツは揃っているが組み上げられていない。
彼女は今プログラミングをしているようで、専用の端末を使っていた。
「あなたのお姉さんが一人で組み上げたって言ってたわよね?」
「・・・・・うん」
「私、調べたんだけど、実際は色々な人に手伝ってもらったみたいなの」
「・・・・え?」
簪が驚く。彼女たちは姉妹関係が悪いようで、ほとんど会話をしていないし、
知らなくて当然だ。
「ふむ、結構組み上がってるじゃない。ここまで一人でやったの?すごいわ」
「・・・・別に、そんなこと・・・」
「自信を持ちなさい! 今回の学年別トーナメントまでにはできるの?」
「・・・・無理だと思う。」
見たところ完成度は50パーセントくらいだ。飛行もままならないし、プログラミングも終わってない。
彼女一人では、かなりの時間がかかる。
「・・・手伝うわよ?。」
「・・・・・・・・」
彼女は悩む。今まで一人でやってきたし、そう簡単にはやらせてくれないだろう。
「・・・遠慮しないで、頼りなさい?」
彼女の方に手を置く。数分考えた結果、彼女はこう答えた。
「・・・・うん・・・」
「よし!そうと決まれば、データをみせて」
彼女からISの設計図とデータを見せてもらう。
「プログラミングは全部私がやるわ」
「・・・一人で!?」
「ええ、こう見えてプログラミングは得意よ。」
専用の端末で、ほぼ高速に近いほどのスピードでプログラミングを始める。
「・・・すごい」
簪も思わず驚く。
「明日には完成させるわ、あなたは整備科に知り合いいる?」
「・・・一応は・・・・って、明日!?」
そりゃ驚くな。
でも、私の計算上このペースだと明日にはできる。
「そうよ、私を誰だと思っているの?あの篠ノ之束の弟たぞ?ブイブイ!
ISの自体の組み上げは、整備科に任せましょ?」
「・・・う・・うん」
「あら?マルチロックオン・システム?面白いシステムね・・・」
「うん・・・一応、打鉄弐式の最大武装になっている。」
そう答えた数分後
「できたわ!」
「うそ!?本当!?」
彼女は思わず端末に顔をのぞかせる。
「マルチロックオン・システムはね、さて、次は武器ね、荷電粒子砲ね〜」
「・・・・・・・・」
彼女はなぜか私の顔を見つめていた、さすがにちょっと照れる。
「な・・・何かしら?」
「・・・・なんで、私なんかの手伝ってくれるの・・・」
君を利用するため・・・なんて言えないし、うそも言いたくない。
だったら、素直に思ったことを言えばいい。
「困っているから助ける・・・な〜んてね?」
「・・・・・」
「正義のヒーローみたいなシンプルな理由でごめんね?」
「!! 別に・・・いいと思う///」
「本当?だったらよかったわ」
彼女の顔が少し赤くなる。可愛らしいな。
数時間後、整備科の生徒が4人整備室に来た。
「かんちゃん〜〜手伝いにきたよ〜〜」
「本音・・・ありがとう」
「いいってことよ〜〜」
クラスメイトの本音がいた、そういえば整備科だったな。
「あ!!篠ノ之心月くん!! 後で一枚写真いいかな?あなたになかなか会えなくて〜〜」
『黛 薫子』2年のエースで整備科、新聞部の副部長だったかしら。
「ふふぃ、私の写真でよければ、いくらでもどうぞ。」
「みんな・・・急に呼び出してごめん・・・」
簪が前に出て、頭を下げた。
「いいって!困った時はお互い様でしょ?」
「そうだよ〜かんちゃん! 今日は頑張っちゃうよ〜〜!!」
「・・・みんな・・ありがとう」
簪はもう一回頭を下げた。
「さて、組み上げるのに、どのぐらいかかるかしら?」
「ざっと計算して、明日の夕方には完成するわ」
「そう、私はそれに合わせてプログラミングをするわ、簪さんは彼女たちを手伝ってあげて。」
「う・・・うん、あ・・・その・・・」
「ん?」
彼女が照れながら言う。
「簪・・・・でいい」
「わ〜〜〜かんちゃん大胆〜〜」
「う・・・うるさい本音!」
「ふふ、そうさせてもらうわ。簪」
「うん///」
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