-考えるコト
わかろうとするコト
そして見ようとするコト
いま目に映るそのモノじゃなく
その向こう側にあるもの
どうしてそうなったのか
なぜそうでなければならないのか
いつもその理由を考える
――考えなければ何もわからない
-首都高速出口
一般道に降り、夜風を切り裂くように疾走する博也のZ33。
朝のカーチェイスのようにサイレン音を鳴らしながらもハンディタイプの赤と青の回転灯を車体上部に取り付けて回している。
只でさえ速いにも関わらず、更にアクセルを踏み込んでいく博也。
加速Gにより、体がグイッ!とシートに押し付けられる……
助手席に座っているあかりは恐怖のあまり、「ぴゃぁぁぁっ!!?」と叫んでいた。
「せ、先輩っ!
ペース落として下さいーっっ!!」
懸命に頼むあかりだが、運転している博也は無言のままDefi製のデジタルメーターがピィーとアラート音が鳴らすと共にタコメーターをチラッと見てエンジン回転数を確認。
左手でシフトノブを握り、カタッとシフトアップ。
回転数が落ちてアラート音が鳴り止むと再び加速させていきつつも左手を再びステアリングに戻す。
かなり集中しているようだ。
そんな中、目標(ターゲット)までの道案内をしていたナビに表示が出てくる……
次の交差点で右に曲がるようだ。
博也が足下の付近に取り付けられていた車載拡声器の受話器を左手で手にする。
「-緊急車輌通ります!
道を空けて下さい!!」
そう言ってから受話器を戻すが、減速する気配はない。
このままでは事故を起こしてしまう……
そう思ったあかりは顔が青ざめてしまう。
頭の中で色々な思い出が走馬灯のように頭の中を過り、恐怖のあまり「うぅ……!!」と怯えるように声を出しながらも力強く目を瞑る。
そして、もう少しで交差点に差し掛かる頃に今度は体が勢いよく前に押し出されるようなGが襲い掛かった。
ブレーキングを行ったのだろう。
それと共にシフトダウンする音が聞こえてきた。
合わせるようにファゥンッ!ファゥンッ!という咆哮のような音とデジタルメーターのアラート音が耳に飛び込む。
まだスピードが乗っている中、
博也は手足に全神経を集中させながらも勢いよくハンドルを切った。
「ひえぇぇぇ!!」と悲鳴あげるあかりの叫びが車内に響き渡る中、
車体がキィィィィ!!というスキール音(タイアが滑る音)を響かせながらもスライドを始める。
いわゆる、ドリフトだ。
強烈な横Gが車内に襲い掛かる中、車体を持っていかれないようにとステアリングを左に切る博也。
が、車体は吸い寄せられるように歩道と車道の間にあるガードレールに接近していく……
あかりがふと目を開けるとガードレールまであと数センチというところまで近付いていた。
もう、ダメだ……!
……と思っていたが、急に車体の吸い寄せがピタッと止まった。
そこから再び加速体勢に入る。
「……あれ?」
何事もなかったかのように走っていく現状に驚きながらもゆっくりと顔を上げるあかり。
何があったのかと混乱しつつも頭の中で色々考えていると博也に何かを渡された。
車載拡声器の受話器だ。
「これ、頼んだ」
頭の中が混乱している中、急に渡されたので受話器を受け取っても何のことだか分からずに頭上に?浮かべるあかり。
そんな彼女に理解させようと博也は小さく息をついてから大声でもう一度伝える。
「あ"ーアナウンスしろッ!!
分かったら返事!!」
「は、はいぃっ!!」
ようやく理解したあかりは勢いよく頷きながらも受話器を口の前まで運んでいく。
が、何を喋れば良いのか分からず「えーと……!?」と考え込んでしまう。
その間に次の交差点が近付いてくる。
「え、えっと……!
あ、危ないですよっー!!」
「何が危ないんだよっ!!」
ツッコミを入れながらも交差点に突入する直前にブレーキングを行う博也。
先程と同じようにカタカタッ!とシフトダウンを行うと共に左に曲がろうとステアリングを切る。
再びドリフトによるスライドが始まると車内にグイッと強烈なGが掛かった。
「ひゃぁぁぁッ!
