持って生まれた性格ってやっぱ変わらないと思うし
また変わらなくてもそれでいいんじゃないかって
いいトコはとこなくネガな悪癖とかは
変えていきたいと思う
でも
結局大事なトコも消えていきそうなそんな気がして……
わかっていればそれはもう
-悪癖じゃないだろうって
-夜の東京
辺りが既に静まり返っている中、ブォゥゥゥゥン!ウォォォン!!とエンジンの轟音を上げながら疾走する86と320i……
直線での加速勝負は86が圧倒していた。
車重の軽さからだろう。
流石はスポーツカーと言ったところだ。
「(頼む、このまま上手く行ってくれよ……!)」
そう強く願いながらも次の交差点に差し掛かった際にブレーキングを行ってからシフトノブを握り、フォゥン!フォゥン!!と叩き込むようにシフトダウン。
サイドブレーキをガッ!と上げて車体が安定性が崩れたところでステアリングを勢いよく大きく右に切っては直ぐに整える……
キィィィ!!とタイヤを滑らせてドリフトによるUターンを決めた。
320iの一群もついていこうとUターンを行う……
だが、車体大きさや重さ、足周りの関係から86との差は更に広まってしまった。
それでも……安心する暇はない。
助手席に乗っていた仲間らしき黒服の男が拳銃を手に取り、身を乗り出して86に狙いを定める。
そして、パンッ!パァンッ!と発砲を始めた。
乾いた発砲音と共に放たれた弾丸を左右に揺れるように回避する。
回避を終えた後に一番左の車線に移り、ブレーキングを行って減速してから左折。
車1台が通れるぐらいの小路に入った。
「-くそっ!!」
ほぼ横一列に並んでいた320i群は対応が遅れてしまった。
キィィィ!とタイヤを鳴らしながらもブレーキングを行ってから急いで態勢を整えて縦に並ぶように小路に入る。
先程までの距離が更に開いたことを確認する大樹……
が、道幅が狭いため先程のような回避運動は出来ない。
ここで彼は運転席側のウィンドウを開けるとともに右手であるものを手にする……
閃光弾だ。
ステアリング操作は左手で行いながらも右手に握っていた閃光弾の安全ピンを歯で噛むように抜き取った。
「コイツは眩しいぞ……食らいなッ!!」
ピンが抜けた閃光弾をポイッと外に投げ捨てる。
カン…カン……と跳ねていき、先頭の320iの目の前でピシャンッ!!と眩い光を放ち始めた。
光を真っ向に見てしまい「うあっ!?」と驚きの声を上げながらも目を押さえて勢い良くブレーキペダルを踏み込むドライバー。
突然のブレーキングに後方の車輌も対応出来ず、ドスッ!と先頭車輌の後部(リア)に衝突。
最後尾の車輌も同じようにドスッ!と勢い良く衝突し、玉突き事故の状態になった。
先頭の車輌は後続からの追突の衝撃によって車体の前部(フロント)が暴れて斜めになった挙げ句、壁と激突。
……もう動けない。
先頭車輌のドライバーは走り去っていく86の姿を見ながらも無線を手にした。
「-B02地点で行動不能になった!
目標は現在も逃走中!
A02地点、B01地点のどちらかに向かうと思われる……!
付近で待機中の車輌は目標の追跡を!!」
ドライバーが仲間に呼び掛ける中、引き続き運転を続ける大樹。
ふと麗のことが気になり、チラッとそちらに目を向ける……
まだ気を失ってはいるようだ。
が、それ以上に気になることが一つある。
「(こうして見ると……かなりの美人だよな。
学年が俺の二つ下とは思えない)」
その綺麗で妖艶な容姿にすっかりと見惚れてしまう大樹。
ふと、先程までのシチュエーションを振り返るとまるでドラマか映画のようだと思ってしまう……
端から見れば今の自分は本当にヒーローのように見えるかもしれない。
そういう思いに浸っていたが、携帯がピロピロピロ!!と急に鳴り始めてふと我に返った。
メールではなく電話だった為、カーナビのブルートゥースと連動……ナビを見て相手を確認する。
博也からだ。
ナビを操作して電話に応じた。
「はいはい」
「-大樹か?
お前、結構ヤバい救援依頼受けたらしいな」
「どうして知ってるんだ?」
「-情報科の奴から聞いたんだ。
お前の携帯の信号(シグナル)が真っ先に現場に着いたって……
で、要請していた一年はどうだ?
