契約者(題名仮)   作:がっきー神父

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5、ブレーベルグの壁

5、ブレーベルグの壁

 

「隊長、補給隊の到着時刻はとっくに過ぎているのですが……。」

「うむ。確かに妙だな……。」

「はい、伝令も無しに5時間も遅れています……。」

エリカ山脈の頂上、エリカ山脈支部はブレーベルグ本部隊の物資輸送がなければ運営出来ない。

銃、弾丸、衣類、食料が尽きれば放棄して下山せざるを得なく、もしそうなれば軍法会議ものだからできないのだ。死守しなければならない戦線は絶対に戦力を割けないのが現状。

「仕方ない……小隊なら文句も言われんだろう。確認だけだしな。」

50人しかいない基地から5人を派遣するだけでも痛手だった。

「了解。それではすぐに手配致します。」

そう言って副支部長が部屋を出ていく。

もし敵襲により足止め或いは殲滅されていれば由々しき問題だし、まだ潜伏している可能性だって捨てきれない。用心に越したことはなのだ。一番いい装備をさせよう。

椅子から立ち上がり、扉を開く。

「なんだ、これは………!?」

呆気にとられた。

辺りは死体が転がり、血があちこちに飛び散っている。

彼には何が起こったのか解らなかった。これだけ兵士がいて1発の銃声すらなく壊滅している。見ただけでも3,40人は倒れているのだ。

悪い夢を見ているだけと思いたい。

「生存者を探さねば……!」

「いや、その必要なない。」

後ろから聞こえた声に驚き振り向くと、全身黒い服にフードを深々と被りベンチに座る男がいた。

「誰だ貴様……今すぐ立ち去れ!さもなければ撃つ!!」

懐からリボルバー銃を取り出して男を狙う。

あくまで気楽な態度で立ち上がる男。

「後はあんただけだぜ?」

こちらに向かってくる彼に引鉄を引いた。

パァンっ!

しかし、ピクリともしない男に恐怖心が湧き、諦めの感情が支配を広げていく。

「俺には弾丸は無意味でね。そかし……この体の実力がどれ程のものなのか試してみたくなったんだ。」

「悪魔が!!」

パァンっ!

次は頭を狙って撃ったが状態を素早く捻って避けられた。

パンっ、パァンっ!パンっ!!

すかさず3発撃ち込むがすべてかわされてしまう。

「………!」

「じゃ、こっちの番かな?」

関節技で手首を捻じり銃口を胸に押し付けると、撃鉄を途中まで引いて手を放す。

ドンっ!!

抵抗を無くした撃鉄は勢いよく戻り、弾丸を爆ぜた。

胸に焼ける様な熱さと違和感、痛み、重苦しさが一気に押し寄せる。息を吸っても吐いてもままならず、視界もぼやけていく……。

「これで時間稼ぎはできる。」

ドルフは1つ呟くと防壁前線に向かった。

 

「やぁ、ドルフ君。」

前線に着くとすぐ、やや陽気な声が彼を呼ぶ。

中性的な見た目で童顔ながら整った顔立ちの青年。背は170センチくらい。細身で赤の軍服を羽織っていて、髪は少々長め、後ろで緩く結っている。

「調子はどうだね?」

意味深い表情でまじまじとドルフをみる。

「まぁまぁだな。本気が出せないのが難点だが、大分慣れてきた。」

彼の事だ。既にあの事は知っているだろう。

「信用してくれるのは有難いけど、あんまり素直に話すのは危険だよ?」

手を後ろで組み、得意げに話す。

「で、進み具合はどうだ?アドルフ。」

「順調なのかな?もう少し余裕をもって教えて欲しかったけれどね。そうすればもっと早くいいものができた。」

櫓と防壁は粗方完成しているが、後ろの馬防壁は殆ど進んでいない。

「それだけ差し迫った状況なんだ。既に市民に不安も不満も膨らんでいる。」

「知ってるさ。こっちも武装発起している集団が出始めていてね。妙な宗教団体まで出てきている始末だ。」

人の不安に付け込む邪教団体は厄介だった。泰平を唄い金を巻き上げ、監禁、強姦なんでもありの集団。不満という火薬樽のいい火付け役だ。

「それは虱潰しに消していくしかないな……。こっちも手を貸そうか?」

「いや、下手に人手は割きたくない。こちらでなんとかするさ。」

アドルフの懸念は2つ。1つは大人数で潰しにかかれば動きが知られていまう可能性がある事。もう1つは前者の派生で姿をくらます可能性と上げ足を取られて事態が悪化する可能性。ここは慎重に動きたかった。

「そうそう、新型の大砲とガトリング、ライフルの件。なんとかなりそうだ。」

「すまない。人は集まりそうか?」

「いや、訓練された人間には限りがある。かといって即席で覚えさせても意味がない。」

ヒルトリヒが用意できたのは大砲10門、ガトリング3丁とライフル銃120丁。それから兵士120人と指揮官25人。とてもじゃないが、これでは前線維持は不可能だ。5分程度で壊滅してしまう。そこでアドルフに大砲50門、ガトリング20丁、ライフル1000丁と兵士1200人を要請したが、物は揃っても人が集まらないのでは意味がない。

「そうか……。」

「残念そうな顔をするな。なんとかなるさ。」

「恩に着る。」

それに、エリカ山脈にも防衛戦線を敷けるだけの装備がある。

「君はアサシンとして優秀だ。けど、司令官としてはもっと優秀なようだ。」

唐突に褒められ驚きはしたものの、これといって特別嬉しかったり照れたりはしなかった。

「いや、俺はあくまで影の人間だ。上に立つような人格者じゃない。」

最もらしい事を言おうとか謙遜ではない。アサシンとして生きることが一番活きると思ったからだ。

「そうかな。それを聞いて尚更やる気が出たよ。あぁ、それと、どれぐらい時間が稼げそうだ?」

「正直、2週間か、持って3週間だろうな。」

「前者だろうな。」

「それから、ここは持って3日、最低1日以下。」

「防壁は間に合いそうもないか……。」

だが、秘策はあった。

「そこで提案なんだが、これはどうだろう?」

ドルフは白い軍服を木箱から取り出した。

これはエリカ山脈のブレーベルグ軍支部を襲った時に予備として保管してあった軍服一式、50着を馬車に載せて持って来たのだ。

「馬車にあと3箱あるぞ?」

「ハハハハハっ!面白い奴だ。」

軍服を見て楽しそうに笑うアドルフ。

秘策とは、隣国ブジンベルグの支部を1つ潰し、偽装工作としてブレーベルグの軍服を着せた死体を置いてくる。後は両国の小競り合いを激化させて時間を稼ぐ方法。

「分かった。それじゃ、後はよろしく。」

アドルフは馬車に乗って町の方へ駆けて行った。

 




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