緋弾のアリア-X-クロス   作:350Z

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いいコトもあるし、





悪いコトもある。





そしてお前は




それを自分でわかっていかなきゃならない。





いつもお前がキメるんだ。



そしたら転んでも



自分で立ち上がれる。




いろんな人がいろんなコトを教えてくれる。





いいコトが正しいとは限らないし



悪いコトが全てダメなワケじゃない





お前がキメるんだ







──すべて。









第三話 ブレーキン・ア・スウィート 前編

 

 

 

 

 

 

 

ー昼休み、屋上

 

 

雲一つない晴天……

 

 

その下で博也と大樹は胡座を組むように座りながらも一息ついていた。

 

 

博也がスマホを使って何かを確認しているのに対し、大樹は疲れきったような様子でぼぉー……と空を眺めている。

 

 

 

 

 

 

 

「どうしたー?

 

徹夜明けのサラリーマンみたいな顔して」

 

 

 

 

 

 

 

ピッピッとスマホを操作し続けながらも博也が問いかけると大樹は「はぁ……」と大きな溜め息をつきながらもボソボソとした声で答えた。

 

 

 

 

 

 

 

「昨日、教務科(マスターズ)から依頼を受けたんだが……

 

 

そいつのせいでほとんど寝れなかったんだ」

 

 

 

 

 

 

 

内容は気になるが、酷くげっそりしている彼の様子を見て問いかける気にはならなかった。

 

 

「そうかー、気を付けろよー」と軽い返事で済ませながらもジーッとした目付きでスマホの操作を続ける博也。

 

 

が、とある画面を見て「よっしゃぁぁ!」と急に大きくガッツポーズして立っては跳び跳ねた。

 

 

これにはげっそりしていた大樹も流石に「うぉ!?」と声を出して驚く。

 

 

 

 

 

 

 

「ど、どうしたんだ急に……?」

 

 

 

 

 

 

 

「この前オークションに流してたマフラーが結構高値で売れたんだ!

 

ほらほら、見ろよこれ!!」

 

 

 

 

 

 

 

「ヒャッハー!」と言わないばかりにはしゃぎながらも再び胡座で座り、スマホの画面を見せてくる……

 

 

確かに予想していた額よりもそこそこの高値で落札されていた。

 

 

 

 

 

 

 

「良かったな、おめでと……

 

で、その金は何に使うんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

眠そうな表情ながらも「仕方ないから聞いてやる」と言わないばかりに問いかける大樹。

 

が、博也の方はそんな彼の状態が見えていないのか「よくぞ聞いてくれた!」と返してから答えた。

 

 

 

 

 

 

 

「半分は次のパーツ代の貯金とZの維持費、

 

 

もう半分は当分の食費だ」

 

 

 

 

 

 

 

……意外と普通の回答だ。

 

大樹の予想としては9割はパーツで消えると思っていた。

 

 

何だか面白くない答えだ。

 

 

だが……何か裏があるはず。

 

 

 

 

ひょっとして食費の内訳が可笑しいことになっているのでは?

 

 

 

 

そう予想した大樹は「あー」と上を見るようにして考えるような素振りを見せながらも問いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

「食費の内訳を聞いてもいいか?」

 

 

 

 

 

 

 

「内訳?

 

米だけど」

 

 

 

 

 

 

 

「米と……あとは何だ?」

 

 

 

 

 

 

 

追求すると口をモゴモゴとさせながらも目を逸らす博也。

 

まさか……

 

 

大樹の眠そうな表情が一気に驚きの表情へと変貌。

 

そして、サッと素早く指を差してズバリと当てて見せた。

 

 

 

 

 

 

 

「さては……

 

米しか買わない気だな!」

 

 

 

 

 

 

 

ズバリとした答えが博也の心に鋭く突き刺さる……

 

 

「ぅっ……」と言わないばかりに両手で胸を押さえる彼に対し、大樹は更なる追い討ちを仕掛けた。

 

 

 

 

 

 

 

「どうして米だけだ!」

 

 

 

 

 

 

 

「こ、米食ってれば飢え死にすることはないだろ!?

