―夜、大通り 三車線の国道
大樹と麗が乗る86は一番左の車線からプォーン!!とサイレンを鳴り響かせながらも黒いハイエースに接近しようと加速していた。だが、その行く手を阻もうとシルバーのセドリックが割って入ってきた。
助手席の男が身を乗り出して拳銃を構えるが、ズドォン!という鋭くも重い銃声が鳴り響くと共に持っていた拳銃を落とした。……麗のレッドホークで撃ち抜かれてようだ。
「Aランク武偵を嘗めて貰っては困りますわ」
そう呟きながらもズドォン!ズドォン!!ズドォン!!とセドリックの足周りに向けて発砲……弾は見事命中し、車体が大きく左に傾くと共にガガガッと下回りを擦らせるようにして大きく減速。
右側にサッと避けて中央の車線に移ると今度はハイエースの前方についていたセドリックが減速して此方に迫ってきた。先程とは違い、助手席と後部座席の男達が既に拳銃を手にとって構えていた。パァン!パァン!!と乾いた銃声を響かせながらも発砲してきたが、大樹が左右に舞うように回避行動をとった為、命中はない。
回避行動が落ち着いたポイントで麗がズドォン!ズドォン!!とレッドホークで反撃。助手席と左後部座席から身を乗り出していた男の銃を撃ち抜いた。
「右について下さいませ!!」
車内に入ってくる風で髪を綺麗に靡かせた麗がチャキッとリロードを行いながらも指示を出すと大樹は「了解」と答え、86を右車線に素早く車線変更させてからアクセルを踏み込んで加速し、素早く横につく。
ついた時には既にリロードを終えて臨戦態勢に入っていた麗。右後部座席にいた男が驚いている間にズドォン!と銃を撃ち抜き、また無力化。
更に足周りや運転席側にもズドォン!ズドォン!!ズドォン!!と次々撃ち込んでいく。
全弾撃った所で車体が大きく傾き、減速。
後ろで180度大きくスピンしたのを確認して"余裕"と言わないばかりの笑みを浮かべる彼女だったが、ふと前を見た時にその余裕の表情は消えた。目標であるハイエースがいつの間にか向かい側にいたのだ。
右後部側のスライドドアが開いていて、男がAKを此方に向けて構えているのが見える。此方のレッドホークの残弾はゼロ……
反撃が出来ないと頭の中で浮かび上がると共に"死"という文字がふと頭の中を過った。
……が、それに気付いた大樹が彼女を助けようとフルブレーキングを行って86を一気に減速させた。ダダダダッ!!と7.62mm弾を放つ銃声が鳴り響いたが、何とか避けることに成功する。
「大丈夫か、高千穂ッ!?」
心配するような様子で問い掛けながらも右手でチャキッとPPKSを抜き取る大樹。左手で運転しながらもウィンドウを開けてPPKSで威嚇射撃を行う彼の姿にポッと顔を赤らめてしまいながらも「え、えぇ……」と答えてレッドホークのリロードを行う。が、何だか先程よりもリロードが遅い。
「た、高千穂……?」
「な、なな、何でもないっちゃッ!!!」
そう勢いよく答えて自分の心を隠そうとする麗。チャキッとリロードを終えて再び応戦しようとした時、ハイエースが交差点を右に曲がった。
「掴まれよっ!!」
そう言いながらもPPKSをしまった大樹はブレーキングを行いながらもフォゥン!フォゥン!!とシフトダウン。
その後、ステアリングを両手に持って高めのスピードで交差点に侵入。素早くステアリングを切ってキィィィィ!!と4輪を滑らせるようにドリフトを行う。……綺麗に立ち上がって一気に距離を縮めた所で麗が再びレッドホークを構えた。
「わたくし達が相手だったこと、後悔なさい!!」
その決め台詞のような言葉と共にズドォン!ズドォン!!ズドォン!!とレッドホークで男達の銃を撃ち抜いていく。
戦闘不能になり、86相手にハイエースで逃げるのは不可能と考えた運転手は大きく減速して停車。86も前につくように停車すると、大樹と麗がそれぞれの銃を手に降りた。
「抵抗はやめなさい、みっともないわよ!」
「両手を頭の後ろに回して車から降りて!!」
しっかりと照準を合わせながらも近づくと、男達が言われた通りに降りてきた。それを確認すると共に大樹が携帯で110番通報する。
「武偵の原田です。銀行強盗を行ったグループを拘束しました。場所は-」
そうオペレーターに的確に説明する彼の姿を麗は目をキラキラと輝かせながらも見ていた。
・
-しばらくして 六本木ヒルズ・スカイデッキ
オープンデッキのビル展望台としては、日本一の高さと敷地面積を誇るこの場所。心地よい夜風を浴びるながらも二人はこの場所で世界有数の大都心の夜景を堪能していた。
「間に合いましたわね……」
その言葉に対して「ああ」と小さく頷く大樹。先程の一件後の警察とのやり取りが思っていた以上に時間が掛かったため、間に合うかどうか少し心配だったのだ。
