3、革命は血と共に馳せゆ。
ドオォォォォオオオンっ!!
パァァアン!バンっ!
ドンっ!!パァンっ!
あちこちから銃声や轟音、怒音が地響きの様に駆け行き、耳も殆ど聞こえない。激しい空気は揺れ大地の鳴きと共に土が爆ぜ木々は薙ぎ、人が吹き飛ぶ。
地面にはついさっきまで隣にいた仲間が倒れ、息絶えている。傷一つない彼は今に起き上がりそうだが、そんな様子は微塵もない。
またある所では膝から下が無くなり叫ぶ者。
目から血を流して錯乱する男。
胸に剣が突き刺さったまま、家族への別れの手紙を握り締めたまま青ざめていく青年。
首の無い死体。
腕だけ。
顔が半分無い遺体。
足だけ。
血まみれの軍服。
自分の内臓を腹に戻そうと傷口を抉る人。
だが……
劈く様な金切り音だけが鼓膜を支配して、視覚情報が一気に押し寄せ脳を混乱させる。
さっきまで聞こえていたのに……。
おかしい……。
何が起こっている?
帰りたい。
家族に会いたい。
息子を抱き締めて妻と一緒に過ごすのだ……。
いや……?
違う。
私は戦場にいるのだ。
戦わねば……。
銃……銃はどこだ……!?
クソっ!落としてしまったのか……?
剣だ、剣を…………?
体が動かないぞ……?
それに、なんだか眠い。
あぁ、そうか……大砲の爆風に巻き込まれたのか……。
両手足がない。
そうか……。
まだ、まだ死にたくない。
せめて、息子と妻に一目会いたい……カイザル……カルマ、神様……どう、か……む、す……こに…………。
「酷いな、こりゃ……。」
「あぁ、両手両足、顔半分に内臓、みんな持っていかれてる。」
「名前は?」
「エーリッヒ・ヴァルクホルン、妻子有りだな。妻はエーリッヒ・カルマ、息子はカイザルか。気の毒に……。」
「名誉賞で2階級特進だろうな。本国の遺送係に連絡しとけ。今回は238件だな……。」
「了解。」
そんな会話がドア越しに聞こえてきた。
ここの所被害が増している。劣勢を強いられているか……。
だが、アサシンは勝手に動く事も戦場に出る事も出来ない。特に秘密裏に動く事の多い奴はそうだ。
コンコン。
ドアをノックする音にそれを見る。
「……。」
「ドルフ、いるか?」
「あぁ。」
やたら外を警戒しながら足早に入って来たのは、見知らぬ男。身なりを見る限りは軍の人間ではなく、中級以下の貴族のようだ。
「あんたは?」
酷く焦った様な、恐怖の様な表情を浮かべ、彼は口籠もりながら挙動不審で怪しいと言えば怪しい。
「た、頼まれた物を届けに行かせた。ってアドルフさんが……。」
男は懐から筒を取り出して渡して来た。
「あぁ。ありがとう、下がっていいぞ。」
筒の中身は屋敷の地図。無論、この屋敷の物ではない。
「あの……それは……?」
「お前には関係のない事だ。」
高圧的な口調で男を睨み、立ち上がった。それからゆっくりと窓の方に歩み、外を見る。
「あ、けど……一応……その……。」
言葉がたどたどしくてドルフはムッとした表情になる。
怯えるのは解るし筒の中身が気になるのも解る。アドルフは敵に対しても仲間に対しても容赦ない将校で、殆ど人と話さない。そんな人がドルフに届け物をするという事に興味をもったのだろう。
そんな彼に歩み寄って、
「関わらない方がいい事もある。」
そう突き放した。
まだ納得していないのか、混乱しているのか、立ち去る様子はなくドルフを見ている。
「君は部屋から立ち去って今日の事は忘れろ。そしていつも通り生活できる事を幸せに思うのだな。」
「え……?」
「人には通ってもいい道と通ってはならない道の2つがある。君はその分岐点にいる。俺が椅子に座るまでに決めろ。そうでないと酷く後悔する事になるぞ?」
踵を返して書斎机に回り、椅子に座る。
彼はドルフの言葉に異常さを感じたのか足早に部屋を去る。
出て行くのを見て、筒を開ける。この筒は1度開けると解る仕組みになっているが開けられた形跡はない。
今回の仕事は誘拐された令嬢の救出。多額の身代金の要求があった為にどこにいるかも解っている。
屋敷の間取りさえ解れば作戦は容易に立てられる。ついでに、アドルフの工作員が既に監禁されている部屋まで調べ上げているおまけ付き。失敗はない。
もうすぐ日が暮れる。
準備をしなければ。
軍服を羽織って部屋を後にした。
いつも契約者(題名仮)を読んで頂き有難うございます!
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毎週火曜日か水曜日に次話投稿です!
上がってなかったら何かあったと思って下さいww
それでは、また会いましょう!