「だから言ったじゃない! ちゃんと応援しなさいって!」
「眠たかったんだよ。仕方ないだろ」
「ほんと興味ないとすぐ寝ちゃうんだから・・・・・・折角勝ったのに」
「わかったわかった。後でなんか奢ってやるよ」
あの後、試合のブザーで目が覚めた。気がつけば雪音は勝利しており、一人で飛び跳ねていた。なんか面白かったから声をかけずに最後まで見てたらいい加減に来いと叩かれた。理不尽である。ようやく終わったため校長に文句を言おうとしたら時間がないと雪音に襟首つかまれて無理矢理学校を後にした。解せん。
つまり今は帰路だ。さっさと学校から退散し、自宅へと雪音と帰っている。ウキウキ気分の雪音はやっぱり来るとのことで、フルーツの件で何が良いか相談された。流石にそこまで貰いたいってわけじゃなかったから、手ぶらで来いと伝えて自分がなんか用意することにした。律儀だなぁ。
雪音を家に送った後、スーパーに行って買い物をする。すると周りに少しばかりの野次馬が現れた。
「ねぇ、あれってもしかして」
「だよね・・・・・・【デュエルキング】武藤遊一の」
これである。外に出るのも億劫になりそうだ。もう武藤遊一は死んだというのにこの影響力だ。むしろ死んでからのほうが影響を与えてるようにも感じられる。
僕が外にぽんと出たらすぐにこうやって周囲に人が集まってくる。テレビに出ている芸能人の気持ちがよくわかる。鬱陶しい・・・・・・心底邪魔だ。今すぐ僕の目の前から消えてくれ。僕に普通の生活をさせてくれ。
「おい! 武藤遊一の息子!」
出たよ・・・・・・デュエルを申し込もうとする輩か。今度は誰だ? この金髪野郎に知り合いはいないぞ。
外に出たら大抵こんなのばかりだ。デュエルキングの息子を倒してデュエルキングに名乗ろうとか言う意味のわからない気持ち悪い野心を曝け出してるうざい奴ら。ほんと世界の害悪だから一秒でも早くこの地球上から消え去ってくれ邪魔だ死ね。
まぁ無視するがな。
「おい! 何無視してんだ! 怖いのか?」
「・・・・・・」
「はっ、わざわざアメリカから来たってのに、デュエルキングの息子はこんなへっぴり腰かよ。笑えるな」
「・・・・・・」
さて、買い物の続きだ。意味のわからん馬鹿は無視してさっさと買って家に帰らなきゃな。確か雪音が家に来て飯作ってくれるんだっけ? なら普通に野菜とか買っとくか・・・・・・あいつなんかダイエットにはまってるとか言ってたな・・・・・・体壊すよなぁ。
「おい! 聞いてるのかデュエルキングの息ぐぉ」
「おい、耳元でその気持ち悪い口を開くなクソガキ。今すぐ自分の国に帰ってママに慰められるかここで病院送りになるかどっちか選べ。選べないんならぶちのめした後、近海に沈めんぞ」
「な、何だよ。こ、怖い顔するなよ・・・・・・俺はデュエルを」
「二度と僕の前に現れんな。僕はデュエルモンスターズが嫌いなんだよ。だが一番嫌いなのはテメェみたいな日常生活に害になるゴキブリ以下のゴミ虫野郎なんだよ。次僕に声をかけてみろ。その体を蜂の巣にしてドラム缶にバラバラにして詰めて海に沈めてやるからな」
ふぅ・・・・・・すっきりした。もう二度と現れないだろう。これで現れるんなら警察にばれないように始末してやる。こいつらみたいなキチガイのせいで僕も随分腕っ節が強くなってしまった。デュエルだ? リアルファイトで全部殴りぬいてやったわ馬鹿野郎。
「消えろ。ぶっ殺されんうちにな」
そう釘を刺してスーパーの肉売り場へと向かう。そろそろこの時間はタイムセールがあるから急いで行かないと買えなくなる。
さて、周りもどん引きしてくれたしこれでゆっくり買い物できるってもんよ。本当に自分の父親には恨み辛みをはらしてやりたいほどだ。もういないから何も出来ないがな。
「・・・・・・はぁ、気分が悪い。さっさと帰ろう」
