やはり俺と彼女は青春をまちがい続ける。   作:冬奈水沙

2 / 10
第一話

2週間とは過ぎるのが早いものだ。案外病院とは退屈しないもので、この2週間は特に退屈することもなく過ごすことが出来た。まぁ、1番の理由はあいつが毎日病院来てくれただからだろう……。

 

「八幡先輩退院おめでとう! 」

 

「おう、毎日わざわざ病院に来てくれてありがとな」

 

そのあいつが誰かと言うと、水無瀬優花だ。彼女は俺の1個したの後輩にあたる子で、俺が入院した日からずっと、病院に見舞いに来てくれている。そして毎日話しているうちに、今ではタメ語で言い合える仲にまで発展したのである。

 

「いや~、八幡先輩が退院してくれよかった、私もぼっちだから学校暇だったんだよね~」

 

水無瀬は警察からの事情聴取や、病院での検査などがあっため、入学式には出席してない。学校の登校できるようになったのは、事故からら3日後だったみたいで、そのため他の人より出遅れてしまったゆえに、ぼっちになってしまったみたいだ。本人は元から人と関わるのが苦手と言っているが……それが本当なのかはわからない。

 

ところで気になったんだが……。

 

「で、なんで過去形なわけ? なに? 学校でも一緒にいるきなの? 」

 

「当たり前じゃん! 八幡先輩と一緒にいるの楽しいもん! 」

 

こ、コイツさらりといい笑顔でいいやがった。そんなこと他の男子にいっちゃダメですよ? 絶対勘違いして告白しちゃってふらるから、ってふられるのかよ。

 

「断る。他の人に見られるとか嫌すぎるから……」

 

「えー、私は全然いいよ〜。ダメ、かな? 」

 

あの、そんな上目遣いで悲しそうな目で見られたら困るんですけど……。

 

「はぁ、わかった。降参だ、降参」

 

「やったぁ! ありがとう! 八幡先輩! 」

 

水無瀬が嬉しそうに跳ねている。俺は口では一生水無瀬には勝てないだろう。いや、そもそも俺が女子に口で勝つことは絶対にないな。まず水無瀬と小町意外と話さないし。

 

「八幡先輩このあとどうするの? 」

 

病院から出て、自動ドアの前で水無瀬が止まり聞いてきた。

 

「そうだな、とりあえず家に帰る。小町も家にいると思うし」

 

「私も行ってもいい、かな? 」

 

「いいんじゃねぇの? 多分小町も喜ぶし」

 

水無瀬と小町は仲がいいのだ。年齢の学校も違う2人が何処で出会ったかと言うと、もちろん俺が入院していた病室だ。水無瀬も毎日見舞いに来ていたが、小町も毎日見舞い来ていて、丁度小町が病室にいるときに水無瀬が来たのが、2人の出会いだったはずだ。

 

それからということ、どちらも毎日見舞いに来るということは、当然2人とも出会うことになるのでどうやら面会時間が終わったあと帰宅中に話して仲良くなったみたいだ。きっと人懐っこい性格の小町のことだ、仲良くなるまでに、そんなに時間はかからなかっただろう。

 

「なら良かった! じゃあ行こっか! 」

 

「ああ、行くか」

 

自動ドアの前で止まっていた水無瀬は俺の一歩前を歩き出していた。水無瀬の声に応え、俺も自宅へと向かため、足を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

こうしていま俺たちは俺の家にいる。にしても友達を家にあげるの久しぶりだな。いま思えば友達家にあげたことねぇわ。

 

「お兄ちゃんどうしたの? 目がさらに腐って来てるよ」

 

おっといかん過去に触れていたら目がどんどん腐ってきてたみたいだ。もうあれだよね、ゾンビと間違えられてシャベルでかられてもおかしくないレベル。

 

「いや~でも優花さんが来てくれてよかったです! 」

 

「いえいえ、それよりお邪魔して良かったの? 親とか帰ってくるんじゃないの? 」

 

「あー、その心配は大丈夫だ、親は両方とも今週は会社に寝泊り作業だからな」

 

ほんと親には感謝しないとな。まさに社畜の鏡である。働きたくねぇ・・・・・。

 

「そっか、ならお邪魔させてもらいます」

 