無事か?」
安否を問われてもう一度麗の方に目を向ける大樹。
本当に美人だ。
博也と通話していることを忘れてついつい見入ってしまう……
「-おーい、もしもーし。
聞ーこーえーてーるー?」
その確認の声でハッ!と再び我に返る大樹。
気を取り直すように「オフンオフン!!」とわざとらしく咳き込んでから「あ、あぁ!」と答えて見せる。
「今のところはな……
でも、安心出来ない」
そう答えながらも小路を抜けて大通りに出る86。
その一声を聞いて博也の方も「そうか」と少し安心するように呟いた。
「-無事で何よりだ。
前、一緒に飯食った店あるだろ?
危なかったらそこの前に来い。援護してやるよ」
何とも頼もしい一言だ。
これは絶対に逃げ切れるという核心を得ながらも「ああ」と笑みを溢しながらも答えた。
「サンキュー、ヤバくなったら行っ……!!」
行くと答えようとしたその時だ。
ガンッ!!という音が後ろから聞こえると共に車体が大きく揺れ始めたのだ。
「うぉっ!?」
突然のことに驚きながらもバックミラーで後方を確認する……
青塗装の320iがピッタリと張り付いていた。
どうやら、話している間に後ろから押してきたようだ。
「-おい、どうした!?
何があっ……!!」
通話している暇ではないとピッと通話を切り、再び逃走態勢に入る。
アクセルはベタ踏み。
レッドゾーンまでしっかりとエンジンを回してフォン!とシフトアップ。
……が、先程の320iとは違ってしっかりと食らい付いてきた。
「(っ、コイツ…!
320iじゃない……!?6気筒モデルか!!?)」
最初に追跡してきた320iはBMWで総称して3シリーズという括りに入っている。
その中には低排気量でエンジンがローパワーの直列4気筒エンジンモデルと高排気量でエンジンがハイパワーの直列6気筒エンジンモデルがある(E90型)。
前者は318iや320i。
後者は323iや325i、330i、335iだ。
どれも3シリーズという括りの車の為、見た目に大きな違いはない。
今追って来ているのは恐らく、後者の6気筒モデル……
加速の仕方からその中でもパワーがある部類に入る330iと思われる。
「ちっ、やられて……たまるかよ!!」
次の交差点に差し掛かる前にブレーキングを行うと共にシフトダウン。
フォゥン!フォゥン!!と響かせながらも勢い良く右に曲がる。
330iも曲がるが、ここでは重い車重が足枷になる。
コーナリングで確実に差をつけた。
少し安堵する大樹だったが、その安堵もバックミラーを確認してあっという間に消えた。
330iの立ち上がりの加速だ。
ウォォォン!!という轟音を上げながらも先程のコーナリングで開いた差を一気に縮めてきた。
……BMWの直列6気筒エンジンの恐ろしいところはハイパワーなだけではなく、絹のように滑らかな加速性能の高さにもある。
この事から"シルキーシックス"とも呼ばれている。
相手と自分の車の性能を感じる大樹……
……逃げたい、出来ることなら。
そう弱気になってアクセルペダルを緩めてしまいそうになる……が、
86の心臓部である水平対抗エンジンの音が鮮明に彼の耳飛び込んできた。
その高鳴り具合は車の方から自分に語り掛けてるように聞こえる。
-もっと踏め!
もっとだ!死ぬ気で踏み込め!!
そう語り掛けてるように聞こえる。
……そうだ。
自分がここで全てを投げ出せば助手席に乗っている彼女はどうなるか分からない。
必ず助ける、ヒーローになると誓って来たのにそんなダサい結末はない。
……彼の目付きが再び変わった。
「(性能の差はかなりある……
でも、だからと言って逃げていいわけじゃない……!
最後の最後まで、諦めない……!!
待ってろよ……
絶対助けてやっからなァーーッ!!!)」
330iが追い付こうとする中、迷いもなくアクセルを踏み込む大樹。
右の後ろからガンッ!!と押してきた。
車体の態勢が崩れそうになったが、しっかりとステアリングを握って操作して難を逃れる。
運転だけでも精一杯の中、少しでも時間を稼ごうと腰のホルスターから自分の愛銃であるPPKSを右手でチャキッと抜き取る。
ウィンドウを開けてから応戦。
当たるかどうかも分からず、右手を外に出すと共に右後ろにいた330iに向けて発砲。
パァンッ!パァンッ!!と乾いた銃声が鳴り響くと共に330iが車間を開けてきた。
「(よし、行ける……!
