さぁて、大会前日だ。校長室での話から大分吹っ飛んだと思うが気にしないでくれ。
僕はまず、大会があるまでの間に【古神ガタノトア】以外の製造場所不明のカードを(デッキの精霊達を扱き使って)探した。わかった事は、とりあえず目に見えてガタノトア以外は存在していない。そして製造する工場を見つけることは出来なかった。の二つである。そもそもこれをする事にしたのは雪音が帰りにカードの生産ラインについて質問してきたからである。その時校長がどうのとか言ってたような気がしたが正直校長なんてどうでもいいので生産ラインについて説明した。
そもそもデュエルモンスターズカードは一般的に工場で原版を元にカード内へシステムを導入する事で初めて1つのデュエルモンスターズカードとして機能する。一般的なノーマルカードと呼ばれるものはこのシステムが簡潔であり生産費用が余りかからないため多く普及することが出来る。だが、雪音の持つ【結晶塔】などのレアカードと分類されるものはこのシステムが複雑であり、ひとつのシステムをコピーするのに莫大な費用が掛かる。故にカードを作るのはそんな莫大な費用をかけられる会社のみとなっており、レアであればあるほど生産枚数が少ないのだ。ちなみに古いカード・・・・・・特に【ブラック・マジシャン】などの古い上にレアカードはシステムが既に導入できないほどの古く、更に複雑と来た。そのため今では殆どの古いカードの生産はされていない。まぁ似たようなものは作られたが、やはりオリジナルより劣化しているそうだ。効果はないけど。でも何故か【ブラック・マジシャン・ガール】のカードに関しては完全復刻させたんだよな。マジでなんでだよ。
ここで言っておくが、【死者蘇生】やら【サイクロン】と言った昔からある汎用性の高いカードはそもそもシステムが簡潔なため、この【ブラック・マジシャン】のような【古いカード】に属さない。あれは常に新規されているカードと思ってもらいたい。
では一般的なカードの生産ラインはどんなものなのか。
一般的に普及されているカードは【ライン生産方式】を取り入れている。
これは機械的に単一のカードを大量生産するための方法。基本的にこれが普通のカード生産だ。一般的なこの生産方法を用いて、最後は人手でシステムを組み込む作業を付け加えただけである。この組み込む作業もコンピューターで全部統一しており、人間が手を出すのは
では特殊なカードたちはどうなのか。それは【セル生産方式】と呼ばれる生産方法を取り入れている。
セル生産方式は伝統の品などを作るときに用いられている方式で、製造者が一人、または少数の作業チームで1つの作品を作るものだ。複雑なシステムを作り、それをカードに加えるため一人ひとりの受け持つ範囲が大きいのがポイントだろう。これにより少数ではあるが強力な力を持つレアカードが生まれるのだ。
では今回のガタノトアはどんなものなのか。僕はそれを探るために大会前まで探し回ったのだ。
そもそもあの爺さんが言うには、あのガタノトアはまさに矛盾しているのだ。まずエクシーズ自体が高レアなのだ。更にあのカードの効果能力は計り知れない。確かに召喚時のみに使用できるものだが、そもそもテーマデッキを組むのが当たり前な時代に革命起こすような化け物カードだぞ? すでにカードだけならここ近辺でも百何十枚を確認できている。つまり、ドミノステイトでこれなのだ。その外の州はさらにカードが普及されているに違いない。つまりこれはライン生産されているのだ。複雑なシステムをライン生産出来る物なのか? ただでさえテーマ縛りをするなんて判断するシステムをどうやって簡単に出来るのだろうか。まぁだから調べたんだけどな・・・・・・結果はお察しだったけど。
「はぁ・・・・・・カードよりもそのシステムへの無駄な情熱が気になる」
「マスターも大変ですね」
「まぁ別に調べたいから調べているんだけどな・・・・・・っておい、何で勝手に実体化してお菓子食べてんだよ。それとそのお菓子は来客用だぞ」
「あ、マスター! この羊羹おいしいですね!」
「来客用だっつってんだろ。それと僕が言ったのは見つかったのか? ガタノトア生産しているまたは生産した履歴がある工場はさ」
