緋弾のアリア-X-クロス   作:350Z

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第三話 ザ・ナイツ

 

―L'sプロチューン

 

 

 

SA22Cから降り、外から作業風景を眺める早川…

手際よく作業をこなしている姿に目を奪われていると、突然何処かから「おう」と気さくな声が聞こえてくる。

ふと声がした方向に目を向けると、そこにはボウズ頭で白いツナギを着た社長らしき中年の男がタバコをくわえて立っていた。

 

 

 

「ウチのショップに何か用か?」

 

 

 

「ええ、車のチューニングを頼もうかと思いまして…」

 

 

 

小さく頷いてから自分の愛車のSA22Cへと目を向ける早川。中年の方は彼の目線を辿るようにして目を向け、SA22Cを眺める…旧車とは思えないぐらいの艶のある綺麗なボディ。刀を思わせるようなそのボディラインに中年は感心するように「ほぅ…」と小さく言葉を漏らした。

 

 

 

「SAセブンか、懐かしい車だな。免許取って一番最初に乗った車だよ」

 

 

 

「そうなんですか?」

 

 

 

「ああ。当時、既に後継のFCが出ていたが…高くてなかなか手が出せなくてな。後のチューニングなんかのことも考えるとSAが妥当だろうと思って中古のSAを買ったんだ。ちょっとエンジン見せてもらっていいか?」

 

 

 

その言葉に「はい」と頷いて運転席に回り込む早川。カッチンとレバーを引き、ボンッとロックが解除されると共に中年がサッとボンネットを開けていく。

旧車らしい古びた内面の中にポッカリと納まるピカピカの13B-REW。彼はそれを見るなり「なるほどな」と小さく呟いてから続けて語り始める。

 

 

 

「12Aから13Bにエンジンスワップ(載せ替え)、タービンはT04か…中身はサーキット仕様のFDだな。スペックはどんなモンだ?」

 

 

 

「ブースト圧1.0オーバーで400馬力、車重は1000kg前後です」

 

 

 

「パワーウェイトレシオ2.5㎏台ってところか…見掛けに寄らずスゲぇ車だな。で、チューニングするなら何か目的でもあるのか?」

 

 

 

中年に聞かれて「……。」と考えるように間を開ける早川。神妙な面持ちで考えている間にふと、ガレージの片隅に置かれていたバンパーがないZ33が目に入る…すると、頭の中に前日のあの記憶がフラッシュバックしてきた。

まるでジェット戦闘機のような加速をしたあのZの隣に乗った記憶だ……

 

 

 

「目的は…とあるZ33とやりあうことです」

 

 

 

「とあるZ33…?」

 

 

 

「ええ。最近、首都高に現れる白いZです」

 

 

 

「ほぅ…相手はZか。で、そのZのスペックはどんなもんだ?」

 

 

 

スペック…そんなものはっきりと分かるような次元ではなかった。が、スペックが分からなければチューニングする方としても作りづらいものがある。あの時に感じ取ったもの…それらを全て思い出そうと頭の中をフル回転させる。そして、考えながらも「そうですね…」と小さく呟いてからゆっくりとした口調で答えた。

 

 

 

「車重はどんなものかは分かりませんが、本来のZの車重から考えれば900…いや、"1000馬力クラス"の加速はしてたかもしれません」

 

 

 

正直、自分でも言い過ぎではないかと後になって思う早川。が…あの時、それぐらいの強い衝撃を受けたのだ。

彼の言葉に驚きのあまりくわえていたタバコをポロッと落としてしまう中年。Z33で1000馬力…エンジン載せ替えでもしてない限りは無理な領域である。

 

 

 

「1000馬力…!?エンジンは!?」

 

 

 

「恐らく、GT-Rに載っているRB26やスープラに載っている2JZではなく、元から載ってるVQ35をツインターボ化したものです。タービンは何かはわかりません」

 

 

 

信じられない話…例え本当だったとしても、'80年代前半に生産されたスポーツカーがそんなモンスターマシンに勝てるわけがない。この話は聞き流そう。

そう思い、背中を見せてその場を去ろうとした時…「待って下さい!」という制止させるような声が響き渡った。

 

 

 

「貴方の気持ちはわかりますよ、そんな相手に勝ち目はないって…でも、持ち主である俺としてはコイツ(ロータリー)の限界がどんなものかって見たいんです。

…正直、勝ち負けはどうでもいいんですよ。

ただ、何処まで張り合えるか。それが見たいんです」

 