だが、時間ギリギリではあるがこうして間に合った……安全対策用の手摺に前から掴まるようにして夜景を眺め、改めて「ふぅ……」と小さく安堵の息をつく彼を見た麗は距離を縮めようと一歩、また一歩と恐る恐る歩み寄っていく。そんな彼女が近付いていることには気付いたが、あえて何も言わずに夜景をじっと眺めていた。
「夜景とかそんなに興味なかったが……こうして見ると良いな」
そう呟く彼の姿を頬を少し赤らめながらも見ていた麗。ドクンッドクンッ……と自らの心臓の高鳴りを感じつつもスゥーと大きく深呼吸して落ち着かせようと試みる。徐々に心臓の高鳴りがなだらかになっていく。今なら出来る……!小さな勇気を振り絞って「あ、あの……!」と話し掛けて彼を振り向かせた。
「は、原田先輩……一つだけお願いがございますわ。受けるも拒否するも先輩の自由。答えがどうであれ、教務科への報告もいたしませんわ」
ここまで言ったが、急に込み上げてきた緊張と不安から口が止まってしまう。頭の中が真っ白になり、次に何を言うのかも忘れてしまった中……大樹の方が再び夜景の方に目を向けながらも優しい笑みを浮かべてこんなことを言ってきた。
「言わなくてもいい……痛いほど伝わったから」
そう呟くと共にサッと再び向き合うような形になる。頭上に?を浮かべて固まる麗だったが、次に彼がとった行動で驚きのあまり顔を赤らめてしまう。
両肩に手を置いてきたのだ。
そのまま数秒間見つめ合うようにしてからギュッ……と力強く抱き寄せてくる。何の抵抗もしないでそのまま抱き寄せられた麗は「な、なななッ……!!?」と更に恥ずかしそうに顔を赤らめていくが、彼は更に話を続けた。
「今まで避けてて……ごめん。
それから……ありがとう、大事なことを教えてくれて」
その言葉が耳に飛び込んでくると共に今までに体感したことがない幸福感と温もりに包まれていく麗……
先程までの恥ずかしいという感情は消え、自然な笑みを浮かべながらも自ら抱き付いてから上目遣いで彼を見ると「先輩」ともう一度恐る恐る呼び掛けてから先程言いそびれたこと御願いを伝えた。
「わたくしと……お付き合いして頂けませんか?」
「ああ、もちろん。断る理由なんてないよ。
ただ……これから付き合うなら、互いに下の名前で呼び合わない?」
その提案に対して「ええ」と頷く麗は爪先立ちするようにして顔を近付き、少しだけ恥ずかしそうに頬を染めながらも艶があるような声で早速呼んでみた。
「―大樹先輩」
「―麗」
確かめ合うように互いに呼び合った後にゆっくりと顔を近付け、先程の空振りを補うかのごとく唇を重ね合わせた。唇から伝わる感触と互いの温もりから更に求め合うように抱き締めていた腕に互いに力を入れて絡め合う。夜風はそれを祝福するように二人の体を優しく包み込んでいく。
―この時間がいつまでも続けばいい
そう互いに思いながらも大都心の壮大な夜景を背景に二人は唇を重ね合わせ続けた。
・
―同時刻
六本木 とある公園
六本木にしては比較的に閑静なこの公園の手前に停まる白いZと改造ベスパ……公園内には博也と理子がいた。
滑り台の先で腰掛けている博也に対して理子は近くのブランコに座ってブラブラと軽く遊んでいる。二人共、右耳にイヤホンなものを取り付けて麗と大樹の会話を聞いているようだ。
「うららんの服に盗聴器を仕込んで正解でしたねー」
「ああ。にしても、思った以上に上手く行ったみたいだな……一つ階段上がることが目標だったが、階段全部上がりやがった」
そう苦笑いしながらも二人の会話に聞き入っていた博也だったが、そんな彼に対して理子は一つだけ気になったことを投げ掛けた。
「にしても、どうして鬼教官スタイルで教育したんですー?」
「特に意味はない、何となくやって見たかっただけ」
その答えに対して「へえー……」と言葉を漏らしながらも公園の中央に立てられていた時計台に目を向ける理子。すると、「よっと」と口にしながらもブランコを止めて降りた。何だろう?と目を向ける博也に対し、彼女は背中を向けるようにして右耳に取り付けていたイヤホンを外しながらもこう答えた。
「センパーイ。理子、待ち合わせがあるからもう行きますねー」
「お、気を付けて行けよ」
彼女の答えに対して気にしないような声質でそう答える博也。……だが、ふとその後ろ姿を見ると何かに勘付くように目付きを鋭くさせた。「じゃあ、またー」と去り際に述べた時の笑み……その笑みが怪しく見えたのだ。悪魔のような不吉な笑みに見える。
気のせいか……?いや、何かある。
それが何かは分からないが、何か企んでいるに違いない。そう思いながらも大樹はベスパに乗って走り去っ去っていく彼女の姿を見ていた。
・
―数時間後 深夜
とあるビルの最上階
最高級のホテルのようなきらびやかな廊下に血塗れで倒れる無数の黒服達……そんな彼らのことを気にせずに颯爽と歩く一人のスキンヘッドの男がいた。