「あ~それがですねぇ・・・・・・今日はガイアをマグネッツ3兄弟が担当なんですけど、午前中の収穫はなしだそうで。そもそもどうやって皆の手に渡ったのかすら分からないとのことです」
マグネッツ3兄弟とはマグネットウォリアーの事なんだが、長いからまとめて言う時はこう言ってる。普通に気に入られた。
マグネットウォリアーは通常カードだ。だが精霊としての能力はかなり有能なのだ。彼ら事態がマグネットで構成された体を有しているため、マグネットの磁力で探し物が出来るんだと。レアカードに使われるシステムからの微量な磁力を探せるらしく、僕の持つ精霊で地上最速のガイアと組んで探してもらっているのだ。しかもカードのシステムを壊さず磁石で探せるんだとさ・・・・・・でもあれ一応紙媒体なんだよな。どうやって作ってんのか全くわからんが。
だが、そのマグネッツ3兄弟でさえこのドミノステイト内にあるであろう工場が見つからない。となると・・・・・・どうもこの話自体がきな臭くなる。あの爺さんはインダストリアルイリュージョン社の人間じゃないのか? 僕の推測不十分か? だが犯人に加担している、または犯人だと決め付けていては真実へたどり着けず迷宮入りするし。ただの思考停止な馬鹿の考えと同等になってしまう。
そんな感じで唸っていると精霊が一人カードから現れた。実体化してないところがこの羊羹食ってるじゃじゃ馬娘と違い、配慮が出来てると思われる。
カード名は【翻弄するエルフの剣士】。かつて武藤遊戯が使っていたカードと同じだ。あっちとはまた別で、こっちは新しい精霊が宿ってるんだとか。なんでもそのためか名前がないとの事
僕は普通にエルフと呼んでる。僕のデッキにエルフと名のつくカードは彼くらいなものだからこれで何とかなる。余談なんだが精霊達同士で呼び合う際は僕みたいに簡略するかフルネームで呼ぶらしい。長い奴は基本的に短くなるとの事・・・・・・まぁ仕方ないわな。
そんなエルフが今にもどこかの会社ぶっ壊しそうな顔して僕の前に現れ片膝をついた。これやめてほしいんだけど彼が王国出身らしく、同じ王国出身の精霊曰く仕様なのだそうだ。どうにも出来ん。
『・・・・・・我が主。ご命令とあれば、私があの妙な男のところへ行き、無理矢理にでも吐かせますが』
「エルフ、お前は好戦的過ぎだ。こういう調査って言うのは慎重に行うって相場が決まっている。騒ぎを起こしてお前に何かあったら困る」
『ハッ! 申し訳ございません。しかし私は剣士です。闘うことしか能がない身なのです。ですがそんな私でもマスターの役に立ちたく』
「あぁ、お前の活躍はデュエル中に見せてもらうさ。よく上級モンスターと戦うときに助けてもらっているからな。これからも頼りにしてるさ・・・・・・ところで、そこのぐうたら馬鹿はいつまで来客用のお菓子食べてるんだ?」
エルフが僕に忠誠を誓う中、僕の正式パートナーであるこの痴女はついにドーナツにまで手を出しやがった。しかも空中でジャンプを読む始末だ。空中を漂いながら食うな。ドーナツはどう綺麗に食べようとしてもこぼれるんだよ、浮遊して「ながら」食いはやめろ。
はぁ・・・・・・僕の正式パートナーがエルフみたいなのだったらよかった。まぁ今更何言っても仕方がないけどな? こいつの努力は知ってるし。
「だが、説教をしない事にはならん。すまんが来てくれマハード。お前の弟子はマナーがなってない」
ディスクにセットし、【ブラック・マジシャン】を実体化させる。マハードは基本精霊界を行き来している。なんでも、向こうでしなくちゃいけない仕事があるらしく基本的にはデッキの中にいないとのこと。だが何かあれば遠慮なく呼んでくれとの事なので今回も容赦なく呼ぶ。特に自分の弟子のことならなおのこと呼ばなくてはならん。
「・・・・・・なんだ、この体たらくは」
「げっ、師匠」
「何が「げっ」だ! 全くお前は・・・・・・遊己殿に迷惑をかけてはいけないとあれほど言っただろう。マナと比べるわけではないが、お前はだらけ過ぎだ」
マナ・・・・・・先代【ブラック・マジシャン・ガール】の名前が出ると凄く面倒くさそうな顔をする。まぁ比べられるのが嫌なのは分かる。だがマハードもちゃんと理解しているからか、ちゃんと前もって比べていないことを言っている。こんな男が世の中にいればどれだけよかったか。
