タイトル詐欺です(笑)
そしてお礼です。沢山の方が読んでくださっているようで凄く嬉しいです。感想、評価、お気に入り、全て僕の励みになりました。本当に感謝です。
前置きが長くなりましたが、それではどうぞ。
…イマイチ、ルピの振り方が分かりません。
※追記、文章を若干修正いたしました。混乱させてしまって申し訳ありませんがご了承ください。
島村卯月と顔を合わせてから数日。僕は何故か交番にいた。その理由は僕の目の前に座っている(この場合は座らされているが正解かもしれない)大男、
「何か弁明はありますか、武内さん」
「……申し訳ありません」
「一応は聞いてあげます。何をしたら警察様のお世話になるんですかね?」
「私はただ、名刺を渡そうとして……」
「あれ、おかしいですね。僕が警察様から聞いた話によると朝っぱらから往来のど真ん中でスーツを着た怪しげな大男が女子高生相手にしつこく声をかけているという事だったんですけど?」
「それは、名刺だけでも受け取ってもらおうと思いまして……」
「我々成人が下手に声をかけるだけで犯罪になりかねないこのご時世に何やってるんですか? しかもスーツの大男が声をかけているのを見かけたら通報されるの当たり前じゃないですか、馬鹿なんですか? 馬鹿ですよね? まだ何か言い訳はありますか?」
僕はまだ言いたいことがあったのだが、近くにいた警官に「それぐらいで許してあげてください」と言われてしまったので、勘弁しておいた。
「……帰ったらちゃんと千川さんや部長に謝ってくださいね。特に千川さんにはしっかりと」
「……? はい、分かりました」
きっとこの鈍感男はその意味を正しくは理解していないだろう。千川さんほど分かりやすい人はなかなかいないと思うのだが。
とにかく、僕達はもう一度頭を下げてから交番を後にした。何だか精神的に疲れたが、まだやらなければならないことがある。
「武内さんが迷惑をかけてしまった方にも謝りに行かなければなりませんね……家に尋ねるのは住所が分からないですし、学校に聞くのも怪しい輩みたいですし」
ふむ、どうしたものか、と頭を悩ませていると、隣を歩いていたPが立ち止まった。何事かと思い、声をかけようとすると、
「武内さん?」
駆け足で僕をおいて先に行ってしまった。今日の彼は一体どうしたって言うんだろう。
彼の後ろ姿を視線で追いかけると、その原因はすぐに分かった。武内さんは近くの電柱に凭れかかるようにして立っていた制服を着た女の子に話しかけていたのだ。また過ちを繰り返すつもりなのかあの人は。そうはさせまいと、僕も駆け足になって追いかけた。
「武内さん、もしかしてその子が?」
そう声をかけると、制服少女は僕に視線を向ける。
黒く長い髪に整った顔立ち。着崩した制服に少し細められた目から冷たそうな印象を受けた。Pはよくこんな子に声をかけようと思ったな。確かに可愛いとは思うけど。
……おっと。初対面の人を観察するようになってしまったのは、このバイトのせいでついてしまった癖のようなものである。まぁ、悪癖ではないと思うので今の所は直すつもりはない。
「はい。謝罪をしなければと思いまして」
「また通報されたらどうするんですか。今度は助けられないかもしれませんよ?」
「別に私は通報したりするつもりはないけど」
制服少女が会話に入ってきた。なるほど、確かに僕の第一印象は間違ってなさそうだ。素っ気ない言い方には何となく近寄り難い雰囲気を感じてしまう。
「ところで、アンタは何者? そっちの人の知り合い?」
初対面でアンタ呼ばわりですか。この小娘なかなかやりますね。しかし僕は大人なのでそんな事では怒りませんよ。ええ、怒りませんとも。
「はい。そこの大きな男の人と同じ職場で働いています。今回の件は本当に申し訳ありませんでした」
僕と武内さんは二人揃って頭を下げる。大の男が女子高生に頭を下げる光景というのはシュール以外何者でもない。
「別に良いって。頭下げられても困るからさ……って、今来た人。ちょっと」
はい? と顔を上げたら、もの凄い至近距離でジッと見つめられた。そんなに近くで見つめられたら流石の僕も恥ずかしいんですが。
「あの、僕の顔に何かついてますか?」
もはやテンプレとなっていそうな言い回し。しかしクール女子高生はそんなものに反応しない。何か言ってくれない僕も反応に困る。そして武内さんも黙っていないで助けてください。
しばらく女子高生に見つめられるという素敵イベント(?)を経験。そしてようやく目の前の少女が言葉を発したと思ったら、
「……ひょっとして、おにいちゃん?」
「あ、すみません人違いです」
即答した。何故なら天涯孤独となったこの僕に妹など存在するわけないからだ。腹違いの妹とかそういう展開じゃない限り、目の前の少女は僕と何の関わりもない赤の他人だ。
「まさかスカウトした方がバイトさんの妹だったなんて……」
「武内さん違いますからね。こんな時にポンコツにならないでください」