ごめんなさいぃぃぃッ!!」
襲い掛かるGに再び叫びつつも謝るあかり。
再びガードレールに近付くも、当たるスレスレで加速していくZ33。
曲がり切った後に襲撃を受けている護送車が目に入ってきた。
何とか今の今まで逃げれてはいるようだが、犯人の車と思われるシルバーのクラウンに右側を張り付かれてるようだ。
博也は後部のトランクスペースにある無線機を手にし、此方が味方であることを伝える。
「こちら、FZ33(スリースリー)。
これよりそちらの支援に入る」
「-こちら、CE27(ツーセブン)!
助かった、早く来てくれ!!」
無線越しに聞こえてくる安心したような声が聞こえてくると共に攻撃体勢に入れるように左右のパワーウィンドウを開ける博也。
そんな中、クラウンの助手席側から男がAKらしきアサルトライフルを構えた。
かなりのスピードで二台に接近しているZだが、間違いなく接近するよりも向こうが発砲する方が早い。
まずい……と思っていたあかりだが、ここで博也が右手をステアリングから離してあるものを手に取る。
シグ・ザウエル&ゾーン社が開発したP226だ。
左手でステアリングをグイッとしっかり握り、P226の銃身を外に出し、照準を全く見ずにパンパンッ!と発砲……
なんと、クラウンから身を乗り出していた男がAKを落としたのだ。
道路上に落ちたAKを鮮やかにかわし、護送車の真後ろについた。
「え、今ので当てたんですか!?」
紛れかと思うような神業にはしゃぐあかりだが、まだ終わっていない。
邪魔な此方を排除しようと思ったのか、クラウンが此方に横についてくる。
後部座席のパワーウィンドウが降りると後ろに乗っていた男がM16のようなものを手に取り、此方向けてきた。
が、結果は同じ。
再び照準を見ずに撃った弾が命中し、M16を落としてしまう。
更に追い討ちを掛けるように車の足回りや運転手の腕に向けて向けてパンパンッパンパンッ!と発砲。
車体のバランスが悪化したクラウンは左右に揺れるように動きながらも減速……
そのままキィィィィ!とスピンし、ドンッ!と勢いよくガードレールに突っ込んで停車した。
ウィンカーを出して右車線に移った護送車に続くように右車線に移る。
「やりましたねっ!!」
「まだいるぞー。
ほらほら、後ろ後ろ!!」
博也の言葉を聞いて頭上に?を浮かべながらも後ろを振り向くあかり。
……本当にいた。
先程と同じシルバーのクラウン、今度は二台仲良く横に並んでる。
「今度は私に任せて下さい!!」
任せっぱなしではいけないと自分の愛銃であるマイクロUZIを手に自信満々のようすで名乗り出るあかり。
「おう」と任せるようにして素早くリロードをする博也に対してZから身を乗り出し、しっかりと照準を覗くようにしながらも構える……
そして、引き金に指を掛けた。
バラララララッ!と銃声と共に次々と銃口から放たれる9mmパラベラム弾。
が……全くと言っていいほど命中しない。
「あれ……?」と言葉を漏らしながらも弾切れになったマイクロUZIの引き金をチャキッチャキッと引くあかり。
その間にも二台のクラウンが詰め寄ってくる。
助手席にいる男が今にもAKを持った男が反撃してきそうだ。
「ど、どど、どうしましょう!?」
自分のミスで窮地に陥ったとあわあわ……!?と焦るあかり……
だが、博也の方は全くもって冷静を保っている。
リロードを終えたP226で先ずは後ろにいるクラウンに向けて発砲。
パンパンッ!と音が鳴り響くと共にスピン。
まずは1台。
が、問題はもう1台だ。
助手席からなら撃てるが、運転しながら身を乗り出して撃つのは不可能。
かと言って車線を移すと危ない……
そこで彼はとんでもない行動に出る。
なんと、ブレーキングを行ったのだ。