この時、急いで家に帰ろうなんて思ってもなかったら。ただ普通に家に向かってたら、どれだけよかっただろうか。
この一瞬の判断で、僕の人生は大きく揺らぎ、本筋へと向かってしまった。今までそれていたはずの運命に近づき・・・・・・。
多くのものを得て、多くのものを失うこととなる。
☆
スーパーの買い物が終わった。既に時計の針は4時を指している。学校から帰っていたのが2時くらいだからもう2時間近くになるのか・・・・・・。流石はスーパー。侮れん。
デュエルの試験がある日は大抵早くに帰ることが出来る。デュエルが終われば午後の授業なんてないもんだから早く帰宅することが可能なのだ。おかげで日数はあるわ早く帰られるわで一石二鳥なんだけど、デュエルしなきゃいけないという反面を持つ。他のやつらは寧ろいいのかもしれないがデュエルが嫌いな僕からすれば苦痛でしかない。
「ふん、過ぎたことをいつまでも根に持つのはいけないな。さっさと帰って食材を冷蔵庫に」
『・・・・・・すたー・・・・・・ますたー』
「全く、雪音にも手伝わせたらよかったか? これは流石に重いぞ。料理したがったのはあいつなんだし、荷物に一つや二つ・・・・・・いや、流石に持たせたら何言ってくるかわからないな。女がどうのとは言わないかもだが、男だろって言われそうだ」
『ますたー! ねぇマスターってば!!』
「何だよ幻聴無視してたら叫んできたぞ。マジかよついに僕も病院生活か」
『幻聴じゃありません!! 本当に叫んでるんです!!』
いったいなんだ。突然聞こえ出した幻聴。デュエル中にも聞こえたが基本無視してたってのに、ついには接触してきやがった。もうなんなの? カードか何かにマイクロフォンでもつけてるのか? マジで面倒だ。消し去ることは出来んのか・・・・・・。
『マスター! 私は本物ですよ! 何でそこまで現実頭皮? するんですか!!』
「お前、イントネーションは同じだが多分その“とうひ”は違うぞ。頭の皮じゃない。逃げて避難するほうだ」
『そう! それです! ありがとうございますマスター!』
「おう、ついでに今すぐ僕の半径4万キロから出てってくれ。幻聴が聞こえるのは精神的に辛い」
『酷い!?』
若干漫才みたいになったが、もう幻聴から幻視になっているらしい。いや、両方だと幻覚か。何故かって? あぁ、今目の前に何かのコスプレをしてる痛い女が現れたんだ。本当なら警察呼ぶところだが・・・・・・残念なことにな。
近くの道路反射鏡に僕しか映ってなくてこのコスプレ女が映ってないんだ。完全に幽霊の類です本当にありがとうございません。消えてください。
で、この涙目のコスプレ女がギャーギャー煩い。僕にしか聞こえてないからなお性質が悪い。あぁもう煩い! 引っ付くなコラ。さっさと一通りのないところへ急がないと。僕まで変人使いされてしまう・・・・・・デュエルモンスターズが嫌いな時点で変人扱いを受けてはいるがな。
「はぁ・・・・・・で、お前は何だ? 痴女」
『痴女じゃありません! 私は列記とした魔法使いです!』
「あぁ、30歳になるとなれる奴か? なら大変だな。妄想癖もここまで来るとな」
『え、もしかして「30歳には絶対見えないくらい若い」って事ですか? いやぁ、確かに見た目は大人に近いですが、私自身生まれてからまだ16年なので本当は10代なんですよねぇ、たはは~それでもマスターに言われると照れますねぇ』
「世の中魔法なんてないのに使えるなんて夢見てる哀れな女か」
『そっちですか!?』
何かいちいちオーバーリアクションな奴だな。昔のギャグ見てるみたいだ。頭悪いんじゃないかこいつ? それにしても何でこいつはずっとこんな姿で居れるんだろうな。やっぱ恥を知らないのか。余計に可哀想な奴じゃないか。死んだほうが自分のためになるんじゃないか?