 

炊くだけだから調理も簡単だし、醤油掛けるだけでも美味いし……!!」

 

 

 

 

 

 

 

「その上にもう1品のせようとは思わないのか!?」

 

 

 

 

 

 

 

「俺、ビンボーだからそんな金ないし!!」

 

 

 

 

 

 

「貧乏だからって、

 

それじゃあそのうちバテるぞ!?」

 

 

 

 

 

 

「こめけぇこったぁいいんだよぉ!!」

 

 

 

 

 

閑静な屋上でギャーギャーと騒ぐ3年生二人……

 

あと一年もしないうちに卒業する彼等だが大丈夫なのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―同時刻、1年A組教室

 

 

ガヤガヤと騒がしい中、窓際の席で朝と同じように全身を使って昨日の出来事を表現するあかり。

 

 

それを見ているのは金髪ポニーテールで身長160cm以上ある火野ライカと黒髪のロングヘアーで和風のお嬢様というようなオーラ出す佐々木志乃……

 

 

二人共、あかりの友人だ。

 

 

 

 

 

 

「それで、運転しながら銃を見ないでパパパンッ!

 

って撃って当てちゃったんだよ!!」

 

 

 

 

 

 

「へぇー、スゲーな……

 

市ヶ谷先輩って」

 

 

 

 

 

 

両手を頭の後ろにまわすようにしながら感嘆の言葉を漏らすライカ。

 

 

彼女の反応からあかりは「でしょ!?」と興奮を増させつつも更に話しを続けた。

 

 

 

 

 

 

「しかも、ロマンチストなんだよ!

 

 

昨日、スッゴい綺麗な夜景見せてくれたんだ!!」

 

 

 

 

 

 

ワーワー!と飛び跳ねる様子から聞いていたライカも苦笑いの表情……

 

 

が、ふと志乃の表情の異変に気付く。

 

 

何だか何かを堪えているような彼女の表情に疑問を抱いたライカは「おい……」とそちらに話し掛ける。

 

 

 

 

 

 

「大丈夫か?

 

 

さっきから何か様子がおかしいような……?」

 

 

 

 

 

 

問いかけで自分がどんな感じだったのか気付いた志乃は「いえいえ!」と首を横に振って笑顔をつくってみせる。

 

 

そして、その勢いに任せるようにしてニパッとした笑顔を浮かべて見せながらもあかりにある誘いを仕掛けた。

 

 

 

 

 

 

「あかりさん、

 

今度の土曜日、一緒にお出掛けしませんか!?

 

 

ウォルトランドのチケットが二枚ありまして……!!」

 

 

 

 

 

 

誘いに対して一瞬考えるような素振りを見せるも「あ」と何かを思い出すように声を出してから両手を合わせるようにして申し訳なさそうに頭を下げた。

 

 

 

 

 

 

「ごめん、志乃ちゃんっ!

 

土曜日は市ヶ谷先輩と横浜に行く約束してるんだ!!

 

 

また今度でもいいかな?」

 

 

 

 

 

 

その言葉に頭の中が真っ白になったかのような表情で「………。」と黙り込む志乃。

 

 

あかりが「ちょっとトイレ行ってくるねっ」と言葉を言い残して去るまでずっと呆然と立ち尽くしていた。

 

 

 

 

 

 

「いや~……

 

 

あかりがあんなに興奮して話すのって、

 

アリア先輩の話以来じゃないか?

 

 

 

自分が作ったパラシュートが救出の役に立ったか何かって話」

 

 

 

 

 

 

先程と同じような苦笑いの表情を浮かべたライカが語り始めると志乃に対し、「え、えぇ……」と無理矢理笑顔を作りつつもその場から離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー夜、佐々木邸

 

 

 

いかにもセレブが住んでると言うような城のように大きな豪邸。

 

邸内でメイドが次々と頭を下げる中、帰宅した志乃はスクール鞄を右手に持ちながらも怒り心頭と言った様子で力強く歩いていた。

 

 

 

 

 

 

「志乃様、鞄を御持ち致しましょうか?」

 

 

 

 

 

 

「志乃様、ご機嫌が優れないようですが……」

 

 

 

 

 

 

「うるさいっ!!!」

 

 

 

 

 

 

そう怒鳴り散らしながらもバタンッ!と八つ当たりするようにドアを開けて自室に入る。

 

 

部屋の照明をつけると八つ当たりは更にエスカレート……

 

 

ベッドの方へと向かい、スクール鞄をバンバンッ!と叩きつけていく。

 

 

 

 

 

 

「アリアの次は市ヶ谷!!