 

 

「何処までって…相手にすらならないだろ、コイツじゃ」

 

 

 

「いえ…前原さん、貴方のチューニングの腕があれば行けますよ。貴方の腕さえあれば…!」

 

 

 

前原…この中年の名前だ。

「……。」と数秒程黙り込んだ後、もう一度振り向いてSA22Cの方へと目を向ける…艶を放つ綺麗なガンメタカラーのボディ。もう何十年も経つ旧車にも関わらず、ここまで綺麗な状態というのは異常だ。如何にこの男がこの車を大事にしてるのかが分かる。

恐らく、「もっと速いGT-Rやスープラに乗り換えてから来い」と言っても、聞く耳は持たないだろう。

前原は「はぁ…」と小さく息をついてから仕方ないと言わないばかりにこう答えた。

 

 

 

「俺の方で見てやるよ…20:00にもう一度来い。詳しい話はそこからだ」

 

 

 

そう言いながら、もう一度背中を見せて事務所の方へと歩いていく前原。その背中に向け「ありがとうございます!」と頭を下げると、彼は続けてこんなことを呟いた。

 

 

 

「なに、迷惑な客が他のショップに行ってまた迷惑掛けるのを防いだだけだ…。そこんとこ勘違いするなよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

―昼、とあるショッピングモールの屋上駐車場

 

その駐車場の片隅に停まる白いZ33…博也のものだ。

人気もほとんどなく、静まり返ったこの場所…

白いパーカーに黒いジーンズというラフな格好で彼は何か考え込むようにしてZを見つめていた。

 

 

 

「(昨日走ってハッキリと分かった…

全体的な総重量は軽くなり、基本的な動きが軽くなった…が、前後の重量比がかなりフロント寄りになっている。こんな状態で限界域で走ろうとしたら間違えなく足元を掬われる…)」

 

 

 

…重量比。

コーナリングや加速時のトラクション(路面と駆動輪の間に掛かる駆動力)にも影響する重要な要素の一つである。理想的な重量比は50:50や52:48など様々な意見が上げられているが、そんな中でモータースポーツの世界で一般的に嫌われているのがフロントの重量比が重いフロントヘビーという状態…これが今の博也のZの状態だ。

フロントヘビーが嫌われる理由は色々あるが、アンダーステアと呼ばれる現象の誘発性が高くなるということが一番言われている。このアンダーステアという現象はコーナー進入時に車体が遠心力に負けてラインが外に膨らむこと…簡単に言えばオーバースピードで曲がりきれないことを指す。

つまり、今のZは限界まで攻めると"曲がらない車"と化すのだ。

 

 

 

「(動きが軽くなったが、とてもじゃないが攻めきれない…それこそ、Z(コイツ)がいつ裏切るか分からない)」

 

 

 

深刻そうに色々と考えていると後ろから明るい声で「センパイ!」と声を掛けられた…あかりだ。

明るい黄色のワンピースのような服を着ていて、肩に小さなオレンジ色のショルダーバッグを掛けている。どうやら、二人でこのショッピングモールに来たようだ。一歩、二歩と歩み寄ってくると下から顔を覗き込むようにして博也の方に目を向ける。

 

 

 

「早く行きませんか?他事を考えるのもいいですが、今は二人でお出掛けしてるんですよ?」

 

 

 

「そ、そうだったな…いやー、悪い悪い。なんか最近、ボーッとすることが多くて」

 

 

 

そう答えてからアハハ…と頭の後ろを軽くかくようにして誤魔化す博也。心配を掛けられたくないがために取った行動だ。更に深く掘り下げられないように「よし、行こ!行こ!」と促して早足で屋上駐車場からの入り口へと向かう…その時、一台の高級車が駐車場に静かに入ってきた。

白塗装で古いフロントデザインながらもピカピカで見るからに貴賓溢れているような縦長のセダン…二人の近くで静かに止まると、博也の方は思わずピタッと固まって目を見開いてしまう。

 

 

 

「べ、ベントレー…!?一体、誰が…!?」

 

 

 

思わず呟いていると、運転席から運転役の女性が降りて後部席のドアをゆっくりと開ける…すると、見覚えのある黒髪の女子が降りてきた…佐々木志乃だ。

黒のブラウスに紺の少し長めのスカートという私服姿で車から降りると一瞬だけ苦虫を噛むような表情を浮かべて博也を見てきた。

 