急激な減速によってクラウンが左に並んだ一瞬……
その一瞬を逃さずにパンパンッパンパンッ!と発砲、
全弾命中。
そのままバランスを崩したクラウンがガードレールに衝突……
だが、これだけでは終わらない。
クラウンが衝突した反動で此方の車線に飛び込んできたのだ。
「ッ……!?」
言葉にならないような声を出すあかり。
クラウンが近付いてくるのがスローのように感じられる……
"これでは衝突する"という恐怖心からだろう。
だが、その心配はなかった。
博也の素早い判断によってスッと回避。
急な操作だったため若干リアタイヤ(後ろのタイヤ)が滑るが、それも切った方向と逆側にステアリングを切って対応。
何事もなかったかのように加速していき、再び護送車の後ろにつくと、他のパトカーらしきサイレン音が聞こえてくると共に護送車の方から無線が入ってきた。
「-CE27よりFZ33へ。
安全圏に入った、これ以上の支援は不要だ。
報酬の方は多めにしておくように上に頼んでおく」
「FZ33、了解。
楽しみだ、お財布握り締めて待ってるぞ。
……状況終わり、オーバー」
そう無線交信を交わすとカチッと無線を切る博也。
ここで「ふぅ……」という安堵の息をつく。
ペースダウンしてサイレンの電源をオフにし、回していた回転灯をしまう。
次の交差点で護送車が直進するのに対して左折して別れた。
再びゆっくりと走るZ……
助手席にいるあかりはキラキラと瞳を輝かせて運転している博也に視線を向けていた。
「かっこよかったですよ、先輩!
あの状況下でずっと冷静でしたし、
やっぱりスゴいです!!」
キャー!と言わないばかりに誉めちぎるあかり。
だが……
そんな中、突如グゥゥゥ……という音が車内に鳴り響く。
……音の主は博也だった。
あかりの方を見て苦笑いの笑みを浮かべながらも力が抜けたような声でこう伝えてくる。
「悪い……腹減った」
・
-数十分後、
コンビニのATMで貯金を少し崩した博也はあかりと共にファミレスに来ていた。
駐車場が見える窓際の席に座る二人。
店内は夕食のラッシュが終わった後なのか、所々の席にポツポツと客がいるぐらいだ。
ドリンクバーのカルピスのみのあかりに対し、博也は目玉焼きが乗ったハンバーグとガッツリめに注文していた。
鉄板の上に焼かれたアツアツのハンバーグをナイフで切り、冷まそうとフゥーフゥーと息を吹き掛ける。
ある程度吹き掛けた所でパクッと口に含むが、まだ熱かったのか口の中で少しほふほふとさせながらも味わうように噛んでいく……
そして、冷めた所でゴクッと飲み込むと共に幸せそうな笑みを浮かべた。
「ぅーっ!美味い。
やっぱり、仕事の後の飯っていいなー」
「でも……
先輩、さっきうどん食べましたよね?」
「確かに食べたけど、
何て言うか……
今更ながら本命の腹減りが来たんだよなー」
あかりの鋭い問いかけに対して「あはは」と作り笑いをしつつも答える博也。
嘘である。
あの時は手持ちがなかったため、やむを得ずに注文したのだ。
あの場でもっと所持金があれば、ここに寄ることもなかっただろう……
と思いつつもハンバーグと向き合う。
そんな彼に対し、あかりはジゥルーッとストローでカルピスを飲んだ後に駐車場に停まっているZに目を向ける……
そして、こんな素朴な疑問を投げ掛けてくる。
「先輩、
あの車にどれぐらいお金掛けたんですか?」
問いかけに対して「そうだなぁ……」と考えるように呟きながらもモグモグとハンバーグを食べる博也。
そして、頭の中で考えつくと同時にゴクッと口に含んだのを飲み込んで答えた。
「まあ、車自体は中古で当時価格200万ぐらい。
でも……
改造費は新車で安いFスポーツのレクサス買って、
"結構なお釣りが返ってくる"ぐらいは掛けたかも」
「え……!?
