やはり俺と彼女は青春をまちがい続ける。   作:冬奈水沙

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第五話

先日の材木座の依頼が終わりここ最近は特に依頼もなにもなく、ダラダラと部室に集まってはそれぞれ別のことをして時間を潰している奉仕部である。

 

「全然依頼者来ないねー」

 

さっきまで携帯をいじっていた由比ヶ浜だが調べることもなくなったのか話題を振ってきた。

 

「いいんじゃねぇの?依頼者が来ないってことは誰も悩みがないってことだろ」

 

もちろんそんなことはない。人は誰だって心の中に悩みを抱いている。それを打ち明けるには相当勇気のいる行為だろう。ましては友達でも何でもない人に悩みを打ち明けるなどそうそうできない。

 

「けどさー、それじゃあこの部活意味無いじゃん」

 

そんな俺が考えてることなどアホの由比ヶ浜には届くこともなく普通に会話が進んだ。

 

「そうですね・・・・・・確かに暇ですね」

 

「そうね。依頼者が来ないとなるとここはただの暇な部活なってしまうわね」

 

依頼者が来ないと暇になるということはどうやら雪ノ下も悩んでいたことらしい。依頼者が来ないときに何をするかを女子三人(俺は会話に加わってません)が話し合っているとコンコンっと控えめなノックの音が聞こえてきた。

 

「すみません、あの奉仕部ってここであってますか?」

 

開かれた戸の先には天使がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

✕✕✕

詳しく話を聞くと部室に入ってきた天使の名前は戸塚彩加で、由比ヶ浜の話によると同じクラスの子らしい。

そして何より驚いたのは・・・・・・

 

「うぅ、なんか女子として敗北した気分・・・・・・」

 

水無瀬が敗北を感じるほどの溶質なのに男の子なのだ。いやあ、男の子と聞いたときは倒れそうになった・・・・・・。

まぁそんなこともありながらいまに至っている。

 

「それで?あなたの依頼は何かしら?」

 

雪ノ下がいつもの調子で依頼の内容を聞く。

 

「あ、うん。その僕テニス部で部長なんだけど・・・・・・。あんまり上手くなくて・・・・・・少しでも上手くなりたいだけど・・・・・・できる、かな?」

 

なるほど。つまり戸塚は部長になったのはいいが、自分の実力が部長という肩書きと釣り合ってなくて少しでも上手くなりたい、ってことか。果たしてうちの部長はその依頼になんと答えるのだろう。

 

「わかったわ。その依頼受けます。明日の昼休みテニスコートに集合ね」

 

雪ノ下が言い終えると同時に部活動終了のチャイムがなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

✕✕✕

そして、ときは昼休み。いよいよ氷の女王雪ノ下監督主催の地獄の戸塚強化練習が始まる・・・・・・。

 

「むぅ、八幡これはなにが始まるのだ?」

 

おい、俺のかっこいいナレーションを返せ。ってかなんでお前いるの?

 

「なんか、比企谷君と話したそうにしてたから連れてきちゃった」

 

あ、なんだ。戸塚が連れてきたのかならいい。てっか材木座俺のこと好きなの?なんなの?

 

「それじゃあ始めるわよ」

 

「楽しみだね〜みっちー!」

 

「そうですね〜」

 

どうやら女子グループも準備を終えたようだ。そして地獄の練習が本当にスタートした。

 

 

・・・・・・

 

え?みんな大丈夫かよ・・・・・・。

 

地獄の練習が開始して約30分。早くも由比ヶ浜と材木座はリタイヤした。てっか材木座に関しては寝転がって動かないし・・・・・・。水無瀬に関してはたっているのはがやっとぽいな・・・・・・俺に関しては一年の頃事故にあって以来ずっと体を鍛えてるからこのぐらいまだ大丈夫だ。

