少しずつ細かい描写を修正していくかもしれません。
「ソーヤ」
俺の呟くような声に、ソーヤはその瞳をこちらに向けた。
それをまっすぐに受け止める。目を逸らしたりなどしない。俺は、ずっとこれを求めていたのだから。ここまで来て逃げることなどしない。
「ああ、お前か」
普段通りの声。さも狩りに出ていて疲れたという印象を受ける、吐息混じりの声。
それが、濁った瞳のソーヤから発せられるのはどうにも不安を感じさせた。
ソーヤの「お前か」という言葉を聞き、サーシャが本当に知り合いだったのか、という旨の呟きをした。
「その槍――圏外で戦っているのか?」
「ああ。金が無きゃ食い物も買えないしな」
「そうか」
ソーヤは少しだけ
そう考えていると、ソーヤはちらりと俺の
「お前は攻略組なんだろ?」
「ああ。俺は今も前線で戦っている」
「……屈しない、か。変わってないな、お前は」
ソーヤはふっと口許を緩めた。俺はまさか笑いかけられるとは思ってもおらず、面食らって言葉が出なかった。
「けど、だからこそお前は
続けられたソーヤの言葉に、俺は今度こそ息を呑んだ。
「なあ。お前はどうして降りてきた? どうしてオレに会いに来た? オレは
ソーヤは眼を剥き、
「――なんでお前はここに来たんだよ!!」
そう吼えて背の槍を構えた。
その慟哭を聞いて、その激情のままの敵意を見て、少年達やサーシャが怯えた表情を浮かべた。
それを見た俺は即座にソーヤに接近し、左手に装備した盾で殴り付けてソーヤを教会の外へ吹き飛ばす。
「お前――っ!」
「やるなら外だ。迷惑になる」
跳ね起きるソーヤに対し、俺は静かにそう返した。
そう。俺は応じるつもりだった。
「デュエルか? それとも――」
「いらねぇよ!」
ソーヤはデュエルの申請すら無いまま、こちらに向けて地面を蹴った。
「そうか――」
俺は腰の鞘から剣を抜いた。
デュエルを申請しない状態で、しかも《圏内》であるこの場で攻撃しても、HPが減ることはない。
それはつまり――
「――なら、相手をしてやる!」
「おおおおおっ!」
――気が済むまで戦うことができる、ということだ。
◇
なぜソーヤが俺に槍を向けたのか。
なぜ俺は当然のようにそれに応えたのか。
おそらく、その理由はどちらも十全にわかってはいないだろう。
だが、ただ一つ……これだけはわかる。
これは、八つ当たりだ。
「らあっ!」
「はあっ!」
鋭く振り下ろされる槍を剣で受け、切っ先を下に向けて受け流すと同時に斬り払う。腹に斬撃を受けたソーヤは尻餅をつき、しかしすぐに立ち上がって槍を突き込んでくる。
「温い!」
それを盾で受け流し、回転と共に袈裟斬りを繰り出しながら俺は吼えた。
俺もソーヤも、おそらく八つ当たりをしている。
俺は、二度に渡って友を救うことをできなかった後悔を。
ソーヤは、実の兄を目の前で失った自身の無力さを。
お互いに抱え込んだそれらを吼え散らし、ぶつけあっている。ソードスキルも使わず、ただがむしゃらに。
「「らあっ!」」
ぎり、とソーヤの槍の柄と俺の剣の刃が噛み合い、ぎりぎりと押し合う形になる。
ソーヤと俺のレベルは大きく違うはずだ。装備の質を見てもよくわかる。
それでもこうして拮抗しているのは、ソーヤの恐ろしい胆力によるものだろうか――そう考え、俺は内心で苦笑した。
いくらVRの世界とはいえ、このSAOで意志の力などあるわけがない。そんなもの、映画の世界だけだ。
「お前が――」
ソーヤがぽつりと呟いた。
「お前がここに――」
涙を流しながら、
「オレの前に出て来なけりゃ――」
ギリ、と歯を食い縛り、
「オレはちゃんと――自分を責められたんだよ」
「なに……?」
俺はその言葉に眉をひそめた。
「レイが死んだのは
「――っ」
その言葉は、おそらくそれだけを聞いたとしたら、意味がわからないだろう。
だが、俺にはわかった。
「ソーヤ、お前まさか……」
「オレのせいで死んだんだよ! そうでなきゃならないんだよ! でなきゃ――」
何もかもを振り切るかのように、ソーヤは怒鳴った。
「でなきゃ、お前を恨んじまうだろうが!」
◇
俺の中には『責められるのが嫌だ』という気持ちが間違いなくあった。しかし、罪悪も間違いなくあった。
『俺があの時こうしていれば』と。
あの日、俺はソーヤから逃げ出した。もし本当にソーヤに責められたら、俺は心が折れていただろう。
だからこそ、前線で戦うことで『レイのために行動している』と自分に言い聞かせ、眼を逸らし続けてきたのだから。
だが、今になって考えるなら。
――俺にとっては、あの選択は間違っていた。
――しかしソーヤにとっては、俺の選択は正しかったのだ。
ソーヤは絶望に呑まれていた。塞ぎ込み、理解することを拒絶し、それでも認めざるを得ないレイの死に打ちのめされた。
その時ソーヤはなにを思ったのか?