 

 

「(チッ…!!)」

 

 

 

博也が「は?」と言わないばかりの表情を見せる中、彼女を見て疑問を抱いたあかりが「志乃ちゃん?」と声を掛けるとすぐに「はいっ」と答えて笑みを二人に見せてきた。

 

 

 

「あ、あの…お二人とも、お出掛けですか?」

 

 

 

「うん、そうだよ」

 

 

 

「ま、まあ、そうだけど…」

 

 

 

突然の問いかけに少し戸惑いながらも答えると志乃は「奇遇ですねっ!」と更に満面の笑みを浮かべて両手を軽く合わせるようにして前のめりになりながらもこんな事を言ってきた。

 

 

 

「私もお出掛けでここに来たのです。よろしければ一緒に参りませんか?」

 

 

 

「うん、良いよっ♪人数が多い方が楽しそうだし…そうですよね?先輩」

 

 

 

「あ、あぁ…確かに」

 

 

 

二人の答えに内心「(よしっ)」とガッツポーズしながらもベントレーの運転手に「お行きなさい」と伝える志乃。運転手が「かしこまりました」と答えて運転席に乗って去っていくと、遠くから「オーイ!」という声が聞こえてきた。ふと三人がそちらに目を向けると二人組の女子が駆け寄ってくるのが見えた…麒麟とライカだ。

麒麟は白のゴスロリ系のTシャツと短めのスカートという服装、ライカは黒いチェックのシャツに茶色のジャケット、茶色のチノパンという格好だ。

 

 

 

「あ、麒麟ちゃんにライカまで!」

 

 

 

「こんにちはですの、間宮様♪」

 

 

「よ、あかり!なんだ、市ヶ谷先輩や志乃まで…三人でお出掛けか?」

 

 

 

「うん、志乃ちゃんとはここで偶然会ったんだ。良かったら一緒に行く?」

 

 

 

楽しそうに会話する三人に対し、ぐぬぬ…!と言わないばかりの表情を浮かべる志乃。そんな彼女と裏腹に博也の方は「ほげー…」と小さく声を漏らしながらもあかりの方に目を向けていた。

 

 

 

「(凄いよな…コイツ。前から薄々と感じてたが、仲間をつくるというか…引き付ける何かを持ってる)」

 

 

 

 

そう思っている間に一台のオレンジメタリックのクーペがブォゥン…!という独特のサウンドを響かせながらも駐車場に入ってきた…大樹の86GTだ。以前とは見た目が違い純正と比べてスパイタンな顔付きが特徴のイングス製のエアロパーツをフロント、サイド、リアの三点に取り付けている。

そんな86GTの助手席には麗らしき女性の姿もある。二人とも白と黒で統一された服装でサングラスを掛けていた。

 

 

 

「(おいおい、どうしてこうも知り合いが集まって来るんだ…!?)」

 

 

 

アハハ…と思わず苦笑いしている間に大樹も気付いたのか、86GTを此方に近くで停車。ブィィィン…とパワーウィンドウ開けてから静かにサングラスを手に取って顔を出してきた。

 

 

 

「奇遇だな、休日に会うなんて」

 

 

 

「あぁ、まあな…」

 

 

 

そう小さく返す博也に対してすぐに他のメンバーを見る大樹。彼以外は女性しかいない…それが分かると共に呆れるように「はぁ…」と小さく溜め息を溢してからこんな事を言ってきた。

 

 

 

「お前、車遊びだけじゃ飽きたらずに女遊びにまで手を出し始めたか…人のやることにはあまり強く口出しをしたくはないが、程々にしてろよ」

 

 

 

「い、いや!そういうのじゃないって!!たまたま偶然、ここで…!!」

 

 

 

「言い訳は見苦しいぞ…」

 

 

 

先程よりも深い溜め息をつきそうな表情でそう答える大樹。その時、助手席に乗っていた麗が掛けていたサングラスをチャキッとかけ直しながらも博也話をする彼の方に目を向けた。

 

 

 

「大樹先輩、はやく行きますわよ?」

 

 

 

「あぁ、悪い。じゃ、そういうことで俺はもう行く…じゃあな」

 

 

 