そうそう、マハード曰く僕は武藤遊戯という初代デュエルチャンピオンの子孫らしい。マハードは武藤遊戯のエースカードで、最強の魔術師と謳われていたとの事。その後ファラオがどうの、エジプトがどうのという話になると長いから割愛するが、僕は武藤遊戯とファラオであるアテムの血を濃く受け継いでいるとの事。二つの血を濃く受け継いだことで僕のドロー力は計り知れないほど高いんだと。ここぞという時に欲しいカードが来るってわけじゃないし、欲しいカードをソリティアで手に入れるわけじゃないし、欲しいカードを作るわけでもないが、常に僕はカードの精霊と心を通わせ、現状最善であるまたは勝利へのキーカードをデッキから手に入れる力なんだとさ・・・・・・ようは欲しいカードを精霊達が引かせてくれるんだとさ。うわぁ簡潔。
マハードは代々武藤家に継がれていったカードらしく、僕ほど武藤遊戯の血を濃く引いた存在はいないとの事。僕の親父である武藤遊一も僕に次ぐくらい濃く受け継いでいたようだが、僕ほどでない上にテーマデッキの使い手らしくそこまでその力が発揮されることは殆どなかったんだと。まぁテーマならテーマ縛りのサーチが簡単に出来るからな。今の時代テーマ専用サーチがないほうが珍しいさ。
「マスター酷いですぅ! なんで師匠呼んだんですかぁ!!」
「下見ろ馬鹿。部屋を汚すな」
「・・・・・・あ」
「「あ」ではない! 全く、今日という今日は説教だ。いいか? そもそもお前は魔術師なのだ。魔術師としての自覚と誇りを・・・・・・クドクド」
正座をし、マハードのありがたいお説教を受ける馬鹿を放っておき、ちょうど帰ってきたマグネッツ3兄弟とガイアに労いの言葉をかける。マグネッツ3兄弟βとγが霊体化しカードに戻った後、二人に収穫内容を聞いた。
「申し訳ありませんマスター。我々の力をもってしても見つけることは出来ませんでした」
「チカラ・・・・・・アル、ワカッタ。デモ、バショハ・・・・・・ワカラナカッタ」
「何か力が阻害しているのかもしれないな。α、場所については休んだ後で良いから地図に記すときにまた力を貸してくれ」
「ハイ、ヨロコンデ」
「私も、また何かお役に立てることがございましたらおよびください」
「ありがとう。そして一日中扱き使って悪かった。改めて報告感謝するよ。ガイア、α」
ガイアとαに休むよう言い、外出する支度を始める。そろそろ会場入りしないといけないからな。
今回の大会は前日までに会場入りして用意されたホテルにいなきゃいけないらしい。まぁ不正があっても困るからってのがあるんだろう。メインデッキ、エクストラデッキ、そしてサイドデッキ。これ以外は持ち込み不可だ。だからホテルでちゃんと検査してメイン最大60枚、エクストラ最大15枚、サイド最大15枚の合計40~90枚を登録しなくちゃいけない。そうすることで不正を極力減らすことが出来る。勿論カードプールからデッキ構成カードの外部への情報流通は完全に禁止されており、極刑まっしぐららしい。何故そこまで全力を尽くしたんだ公式ィ。
「さて、説教の途中悪いけど行くぞマハード。そこの馬鹿もデッキに戻れ」
「た、助かったぁ~」
「まぁそう言うのでしたら・・・・・・では私は精霊界に戻るがくれぐれも遊己殿に迷惑をかけるんじゃないぞ」
マハードが姿を消し、【ブラック・マジシャン・ガール】も霊体化した。さて、大会用デュエルディスクも使わないとな・・・・・・でも僕左利きだし、ディスクないんだよなぁ。何故右利き用しかないのか。
まぁいい。左に無理矢理つけてたらいいだろ。ドローし辛いけど操作が逆だと面倒だからしかたないっちゃないんだよなぁ。
「さて、ちゃっちゃと行くか」
『行くってマスター。何処へです?』
「何処も何もホテルだよ」
『ま、まさか大人なホテルですか!? い、いけませんよマスター! いくら献身的でお嫁さんにしたいカードNo1、デュエリストの初恋カードNo1に選ばれるほど可憐でプリティーな私でもまだ心の準備も出来てないんですよ? でもでもマスターにならいつでもどこでもうぇっへっへっへっ』
なんでこいつ涎啜ってんだ? それと気持ち悪い笑い方をするな蹴るぞ。
「・・・・・・お前が何を言いたいのか全く分からんが、明日はデュエル大会だ。今回の大会は前日から用意されたホテルにチェックインしてカードを登録しないと大会には出してもらえないんだよ。一応説明はお前がいるときにしたんだがな」