『全く。マスターは酷いです! 前のマスターは優しかったのに』
「ならそいつの元に戻れよ、うっとおしいんだ。お前だって僕と一緒にいてもいいことないぞ」
『う、うっとおしいですか!? 酷いです酷いです! あんなに一緒にいたのに酷いです!!』
意味がわからん。僕は初対面だぞ。何を言っているんだ?
で、僕の顔を見て察したのか。自称魔女の痴女がこっちを真剣な顔して見つめてきた。なんなんだよ、こいつ。栗みたいな口しやがって。
『もしかして・・・・・・嬉しさのあまり記憶喪失したとかですか?』
「お前は何を言っているんだ?」
流石に引いたわ。
『じゃ、じゃあ覚えないってことですか? マスター』
「覚えるもなにも僕は初対面の痴女に叫ばれて困っているんだが」
『・・・・・・えぇ!?』
「なんだその珍しいリアクションは。磯野家はドミノステイトにはいないぞ」
『あ、ここもう州になってるんですね。師匠曰くドミノタウンだったのに・・・・・・ってそんなことはどうでもいいです!! 覚えてないんですか!?』
さて、話がかみ合わなくなったぞ。改めて状況把握だ。嫌だけど。
この目の前にいる幽霊紛いの痴女、自称魔法使いは僕のことを知っている。そしてここをドミノタウンと言った。ドミノタウンは僕の住むドミノステイトの前の前の前くらいだったか? ドミノステイトの前がNEWドミノシティ、その前がネオドミノシティ、その前くらいにドミノタウンだったはず。そこまで地元愛がないから覚えてないが多分そんなところだ。
対する僕はこいつの事をこれっぽっちも知らない。見たこともない。さて、ここからわかることは・・・・・・。
「・・・・・・ストーカー?」
『何でそこに行き着いたんですか!! 違いますよ!! 私は【ブラック・マジシャン・ガール】!! マスターと共にこの世界に誕生した二代目【ブラック・マジシャン・ガール】ですぅ!! 何で覚えてないんですかぁ!!』
・・・・・・【ブラック・マジシャン・ガール】、確かデュエルモンスターズのカードだったな。製造が殆どされてない(昔は1枚しかなかったんだっけ?)けど、コピー系は多く出回っている高レアカードだったか? 今の僕はこれっぽっちもほしいなんて思わないが、昔のまだ【武藤遊己】として見られていた時はカードを買ってたっけか。そういや、雪音が当時珍しい(今では価値が跳ね上がった)カードを当てまくってて【奇跡の幼女】ってガードゲームショップのおじさんに崇められてたな。今となってはこんな物に興味を示していたなんていう虚しい黒歴史だが。
そんな時に確か僕も当ててたカードの中に【ブラック・マジシャン・ガール】がいたような気がする。と言うか多分いたんだろうな。もう随分前だしデュエルモンスターズが嫌いだから余計に思い出すこともないから全く記憶に残ってないが。てか、何で今更になって出てきたんだろうね。そろそろ売ろうと思ってたところでこんなレアカードだ。「私を売ればがっぽがっぽですよ」ってか? よし、いい考えが浮かんだ。
『ダメですよ! 私のカードを売っても私自身はマスターの元にいるんですから。売ったら取り返すまで耳元で叫びます』
「おう、僕の思考を読むなや・・・・・・てか本当にお前は幽霊じゃないのか? カードに取り憑いてる系痴女じゃないのか?」
『だぁかぁらぁ!! 私は痴女じゃないですぅ!! 魔法使いの正装なんですぅ!! 確かに恥ずかしい格好だとは思ってますけど』
