緋弾のアリア-X-クロス   作:350Z

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何を今さら迷っている?


まっすぐ明るい場所に歩いていくんだ

いつも何かと背中合わせの危うい世界に


もうキミは在るべき人じゃあないんだ――――








第四話 タイム・リミット

 

 

 

 

―翌日、昼 雨

 

 

喫茶店の裏のガレージ

 

 

外とは対称的に如何にも暑そうな室内でボロボロになったZのパーツ移植作業が進められていた。前日とは違い、赤いツナギ姿で黙々と作業を進める片岡……

 

チャキチャキッという工具を動かすような音を周囲に響かせていると車搬入用のシャッターがガラガラと開き、五人の男が現れた。見た目30代ぐらいで全員、黄色いツナギを着ている。……片岡の元弟子たちだ。

 

 

 

 

「片岡さん、応援に来ましたよ」

 

 

 

 

「おう、早く手伝え」

 

 

 

 

車体前部の下からひょこっと顔を出しながらも促すと五人は直ぐ様、工具を手に取って作業を始めた。が、ただ単に移植作業をするのではない。痛んでいる部品や怪しい部品を分け、それが何なのかメモを取ると共に廃棄。メモをある程度取ったところで他のショップ等に問い合せ、置いてあるかの確認も手分けして行う。

 

 

が、その間に問題があるパーツが浮かび上がった……

 

 

バンパー等の外装関係のパーツだ。

こういったパーツは在庫保管する場合はスペースを取る……そのため、純正品であろうが社外品であろうが受注生産がほとんど。余程の需要がある車種でもない限りは作り置きしているということは滅多にない。

 

 

 

 

「片岡さん、どうしますか?今から発注となれば塗装なしでも2、3週間は掛かりますよ」

 

 

 

 

元弟子の言葉を聞いて車体の下からクイッと顔を出す片岡。持っていた工具を置いてそのままゆっくりと体を出して立ち上がる。

 

 

 

 

「ネットオークションや中古のショップは?」

 

 

 

 

「調べました。ですが、ジャンク品や色違いも含んで同等の物は……短期で仕上げるなら、バンパーレスも視野に入れた方がいいかもしれません」

 

 

 

 

その言葉に思わず頭を押さえる……仕方ないと割り切った後に伝えてきた元弟子の肩をポンッと軽く叩くようにしてから作業場を離れた。

 

 

 

 

「そっちの方は俺が何とかする。お前は俺の代わりに作業を進めてくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―同時刻 武偵病院

 

駐車場

 

 

一台の白いクーペがこの場所に停まった。平たいボディの四角ヘッドライトが特徴的なこの車……Z33の一つ前の型であるZ32だ。そんなZ32の運転席から白い花束を二本片手に博也が降りてくる。

 

降りると共にブゥゥ!ブゥゥゥ!!と彼のスマホが着信を伝えてきた。長いこと鳴っている限り、電話だろう。ピッと手にとって応じてみる……電話の相手は片岡だった。

 

 

 

「もしもし?」

 

 

 

「―お、出たか。どうだ、代車は?」

 

 

 

「どうだって……驚きましたよ。32(サンニー)とは言え、代車がZなんて」

 

 

 

「―まあ、NAのオートマで2by2(4人乗り)。走行距離もかなりいってるから、中古市場で50万以下で手に入れられるような奴だ。そんな大層なモンじゃない」

 

 

 

苦笑い混じりの声を聞きながらもドアの鍵穴にキーを差し込んで締め、雨に打たれながらも病院の入り口に向けて歩き出す博也。そんな彼に片岡は本題を切り出した。

 

 

 

「―移植の件だが……ちょっと問題が出てきた」

 

 

 

「問題……というと?」

 

 

 

「―外装系パーツだ。今から新品の発注となれば2、3週間は掛かる……それも塗装なしで。中古やネットオークションでも探したが、同等品はヒットしなかった」

 

 

 

片岡の言葉を聞いて驚くような表情になる博也。移植完了の期日を定めていないにも関わらず、何だか急いでいる様子だ。

 

どうしてなのか……?