次の交差点は……左だっ!!)」
交差点に入る手前でブレーキング。
フォゥン!フォゥン!!とシフトダウンしつつも速めのスピードで飛び込む。
若干、後輪がキキキッと滑るが上手く左に抜けれた。
右手にお台場海浜公園が見えるロングストレートに差し掛かった。
330iとの差は再び開いたが、また立ち上がりの加速で詰めてくる。
ドライバーは拳銃を手にした手を外に出して此方に向けている……
普通なら絶望的だと思うが、大樹は"あるもの"を見て安堵したような表情を浮かべていた。
……学生に安いことで人気の定食屋の看板だ。
前に彼が博也と共に夕食を食べた場所でもある。
「頼んだぞ、真打ちッ!!」
車内でそう叫ぶと、先にある屋外階段の躍り場でAUG HBARをスコープを覗くようにして構えていた博也がカチッと引き金に指を掛けた。
バァンッ!バァンッ!!バァンッ!!というアサルトライフルらしい重い銃声が何回も響き渡り、弾丸が放たれる。
弾丸は330iの強化されていたフロントガラスを突き破ると共にドライバーの左右の腕に命中。
痛みからステアリングから手を離してしまった間に更に車体の足周りにも弾丸が撃ち込まれていく。
キィィィ!!と悲鳴のような音を上げながらもスピンしては歩道のガードレールに頭から突っ込むようにしてドンッ!と停車。
運転しながらもバックミラーでそれを確認してホッと一息つく大樹。
再び前に集中しようとした時に屋外階段の躍り場で銃口を下ろす博也の姿が目に入った。
よく見ると右手の親指を立てて見せている……
頑張れということだろうか?
とりあえず、大樹もウィンドウを下げて軽く手を挙げるようにしてそれに応えた。
再び86を走らせていくと、何とか安全地帯に辿り着いた。
先程までの緊張が解れると共に「ふぅ……」と小さく息をつく。
そんな中、再び携帯と連動してカーナビのブルートゥースが反応を見せる。
……見たことない番号だ。
とりあえず、救援の関連だと思い通話に恐る恐る応じてみる。
「はい、原田です」
「-き、聞こえますか!?
高千穂弁護士法人の事務の者ですっ!!
麗お嬢様は御無事ですか!?」
高千穂弁護士法人……
武装弁護士の高千穂一族を中心にして動く弁護士集団。
それは分かっていたが、後に出てきた"麗お嬢様"という言葉に誰のことだ?と言わないばかりに首を傾げる大樹。
「えっと……?」と問い掛けようとした時、痺れを切らした事務が「ーあぁぁああぁぁ!!」と受話器の向こう側で頭をクシャクシャしていそうに叫びながらも先に答えた。
「-お嬢様は貴方が助けた高千穂様の娘……
つまり、我々弁護士団のボスの娘ですっ!!」
突然の言葉に「へ……?」とポカーンと口を開けて驚く大樹。
ここでようやく、麗がお金持ちの家のお嬢様だと理解した。
信じられないと言わないばかりに信号待ちで車を停車させながらも右手で頭を押さえながらも「無事です……」と小声で答える。
すると、事務は「-よかった!!」と受話器の向こうで跳び跳ねるように喜ぶ姿が見えるような声を上げてから次の指示を大樹に出してきた。
「-では、高千穂ビルディングまでお越し下さい!
待っております!!」
そう言い残しては通話をブチッと切る事務。
通話が切れると共に再び麗の方に目を向ける大樹……
彼女がもっと普通の子なら友達ぐらいにはなりたいと思っていた。
……だが、自分と生きる世界が違い過ぎる。
ただの一般人に過ぎない自分とは釣り合うわけがない。
そして、その思いが最後にある答えを導き出した。
『今後、彼女との繋がりは持たないようにしよう』というものだ。
哀しくあるが……
これが互いに幸せに過ごす一番の手段だろう。
込み上げてくる気持ちを抑えながらも信号が変わったのを確認すると共に再び車を走らせる。
しばらくすると、予定通りに高千穂ビルディングの前に着いた。
超が付くほどの高級マンションだ。
……ここに来るのも最初で最後だろう。
そう思いながらもハザードランプをつけ、路肩に停車。
パタッとドアを開けて車から降りると86の車体後部が傷まみれになっているのが見えた……
先程の330iにやられた傷だろう。
傷跡に静かに歩み寄ると共に優しく触れる大樹……
「ごめんな、86……
痛かったろ……?」
今まで何も感情を抱いていないと思っていた車に対してそんな言葉を投げ掛ける。
先程の哀しみ上に更に哀しみが重なる……
この時、ようやく気付いた。
知らないうちに愛着が湧いていたのだと。
重なり合う哀しみを抑えながらも傷跡から離れ、助手席側のドアを開けて麗を抱えるようにして下ろす。
その時、ふと彼女の右足の脛が赤く腫れているのに気付いた。
「(……最後ぐらい、いいよな?)」
心の中で自分にそう問い掛けながらも近所のコンビニに向かい、氷った保冷剤を購入。