「はーい! あ、どうせなら泊まって行きます? 」

 

「おいこら小町余計なこと言うな」

 

「ごめんね~、今日は泊まりの道具なんも持ってきてないからまた今度ね」

 

あの、水無瀬さんなんで今度泊まる予定なのでしょうか? まぁ口に出したらめんどくさいことになりそうなので、絶対に言わないけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

水無瀬と小町は仲良さそうにガールズトークを繰り広げている。そんな光景を眺め、たまに会話に入っていると、いつの間にか3時間たっており、時刻は既に20時をまわっていた。

 

「おーいお前らもう20時をまわってるんだからそこら辺にしとけ」

 

「はーい!わかった!」

 

「あ、ほんとだ。そろそろ帰らないと」

 

外を見てみると既に暗くなっていた。楽しい時とはすぐに過ぎていくものだ。水無瀬と出会わなければこんなに楽しい会話を、家族以外とすることはなかっただろう。

 

「あ、お兄ちゃん優花さん帰るみたいだから送ってあげてね〜」

 

20時をまわると流石に夜も暗い。女の子を1人で歩かせるのは危険だな。

 

「へーい。了解っと」

 

「え、そんな全然大丈夫だよ。1人で帰れるよ」

 

水無瀬が拒否するが、そういうわけにもいけない。

 

「いいって、気にするな。夜、女の子を1人で歩かせるには行けないだろ」

 

「う、うん。ありがとう。じゃあ、お言葉に甘えてお願いします」

 

水無瀬の頬が少し赤く染まっているように見える。あれ? おかしいな……俺変なこと言ったかな?

 

「流石お兄ちゃん……女の子の気持ちが何も分からないんだね……」

 

小町が何か小声で言ってるが聞き取れなかった。

 

「小町なんか言ったか?」

 

「ううん!なんも言ってないよ! そ、それじゃあ優花さんまた遊びに来てくださいね!」

 

「うん!また遊びに来るね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

家を出発し、俺と水無瀬は暗い道を歩いている。30分ぐらいは歩いただろうか。 その間どちらも無言が多かった。

 

「八幡先輩は今日は楽しかった?」

 

水無瀬が聞いてきた。楽しかった、か・・・・・、まぁ楽しくなかったといえば嘘になるな。

 

「まぁ、楽しかったな」

 

「ならよかった!あ、私の家ここだから家もう大丈夫だよ!」

 

水無瀬は立ち止まり、前に建っているマンションを指さした。

 

「あぁ、わかった。じゃあな」

 

水無瀬にひとこと言うと、後ろを振り返り、再び元来た道を歩こうとすると

 

「八幡先輩!また明日学校で話そうね!」

 

水無瀬が少し大きな声でそう言いながら笑顔で手を振ってきた、俺はそれを不器用に手を振ることしか出来なかった。

 

その笑顔は俺が水無瀬優花と出会った2週間の中で一番のもので、そして・・・・・いまにも消えてしまいそうなものにも見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

俺は水無瀬を送り返したあと、元来た道を歩いていた。そして俺はふと、この2週間を振り返ってみた。

 

今思えばとんでもない出来事だったんだろう。きっと、高校生活で2年連続新学期初日に、事故にあった高校生は、日本全国で俺一人だけだろう。でも、事故のおかげと言ってはなんだが、水無瀬に出会うことが出来た。その出会いには感謝しなければならない。

 

人との出会いとは偶然とはよく言ったものだ。2週間前の俺はそんな言葉信じていなかった。だが、いまなら信じることができる。それぐらい水無瀬との出会いは偶然で危険なものだったのだ。家族にはもっと自分を大切にしろと言われたが、あのとき、あの交差点で水無瀬を助けたことは、俺は一切後悔してない。むしろ、あのとき自分が動くことが出来なかったら……どうなっていたかなんて、想像もしたくない。

 

水無瀬のおかげで、退屈しない入院生活を送ることが出来たのも確かだ。それに、今日だって退屈しない日々を水無瀬のおかげで、過ごすことが出来た。水無瀬も、心の底から楽しいそうに笑っているように見えた。

 

だからなのか分からないが、あのとき見せた水無瀬の儚くて、今にも消えてしまいそうな笑顔が頭の中から離れなかった。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。