 

気になった彼は病院の入り口前でドアに背中を向けるような形で雨宿りしながらもその理由を問い掛けた。

 

 

 

 

「どうしてそんなにも急いでいるんですか?」

 

 

 

 

「―どうしてって…お前、相当急いでいるだろ?昨日の顔見れば分かる。あの急ぎ方は早く車が戻ってきて欲しいっていうのだけじゃない……他にもあるだろ」

 

 

 

 

……正に図星だった。博也は軽く頭を押さえるようにしながらも"流石"と言わないばかりに「はぁ」と短く息を吐き捨てた後に続けてこう続ける。

 

 

 

 

「やっぱり凄いな、片岡さん。俺なんかより一枚も二枚も上手だ」

 

 

 

 

「―アホ、何年前からお前の面倒見てると思ってんだ」

 

 

 

 

「そうでしたね。思えば、俺が免許取る前……教習所通い始めた段階からずっと世話になってましたね」

 

 

 

 

懐かしそうに語る博也に対し、「―そうだな」と合わせるように答える片岡。だが、古い思い出に浸る為に電話を掛けてきたわけではない。再び話を本題に戻した。

 

 

 

 

「―短期間で仕上げるなら、同等品パーツは無理だ。だが、別のパーツなら幾らでも探せる」

 

 

 

 

「短期間……どれぐらいで仕上がりますか?」

 

 

 

 

「―3日あればいける」

 

 

 

 

たった3日で車体を仕上げる…異常な早さだ。彼の解答に半ば驚く博也。仕上がり具合が気になるところだが、相手は自分が信頼を寄せる百戦錬磨のチューナー……博也は「はい」と小さく頷きながらも彼の言葉に答えた。

 

 

 

 

 

「短期間のプランでお願いします」

 

 

 

 

 

その答えに「―わかった」と答えながらも通話を切るような口調で了解する片岡。博也の方も通話をやめるだろうと思いスマホをゆっくりと耳から離そうとするが、「―あ」と何かを思い出すような声が聞こえて再びスマホを耳に近付けた。

 

 

 

 

「―ひとつだけ頼みがある……お前が急いでいる理由を聞かせてくれ」

 

 

 

 

片岡の最後の言葉に「………。」と黙り込む博也。その数秒後、口角を軽く上げるようにして自然な笑みを浮かべながらも答えた。

 

 

 

 

「大切な人たちを守るためです。

 

俺……もう、何も失いたくないんですよ」

 

 

 

 

「―そうか……わかった」

 

 

 

 

答えを聞くと共に通話を切ってきた片岡に対し、スマホを耳から離しながらも液晶の画面を切る博也。ゆっくりと振り向いて早速、病院内に入った時だ。あかりが奥から姿を現した。此方の様子を見るや否や、小走りで駆け寄ってくる。

 

 

 

 

「あ、先輩」

 

 

 

 

「見舞いは済んだのか?」

 

 

 

 

 

「はい、先輩は……?」

 

 

 

 

「お前の妹と神崎の見舞いに来たんだ。花束も持ってきた」

 

 

 

 

「ほら」と言わないばかりに手に持っていた花束を軽く上げるようにして見せると彼女は感激するように満面の笑みを浮かべてから頭を深々と下げた。

 

 

 

「ありがとうございます。あ、あの……

先輩がよろしければ、見舞いの方の付き添いさせてくれませんか?」

 

 

 

 

「え、でも……見舞い済んだんじゃ?」

 

 

 

 

「先輩が来たのなら別ですよ、早く行きましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―数分後、間宮ののか病室

 

 

アリアの見舞いを軽めに済ませた後に立ち寄る二人。

 

 

何もない広めの個室……

 

 

そんな個室のベッドで目に包帯を巻いた少女……ののかの姿を見た博也は驚きを隠せない様子で突っ立っていた。そんな彼に対してあかりは笑みを浮かべて静かに歩み寄っていく。

 

 

 

 

「ののか、お客さんが来たよ」

 

 

 

 

「お客さん……?」

 

 

 

 

「そう、私にとってのもう一人の憧れの先輩。博也先輩だよ」

 

 

 

 

あかりの紹介の仕方に半ば恥ずかしく思いながらも「ども……」と声を掛けては歩み寄っていく博也。何処にいるのか分からずにキョロキョロとしているののかだったが、足音と声で理解して此方に顔を向けてきた。

 

 

 

 

「貴方が博也先輩ですか?姉から話しは聞いてます。いつもお世話になってるみたいで……」

 

 

 

 

あかりとは全く違い、非常に丁寧でしっかりとした口調の彼女……本当に姉妹なのだろうか?と思わず思いながらも「いやいや」と小さく首を横に振る。そして、「これ……」と言いながらも持っていた花束を手渡す。

 

貰った花束が何か分からず、手で表面を触るようにして何か確かめると共に「あ」と理解するように呟きながらも笑みを浮かべてきた。

 

 

 

 

「花束ですか。ありがとうございます」

 

 

 

 

そう言いながらも花束を膝の上に置く彼女。そんな彼女を見た博也の頭の中にふとある疑問が浮かび上がる。

 

彼女は何故、視覚を失ったか……?