助手席で気を失っている麗の下へと戻り、保冷剤を腫れた部分に当てるようにしてから持っていた青いハンカチをビリビリと破って巻き付ける。
……応急処置が終了。
後部席に積んでいたベージュの毛布で彼女の体を包むようにする。
そして、整ったところで抱えるようにして車から下ろす。
この時、毛布を巻いているということから抱える姿勢がお姫様抱っこのようになってしまったが……
仕方がない。
連れてきたことを伝えようとインターホンを鳴らすと、先程の事務員が応答してきた。
顔を見られないように下を向きながらも麗を連れてきたことを知らせると共に自分のことは麗には伏せるようにと伝える。
そして、対応してくれると分かったところで入り口の壁を背にするように麗をソッと置いて86に戻った。
少し離れたところで毛布に包まれた彼女を確認……
最後まで見届ける。
しばらくすると、変なヘッドフォンをつけた双子らしき二人と先程の通話相手の事務らしき女性が出てきた。
もう、大丈夫だろう……あとは去るだけだ。
再びブォゥン……音を上げながらも走り始める傷だらけの86。
ふと空を見上げると……
朝が近付いているのか、明るくなり始めていた。
・
-朝 武偵高
傷だらけの86を速くて仕上がりの良いことで知られてる車輌科と装備科(アルムド)共同の板金屋に出す大樹。
幸いにも車の骨格とも言えるフレームはやられてなかった。
とは言え、この板金屋の技術を持ってしても1週間程は戻って来ない。
これでも普通の板金屋と比べたら異常な早さである。
「それじゃ、先輩。
これが代車のカギです」
「おう、悪いな」
車輌科の後輩からカギを受け取り、作業場の横に停まっていた代車の方へと歩み寄る。
代車は初代ヴィッツの排気量が1リッターの一番低いグレード……
カラーリングはジジクサイ感じのシルバーだ。
外装から内装までかなり年季が入っているのを見て、思わずフッと鼻で笑ってしまう。
「(しばらくの間は……このしょっぱい車か)」
カギをカチャッと開けてから乗り込む……
ホールド性もヘッタクレもないような緊張感のないボロボロのシート、握ると違和感を感じる変に太い純正ステアリング、トランスミッションはマニュアルでもミッションモード付きオートマでもない普通のオートマ。
……本当に足にしか使えないような装備に溜め息をついてしまいそうだ。
試しにエンジンを掛けてみる。
ガガガッとセルモーターを回すとヴェヴェッヴェヴェヴェ……と高揚感も何も感じない古い感じサウンドが耳に飛び込んでくる。
……1リッター直列3気筒エンジンのサウンドが86の2リッター水平対抗4気筒エンジンのサウンドに勝てるわけがない。
そう思いながらもブレーキを踏み込みながらシフトノブを手にDレンジに入れてゆっくりと走らせる……
登校時間にはまだ余裕がある為、慣らし運転も兼ねて校外に出てみる。
アクセルを踏んでも大した加速をしない。
"ドンガメ"という言葉がお似合いの加速だ。
「(走らないなー……
原付の方が速いんじゃないか?)」
そう思いながらも武偵高のまわりを走っていく……
が、その時にあるものを見てしまった。
高飛車そうな雰囲気の目付きと貴賓がある金髪のロングヘアーの女子武偵生……
通常制服とは違い、所々に大人びた改造が施されている。
早朝に助けた高千穂麗だ。
左右にヘッドフォンをつけた双子らしき二人をつけて歩いて何か話している。
……気になるところではあるが、目を合わせては行けないと前に視線を向けながらも横を通りすぎた。
その時……
麗は通り去っていくヴィッツ姿を見て立ち止まる。
「麗様……?」
「何でもないわ。
行くわよ……湯湯、夜夜」
皆さんこんにちは、こんばんわ
350Zです。
大樹編の第2話、いかがでしたか?
なんか、大樹が予想以上にかっこよくなってしまったのでちょっと驚きです……
こういう主人公って良いですよね。
博也は人として出来すぎてる感じがありますが、
大樹は出来すぎていないというところで逆に味が出てるキャラだと思います。
だから……
カーチェイスで意地張るところとか、
後になって自分の心に気付くところ、
相手を思いやるところ、
自分の感情を抑えるところとかが映えるんですよね……
そういう描写を書く時に比較的に普通に近いキャラだから、"頑張れ"って応援したくなります。
まあ、これがキンジとか博也クラスのキャラになると……
『お前ら、パパッと片付けちゃうんだろ?(笑)』
ってなっちゃいますけどね。
だから、はっきり言うと……
個人的に博也よりも大樹の方が好きな主人公に当たります。
このまま大樹一本で行こうかな?←オイッ
まあ、冗談はさて置き……
今後、麗との関係はどうなるのか?
何もないまま終わってしまうのか、それとも……?
次回もお楽しみに!
P.S
感想、投票どしどし来てください!
御待ちしてまーす!!