緋弾のアリア-X-クロス   作:350Z

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気づいた時にはもう遅い





そうゆう生き方はイヤだ……て







あんまり深く考えずなんとなくわからずに見過ごす






でもいつか必ずそれがわかる時が来る










……その時






もう遅いとあきらめる生き方はイヤだ




今はそれに気づかなくてわからなくても 




いつもわかろう





わかろうと生きたい














-少しでも納得できる生き方をしたい









第四話 クレイジー・リトル・ラブ 前編

 

 

 

 

 

 

 

-数年前

 

 

 

 

時刻は夜の8時、場所は薄暗い裏路地。

 

 

 

雨が降る中、あるものを背負って必死に何かから逃げるように駆け抜けていく一人の少年。

 

 

背負っていたのは小柄で黒髪ショートポニーテールの少女。

 

 

 

血塗れで意識が朦朧としているのか、少年の耳元で「うぅ……」と小さく唸っている。

 

 

 

 

そんな彼女を救おうと少年はただひたすら走り続けた。

 

 

 

 

 

 

打ち付ける雨に負けないよう-

 

 

 

力強く一歩一歩を踏み締めて……

 

 

 

 

 

やがて息が荒くなっていき、脚がキツくなってきた。

 

 

 

棒のようになった脚を自分の意志という動力で無理矢理動かす。

 

 

 

 

が、小さな段差に行く手を阻まれて前から派手に転んでしまった。

 

 

転んだことで擦り傷を負ってしまうも再び立ち上がろうとする……

 

 

 

その時、後ろからタッタッという足音が聞こえてきた。

 

 

雨によって視界が悪くて見えないが、間違えなく誰かが近付いてくる。

 

 

 

 

 

 

「っ……!」

 

 

 

 

 

 

少女を背負っているということもあり、棒になった脚がなかなか動いてくれない……

 

 

そんな中、背負われてた少女が少年の肩をグイッと掴み、力を振り絞るような声でこう伝えてきた。

 

 

 

 

 

 

「-お願い……!

 

逃げ…て……お兄ちゃ…ん……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-現在、男子寮

 

 

博也の部屋

 

 

 

 

ピピピッと目覚ましが鳴り響く中、ゆっくりと起きては体を伸ばす博也……

 

 

いつもとは違い、何処か哀しげな表情だ。

 

 

 

 

そのまま窓際に向かい、差し込んでくる日差しを浴びる。

 

 

 

 

何の変わりもない一日の訪れ……

 

 

 

いつも通りの日常の始まり……

 

 

 

 

それを感じながらもスゥーと深々と息を吸い込んでは静かに吐いていく。

 

 

 

吐き終えると共に彼の表情は何時もの表情は少し和らいでいるように見える。

 

 

いつも通りに顔を洗おうと洗面所に向かおうとする……

 

 

が、向かう途中で立ち止まって急に振り向いてあるものに目を向けた。

 

 

 

本棚の片隅に置かれている写真立てに飾られた写真。

 

病院らしきベッドで横になりながらも満面の笑顔でピースサインを見せる小柄の少女。

 

黒髪のショートポニーテールが特徴の彼女の写真に向けて博也はこう呟いた。

 

 

 

 

 

 

「おはよう。

 

今日も頑張ってくるからな……"お兄ちゃん"」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-同時刻、女子寮 裏

 

 

 

日陰が多く薄暗い場所

 

 

アリアはここで携帯を手に取ってある人物と連絡をとっていた。

 

 

佐々木家に遣える武偵集団の指揮をしていた女性だ。

 

 

 

 

 

 

「-本日が決行日ですが、

 

準備の方は大丈夫ですか?」

 

 

 

 

 

「ええ、勿論よ。

 

本当なら狙撃科のSランクの子を呼びたかったところだけど、予定が合わなかったからなしよ」

 

 

 

 

 

 

「-では、お一人で……?」

 

 

 

 

 

 

「いや、そうじゃないわ。

 

一人だけ特別に組むことにしたわ」

 

 

 

 

 

 

アリアの言葉と共にウォォンッと耳に飛び込んでくるような排気音が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

 

「……今来たわ。

 

これから作戦についての打ち合わせを行うから、一旦通話を切るわ」

 

 

 

 

 

 

そう言ってピッと通話を切るアリア。

 

 

すると、音の主である車はそのまま女子寮の裏までまわってきて姿を見せる。

 