戸塚はというと・・・・・・正直言うと水無瀬と一緒でたっているのがやっとぽいな。それでも俺が打つラインギリギリの球を跳ね返してくる。

 

「ちょっと休憩にしましょう」

 

雪ノ下の言葉と同時に戸塚は地面に座り込んだ。雪ノ下はそのあと何処かに消えていった。

 

「僕なんか怒らせることでもしちゃったかな?」

 

「ああ、雪ノ下か大丈夫だろ。多分救急箱かなんかを取りに行ったと思うぞ」

 

「それに、雪ノ下先輩は頑張ってる人を見捨てたりしませんからね〜」

 

そう、あいつは努力するヤツは絶対に見捨てたりしない。それは断言できる。

 

「あれーテニスしてるじゃん」

 

はしゃぐ声がして、見てみると同じクラスの葉山と三浦だったかな?まぁいわゆるリア充の集団がこちらに向かってきている。

 

「あ、ユイたちだったんだ」

 

どうやら三浦の女子グループの1人が由比ヶ浜がいることを確認したみたいだ。

 

「ねー、戸塚ー。あーしらもここで遊んでいいよね?」

 

「えっと、遊んでるんじゃなくて・・・・・・練習を・・・・・・」

 

「なにー?聞こえない!」

 

戸塚が小さな声が言ったのが聞き取れなかったのをいい事に。三浦が更に威圧をかけてくる。よし、うん。俺は関わらないようにしよう。平和大事。

 

「だーかーら、練習中って言ったんです!」

 

突然大きな声が聞こえてきたと思うとそれは水無瀬の声だった。

 

「ちょっと後輩は黙ってなさい!」

 

すると三浦の隣にいた女子が水無瀬向かって対抗してきた。

 

「ちょ、ちょっと2人とも落ち着いて!」

 

由比ヶ浜が中立になろうとするが火に油を注ぐだけだった。

 

「はぁ?ユイはこんなやつの肩を持つって言うの?」

 

・・・・・・どうやら三浦は俺の逆鱗に触れてしまったようだ。

 

「まぁまぁ、ここは公平にテニスで勝負して勝った方が使うってので」

 

葉山がけりをつけようとするがそれは俺には逆効果だった。

いまこいつらはなんて言った?水無瀬をこんなやつて言わなかったか?一生懸命練習をしている戸塚に向かって遊び半分でコートの取り合いをしようと言わなかったか?絶対に許さねぇ・・・・・・。

それにいま戸塚はとても不安そうな顔をしている。今にでも泣き出しそうだ。そんな状況を脱出することができるのはこの中では俺しかいない。

 

そう、俺は知ってしまったのだ。二年の春の水無瀬との出会いのきっかけの事故で。誰かを助けることが俺には出来ることと、それができても誰かを悲しませてしまうことを。ならばいまこの状況を無事誰も傷つかないで脱出できれば俺は少しは成長したことになるんじゃないか?それに戸塚の為にも・・・・・・、戸塚が怒ることができないから変わりに起こっているか水無瀬の為にも・・・・・・俺は絶対にコートを守る。

 

 

「おい、葉山と三浦そのテニス勝負俺が受ける。まとめてかかってこい!」

 

 

 

 

 

 

 

✕✕✕

格好つけて言ってみたものの、正直体力的にきつい……。

一応再認識しよう。どうやら三浦というやつは中学のときテニスをしていたみたいだ。そして、葉山の方はさすがの運動神経としか言いようがない。

 

一応俺はリハビリで走り込みなどをしてきたために、前より断然運動神経が良くなってるものの、二人がかりとなると同点をキープするのがやっとだ。

 

「まだ続けるのかい?」

 

葉山が諦めるように、俺に言ってくる。

うるせぇ、勝てないのは分かってるがここで諦めるかよ。

 

「あぁ、どちらかが勝つまでが勝負だ」

 

いまの得点は11対11だ。この勝負はただの打ち合いでどちらかが後ろに逸らすか、サーブを2回ミスるかで点数が入る単純な試合だ。ただ、15点マッチとあって、正直2対1だと体力的にきつい。

 

「なに?まだやるの?それじゃあいくよ」

 

相手のサーブというわけで三浦が打ってきた。それを返すと今度は葉山が叩き込んでくるがそこはよんでいたので、また打ち返す。さっきからこれの繰り返しだ、恐らく相手は俺の体力を削り確実に点数をとる作戦だろう。

まぁそう簡単に負けないけどな!