怒りか?
悲しみか?
無力感か?
それとも……怨みか。
――それを感じたとして、一体誰に?
少し考えればわかることだった。
俺は自己保身に走り、考えないようにしていたから、その答えに辿り着けなかった。
『もう、行けよ。これ以上居たら――
一年前のあの日に言われたことば。
脳裏に刻みつけられたこの言葉の違和感に、俺は今更気付いた。
ならば――
(ああ……そうだったのか、ソーヤ)
ソーヤはきっと、自分を責めていたのだ。兄を見殺しにした責任は自分に――自分だけにある、と絶えず自己嫌悪に陥っていたのだ。
それはどれだけ辛かったことだろう。どれほどの罪悪に苛まれたことだろう。正気を保っていることすら嫌になるほど、投げ出したくて堪らなかったことだろう。
――どれだけ、責任を
けれど、ソーヤはそれをしなかった……俺を責めることはしなかった。
きっと、責めないように必死だったのだ。
もし俺を責めていたら、それこそソーヤは自己嫌悪に殺されていただろう。
それに気付いた俺は、目の前で崩れ落ちて嗚咽を堪えているソーヤに対し、何も言うことが出来なかった。
俺に慰めを言う資格などない。その罪悪を肩代わりすることもできない。
――俺の選択は間違っていた。
俺が残っていれば。ソーヤと共にお互いを責め合い、傷の舐め合いをしていれば。
俺も、ここまで歪むことはなかっただろう。
――しかし、ソーヤにとっては俺の選択は僥倖だった。
俺を責めてしまえば、ソーヤは自分を許せなくなる。故に、俺が目の前から消えたのはソーヤにとって都合がよかった。
(俺は……無力だ……)
騎士としての在り方を捨て去ろうと決意し、何かにすがるようにソーヤを求め、八つ当たりをして。
なのに、ソーヤはこんなにも苦しんでいたことを知った。ならば、こんな状態のソーヤに何を求められると言うのだろうか。
「もう嫌だ。兄さんが死んで……でも、お前は戦ってるのに――オレは、ずっと止まったままだ」
ソーヤの意識が限界を迎えたのか、そのまま意識を失うように眠りについた。
俺は、ソーヤを呆然と見下ろすことしか出来なかった。
◇
「すみませんでした」
ソーヤを部屋に運び終えた俺に対し、サーシャはそう言って頭を下げた。
「いや……謝るのは俺の方です。結局あいつを傷付けてしまった」
俺は顔を覆い、溜め息を吐いた。
「――ソーヤ君は、この街の路地裏でうずくまっていたんです。見付けたのはゲームが始まってから1ヶ月ほどが経ったころでした」
サーシャはぽつりぽつりと話し始めた。俺が気になっていたことを察したのだろう。
「『こんなに小さい子が一人なんだ』って思って、声を掛けたんです。そうしたら、他にも同じような子供達がたくさん居ることに気付いて――」
「……子供たちを助けようと、この教会を?」
「はい。少しでも、あの子達のために出来ることがあるならと思って」
一人で困っている子供や、ゲームに閉じ込められたことで精神にダメージを負った子供たちを保護しているらしい。
立派なことだ、と素直に思った。
俺は5000コルほどを実体化させ、机の上に置いた。
「迷惑を掛けた詫びと、寄付です」
「え!? 受け取れませんよ、こんな――」
「ソーヤを頼みます」
俺は言葉を遮った。
「今の俺には、ソーヤを救うことができない。あいつのためにできることが何一つない。だからこそ、貴女にお願いします……ソーヤを見捨てないでやってほしい」
俺にそんなことを言う資格があるだろうか、と自問しつつ。
サーシャは何かを堪えるように頷くと、コルを受け取った。
「すみません。こんなことを頼んで」
「いえ……あの、セドリックさん」
躊躇いがちな言葉に、俺は首をかしげた。
「無理をしないでくださいね。ソーヤ君も確かに大変な状態ですが――貴方も、とても辛そうに見えます」
そう囁くように言ってきたサーシャの表情は、とても悲しそうだった。
俺は何故か――心配してくれたというのに――その言葉を聞いて、どうしようもなく苦しくなった。
「……大丈夫です。では」
俺は絞り出すようにそう答え、その場を後にした。
◇
俺はとうとう、目的を見失った。
いや、そもそも俺に目的などあったのだろうか。
あの日――全てが始まったあの日。俺はレイの死を無駄にしたくないという、その一心で走り出した。
そうして、ディアベルが俺を見出してくれた。彼と共に歩めば、きっと俺は何かを為すことができる。そう感じた。
だが、そのディアベルも死んで、それでもがむしゃらに進んで。
自分の在り方に疑問を抱いて、ソーヤにすがって、そのソーヤがどれだけ苦しんでいたかを思い知って。
結局、なにも出来ないのだと思い知らされて。