 

疑問に思った彼はあかりに向けて「ちょっといいか?」と声を掛け、互いに一旦部屋から出てからそれを確認することにした。

 

 

 

 

「……どうして目が見えなくなったんだ?」

 

 

 

 

小声で恐る恐る問い掛けると、あかりは神妙な面持ちでゆっくりと語り始めた。

 

 

 

 

「私の技を狙う敵……夾竹桃に毒を打ち込まれたんです」

 

 

 

 

「毒……?解毒剤はないのか?」

 

 

 

 

「はい、何でも構造が特殊みたいで。

解毒剤を作れるのは作った本人……つまり、夾竹桃だけなんです」

 

 

 

 

その言葉に「なるほど」と頷く博也。そんな彼に対してあかりは何処か不安げな様子で続けてこう語った。

 

 

 

 

「私、妹を救う為に仲間と一緒に夾竹桃と戦うことにしました……

 

でも、正直言うとまだ怖いんです」

 

 

 

 

その言葉に放ってはおけない博也は再び病室のドアノブに手を伸ばしながらもこう投げ掛けた。

 

 

 

 

「……見舞いが終わったらまた車の中で話そう」

 

 

 

 

彼女の不安を少しでも和らげるためにゆったりと話せる場で語り合おうと思った彼の口から出た提案……

 

あかりはその提案に小さく頷いて「はい」と答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―1時間後、二車線のとある国道

 

 

 

小雨が降り注ぐ中、ブォォン……というV型エンジンの音を響かせながらも国道を走るZ32。車内で博也が運転する中、助手席には座っているあかりは少しだけ表情を和らげさせていた。

 

 

 

 

「少しは気が楽になったか?」

 

 

 

 

「あ、はい……ありがとうございます」

 

 

 

 

小さく頷いて礼の言葉を述べる彼女だったが、まだ心の内にある闇は消えていないみたいだ……その闇を引き摺り出さない限りはずっとこんな感じだろう。そう思った博也はウィンカーを出しながらも車を左車線に入れてから単刀直入に問い掛けた。

 

 

 

 

「夾竹桃と戦うことの何が怖いんだ?」

 

 

 

 

「何がって……それで仲間が傷付いてしまうことが怖いんです」

 

 

 

 

俯いて自分の膝を眺めるようにしながらも答える彼女に小さく溜め息をつきそうになる博也。次の交差点で左折しようと信号手前でブレーキを踏み込んで減速してから答えた。

 

 

 

 

「武偵憲章、第一条"仲間を信じ、仲間を助けよ"。

 

しっかり信じてやれ、一緒に戦ってくれると誓ってくれた仲間を」

 

 

 

 

「信じてます。でも、やっぱりそれで傷付くのは嫌なんです……!

 

私がこんな酷い運命を背負っていなかったら、皆……!!」

 

 

 

 

博也の言い分に若干声を荒くさせるような強い口調で反論するあかり。そんな彼女の反論に博也は「……。」と何かを考え込むように黙るも、車を左折させてからあることが頭の中で浮かび上がり、アクセルをゆっくりと踏み込みながらから話し始める。

 

 

 

 

「……なあ、あかり。

俺らが今乗ってる車がどんな車か知ってるか?」

 

 

 

 

「いえ……」

 

 

 

 

「日産のフェアレディZ・Z32。俺が乗ってるZ33の前身の車だ。

 

発売したのは1989年。

日本はバブル景気の絶頂期……コイツはその時代に合わせ"スーパースポーツ"という限りなくスーパーカーに近いスポーツカーを目指して造り出された。

 

最初は売れに売れて日産の看板みたいになっていたらしい。だが、その後のバブル景気の崩壊と同メーカーの日産・新型スカイラインGTーRに売上を押され、その影は次第に薄れていった。更に90年代後半、それを後押しするようにメーカーである日産の経営が悪化……そして、2000年に生産終了。

 

人からして見れば"たった11年"と言うかも知れない。が、コイツはその11年の間に絶頂とドン底の両方を体験してるんだ。

 

……お前、高1だから少なくとも15年は生きてるだろ?そこから考えてみれば、色々なことを経験しててもおかしくない」

 

 

 

 

 

説明を終えたところで次の交差点の信号が赤になっているのを確認……ゆっくりとブレーキを踏み込んで停止線の前で車停めた後に神妙な面持ちで続けるようにこう語った。

 

 

 