そんなに!!?」
驚きのあまり両手をテーブルにつけながらも身を乗り出すあかり。
レクサスは言わずも知れたトヨタの高級車ブランド。
Fスポーツというのはそんなレクサスのスポーツグレードみたいなものだ。
安いという言葉がついたが、高級車ブランドのスポーツグレードということもあり一番安い車でも新車価格は430万。
これは車体のみの価格だ。
これに更に別途諸経費も上乗せされる。
それだけの代金を払っても"御釣りが返ってくる"というのだ。
あかりの反応に対してそうなるだろうなと言わないばかりに苦笑いする博也。
視線を一度Zに向けた後にあかりに戻し、続けるように語り始めた。
「車のパーツってやっぱり結構高いんだ。
Zみたいなスポーツカーは特に高い。
市販パーツでさえ高いのに納得行くようにわざわざワンオフで作ってもらったパーツもあった。
めちゃくちゃ高かったなー。
でも……なんかイジるのやめれなくてさ。
おかげでかなり生活圧迫するぐらいになったよ」
そう言ってからはむっと再びハンバーグを口にする博也。
そんな彼がゴクッと飲み込んだのを不思議そうに見ながらもあかりは次の質問を投げ掛けた。
「悔いはないんですか?」
「悔いって?」
「だって、
お金を掛けなければもっと裕福に過ごすことも出来たんですよね?
そんなことを考えて後悔したりってないですか?」
あかりの問いかけに対して「………。」と黙り込む博也。
ハンバーグを食べ終え、チャキッとフォークとナイフを置くと片隅に置いてある紙布巾を一枚手に取り、口の周りを軽く拭き取る。
そして、真っ直ぐとした眼差しでZの方を見ながらも語り始めた。
「後悔なんかしてない。
まあ、確かにあの車に金掛けなければそこそこ裕福な暮らしをしていたと思う。
でもさ、
その道を選んだ俺よりも今の俺の方が幸せだって言い切れる。
……裕福だから幸せ、
貧乏だから不幸っていうのはただの固定観念。
本当にそれが幸せかどうかは本人しか知らない」
「……あの車にそんなにも思い入れがあるんですか?」
「まあ、人生で"一番最初"に惚れた車だしな」
ヘヘッと少し恥ずかしそうに頬を赤らめながらもハッキリと答える博也。
その話に興味を持ったのか、若干ワクワクするような様子であかりが掘り下げてきた。
「一番最初って、いつですか?」
「中等部入って間もないぐらいの時だったかな。
まだアレが新車で売っていたぐらいの時代……
俺が惚れたのは街中をフラフラ歩いてる時に見掛けた奴だ。
純正の形を上手く活かしたようなエアロ付けててさ……
なかなかお目にかかれないような流線基調の車に知らないうちに釘付けになってた。
それで、ちょうど信号待ちで停まってたから
「どんな人が乗ってるか」
って覗き込んだら……
乗ってたのはスーツを着た40代前半ぐらいのサラリーマンだった」
「へぇー、なんか意外ですね!」
「だろ?
でも、一番驚いたのはその運転手の表情だった。
何処か楽しげだったんだ。
仕事や私用で良いことがあったって感じじゃなかった。
何というか、その場にいることを楽しんでるような……
そんなものが伝わってきたんだ。
それ見て思ったんだ……
将来、あの車に乗りたいって」
そう答えると共にお冷を手にしてゴクッと一口だけ飲む博也。
そんな彼の話にあかりは更に興味を持ったのか、少し興奮したような様子で更に掘り下げる。
「そこまで惚れ込んでるとしたら……
免許とってから一番最初に乗ったのもあの車ですか?」
「いや、違う車。
当時はまだ武偵駆け出しの状態だったからZ買うほどの財力もなかったし、
運転技術もヒヨッコだったから……
まずは違う車から行こうって」
「そうなんですね……
それで何に乗られてたんですか?」
「R30スカイラインの後期型……
通称、鉄仮面って呼ばれてる車だ。
俺らがまだ産まれてない2、30年前に生産されてたスポーツカーで排気量2リッターのターボ車。
そいつのガンメタに乗ってた」
そう説明すると共にスマホを手にして画像フォルダを開く博也。
そして、「あった」と呟くと共に画面を反対向きにしてあかりに見せた。
そこに写っていたのは駐車場に停められているカクカクしたボディのガンメタと黒のツートンカラーのクーペだ。
どうやら、これが鉄仮面のようだ。
写真で見ると古いわりにかなり綺麗だ。