「けど?」
『可愛いって言われましたので寧ろこの姿は誇りです』
「照れながら言うなや、頬染めんなや、両手を頬に当てんなや、クネクネすんなや・・・・・・で、誰に言われたんだよ」
『ブー、貴方ですよマスター・・・・・・まだ7歳くらいでしたっけ?』
おいぃ、何馬鹿なこと言っちゃってんの7歳の頃の僕ぅ!! あれか? 可哀想になって慰めとかも込めて言ったのか!? 多分それだ。こいつ絶対泣き喚くし、当時の僕マジで空気読めて優しい子だって評判だったらしいし! 流石は僕、昔からちゃんと良い子だなんだねぇ。え? 自覚ないのかだって? あぁ僕だって優しいぞ。デュエルモンスターズがこの世からなくなったら皆友達って言ってやるさ。
『私は貴方が生まれた瞬間に私もこの姿を形成して、精霊としての意識が芽生え、本当の意味で【生まれた】んです。その後、貴方の真のパートナーとなるその日まで、精霊界で7年間も修行に明け暮れてたんです。そしてマスターが私のカードを引き当てたと同時に、【
「へぇ(鼻ホジ)」
『毛ほども興味ないと!?』
つまり、僕(と言っても当時7歳)とこいつは不本意だが正式にパートナーになってしまったと言うわけか。こいつは喜んでるけど僕としては大迷惑だ。
まぁ理解したからもういいだろ。さっさと帰るとするか。母さんのことが心配だ。雪音が来る事を伝えてないからなぁ。もし先にあいつが家に着いて母さんが無理したら大変だ。怪我でもしたら僕が寝込みそうだからな。
『うぅ、辛いです・・・・・・マスターのツンが強すぎて辛いです』
「この荷物持つのを手伝ってくれたら考えてやる」
『あ、私精霊なので基本実体化できません』
「だろうね畜生。お前はカードショップ行きだ」
『酷い!?』
気がつけば足早になる。焦っているわけではないが内心急ぎ足なのが自分でもわかる。ただでさえうちは母子家庭なんだ。寝込んでる母さんの親戚も死んだ親父の親戚も近くに住んでいない。この時点で詰んでるってのに・・・・・・まぁこいつらも金の亡者だから寧ろ近くにいなくてラッキーなのだが、やはり人手が足りないのはな。
『!? マスター!! 減速してください!!』
「あん? 何だよ急にまた・・・・・・こっちは今忙しいってのにっ・・・・・・ぃ!?」
僕はミスを犯した。
足早になっておりすぐには停止できないのも悪いがあいつの言ったとおり減速していれば事故なんて起こりはしなかっただろう。
今僕の目の前に大型車が少し飛ばしながらやってきやがった・・・・・・確かここは一時停止の標識があるはずなんだが人が少ないのを見越してか停止せずに飛ばす奴がいる。いつもはそんなところに警察車両が待機してとっ捕まえているんだが運が悪い。目の前に迫ったこの車。僕はなす術はない。あぁ、短い人生だったな。もしも輪廻転生が出来るならデュエルモンスターズはあっても自分の父親がデュエルキングとかいう子孫に面倒くさい重荷を載せるような称号を取らない人であってほしいもんだな。雪音には悪いが母さんの世話任せよう。それか僕の生命保険を母さんに宛てよう。それなら安心できる。
『マスタぁああ!!』
なんだ? あの痴女が上下逆に見える。そうか、車に吹き飛ばされたのか? なら話はつく・・・・・・だが体に痛みはない。これはあれか、後からじわじわと痛みが襲ってくるのか? アドレナリンがどうとかいう遅延効果か? それに世界がゆっくりに感じる。これは走馬灯でもリターンするのかな?