そう告げると共にブィィィンとパワーウィンドウを上げて、締まり切ったところで再び加速を始める86GT。どうやら、駐車場の空きスペースを探しに行ったようだ。思わぬ誤解に軽く頭を押さえるような素振りを見せる博也。そんな彼にあかりの方が「先輩」と話し掛けてきた。

 

 

 

「思ったのですが、先輩は良い友人関係の方が多いですよね。先程の原田先輩といい、武藤先輩といい…」

 

 

 

「良い友人関係…?なんだ、それ?」

 

 

 

何のことだかサッパリ分からず、思わず頭上にハテナを浮かべながらも首を傾げるようにして問いかける博也。様子を見る限り、全くと言って良いほど自覚がないのであろう…あかりもそうだと察して具体的な説明をしようと「うーん…」と目を軽く瞑るようにしながらも小さく首を傾げながら考え始める。そして…どんなものなのか具体的には出なかったのか、「その…」と小声で切り出してからこんな答え方をしてきた。

 

 

 

「言い出した私自身、何と言えばいいのかよく分からないのですが…"目には見えない強い絆で結ばれている"とでも言えばいいのでしょうか…?」

 

 

 

「目には見えない強い絆?別に普通に仲良くしてるだけのような気がするけどな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―夜 L'sプロチューン

 

 

 

しっかりと清掃された事務所で社長席に座る前原。閉店したのか、彼以外の従業員は誰もいない…そんな中、机に置いている電話の受話器を手に取りながらもある人物と話していた。博也のZ33を組んだ片岡だ。

話題はSA22Cに乗っている早川のことで持ちきりになっていた。

 

 

 

「片岡さん。今日、うちに面白い奴が来ましたよ」

 

 

 

「―面白いやつ?なんだ、それ?」

 

 

 

「SAセブンに乗ってる奴ですよ。詳しいことは分かりませんが、見た感じ年齢としてはかなり若い…恐らく、まだ二十歳いってないです」

 

 

 

「―そんな若僧がSAセブンに?ほぉー、変わってるな。」

 

 

 

「ええ、それと変わってるのはそれだけじゃないです。なんでも、そのSAで首都高を走っているとあるZ33を狙ってるだとか…」

 

 

 

「―SAセブンでZ33に…か。相手のZがどんな奴かは知らないが、行けるんじゃないか?

"師匠である俺以上に上手くロータリーが組める"お前が組んだらの話だがな」

 

 

 

片岡からの背中を押すような発言にフッと小さく笑みを浮かべながらも「ありがとうございます」と返す前原。その時、外からギュウィィンッ…!という特有のエンジンサウンドが聞こえてきた…どうやら、早川のSA22Cのようだ。

それと共に事務所に掛けられていた時計で時間を確認する…19:55だ。

 

 

 

「(約束の時間、5分前に到着…いい心がけだ)」

 

 

 

そう思いながらもゆっくりと席から立ち上がりながらも「すいません」と謝ってからこう切り出した。

 

 

 

「客が来ました」

 

 

 

「―客って…お前んとこ、営業時間はもう過ぎてんだろ?」

 

 

 

「ええ、確かに過ぎてます…ですが、この客はちょっと特別なんですよ」

 

 

 

「―…そうか、しっかり見てやれよ。じゃあな」

 

 

 

「はい、失礼します」

 

 

 

カチャッと受話器を下ろしてから席から離れ、そのまま事務所を出ていく。外の駐車場にはSA22Cの姿が…リトラクタブル式のヘッドライトは開いたままで、エンジンは掛かりっぱなしの状態。持ち主である早川がカタッというドアの音と共に静かに降りてくると、前原の方がニッ…と不敵な笑みを浮かべながらもこう述べた。

 

 

 

「よし、始めるぞ…とりあえず、様子見ということで横に乗せてもらう。C1辺りでも軽く流してくれ」

 

 

 

「わかりました、どうぞ乗って下さい」

 

 

 

 

 

 

 

―数十分後

 

 

首都高速都心環状線(C1エリア)

 

浜崎橋JCTから合流するSA22C。

二車線の狭いエリアの中、右に左にと一般車をかわしていく…運転している早川はまだ余裕があるような様子なのに対し、前原の方は「ほぅー…」と感心するような声を出していた。

 

 

 

「なかなか上手いな」

 

 

 

「ありがとうございます」

 

 

 