「古いわりに綺麗ですね!」
「まあ、
買った時は店の外で雨ざらしにされてて御世辞にも綺麗とは言えなかったけど……
年式相応の走行距離だったから故障も多かったし」
「でも、速かったんですよね?」
あかりの問いかけに対してスマホをしまいながらも首を横に振る博也。
懐かしそうに目を軽く瞑るようにしながらも天井を仰ぐように見て腕を組み、自分の記憶を辿るようにしつつもゆっくりとした口調で再び語り始めた。
「速くなかったよ。
発売当時は"史上最強のスカイライン"なんて言われてたけど、所詮は旧式だ。
ターボの特性がエンジンの回転数が高回転域に入る手前で急にドンッって加速し始めるドッカンターボって奴。
そのドカンが来るまでがスゴいかったるいんだ。
よーいドンの出だしは友達の軽とドッコイドッコイ……
本気で走っても同じ2リッターターボのシルビアには普通に千切られた」
「え、どうしてそんな車にしたんですか?」
あかりの鋭い問いかけに対して「ハハハ……」と思わず苦笑いしてしまう博也。
過去の話とは言え、自分の話であることには変わりない……
そんな過去の自分に対して「馬鹿なことしてるな」とでも思っているのだろう。
真相については苦笑いを終えた後に呆れるように答えた。
「今ほど車のこと知らなくてさ……
とにかく他の奴と被らないスポーツカーが良かったんだ。
さっき言ったシルビアに180SX(ワンエイティ)、ロードスター、AE86(ハチロク)辺りは買える範囲ではあったけど絶対に他の奴と被るなってさ……
そんなこと思いながらも何にしようか考えながらも下校してたら、鉄仮面を見つけたんだ。
で、"コイツなら絶対に被らない"って思って買ったわけ」
「それで、実際はどうでしたか?」
「俺の思惑通り、誰とも被らなかった。
まあ……
チョイスが古すぎて他の奴には驚かれたけど」
答えを聞いて「そ、そうですか」と思わず苦笑いのあかり。
そんな彼女の反応を見てそうなるよなと内心割り切りつつも博也は話しを続ける。
「さっき言った通り、
鉄仮面はよく壊れたし決して速くなかった……
けど……
今、振り替えってみると思うことがあるんだ」
「というと……?」
「生意気な若僧だった俺に色々教えてくれたのかもしれないなって。
壊れたことで車の詳しい構造とかどういう部分が劣化しやすいか分かるようになったし、
速くなかったけど"速く走らせよう"って気持ちが強く出て練習に励むようになり、そのおかげでテクが身に付いた。
最後の方はシルビア相手でも普通に勝ってたよ」
勝った時の光景を思い出したのか、視線をあかりの方に移しつつも苦笑いではなく普通の自然な笑みを浮かべる博也。
そんな思い出がある車は今どうなってるのか……?
気になったあかりはカルピスを一口飲んだ後に続けて問いかけた。
「その車はどうしたんですか?」
「二台持ちなんて出来る自信なかったし、後輩に売ったよ。
で、今まで貯めてた資金と売った時に来た資金を頭にしてアイツを買った」
そう言いながらも再びZに視線を向ける博也。
街灯に照らされ、パールホワイトのボディがそれを反射する……
それにより、光沢のような輝きを放っているように見えた。
思わず口元の辺りで軽く笑みを浮かべてしまうと、あかりが再び質問を投げ掛けてくる。
「えっと、
乗り換えて思ったこととかありますか?」
「思ったこと……か。
真っ先に思ったのがノーマルに等しい状態だったのにちょっと弄ってた鉄仮面より速かったってことかな。
驚いたよ、ホントに。
ドッカンターボの鉄仮面と違ってNA(ターボなし)だったからアクセル踏んだ後のラグみたいなのはない。
アクセルの踏み込み具合をそのまま捉え、いきなり3.5リッターエンジンのパワーがズトンと来る……
実質的な最大馬力はZの方が上。
それだけ高パワーなのにハンドリングがぶれない。
そして、車重の重さを感じさせないしなやかなコーナリング……
時代の差って奴を感じた。
なんか浦島太郎みたいな気分になったよ」
そう語っている間にブゥゥ!ブゥゥ!!という着信音が鳴り響く。
博也が「ちょっと待って」と右手を見せるような動作を見せてきたことから彼のスマホの着信なんだろう。
そのまま一端話を中断しつつも、再びスマホを取り出して通話を始める。
「-もしもし?おー、武藤か。
……車買い換えたから見て欲しい?