『えぇ~、一緒に寝ようとかそんな話じゃないんですか~!?』
「お前いっつも布団に入ってきてるだろうがこの大馬鹿娘。なんでわざわざそんな話する必要がある。むしろ毎回やめろって言ってるだろうが。ほれ、分かったらとっととカードの中に戻ってろ」
カードに入っていくのを確認し、母さんに行ってくることを伝えて雪音と天野との待ち合わせの場所に向かう。柏尾兄弟は自分達で向かうとの事で、あのワンキルされた奴は一人で行きたいとの事。で、雪音が僕を連れて行くとか言い出して、なら大会の確認をしたいからと天野も来ることになったんだよなぁ。僕的には一人で行くほうが気楽なんだけど。
☆
「あ、遊己おっそい!」
「レディを待たせるなんて。マナーがなってないんじゃない? 武藤君」
開幕罵倒されたここは集合場所であるドミノステイトで最も高いビル。【海馬コーポレーション】とよばれるソリッドヴィジョンシステムを開発した玩具会社のビルだ。実は軍事会社だったらしいのだが2世紀前に玩具会社に変更、それからずっと黒字経営をたたき出している世界でも一目も二目も置かれている化け物会社。まぁでかいから目印にはもってこいなのだ。
「一応5分前に着いたんだが?」
「そこは謝るところよ」
「生憎と僕は無駄にプライドが高いからね。そんな下げる頭なんて持ち合わせてないよ」
そう言って僕はさっさとホテルへ足を運ぶ。後方からため息が聞こえ、その後追いかけてくる足音がした。
とりあえずホテルにチェックインしてデッキ渡して登録すませて部屋でデッキチェックか・・・・・・大会が数日かけて行われるなんてなぁ。
一応学校は公休扱いらしいが・・・・・・こんなことに公休を許す辺りデュエルモンスターズの影響の大きさが見て取れるな。
「ねぇ武藤君。武藤君のデッキはどんなテーマで行くの?」
追いついた天野がそんなことを聞いてきた。テーマを聞いてくる辺り上位ランカーと見られているのだろう。基本的に上位ランカーぐらいしかテーマを作れないしな。金の問題とかで。
でもまぁ。
「僕はテーマなんて組んでないよ。基本的に魔法使い族とそのサポートみたいなのだしな・・・・・・まぁ、テーマ組まないといけないなんてなったら魔法使い族がテーマとでも言っとこうか」
「あら、詳しくは教えてくれないのね」
「お前、僕は一応大会じゃ敵なんだけどな」
「いいじゃない。大会は明日よ」
これまた敵前調査か? まぁ、教えたところで今更対策なんてそう大きな事出来ないしな。教える気はないが。
「それにしても!」
「うぉっ!? なんだよ雪音」
突然つっとばすようにぶつかってきた雪音に驚きつつ、倒れないよう受け止める。本当なら避けたかったんだが突然だったこととここで避けると雪音の場合後が怖いため仕方なく受け止めた。これがあのじゃじゃ馬娘だったら容赦なく避けた上で蹴るかもしれない。
「大会のためにホテルにって言われてたけど凄いわよね。大会にここまでお金使うなんて」
「あぁ、あれから調べたんだが。なんでも今回の大会の資金援助した会社が、さっきの待ち合わせ場所にしてたビルの【海馬コーポレーション】と【インダストリアルイリュージョン】。この時点で相当力入れてるのが分かるだろ? 他にも大手がこの大会に多額の支援をしているらしい」
「そこまでするのね・・・・・・テレビにでも報道されるのかしら」
そうなんだよなぁ。これだけ投資させといて優勝賞品が違法カードなんてことあるわけないんだよなぁ。やっぱり僕の推理不足にしか見えない。というかこれは嵌められたな。
僕達を見世物にしたい奴がいるんだろうさ。
もしかしたら僕を見世物にしたいのかもしれないな。
あの【武藤遊一】の息子だからな・・・・・・うぇ、皮肉言っても通じなさそうだな今回の相手。
『安心してくださいマスター! 私達が絶対にマスターを守りますから』
デッキの中にいる【ブラック・マジシャン・ガール】がそう言いながら霊体化して現れると他の精霊達も霊体化して頷く姿をみせる。
まぁ、こいつらがいれば安心か。でも何事も起こらない事が一番なんだが・・・・・・そんなこともなさそうなんだよなぁ。頭痛い。
ブラックマジシャンガールのCVは悠木碧さんのつもりで書いてる。あったかいものどうも
オリカ紹介なし