そう返しながらも左右に流れる高速コーナーを次々と抜けていくように運転する早川。そんな中、彼はふと今朝のことを思い出す…そこからふと疑問を抱き、アクセルを緩めてペースダウンしてから「ちょっといいですか?」と切り出してから単刀直入に問いかけた。

 

 

 

「最初、どうしてチューニングを断ろうとしたんですか?」

 

 

 

「…昔、色々あってな。それがあってチューニングを断ろうとしたんだ」

 

 

 

「色々…?」

 

 

 

復唱するようにそう問い掛けると前原は「あぁ」と小さく頷いてから遠くを見つめるように目の前の流れる光景を見ながらも溜め息混じりに語り始めた。

 

 

 

「数年前。とある有名車雑誌の企画で色んなショップが集まって好きな車を特定のレギュレーション(規定)内で好きな車を組み、タイムアタックでタイムを競うってのがあった。場所は筑波…俺もロータリーで出ようと思ってFDで参加したんだ」

 

 

 

「FD…L'sチューンの昔のデモカーですか?」

 

 

 

「いや、違う。だが、エアロ系パーツとマフラーなんかの吸排気系パーツは全く同じ奴がついていた。組み上がった時に今まで組んだ中でもかなりいい仕上がりだと自分でも感じたよ。で、タイムアタック前のインタビューで"確実にトップ3には入ると思うぐらいには仕上がった"ってデカい口叩いたんだ。

…だが、結果は10組中6位。それも、その6位っていう微妙な結果でもRE(ロータリーエンジン)搭載車の中ではトップだったんだ」

 

 

 

「全体のトップは何だったんですか?」

 

 

 

「当時、まだ出たばかりだったエボⅨだ。俺が組んだFDでは到底叩き出すことが出来ないようなかなり速いタイムだった。そこで気付いたんだ…"ロータリーが速いっていう時代は終わったんだ"ってな。

そこからだ、ロータリーで本当の速さを追究しようとする客から仕事を断るようになったのは…」

 

 

 

言われてみれば…確かに、彼は早川の目的を聞いてからいきなり否定的な意見になって仕事を断ろうとしていた。だが、その後に頼み込んで引き受けてくれたのは何故だろう…?今度はそんな疑問が浮かび上がってくる。

 

 

 

「では…なぜ、その後に引き受けようと?」

 

 

 

もう一度単刀直入に問いかけて見ると、前原は「ふぅ…」と聞こえるか聞こえないか分からないぐらいに小さく息を吐き捨ててから車内を見上げるように目線を移して答えた。

 

 

 

「さあな。お前の押しで、心の何処かで僅かながら残ってたいた感情が動いたんだろうな。"ロータリーは速いんだ"っていう確証も何もない感情が…

筑波でのタイムアタックはレギュレーションがあったが、今回は公道。レギュレーションも何もない。チューナーの端くれとしては、組み方も自分が好きなように組めるってのも魅力的だと感じたんだ。にしても、俺もとうとうおかしくなっちまったか。違法である公道レースを魅力的と思い始めるとは…」

 

 

 

自嘲するように「フッ…」と笑いながらも目の前の光景に再び目を向けた時だ。C1を一周して浜崎橋JCTの看板をもう一度潜り抜けたSA22Cの前に一台の車が現れた。オレンジメタリックに煌めくボディ、86GTだ。イングス製と思われるスパイタンなエアロを取り付けている。

 

 

 

「86か」

 

 

 

「それらしい見た目はしてますが…どうします?」

 

 

 

「俺としてはやって欲しいが、やるかどうかはお前に任せる」

 

 

 

 

 

 

 

―86GT車内

 

二車線の道の右側に車をつけて夜の首都高をゆったりとクルージングするようにこの車を走らせていたのは大樹だった。ステアリングを緩めに握り、完全にリラックスモード…麗とのデートは終わったが、彼女とはブルートゥースを使って会話をしている真っ最中だ。

 

 

 

「次はどこ行こうか?」

 

 

 

「―そうですわね…わたくし、箱根に行きたいですわ」

 

 

 

「箱根か、距離的にも遠すぎないからいいな。いつ頃がいい?」

 

 

 

「―ら、来週辺りはいかがでしょうか…?」

 

 

 

「来週か。確か、予定は空いて…!?」

 

 

 

空いていると答えようとした時だ。後ろについていた車が車間距離を縮めては急にパッシングを始めてきた。バトルの誘いだ。バックミラーに映る強弱するヘッドライトの明かりに反応し、思わず会話を中断してしまう大樹。車種が何か判別しようとバックミラーに意識を集中させる。

 

 

 

「(リトラクタブルのヘッドライト…180SX(ワンエイティ)?いや、あの形からしてもっと古い。まさか、SAセブンか?)」

 

 

 

色々と考えている間に「―大樹先輩?」という麗の心配するような声が耳に飛び込んできて、自分が彼女と通話していたことを思い出す。…が、後ろについているSA22Cが気になって仕方がない。

どうして、こんな旧車がバトルに誘ってきたのか…?