 

リアサイドにGTRのエンブレムがついている青いクーペ……

 

 

アリアの前に停まると共に運転席から協力者が降りてきた。

 

 

 

がさつな感じの見た目に武偵高の制服を着た長身の青年……

 

 

博也の後輩の武藤だ。

 

 

 

 

 

 

「遅かったじゃない、迷いでもあったの?」

 

 

 

 

 

 

「その逆。

 

しっかりと車のチェックをしてただけだ。

 

 

少し改造して来たからな……それの最終調整だ」

 

 

 

 

 

 

そう言った後にアリアから小さく折り畳んだ紙を受け取る武藤。

 

パッと広げてみるとそこには作戦の詳細内容が……

 

 

 

 

 

 

「作戦開始は20:00、私の発砲が合図よ。

 

それまでに所定の位置について……

 

 

良いわね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-20:00

 

 

女子寮の屋上に上がる階段

 

 

 

スマホをピッピッと片手で操作し、あるメールの文書を読んでいた制服姿の博也。

 

 

メールの差出人はあかり。

 

 

"女子寮の屋上で待ってます"

 

 

とだけ書いてあるものだ。

 

 

 

どうして呼ばれたのかは分からないが、とりあえず言われた通りに屋上に上がってみる……

 

 

 

到着すると共にブワッ…と強い風が吹き荒れる。

 

 

空を見ると薄暗くはあるが、朝とは違って曇り始めていた。

 

 

 

……何やら嫌な予感がする。

 

 

 

そう思っている時に屋上スペースの奥の方から誰かが姿を現した。

 

 

 

 

 

 

 

ピンクの髪色に長いツインテール、角のような赤い結び留め、

 

少しキツめのツンデレ系の目にあかりより少し高い背丈……

 

 

 

 

 

 

神崎・H・アリアだ。

 

 

 

 

 

 

「……何の用だ?」

 

 

 

 

 

 

博也の問い掛けと共にスカートに隠していたホルスターに手を伸ばし、愛銃のコルト・ガバメントを二挺手にするアリア。

 

 

驚きのあまり目を見開く中、彼女はコルトの銃口をゆっくりと此方に向けてきた。

 

 

 

 

 

 

「いきなりで悪いけど……

 

 

 

 

"風穴あけるわよ"」

 

 

 

 

 

 

そのまま銃口を足元に向けて撃ってきた。

 

 

咄嗟の判断で右に跳ぶようにして回避することが出来た。

 

 

が、一回避けただけでは終わらない。

 

 

 

コルトは一挺につき7発装填、二挺で14発装填……

 

 

あと13発あるのだ。

 

 

 

 

必死に走って回避行動をとる博也に対し、次から次に弾を撃っていくアリア。

 

 

命中ギリギリの回避に冷や汗が止まらない博也。

 

 

それだけ彼女の射撃が的確だということだ。

 

 

 

 

そして、残り一発が放たそうになる……

 

 

軌道的にかなり不味い。当たってしまう。

 

 

 

咄嗟の判断で初めて近接武器であるナイフを手に取った。

 

 

 

柄が明るい茶色で刃渡りが長めのナイフ……

 

 

アンカライトナイフと呼ばれるサバイバルに適したナイフだ。

 

 

刃渡りによっては日本の一般的な市場でも出回っているこのナイフを手にし、咄嗟に振る。

 

 

キンッ!という甲高い金属音と共に火花が散り、弾丸が真っ二つになった。

 

 

 

これで終わった……

 

 

と思っていた時だ。

 

 

 

コルトを素早くホルスターにしまったアリアが背中の後ろに両手をまわし、サッと何かを手に取った。

 

 

 

 

二本の小太刀……

 

 

二挺拳銃の次は二刀流。

 

 

双剣双銃(カドラ)のアリアと呼ばれるだけのことはある。

 

 

 

「はぁぁぁ!!」と声をあげながらも向かってきては勢いよく小太刀を振り回してきた。

 

 

 

避けれるものは避け、避けれないものはナイフで弾くと何故か完全に守りに入ってる博也に対して攻撃の手を一切やめない。

 

 

 

このままでは埒があかない……

 

 

 

そう思った博也は大きくバックステップしながらもあるものをアリアの足元に向けて投げつけた。

 

 

スモークグレネードだ。

 

 

 

 

プシュゥゥゥ……という音が鳴り響くと瞬く間に濃い白煙が彼女の周囲を包み込む。

 

 

 

催涙効果もなにもないガスだが目潰しという意味では時間稼ぎになる。

 

 

 

予想通り、アリアは視界が悪くなって動けなくなったようだ。

 

 

 

今のうちに逃げよう……!