 

どうしてなのっ!?

 

 

あかりちゃんは私だけのものなの!!

 

絶対に渡さない!!」

 

 

 

 

 

 

そう吐き捨てると共に叩きつけていた鞄を投げ捨てる。

 

 

ゼーハー……と息をあげつつも「落ち着くのよ……」と呟きつつもよろよろと奇妙な歩き方をしてあるものに近付く。

 

 

"あかりちゃんBOX"と書かれたあかりがモチーフのぬいぐるみや何かがぎっしりと詰まった箱だ。

 

 

中から手のひらサイズより少し大きいぬいぐるみを手にとってはギュッと力強く抱き締め、ベッドに飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

「あかりちゃん成分……摂取……っ!」

 

 

 

 

 

 

そのまま掛け布団を掛けてゴソゴソと動きながら「ウフフ……」と背筋がゾッとするような声を出す。

 

 

しばらくして動きがピタッと止まったかと思えば、掛け布団をバサッと取っ払って出てきた。

 

 

 

 

 

 

「現実逃避してる場合ではありません!!」

 

 

 

 

 

 

と言いつつも眼鏡を掛け、パソコンへと向かう。

 

起動してからカタカタカタッとキーボードを操作して何かを調べる……

 

 

武偵高の裏掲示板だ。

 

 

ここから更に市ヶ谷博也という人物について調べた。

 

 

 

 

 

 

 

―市ヶ谷博也、武偵高3年生。

 

 

強襲科、車輌科、狙撃科の三つの科目でAランクの評価を持つ男。

 

 

別名、オールラウンダー。

 

 

武偵高きっての死角がない男、融通が利く男。

 

愛車は日産のフェアレディZ……

 

 

 

 

 

 

 

……等と書かれてある。

 

だが、それ以外の情報で一つ気になる情報があった。

 

 

 

それを見ると共に何故?という疑問が浮かび上がると共に何やら危ない匂いがして仕方がなく感じた志乃……

 

だが、自分が太刀打ち出来るような相手ではない。

 

そう察した志乃は携帯を手にとってある人物と連絡をとった。

 

 

 

 

 

 

佐々木家に遣えるエリート武偵集団、

 

 

 

その指揮を勤める女性だ。

 

 

 

 

 

 

「―志乃様、どうなさいましたか?」

 

 

 

 

 

 

「……今週の土曜日にやって頂きたい仕事があります。

 

 

詳細については後ほどメールで御送りします」

 

 

 

 

 

 

「―かしこまりました。

 

何時でも御待ちしております」

 

 

 

 

 

 

短い通話を終えてから再びパソコンと向かい合う志乃。

 

インターネットを閉じ、メールを開いてはカタカタカタッと文章を打ち込む作業に取り掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―土曜日、朝 男子寮

 

 

 

博也の部屋

 

 

必要最低限の物しか置かれてないといった感じの一人部屋。

 

ピィーピィーという目覚ましに起こされた博也。

 

 

起き上がった後に洗面台でバシャバシャと顔を洗って歯を磨いた後に醤油掛け御飯(大盛)なる質素な食事をとる……

 

 

食べ終えた後は流し台でジャバジャバと食器洗い。

 

と言っても、箸一膳と御碗一つだけのため直ぐに終わった。

 

 

 

 

「さて……」と小さく呟きつつも私服に着替え始める。

 

 

 

黒いレザーコートに青のインナーシャツ、下は白いジーンズといったコーディネート……

 

 

鏡で自分の姿を確認し、「よし」と満足げに頷いてから外に出ていく。

 

 

向かったのはZが置いてある駐車場だ。

 

 

乗り込んでエンジンを掛けた後に寮の前にまで移動させる……

 

 

そして、ホースを手にとって水を車体に浴びせていく。

 

 

洗車を始めたのだ。

 

 

表面上の汚れを水で落としてからシャンプーと水を混ぜた泡立った液が入ったバケツにスポンジを突っ込む。

 

 

上から順番に丁寧な手つきでスッスッと洗っていき、全体を洗い終えた後に再びホースの水を浴びせてシャンプーを落とす。

 