色々と疑問が浮かび上がってくる。が、走ればその疑問も少しは分かるかもしれない。そう思った大樹は申し訳なさそうに「悪い…」と告げてからこう言った。

 

 

 

「ちょっと用事が出来た。また後で掛け直す」

 

 

 

ピッと通話を切ってハザードランプのスイッチに素早く手を伸ばし、カチッと押す。カッチャカッチャとハザードランプを点けることで後方についているSA22Cにバトルの承諾サインを送った。バトル前の緊張からか、先ほどまでステアリングを緩く握っていた手に力が入る。汗のようなものもかき始めていた。その間に汐留JCTの看板が見えてくる。すると、後ろについていたSA22Cが静かに左車線に移った。このタイミングで車線を変えたということは、看板を潜り抜けた辺りから始める気なのだろう…

 

 

 

「(準備は出来た、いつでも行ける…!)」

 

 

 

バクバクと高鳴る心臓も鼓動を感じながらもゆっくりと並んでくるSA22Cの車影を確認…そして、汐留JCTの看板を潜り抜けた時。ゴーサインでもあるプゥゥッ!というクラクションが鳴り響くと共にバトル開始。

 

カタパルトから打ち出された戦闘機のようにギュウィィィィンッ!ブォォォゥゥンッ!!とエンジンの咆哮を辺りに轟かせながらも加速を始める2台。

 

 

 

 

―ドッグファイトの火蓋が切って落とされた。

 

 

 

 




どうも、350Zです。

早川SA22Cvs大樹86GTという展開になりましたね。

86GTの中身がノーマルのままならあっさり負けると思いますが、今回の話からなんか見た目が変わっているのでもしや…中身も?

まあ、次回までお楽しみにという感じでお願いします。



さて、今回の後書きは東京遠征番外編です。


緋弾のアリアのグッズを漁ろうとヴィーナ○ポートに来た私ですが、このヴィーナ○ポートには面白い店がありました…


屋内サバゲーのお店です。


私、前からサバゲーには興味があったのですが実際にはやったことないんですよね…

というわけで、やって来ました。


最初はサバゲーの基礎が学べる初心者コースで。

15分間のこのコース…
銃の構え方からルール、簡易的な実戦まで店の人に教えて貰えるんです。

で、店の人にG36Cのエアガンを持たされた私。

"構えて"と言われてバッと構えた時、「完璧すぎ」と驚かれました←


えっと、


実は…

サバゲー経験はありませんが、海外にて実銃の発砲経験があったりします。

有名なデザートイーグルやコルト、ドラグノフまで撃って来ました。

店の人にそのことを言ったら「逆に教えて下さい」と言われました…
いや、実銃は撃ったことあるけど、サバゲーはやったことないからしっかり教えて()


なんて思いながらも初心者コースを無事に終えた私。

次は一般ピーポーを交えた実戦。


私と一緒に実戦を行ったのは如何にも初心者という感じの男女の若いカップルと、店の人曰く「サバゲーガチ勢」という外国人の男性。


誰が来ようと負けねえ!さあ、勝負だ…!!


なんて思ってやってましたが…

外国人TUEEEEEEEEEEEEEEE!!!!


チーム戦でラウンド毎にチーム変えてやっていましたが、彼が敵に回った時は結構押されてた気がします…


あの外国人、アリアより強い。うん、間違いない……


なんて思いながらも実戦終了。
疲れたー、足痛いしヘトヘトだよ…


等と思いながらも皆仲良く喋っていると、帰りについての話題が出てきました。


「え、帰り?車で片道350km以上あります()」


それを言った途端に「えぇぇ!!?」と驚くカップル、外国人、店の人。

まあ、そりゃそうなるわな……


という感じで屋内サバゲーのお店を抜けた私。

次回は走りの聖地、大黒PAについてお話します。

お楽しみに……
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