 

 

 

 

ナイフをしまい、フェンスに腰に付けていた降下用のワイヤーを素早く巻き付けると共に一気に飛び越えて降下開始。

 

 

 

降下が終わった頃に煙幕が消え、アリアが再び行動開始。

 

 

弾切れになったコルトのリロードを行いながらも消えた博也の姿を探そうと周囲を見回していると彼が降下に使ったワイヤーがフェンスに取り付けられていることに気付く。

 

 

駆け足でワイヤーの方へと近付き、下を確認した時……

 

 

 

1台の車がブォォン!!という音をあげながらも勢いよく駐車場から出て行くのが見えた。

 

 

彼の愛車であるフェアレディZだ。

 

 

 

逃がしてはならないとアリアの方もワイヤーを手にし、一気に降下。

 

 

駐車場に停めていた自分の愛車の赤いミニクーパーに乗り込み、発車させながらも協力者である武藤に連絡を入れた。

 

 

 

 

 

 

「……車をつかって女子寮から出たわ。

 

 

アンタは先に学園島から出て待ちなさい。

 

 

それまでは私だけで何とかしてみる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-佐々木邸 大広間

 

 

薄暗い部屋の中、多数のカメラのライブ映像を眺める志乃。

 

 

映像はアリアの制服のポケットについている小型カメラとミニクーパーに取り付けられている車載カメラ、それから武藤のR33の車載カメラだ。

 

 

その横には二人の現在地を印した地図まである。

 

 

彼女はそんなものを眺めて高みの見物をしていたのだ。

 

 

 

 

 

 

「……順調そうですね」

 

 

 

 

 

 

 

そう呟いた時、アリアのミニクーパーの車載カメラがあるものを捉える。

 

 

白いフェアレディZ……

 

 

博也が乗るZ33だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-学園島

 

 

 

 

ペースを落として走っていたZの後ろについたアリアのミニクーパー。

 

 

このチャンスを逃さないと言わないばかりに片手で運転しながらもコルトのホルスターに手を伸ばす。

 

が、その間にZが再び加速を始める。

 

 

 

 

此方も負けじとアクセルを強く踏み込むが、パワーが違い過ぎてあっという間に姿を消してしまった。

 

 

……が、まだ作戦失敗というわけではない。

 

 

この先には武藤のR33が待っている。

 

 

 

 

 

 

「-そっちに行ったわ。

 

追跡はお願い」

 

 

 

 

 

 

「了解」

 

 

 

 

 

 

 

アリアからの無線を聞くと共にR33を走らせる武藤。

 

 

すると、横を白い車がズワァンと走り抜けて行った。

 

 

 

間違いない、博也のZだ。

 

 

 

そのままアクセルを踏み込んで追い掛ける。

 

 

 

 

 

 

「っ、武藤……!

 

 

お前もかよ……!!」

 

 

 

 

 

 

Zの車内でそう呟きながらも首都高の入り口へと向かう。

 

 

後ろについていたR33も同じように入ってきた。

 

 

 

ETCゲートを抜け、本線と合流。

 

 

 

 

 

 

「(先輩、他の世界なんて俺は知りませんよ。

 

 

Rだけみてればいい。

 

そのRが速くて一番良いってこと……

 

 

証明してやりますよ!!)」

 

 

 

 

 

 

ブォォォォン!!ウォォォォン!!と咆哮のようなエンジン音をあげながらも加速していく二台。

 

 

 

まず二台が入ったのは湾岸線エリア。

 

 

 

車線も多く、ストレートが長い……

 

 

 

日本有数の"公道最高速エリア"。

 

 

 

 

"オーバー200マイル(約320km/h)が狙える"というこのエリアで二台は競うように加速していく。

 

 

 

 

加速は互角、後ろのR33もZから離れずにしっかりと食いついている。

 

 

 

 

 

 

「(完璧のコンディション……!