車種は?なるほど、分かった。
じゃあ、また後で折り返す」
そう答えながらもピッと通話を切る博也。
そして、申し訳なさそうに軽く頭を下げながらもあかりにあることを頼み込んだ。
「悪い、後輩がちょっと車見てくれって言われたから……
今日はこの辺で御開きでいいか?」
「はい、今日はありがとうございました!」
「いや、礼を言うのはこっちだ。
悪かったな、つまんない話ばっかり聞かせて」
「いえいえ、とても面白かったです!」
再び天使のような無邪気を浮かべるあかりに対し、何処か癒されてしまう博也。
"心をぴょんぴょん"とさせながらも立ち上がるとこの場くらいは奢ろうと財布と伝票を手に取る。
それに続けてあかりも立ち上がったのを確認し、会計へ。
目玉焼きハンバーグとドリンクバーのみのため、1000円札一枚で御釣りが返ってくる。
ジャリジャリと鳴らしながらも財布の小銭入れに流し込んでから二人で外に駐車されているZの方へと向かった。
・
-十分後、武偵高女子寮
あかりの戦姉であるアリアが住んでる部屋がある寮。
その前にZを停めた博也はあかりを送ってから再び走らせ、ある場所へと向かう……
男子寮の裏手にある駐車場だ。
その駐車場の片隅に停めてある車体が大きい1台の青いクーペ……
日産 BCNR33 スカイライン GTーRだ。
博也のZが空いている左の駐車スペースに停まると共に運転席から誰かが降りてきた。
がさつな感じの見た目に武偵高の制服を着た長身の青年……
武藤剛気。
武偵高2年生で、車輌科Aランク。
博也の後輩……
戦弟ではないが弟子のような存在だ。
博也がZから降りて来ると共にニヒヒと笑みを浮かべながらも「久しぶりっす!」と勢いがいい挨拶を交わしてくる。
「おう、久々だな。にしても……
驚いたよ、お前がR買うなんて」
スカイラインという名前から察することが出来るかもしれないが、R33(アールサンサン)は博也が乗っていた鉄仮面と同じ系統の車だ。
鉄仮面の次の次の次に生まれたのがこのR33だ。
そして、語尾についているGTーRというのはそんなスカイラインの中でも速さに特化したグレードだ。
通常のスカイラインはFRと呼ばれる車体前部にエンジンが載っていて後輪が駆動する二駆だが、GTーRは四輪全てが駆動する四駆。
更にブレーキや足周り、エンジンも煮詰めている……
武藤はそんな車に乗り換えたのだ。
「知り合いのコネ使って150万以下で買えました。
ま、仕様としてはマフラーとエアクリとスピードリミッターカットのみのライトチューンですが」
その言葉聞きながらもR33へと歩み寄る博也……
スマホのライトを使ってボディをジッと見た後に下廻りを覗き込んだり、砲弾型のマフラーを見た後に小さく頷く。
「綺麗だな。
エンジンルームはどんな感じだ?」
その言葉を聞いて「はい」と言いながらも運転席に戻り、カチッとレバーを引いてエンジンルームのロックを解除する武藤。
博也は車体の前にまわりこむと共に先程と同じようにスマホのライトで照らしながらも中身をじっくりと見た。
「なるほど、消耗品関係もしっかりあるし……
オイル漏れ、液漏れもない。
この状態なら、普通は200万は行く。
……いいタマ拾ったな」
博也のそんなコメントに嬉しそうに「ありがとうございます!」と答える武藤。
余程うれしかったのか、運転席側のドアをバッと開けて見せてきた。
……乗ってくれということだろうか?