『マスタぁあああ!! マスタぁあああ!!』
煩い奴だな。なんでこんなときにまで煩いんだ。僕としては初対面の奴にここまで心配されるのは初めてだ。こいつからすればマスターだからなのだろうが僕からすれば完全な赤の他人だ。凄く新鮮に感じる。悪い気はしなかったぜ・・・・・・ガクッ。
武藤遊己の物語は終わってしまった。
『マスタぁあああ!! もうそんな格好しなくていいですってマスタぁああ!!』
「・・・・・・」
『・・・・・・』
『ねぇデミスも言ってあげて!! 少林寺みたいな格好のまま悟り開こうとしてるんだから止めてよ!! マスターが変になっちゃうよぉ!!』
・・・・・・あれ? 僕は車と衝突してないのか? てかそうなると今の状況はあれか。僕は今頭と両足を地面につけてブリッジ姿勢をしているのか・・・・・・なんて器用なんだ。
頭を勢いで持ち上げてそのまま直立に戻る。ふむ、鍛えててよかったな。そんな事はどうでもいい。
で、目の前を見るとどうだ。
何かまた変なのが出てきてる。しかも実体化してるんだろうな。目の前の車がへしゃげてるぞ。しかも止めたってわけじゃなく。なんか「ぶつかって来たんだけどこれ」みたいな感じだな。ほら、それっぽい顔してやがるぞこの変質者。っておい痴女。僕に抱きつくな。やめろ、触るな。
『どこか怪我してませんか? 痛いところないですか? なんか異常はありませんか? 結婚しますか? 子供は三人がいいです』
「僕としてはお前達が見えてること自体が異常だ。あと後半は却下だ」
『あぁ、これは大丈夫ですね。流石ですデミス』
『・・・・・・(グッ』
サムズアップされた。でかデミスって・・・・・・またこいつ関連か。しかもこいつはよく覚えてるぞ。僕が小さい頃に使っていたエースだったはずだ。
終焉の王デミス。こいつはもう何十年も昔の・・・・・・いや、150年以上は経ってるだろうな。それくらいに登場したモンスターで、今じゃアンティークと言われるような古いカードだ。再録されてここ最近でも現れたが・・・・・・正直古いカードはそこまで好かれない。
でも僕はこいつを使い続けていた。その効果は今でも通用するからだ。コストが高いが召喚時とかじゃなく召喚後も使用できる爆発効果・・・・・・あぁ思い出したよくそったれ。
「・・・・・・助かった。感謝するぞデミス」
『・・・・・・(グッ』
またサムズアップで答える。こいつ喋れないのか。まぁいい。この抱きついてる痴女よりかは大分マシだ。
だが間接的とは言え、こいつにも助けられたことに変わりないか。認めたくはないがな。
『・・・・・・マスター。私達がいて悪い事ばかりじゃないと思いませんか?』
「お前は煩いだけだ」
そう言うと少し申し訳なさそうに小さく笑いやがった。ったく、調子狂わされるなこいつ。
だが、こいつもデミスも確かに行動は僕基準だ。僕に危険がせまったからデミスは壁となった。こいつだって僕の正式なパートナーになるために7年も修行に明け暮れたらしいし。
・・・・・・あぁ、調子が狂う。こういう見返りを求めないようなのは今まで殆どないんだよ。
なんで僕に手を差し伸べるんだよ。もっと良いのがいただろ。
『私達はマスターのために生まれたんです。強いて望みを上げるとすれば、マスターの傍で生を全うし、マスターの手足となり、マスターと喜び合えることです。でもその為にはやはり、私達の活躍できる場が必要なんです』
「・・・・・・あぁ」
『どうか、またあの頃のようにデュエルモンスターズを好きになってはいただけませんか? 例え世界の人間は貴方を【武藤遊一の息子】としか見なくても、私達は違います。私達の大切で大好きなたった一人、この世でただ一人の主人、【武藤遊己】なんです』
『・・・・・・(ソワソワ』