 

「どんな奴の人生も曲線グラフで表せば、上がったり下がったりする……幸せな時もあれば不幸な時もあるからな。

 

人ってのは何かと幸せなことばかりに目を向け、不幸なことには目を逸らして逃避しようとする。

 

でも……不幸な時こそ目を向けるべきだ。

如何にグラフを上昇させるように修正を掛けるか……その修正を考えてしっかりと行動に移すのが大事なんだ。

 

 

お前は行動しようとはしてるが、まだ迷いがある。そんなやり方……いや、"生き方"じゃダメだ。一緒に戦う仲間のグラフまで狂わせ兼ねない。一度決めたならしっかり前を見ろ、後ろを振り向くな。

 

 

 

 

 

人生は一方通行だ。

 

―そこで生きる上にバックギアは必要ない」

 

 

 

 

 

博也の言葉に対してまだ不安なのか、まだ顔を俯かせているあかり。そんな彼女の頭を……

 

博也は左手でソッと撫でた。

 

 

 

 

「心配すんなって、ピンチになった時は俺が助けてやるから」

 

 

 

 

その言葉を聞くと共に顔を少し赤らめるあかり……自分を撫でてくれた手に"離さないで"と言わないばかりに両手で押さえるようにして博也に目を向けた。

 

 

 

 

「先輩……私、頑張ります。なので、もう少しだけこうさせて下さい」

 

 

 

 

彼女の言葉に口角を軽く上げるようにして笑みを浮かべて「わかった」と小さく頷いて答える博也。

 

信号が青になってもステアリングを右手に任せながらも彼女の頭の上に添えていた左手は離さない。スッ……と優しい手付き撫で続けていると、彼女は小声でこんなことを伝えてきた。

 

 

 

 

「3日後の夜……ホテル・ラストダンス。

 

そこで夾竹桃を逮捕する予定です。作戦コードはAA(ダブルエー)」

 

 

 

 

3日後……ちょうどZが戻ってくる予定日だ。片岡の言う通りに事が進めば、ギリギリ間に合う。信じてはいる……だが、絶対に間に合うという保証はない。

 

……その事を頭の中で考えていると笑みを浮かべていた博也の表情も次第に神妙になっていく。

 

 

 

 

 

「(もし、間に合わなかったら……コイツ(Z32)で行くことになるかも知れない)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―同時刻 とある立体駐車場

 

 

片隅のガラガラのスペースにGT2を停め、運転席にもたれる黒いスーツ姿のG.D。片手で携帯を手にしながらもある人物に電話を掛けると、「―はい」と凛とした声質女性らしき声質の人物が応じてきた。

 

 

 

 

「俺だ、G.Dだ」

 

 

 

 

「―あら、ボス。どうしたのかしら?」

 

 

 

 

「色々と厄介な事が起きてな、お前に頼もうかと思って掛けただけだ」

 

 

 

 

「―厄介事?ラブコールじゃないのね」

 

 

 

 

「馬鹿か、寝言は寝てから言いな。」

 

 

 

 

呆れ混じりのその言葉に「―ツマラナイわね」と小声で呟く彼女。聞こえてはいたG.Dだったが、わざと聞こえないフリをしながらも話を続けた。

 

 

 

 

「お前にはある奴の暗殺を頼みたい」

 

 

 

 

「―ある奴……一体、誰?」

 

 

 

 

彼女の問い掛けに対してスーツのポケットからクシャクシャに丸まった二枚の写真を手に取るG.D。そのまま大きく手を振るようにして写真を広げる。すると、そこには黒い服装の怪しげな少女……夾竹桃が写っていた。

 

 

 

 

 

「イ・ウーの夾竹桃だ。奴は色々と知りすぎたようだ……手段はどのようなものでも構わない、早いうちに消せ」

 

 

 

 

 

 







どうも、350Zです


最初に謝罪から……


更新が遅れてしまい申し訳ありません!!


いや、なかなか良い感じに仕上がらなかったので時間が掛かってしまいました……


正直、今の状態でもお見せ出来るような状態じゃないんです←←

でも、更新しないとマズイかなって……

いや、本当に申し訳ありません!!




まあ、この位で許してやって下さい……←



さて、そんな謝罪まみれの今回の話でしたが……

いかがでしたか?


3日で車仕上げるってスゴいっすよね←←

でも、口で言うのはなんだって出来るんですよ!

だから、片岡も……おっと、誰か来たようだ。



さて、次話から話の内容が大幅にオリジナルになります


どんな展開になるのか……


ご期待下さい(渡○也)

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