「俺に運転しろってか?」
「はい、
先輩ならコイツの良さ分かってくれると思います!」
その言葉と共にNISMOのキーホルダーが付いたGTRと装飾された純正キーを渡してきた。
ジャリジャリと鳴らしながらも受け取ると共に「わかったよ」と答えつつも運転席に乗り込む博也。
運転席のドアをバンッと閉めると共に武藤も助手席側に座ってきた。
それを確認するとエンジンを掛ける前にどんな装備があるのか確認……
後付けのETC以外何も付いてない。
純正メーターしかない。
買ったばかりだから仕方がないのかもしれない。
そう思いつつもキーを差し込んでセルモーターを回す……
始動音がZとは違い、ウォォンッと耳に飛び込んでくるような感じの音だ。
これはエンジンの違いからだろう。
ZのエンジンはVQ35HRというV型6気筒エンジン。
それに対し、R33のエンジンはRB26という直列6気筒エンジンだ。
その違いを感じつつもギアを入れて発車させ、駐車場を出る。
「何処行けばいい?」
「首都高辺りでも行って踏んじゃって下さい!
高速代ぐらい俺が持ちますよ!」
本日2回目の首都高に思わず苦笑いの笑みを浮かべてしまう博也。
仕方無しに言われるがまま、首都高へと向かいETCゲートを潜り抜けた。
現在、時速60km巡航。
ここから合流時にどれぐらい伸びるか……
そんな事を思いながらも合流地点が見えてきた。
ウィンカーを出しつつもアクセルをクッと踏み込む。
シートにグイッ…!と押し付けられるようなGを感じつつもレッドゾーン手前までエンジンを回し、カタッ!と素早くシフトアップ。
その加速に助手席に乗ってる持ち主の武藤は「うひょー!」と少し興奮気味の様子だ。
そんな彼に対し、合流を終えると共にアクセルを抜いてゆっくりと減速させる。
「どうっすか、先輩!」
「吸排気系のライトチューンだけでここまでパワーが出るのか……
流石はRだ。
同じようにチューンしても普通の車はこんなにもパワーでない」
真っ直ぐと前を見据えるようにしながらもそう言って高めのギアにシフトチェンジ。
そのまま首都環状線C1に合流。
高速にしてはコーナーが多い道を法定速度よりも少し速いぐらいの速度で軽く流していく。
コーナーに入る度に博也の眉間のシワが少し寄る……
まるで何かに気付くように。
「先輩、どうしたっすか?」
「……いや、何でもない」
そう答えながらもカタッカタッとシフトチェンジを行う博也。
武藤の方は彼の様子が気になったものの、今乗ってる車が自分の車だということに感激して「いや~!」と腕組みしながらも声を出した。
「先輩、Z売ってR買いましょうよ!
あれぐらい組んでるなら結構高値で……!!」
調子に乗った発言……
そんな発言に対し、博也は「武藤」と冷やかな声で呼びながらギロッ……と強く睨み付けた。
今にも襲い掛かって来そうな形相に流石の武藤も申し訳なさそうに首を引っ込める。
……が、少しした後に開き直るように再び発言してきた。
「で、でも、先輩!
Z買ってあれだけ金掛けるぐらいなら、
R買って同じ分だけ金を注ぎ込んだ方がいいっすよ!!
その方が速いでしょうし……!!」
これに対しては何も言わずに「……。」と黙り込む博也。
そして、「はぁ……」と小さく息をついてからゆっくりと語り始めた。
「武藤。
誰もRが悪い車とは言ってない。
Rの良さは俺も知ってる、その速さもな。
今日改めて思い知らされた……
でも……
だからと言ってその世界しか見ないのは駄目だ。
他の世界を見てから自分という存在、車という存在と向き合っていく。
……AランクになってRに乗り換えたからって浮かれるなよ。
こっからが正念場だ、気を抜くな」
ダメ元でそう言って理解させようとしたが、少しムスッとしたような表情で俯いている様子をみる限り、此方の言い分を理解していないようだ。
そんな聞くだけで理解してくれるほど頭がいい奴じゃないというのは博也も分かっていた。
だから、それ以上は何も言わなかった。
C1を1周した後に帰路を走り始めるR33。
そのまま静かに走って首都高を降りた。
・
-翌日、武偵高
正門前
朝日が昇り、校内のあちこちから「おはよう」という活気のよい挨拶が聞こえてくる中、アリアと会話しつつも登校するあかり。
……と言っても、あかりが一方的に話してるような状態だ。
話題は昨夜の博也のこと。
手を使ったりして表現している。
「それで、ぶぉぉん!!ってきて……
そのままきぃぃぃ!!って……」
興奮したような様子で話を繰り広げるあかり。
そんな中、聞き覚えのある低い排気音を響かせながらも1台のクーペがゆっくりとした速度で校内に入ってきた。
博也のZだ。
二人の前を横切ろうとしたが、「市ヶ谷先輩ー!」と手をブンブン!!と振るあかりに気付いて静かに停車した。
運転席のパワーウィンドウを下げ、顔をヒョイッと出して見せる。
「よぉー、間宮。
調子はどうだ?」
「はい、この通り問題ないです!