真剣な顔してこいつはそう言った。そしてデミスは心配そうにこっちを見ている。
そして思い出す。雪音と一緒にデュエルをしたことを。確かに僕は笑っていた。心底楽しそうに笑っていたと思う。
そして今まで向き合わなかった結果の出ている答えをこぼした。
「・・・・・・人間が罪であり、
『・・・・・・はい。貴方の傍に居て、よく理解しました』
憎しみや恨み、マイナスの感情とは確かに身体にも影響を与える。むしろこんな感情を持っていると精神的にもまいってしまう。
だが、持続する力もこのマイナスな感情なのだ。ただ【好き】だけじゃ色あせてしまう。だがマイナスの感情は【好き】よりも根強く心に張り付き、締めつけ続ける。だから僕は答えを導き出してもそれを解とは認めたくなかった。もしもここで許してしまえば、母さんを支える自信がなくなるからだ。
『ですが、過去がどうであれ、今は私達がいます。貴方だけのために、貴方だけの味方であり、貴方だけを信じ、貴方だけに全てを捧げ、貴方だけに認めてもらえたらただそれだけでいい。だからもう大丈夫なんです。今度は貴方を支えさせてください。マスター』
「・・・・・・今までに出会ったことのない奴だよ・・・・・・お前」
『はい! 私に尽くさせたらもう抜け出せませんよ! マスター!!』
そう言ってまた抱きつく痴女・・・・・・いや、パートナー【ブラック・マジシャン・ガール】。
今までで一番落ち着いた気持ちになれた。なんだろうか、今まで張り詰めていた糸がやっと緩んだような。やっと重みが消えたような・・・・・・そんな感覚が体の芯で感じ取れた。
てか、こいつも実体化してんだな。
「実体化できたんだな、基本的に出来ないとか言ってたけど」
『私達は基本的に出来ませんよ。貴方が心から求めたとき、そして貴方に危険が及ぶとき、私達は実体化可能です・・・・・・後はそうですね。デュエルディスクで召喚してくださったらいつでも出てこれます』
「基本的って言葉を辞書で調べたことあるか?」
『・・・・・・魔導書しか見たことないです』
「帰ったらその脳みそに叩き込んでやろう」
『ひぇええ!?』
さて、僕をここまで認めさせたんだ。生半可じゃ終わる気はない。やるならとことんだ。それこそだ。「武藤遊一なんて古臭い奴の時代は終わった。これからは僕の時代だ」くらいにはしてやるさ。そしてもし自分の子が生まれて今の僕みたいにデュエルモンスターズにマイナスな印象を持ったなら言ってやる。「僕も同じような目に遭った。だからお前は僕を超えろ」と。
もう、僕みたいな奴はいなくていい。
この世界のブラックマジシャンガールの位置づけ。
遊己が生まれたことにより、まだ肉体も意識も持ってなかった精霊がブラックマジシャンガールの姿となって生まれた。これはアテムの相棒がブラックマジシャンであるように、武藤遊戯の相棒がブラックマジシャンガールだったから。AIBOのAIBOがBMG。異論は認める。だが変える気はない。
で、その血を濃く引き継いだ遊己がこの世に誕生したことでその拍子に彼女が生まれた。それが二代目の意味。ちなみに初代とブラックマジシャンの二人に修行をつけてもらった。この時の初代は普通に一人前。むしろ2世紀も経てばもっと行ってるかも。
デミスはまた別なのだが、ただカードに精霊がいたとか・・・・・・正直パートナー設定はBMGしか考えてなかった。
はい、主人公はツンデレだった落ちでした。これでまともに遊戯王できる。さぁ、神引き対環境荒しデッキの始まりだぁ。
ちなみに、この衝突した奴は警察の取調べを受け、普通に金払ってもらってます。例え怪我してなくても事故を起こしたことに変わりないので・・・・・・ここはドミノステイツの話だ。現実の話ではない。