高級品の背広姿に西洋系の顔立ち……
サングラスを掛けていため、どんな目付きなのかは分からないがパッと見た感じだと年齢は40代半ばぐらいだろう。右手に消音器(サプレッサー)付きのMP5Kを持っているのを見る限り、倒れている黒服達は彼にやられたのだろう。
コツコツ……という靴の音が静かな廊下に響き渡る中、彼は奥にある大広間のドンッと扉を蹴るようにして入った。
東京の夜景が一望出来る大きな窓をバックに社長席のような椅子に座る一人の中年の男……高千穂家から資金を得ようとしていたあの男だ。彼は背広の男を見るや否や、「ひぃぃ……!」と脅えるような声をあげて椅子から滑り落ちるようにして床に尻餅をつき"待て"と言わないばかりに右手の手のひらを見せた。
「は、話し合いをしよう!話せばわか……!!」
次の瞬間、パシュンッ!という素早い銃声と共に彼はMP5Kで素早く頭を撃ち抜かれた。一瞬にして血塗れになって絶命した彼に対して背広の男はペッと勢いよく唾を吹き掛ける。
「金の巻き上げもまともに出来ない野郎に用はない。消え失せろ……」
響くような低い声質で言い残しながらもMP5Kをしまい、エレベーターへと向かう。1階のボタンを押し、ドアが閉まって下り始めたのを確認すると共に携帯を手にとって外部と連絡をとった。
「―ボスG.D、どうでしたか?」
G.Dというのは背広の男のコールネームのようなものである。そして、今通話している相手は彼の部下だ。その部下の問い掛けに対して「ああ」と答えて見せる。
「今終わった。両目を瞑っていても出来るような簡単な仕事だった……そっちはどうだ?」
「―準備出来ました。予定通り、イ・ウーの奴等動きに乗じて行きます」
「わかった。ところで、今何処にいる?」
「―ビルの前にいます。珍しく全員揃って」
その言葉を聞いた後にチーンという到着音が聞こえてドアが開いた。エレベーターから出て警備員の屍を踏むようにして歩いて外に出る。……外には4台のマッドブラックの車両が縦に並ぶようにして停まっていた。
先頭から997型GT2、997型ターボS、ケイマンS、987型ボクスター。全てポルシェ製のスポーツカーだ……特に997型はポルシェの中でもスーパーカーのような扱いをされている911系統に部類される。
ポルシェ一色と言っても過言ではないこの状況を見ると共に携帯の通話をピッと切るG.D。
すると、ターボSの運転席から誰かが降りてきた。黒髪を左右に分けた眼鏡を掛けた目付きが鋭い30代ぐらいのアジア系の男。先程までG.Dと話していた男だ。コールサインはB.R。
「ボス、お疲れさまです」
「呼んでもいないのに、わざわざ来たんだな」
「ええ、数年前の一件の情報が手に入ったようなので……報告に参りました」
そう言いながらも黒い大きめの封筒を手渡すB.R。G.Dはサッと受け取って中を開けて読む前に背広の内側に封筒をしまう。そして、夜空を仰ぐようにして見ながらもふとこんなことを呟いた。
「―数年前に見掛けたあのガキはまだ生きている。
俺への復讐のために武偵高で徐々に力を付けつつある……厄介な存在になる前に狩らないとな」
呟いてから先頭のGT2の運転席に乗り込むG.D。それを見たB.RもターボSの運転席へと戻る。先頭のGT2がヘッドライトをつけてエンジン始動すると共に、後方の車両もパッとヘッドライトで道を照らすようにしながらもエンジン始動。ブォゥゥン!!と轟音を響かせながらも陣形を崩さないように全車発車……
そして、ある程度離れた時だ。
先程までG.Dがいたビルからバァァンッ!バァァァンッ!!という音が聞こえてきた……爆発したのだ。倒壊するほどの威力ではないものの、爆風によって各階の窓ガラスを次々と割れていく。やがて、爆発は収まったもののビルは爆発によって黒煙と火柱が上がっているような状態になった。
誰かが通報したのか、ピーポー!ピーポー!というサイレン音と共に消防車と救急車が数台態勢で来た。隊列を組んでいたポルシェ一群はそれとスレ違うも、何事もなかったかのようにそのまま去っていった。
どうも、350Zです。
いやー、麗と大樹がついに結ばれましたね!
とても嬉しい展開では御座いますが、私にとってちょっと心残りが……、
それはキスの描写の書き方。
なーんか納得いかないんですよね……
もうちょっと上手く書けたような気がするなぁ
個人的に40点ぐらい。うん……
まあ、こういう恋愛の描写書くことはあまりないので大目に見てやってください←
中盤からはラブラブでハッピーな展開から一変、また何か不穏な動きが見えてきました……
特に終盤に出てきたポルシェ軍団。
彼らは一体、何者なのか……?
次回からACT.3です。
ご期待ください←←渡○也