ソードアート・オンライン。
俺がそのゲームを手に入れることができたのは、一言で説明するならば『運が良かったから』だろう。
俺はただのゲームが好きな16の高校生だ。そして、俺と同じか、それ以上にゲームに情熱を注いでいる友人の兄弟がいる。
その友人と、友人の兄貴の三人でよく対戦をしたり、協力プレイで様々なゲームを攻略した。皆が知ってるハンティングゲームから、それらに比べたらコアな扱いを受けている、死にゲーと呼ばれるゲームまで。
ナーヴギアによってプレイできる、VRゲームにおいてもそれは例外ではなかった。
そんな俺達が、『ソードアート・オンライン』というゲームが発売されると聞けば、当然欲しがった。
従来のVRゲームではなく、VRMMORPGというジャンル。自分の身体で、自分の動きで、色んな人達と世界を冒険できるという新境地。決められたフィールドでただ敵を倒したり、パズルを解くといった今までのVRゲームとは比べ物にならないゲームとなるだろう。
オープンベータテスト、と呼ばれるテストプレイにも、俺達は応募した。その結果、友人の兄貴が当選した。
俺達は二人で不平を述べたが、それは心からのものではなかった。むしろ、一番ゲームの上手い彼だからこそ、ベータテストでもしっかりと楽しみ、その世界を満喫するだろうとわかっていた。そう信頼していたから、俺達は譲ってくれとも言わず、嬉々としてその兄貴に任せた。
俺達は彼がフルダイブから戻る度、話を聞くのに夢中になった。どんなモンスターが居た、どんなクエストがあった、こんな
それらの情報を、俺と友人はただ聞き入った。自分の家にあったトレーニングソードや木刀を持ち出して、教えられた動きを真似たりした。
そうして遊びながら、俺達も製品版を必ず手に入れると意気込んだ。
製品版を手に入れるために、俺達はあらゆる手段でそれを求めた。友人の兄貴はベータテスター故の優先購入権があったが、俺達の入手にも手を貸してくれた。
販売店での予約、抽選への申し込み、同じベータテスターでも製品版購入に意欲的では無い人物へ譲渡願の旨を伝える。
そういったものに、『俺』は全て外れてしまった。抽選は外れ、直接・ネット販売の予約はいっぱいで、購入した人への交渉もうまくいかなかった。夜通し店頭に並ぶ行列に混ざることは、残念ながら未成年で学生の俺には無理な話だった。
しかしなんと、友人は幸運にも製品版を二本手に入れたのだ。抽選と、兄貴のベータテスターへの交渉が功を奏した、と。
俺が頼むよりも早く、そいつは一本を俺に譲ってくれた。当然その分の金を払い、俺は礼を言った。
こうして、俺と友人兄弟の三人は『ソードアート・オンライン』の製品版を手に入れることができたのだ。
俺は自分の――いや、友人の運の良さに感激し、腕を組んだり肩を組んだりしてただ喜んだ。
◇
正式サービスは十一月六日だったが、ソフトを入れて起動することはできて、そのなかでキャラメイクが可能だった。
身長体重は大まかにナーヴギアによって計測されていて、それを基準に身体は作られた。身長173センチ、体重65キロ。これは現実の俺と同じだ。
顔はそこまで拘らないが、多少スマートなイケメンにしてみる。映画俳優には届かないが、中の上あたりの顔立ちではあるだろう。短髪を茶色混じりの金色に染め、少し逆立たせる。
それだけのメイキングだが、俺はそれなりに満足した。こいつにプレートで飾られたアーマーを着せ、剣と盾を持たせれば、なかなか理想的な『騎士』になりそうではないか。
俺は職業を含めたキャラメイクのできるゲームをプレイする際、一番最初に作るキャラは、剣と盾を持った騎士らしい男キャラで進めると決めている。
たぶん、俺と同じような考えを持っている人はいるだろう。最初は脳筋で進めるとか、魔法使いで進めるだとか。盗賊で進めるという人もいれば、弓兵で始める人もいるだろう。
人それぞれの『自分のキャラ』があり、自分の分身がいるはずだ。それこそがRPGの醍醐味なのだから。
ちなみにあの二人の場合では、友人が槍などの長物を使う軽装で、その兄貴ががっちがちに防御を固めたタンクか、たまに真逆の完全支援型の魔法使いだ。
真逆のプレイスタイルを完璧に使いこなせる友人の兄貴には、俺達はゲームの上手さで敵わない。
おそらく、あの二人はソードアート・オンラインでも同じような構成でキャラを作っているだろう。
そう考えながら、最後に名前を入力し終えると、俺は満足して確定ボタンを押した。
◇
そして、どんな風に進めていくか、どんなパーティで活動しようか。三人でもいいけど、もっと大人数で遊ぶのも楽しいだろう。
そういった事を三人で話し合いながら、俺達はその日が来るのを待った。毎日毎日カレンダーを確認し、時計を見て時間が過ぎるのを待ち、一分でも早くその日が来るように21時には寝たりなんてこともした。
そうして、ソードアート・オンラインの正式サービス開始の日が来た。
俺達は寸前まで三人で通話し、話し合っていた。
「とりあえず、ログインしたら最初は町中の広場に出るからな。そこで三人合流してから、フィールドに出て戦い方を教えるぞ」
「りょーかい。まあ、お互いのキャラの顔が違っても、たぶんわかるしょ。お前もいいよな?」
もちろんだ、と俺は答えた。
じゃあ向こう側で、と挨拶を交わし、開始までの秒読みに入ったところでナーヴギアを被り、ベッドに横になる。
「リンク・スタート」
慣れ親しんでいるが故に、俺はスムーズにその言葉を呟いた。