 

「ほいよ」

 

強い打ち合いが続いたせいか葉山たちは前の方が空いているのを忘れているみたいだった。俺はそのすきに前の空いてるペースにボールを落とした。見事に決まった。これで12対11,。

 

「悪いがここら辺で決めさせて貰う」

 

サーブは交互にするというルールなのでこちら側のサーブとなる。

俺はある程度までボールを上げると相手が動けないラインギリギリの所をめがけて打った。

葉山が腕を伸ばすがそれは見事に空振りをし、コートにボールが落ちる音だけが聞こえる。これで13対11。いままで騒いでいたギャラリーの声が小さくなっていく。

 

「くっ、やるな。どうやら甘く見ていたのは俺の方だったみたいだなヒキタニ君」

 

「まぁな、人を見かけて判断してはいけないってことだ」

 

俺と葉山はお互いを見つめ、改めて再確認する。てっかこの小説いつからスポーツする小説になったの?

 

「それじゃあいくよ!」

 

葉山が速いスピードのサーブを打ってくる。それを辛うじて跳ね返すとそれをチャンスとみた三浦が飛び込んできた。

「あーしが負けることなんてありえないし!」

 

猛スピードで打ってきたが力み過ぎたせいか別の方向にボールが飛んでいったが……

 

「あ、やば!」

 

俺はラケットを放り投げて走り出した。そう、ボールのゆくえの先には水無瀬がいて、ちょうど高さ的に顔にボールが当たりそうだからだ。運良く、俺の方が水無瀬に近かったためにボールより先に追いつくことができ、水無瀬を抱きしめながらボールを避けるようなかっこうになった。だが避けた先には……フェンスがあった。俺はフェンスに激突しそのまま意識が落ちた。誰かの声が聞こえたような気がした……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

「八幡先輩!八幡先輩ってば!」

 

あれ?俺は確か葉山たちとテニスの試合をしていたはずじゃ……。

 

「こ、ここは?」

 

まだはっきりしない意識の中場所を確認しようとすると、水無瀬が抱きついてきた。

 

「バカ!心配させないでよ!死んじゃうかと思ったよ……」

 

あ、そうか。俺はあの後水無瀬を庇いながら頭からフェンスに飛びこんだんだった。となるとここは保健室か……。

 

「その、すまない。心配かけた。お前の方は大丈夫か?」

 

今にも泣き出しそうな水無瀬に謝り、水無瀬に大丈夫かどうか聞いた。

 

「うん。八幡先輩がかばってくれたから大丈夫だったよ。ありがとう」

 

そうか、なら良かった。そいえば勝負はどうなったんだ?

水無瀬にあのあとのことを聞くとどうやらさすがに負傷者が出ては勝負は出来ないということで途中で切り上げたみたいだ。どうやらこの勝負はある意味コートを守れたから俺たちの勝ちかもしれない。

 

「あの2人もすまなかったって謝ってたよ。私は許さないけど!」

 

どうやら水無瀬さんはお怒りの様です……。

立てるかどうか確認すると俺は保健室を出ることにした。

 

「それじゃあ部室に戻るとするか」

 

今回のやり方が良かったのかは正直わからないが、まぁ犠牲者が俺だけだったから多分良かったのだろう。きっと今度なにかあったときもなんとかできる……と俺は思っていた。この先の展開なんて誰もわかるはずがないのに。

 


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