 

 

ボディがピカピカになったが、まだ終わりではない。

 

 

ホースを置いてから青いタオルのような物を手に取る博也。

 

 

洗車用のクロスファイバータオルだ。

 

 

ボディを拭いて水がしっかり染み込んだら絞って水を捨ててと繰り返すことで水気を拭き取っていく。

 

 

 

水気がなくなったところで仕上げに先程のスポンジとは違うスポンジでワックスを掛ける。

 

 

 

全体に行き渡ったところでワックス用のクロスファイバータオルで拭き取り、ようやく洗車完了。

 

 

 

このまま寮の前に停めてても迷惑が掛かるため、一旦駐車場に停めて再び部屋に戻った。

 

 

戻ってから部屋の片隅に置かれていた車の雑誌を手に取り、ベッドに飛び込む。

 

前日に買ったばかりの最新号だ。

 

 

少しワクワクするような表情を浮かべつつもサッと開いて内容を確認。

 

 

特集は大樹が乗ってる86とその兄弟車のBRZ。

 

 

新発売パーツや各チューニングメーカーの有名サーキットでのタイムアタック、更にはオフ会の情報まで書かれてる。

 

 

 

 

 

 

「やっぱり人気あるんだなー」

 

 

 

 

 

そう呟きながらもスマホを手に取ってピッピッと操作してはある人物に電話する。

 

……大樹だ。

 

 

 

「―もしもし」と出た声の感じから起きたばかりのようだ。

 

 

 

 

「大樹か?あー、俺だけどさ。

 

例の雑誌読んでんだけど……

 

今月号86特集だぞ」

 

 

 

 

 

 

「―そうかー……」

 

 

 

 

 

 

「ノブレッセってとこのエアロ結構カッコいいぞ。

 

お前の86、エアロ付けてないだろ?」

 

 

 

 

 

 

「―と言われても、エアロ組むような金ないしなぁ。

 

じゃ、切るぞ」

 

 

 

 

 

 

そのままピッと通話切られてしまった博也。

 

再び雑誌と向かい合い、ペラッペラッとページを捲ってあるものに目をつけてからまたスマホに手を伸ばして大樹に掛ける。

 

 

 

 

 

 

「―はい、もしもし」

 

 

 

 

若干嫌そうな声ながらも応じてくれた大樹。

 

そんな彼に対して「おう」と言いつつも雑誌を見ながら語り始める。

 

 

 

 

 

 

「お前の86って、コンピューター変えてたか?

 

 

変えてないなら、このHKSのコンピューターとかいいんじゃないか?」

 

 

 

 

 

 

「―いや、そんな金ないし。

 

じゃあな」

 

 

 

 

 

再び電話を切られてしまう。

 

が、此方も負けじと言わないばかりに次の目玉商品を探して素早く電話した。

 

 

 

 

 

 

「お、大樹か?

 

なんか良さげなスーパーチャージャーのキットが……」

 

 

 

 

 

 

「ーあぁー!!

 

わかったわかった!!

 

今度詳しく読むから!!

 

じゃあな、もう掛けてくんなよ!!」

 

 

 

 

 

 

負けたと言わないばかりの返事を受けながらも通話を切られてしまった。

 

ちょうどその時、部屋のチャイムが鳴り響いた。

 

 

「はーい」と応じながらも玄関へと向かい、ドアを開ける……

 

 

チャイムを鳴らしたのはあかりだった。

 

 

明るめの黄色のカーディガンに白いシャツ、赤が基調のチェック柄のミニスカートという格好だ。

 

 

 

 

 

 

「先輩、時間通り来ました!」

 

 

 

 

 

 

「お、偉いぞ。

 

じゃ、行こうか」

 

 

 

 

 

 

そう言いつつも財布と鍵類をポケットに入れて外に出ていく博也。

 

 

そのままあかりと共に駐車場へと向かい、Zに乗り込む。

 

 

エンジンが掛かって走り始めて駐車場を出ると共に路肩に止まっていた1台のシルバーのマークXがそれに続くように発車した。

 

 

 

 

 

 

「―此方、1号車。

 

目標が動き始めた……これより尾行を開始する」

 

 

 

 

 

 

「―2号車、了解。

 

幸運を祈る」

 

 

 

 

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