よく見るまでもなく似てないだろう。そんな真面目な顔をしながらのボケはやめていただきたい。
とりあえず話題を変える意味も兼ねて、小さく咳払いをして、
「とにかく、人違いです。僕に妹なんて存在しませんから」
「ああ。ごめんごめん」
そういう意味じゃなくて、と少女は僕から離れながら言った。
「私とおにいさんは別に血の繋がりなんかないよ。私だって一人っ子だし」
じゃあどういう意味なんですか。まさか二次元お得意の義妹キャラですか。別に僕は妹に興奮するような特殊性癖などない。もし彼女が義妹キャラとか言い出したら隣にいる大男にあげる、もとい押し付けようと密かに心の中で誓った。
「昔、一緒にゲームとかしたよね」
「……?」
その言葉を聞いても特に思い当たる節などない。少女は更に続ける。
「小学生の低学年くらいの時かな。私のお母さんに連れられてさ、お兄さんの家に遊びに行ったんだよ」
……あ、
「私とおにいさんのお母さんが友達でさ。何回か遊んでもらってたと思うんだけど」
僕の脳内で再生される。あれは今から何年前の事だろう。確かに母さんが家に友達を連れてきて、その人と一緒にやって来た子供は確かに幼い女の子だった。
「じゃあ、君が……あの時の」
「思い出したみたいだね。久しぶり」
思い出した。しかし名前の方は思い出せない。それを少女は察したのか自己紹介をしてくれた。
「流石に名前は覚えてないよね。あの時もろくに私の名前なんて呼んでくれなかったし……私の名前は渋谷凛。二人とも、改めてよろしく」
僕の隣に立っている武内さんは少女の自己紹介に、反射的に名刺を出してしまって少女に受け取ってもらえない。こんな光景、普段の僕なら間違いなくツッコミを入れているというのに、
「あの時の、女の子と……こんな所で会うなんて……」
ツッコミを入れる余裕なんてなかった。その理由は単純にやってはいけない事をしてしまったから。
「偶然ってあるもんだね。私としても、もう二度と会わないと思ってたから……って、どうしたのさ。顔色悪くない?」
「あ、いえ……気にしないでください。いつもこんな感じなんで……」
ーー昔の記憶を探るなど、やってはいけない事だったのに。
「確かに顔色が悪いですよ。バイトさんはしばらく働き詰めですし、今日はもう自宅で休んではどうですか?」
働き詰めなど、この人にだけは言われたくはなかったが今はその言葉に甘える事にしよう。とにかくこの場からーー正確に言えば目の前にいる少女から一刻も早く離れたい。
「渋谷さん、今回は大変ご迷惑をおかけしました。このお詫びは必ずいたしますので今日はこの辺りで失礼します」
「あ、ちょっと……」
何やら引き止めるような声が聞こえてきたが、聞こえないふりをして早々にその場から離れた。
「もう、話したい事あったのに……」
「……それでしたら後日、彼と話す機会を設けましょうか?」
「そんな事できるの?」
「はい。バイトさんもお詫びをしたいとの事だったので、渋谷さんがよろしければですが……」
「……うん。それならお願いしようかな。その時にアンタの話も改めて聞いてあげるよ」
「ありがとうございます。これが私の連絡先になりますのでーー」
その場から立ち去った僕はそんな会話をしているなど夢にも思わず、ただ少女に二度と会わない事を祈っているのだった。
少女から逃げるように離れ、家に帰宅した
「うぇっ……」
嘔吐するのは久しぶりだった。あの事件から一年くらいは発作のようにしていたが、ここ最近ではそれもなくなっていたというのに、
「情けねぇ……」
思わず呟きが口から漏れる。
医者に相談した所、「トラウマによるものではないか」と診断されている。あんな事があったから仕方がないと言えば仕方がないのだが、
「まさか、あの時のチビと再会するなんざ……」
予想外にもほどがある。もしもこの世に神様が存在するのならば、余程
ーー幸せだった時代を思い出させるなんて、
これは今の
何もかもが手の届く場所にあり、それを失うなんて全く考えていなかった頃。
今ではどんなに焦がれても手が届かない場所に存在するもの。
だからこそ、蓋をして隠してきた。忘れるようにしていた。思い出さないようにしていた。
「トラウマ、か……」
呟いて、自嘲する。自分ではとっくに吹っ切ったと思っていたのだが、実際はそうではなかったらしい。
ーートラウマはそう簡単に克服できるものではないから
それを改めて認識させられた一日だった。厄日としか言いようがない。無論、あの渋谷凛という少女は全く悪くないのだが。
今日は久しぶりに悪夢でも見そうだ、と思った
ーー風呂場の鏡に映った、もはや見慣れたはずの腹部の古傷が何かを訴えるようにやけに疼いた。
いかがだったでしょうか。明るい話も描きたいですけどね、まだまだ先になりそうです。
よろしければ感想、評価等よろしくお願いしします!
それではここまで読んでくださってありがとうございました。
……この主人公、二重人格ではないですよ?