先輩、また昨日みたいに何処か行きませんか!?」
「お、いいねー。
じゃ、次は横浜辺りでも行こうか。
あの辺りも結構いいスポット多いから、行く価値あると思うぞー」
あかりと博也がそう話を繰り広げていると、その場にいたアリアが昨日のように博也に向けて睨み付けてきた。
その様子を見て首を傾げるあかりだったが、突然手首をグイッと掴まれる。
「行くわよ、あかり」
「あ、アリア先輩……!?」
そのままあかりの手首を引っ張ってその場から離れるアリア。
Zに乗る博也にガンつけながら……
昨日から感じるこの視線の原因はなにかは分からない。
ただ単にあかりとの関係を持つことに対しての嫌悪感からなのか……
またはSランク武偵特有の勘という奴からなのか……
そのどちらかは分からないが、警戒されてることは間違いない。
ふぅ……と小さく息をつきながらも昨日停めた校内の駐車場まで車を走らせる。
……誰かの視線を感じながら。
「-あかりちゃん………」
皆さんはじめましてー。
350Zと申します。
20代前半にしてZ33と現行前期型のヴィッツRSの2台持ちをしている奴です←
え?
生活キツくないかって?
キツいですよ!!
目茶苦茶!!
でも、悔いはないです←←
はい←←
元々ヴィッツ1台のみだったんですがねー……
なんか物足りなくなってきたのと、
ボクの周りが
「「ヴィッツワロスwwww」」
的な感じになってきたんで、
新たにZを購入することに……
ヴィッツを下取りに出せばだいぶ楽になったんでしょうが、
"家から職場までの通勤距離が長い"
っていうのと
"ヴィッツにも愛着がわいてきた"
っていうので、2台持ちすることに……
でも、
Zに初めて乗った時の衝撃は忘れられないですね。
それまでボクは1.5リッターNAのコンパクトカーしか乗ったことはなかったので、特に衝撃的でした。
滑り止め切ってアクセルベタ踏みで発進すると……
キィィィ!!!
って勢いよくホイールスピン……
ノーマルでこれって、流石はZだなぁーって。
いや、Zより速い車はいっぱいありますよ?
作中にも出てきたGTーRにトヨタのスープラ、
マツダのRXー7 FD3S……
ここじゃ語り尽くせないほどあります。
でも、ボクはZを買って良かったって言い切れます。
外車のように貴賓がある曲線的なデザイン、
純正でBOSE製のウーハーとスピーカー装備。
ステアリングを握った時に感じる少し重い感じのステア感はドライバーに程よい緊張感を与えてくれますし、
実用性はないですが2シーターっていうのもまた良いです。
そして、地を這うような車体の低さ……
これも良いです。
Z以外に少し安いエイトを選ぶという選択肢もありましたが、妥協しなくて良かったと思います。
エイトも良い車ですがね……
一回だけ試乗したことがあるんですが、
エンジンサウンドは
「うぉ、良い音すんな!」
ってなりました。
オーディオもZと同じで純正BOSEですし、一応四人乗り。
でも、自分はZの方が合ってるなと感じました。
これからも大事に乗っていきます。
P.S
土日に緋弾のイベント行ってきやす!
それと、今後から1話ごとのページ数が大幅に減ります……