 

良いぞ、勝負出来てる!!)」

 

 

 

 

 

二台が縦に並ぶようにして走ってる中、1台のトラックが此方の車線に出てきた。

 

 

Zが右にスラロームして避けるのに対し、R33は左にスラロームして避ける。

 

 

 

ズワァンッ!ズワァンッ!!と続けざまに追い越してきたことにトラックの運転手が唖然とする中、二台は再び戦闘態勢に入った。

 

 

 

 

 

 

「(やっぱり良い、最高だぜ!

 

 

高速域でのこの安定感と一体感……

 

 

これ以上の車が何処にある……!!)」

 

 

 

 

 

 

シフトノブを握り、シフトアップ。

 

 

パンッ!とマフラーからアフターファイアーをあげながらも再び加速していくR33。

 

 

少しずつではあるがZとの距離が縮まりつつある。

 

 

 

 

 

「(先輩、

 

アンタはZに乗ってて今の俺ほど満足してますか?

 

 

……してるわけがない。

 

 

こっちは"本物"でアンタのは飾っただけの"偽物"だ。

 

そんな偽物に金を注ぎ込んだって本物に勝てるわけがない。

 

 

俺の考えは正しい……

 

 

間違ってるのはアンタのほうだ……!!)」

 

 

 

 

 

 

その思いからステアリングを握っていた手にギュッ……と力を入れる武藤。

 

 

二台はその先でUターンを行い湾岸線エリアを再び走り出す。

 

 

ポジションが変わらないまま次のエリアを選択する分岐が見えてきた。

 

 

 

先行する博也のZが選んだのはC1エリア……

 

 

前に彼がR33に試乗した時に通った周回エリア。

 

 

 

湾岸線エリアとは違い、2車線と車線が少なく狭い上に高速とは思えないえげつないコーナーが並ぶテクニカルエリアだ。

 

 

 

 

 

 

「(環状線……か。

 

言っちゃ悪いっすけど、コイツは何処でも戦えますよ!)」

 

 

 

 

 

 

次々と迫ってくる一般車達に対して右に左にとスラローム回避を行う二台。

 

 

 

最初の右コーナーを2車線分の幅をフルに使って抜けていく博也のZ。

 

 

自分のRならばそれ以上の速度域で抜けられる。

 

 

 

そう思った武藤は博也との距離を縮めるために高めの速度でコーナーに突っ込む。

 

 

 

……が、ステアリングを切った時だ。

 

あることが起きると共に武藤の余裕の色が焦りへと変貌する。

 

 

走行ラインがみるみると外に膨らみ出したのだ。

 

 

 

 

 

「しまったっ……!!」

 

 

 

 

 

 

下手をすれば外壁にぶつけて事故……。

 

この速度域での事故はタダじゃ済まされない。

 

 

そう思った武藤はブレーキを適度に踏んで速度を調整。

 

 

なんとか事故は防げたが、失速が大きい。

 

 

先行していた博也を逃してしまったかもしれない……

 

 

 

そう思いながらもコーナーを抜ける。

 

 

が、抜けた先にはいなくなったと思われていた博也のZがかなりゆったりとしたスピードで走っているのが見えた。

 

 

 

 

 

 

「武藤、上がってきな。

 

一人の先輩としてお前にしっかり教えてやる」

 

 

 

 

 

 

ウィンドウを下ろすと共に右手を出しては"来い"と言わないばかりに指を動かしてみせる博也。

 

それに乗るように武藤がR33を加速させていくと共に博也もウィンドウを戻してZを再び加速させる。

 

 

 

 

二人の闘いが再び始まる……!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-女子寮、VIPルーム

 

 

アリアが住んでいるこの部屋のベッドに座りながらも携帯を手にアリアに連絡するあかり。

 

 

 

……だが、留守電が虚しく鳴り響く。

 

 

 

不安そうな表情ながらも博也に構って貰おうと彼に連絡する。

 

 

 

が、此方も留守電。更に不安が募っていく……

 

 

 

 

 

 

「……何かあったのかな?」

 

 

 

 

 

そう思いながらもゆっくりと立ち上がって窓際へと向かう……

 

 

今にも雨が降りだしそうな曇天の夜空。

 

 

 

これを眺めると共に嫌な予感が胸を過る。

 

 

 

 

 

 

 

「私がどうにか出来るような問題じゃないかもしれないけど……」

 

 

 

 

 

 

そう呟きながらも武偵高の連絡簿を手にして広げ、とある人物に連絡した。

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