俺は、また立ち止まってしまった。
「レイが居れば……」
何もかも、そこに端を発している。
レイが死ななければ、俺がこんなにも迷うことは無かっただろう。
ソーヤがあんなにも自分を責めることにはならなかったろう。
レイが――一輝さえいてくれれば。
そう願わずにはいられなかった。
だからこそ俺は、情報をかき集めた。金を払って情報屋から裏付けをとっていき、片っ端から手掛かりになりそうなNPCクエストをクリアしていった。
そして、やっと俺は突き止めたのだ。
一ヶ月後――十二月のクリスマスイベントに出現するフラグmobを討伐すれば。
「蘇生アイテムが手に入る……っ」
俺は自分の身体が震えるのがわかった。
◇
ネットゲームのイベントらしく、設置された巨大なクリスマスツリーや、サンタの衣装を着たNPCを横目に歩き、リンドを筆頭とするギルド《聖竜連合》の面子に合流した。
「来てくれたんだな、セドリック!」
「ああ」
俺はリンド達に協力を持ち掛けられた。彼等の目的も《蘇生アイテム》なのは間違いないだろう。そしておそらく、その対象は――
「よかった。お前が来てくれたなら、きっと勝てる。蘇生アイテムはオレ達のものだ!」
リンドはそう言って考えに耽っていた俺の肩を叩き、顔を覗き込むと、少し気遣うような表情を浮かべた。
「大丈夫か? ずいぶんと疲れた表情をしてるけど」
「そうか……? 別に疲労なんて溜まってないが」
「ならいいが、無理はするなよ。それと――」
俺の身体を包む黒い鎧を指して続けた。
「もう《軍》じゃないのか?」
「……ああ。脱退した」
俺は《軍》を抜けた。もうあそこに居ても何も意味は無いと感じた。
しかし、キバオウには会えなかった。結局、キバオウの本心を聞くことは叶わなかったのだ。
この情報を聞いても、リンドは俺を聖竜連合に誘うことはしなかった。俺の状態を見て、気を使ってくれたのだろうか。
「今の俺が持ってる中では、この鎧が一番性能が高いんだ」
軍の鎧は返却し、今は黒い色調の《ダマスカス》シリーズに装備を変更している。
インゴットを入手し、軽金属の鎧に仕立ててもらったものだ。
俺はその漆黒のプレートをガントレット越しの指で撫で、リンドの眼を見た。
「場所はわかってると聞いたが?」
「『《黒の剣士》がクリスマスボスの出現位置と思われるツリーの情報を買った』という情報を買った《風林火山》の情報を
リンドの作戦を聞き、ふん、と俺は鼻を鳴らした。
「情報屋……《鼠》は相変わらずというわけか。まあ、そこが好感の持てるところでもあるが」
それは言ってしまえば、金さえ払えば嘘をつかないということでもあるのだから。
そういう意味では、奴の情報は信用に値する。
「わかった、問題なさそうだな。リンド、お前たちの準備はできているか?」
「ああ、問題ない!」
その言葉を聞いて俺は頷き、手を差し伸べた。
「必ず手に入れよう」
「ああ……ああっ! 唯一可能性のある蘇生アイテムだ。どんな手段を使ったって手にいれてやるさ!」
その言葉に頷き、握手をする。
「よし、行くぞ!」
リンドの号令を聞きながら、ダマスカスヘルムを装備する。鎧と同じく黒いフルフェイスヘルムの面頬を下ろし、俺は音を出さずに鼻で笑った。
(――どんな手段を使っても、か。同感だ)
何がなんでも、手に入れてやる。
俺は誰にも気付かれないように、精神を尖らせていた。
◇
尾行をしている人間は、自分が尾行されることに不注意な場合が多い。
いつどこで誰に教わったかも忘れたが、少なくとも風林火山の侍どもは当てはまるらしい。
三十五層の《迷いの森》で追跡スキル持ちプレイヤーの後に続きつつ、地図を確認しながら俺は内心そう思った。
マップさえあれば、《迷いの森》もただの不気味な森林地帯だ。
「セドリック」
「なんだ」
リンドの呟きに、俺はヘルムの下から小さく返事をする。
「お前、対人は得意か?」
「俺は攻略組だ。対人勢じゃない」
「真面目な話だ」
俺は肩をすくめたが、リンドは険しい表情を浮かべた。
「俺達の中じゃ、お前は装備もレベルも高い。だから、もし奴等と戦闘になったら前に立ってもらうことになる」
「
「そういう意味じゃない……率直に聞こう。セドリック、お前はプレイヤーを攻撃したことがあるか?」
「
俺は短く答え、
「所属しているパーティの判断に従う。だが、
続けた言葉に、聖竜連合のメンバーが俺を睨んだ。リンドは俺の当て付けるような言葉に驚いた様子を見せたが、振り切るように視線を前に戻した。
「ならいい。別にお前にオレンジになれって言いたい訳じゃない。仮に、の話だ」
「だといいがな――着いたようだぞ」
《迷いの森》の区画を通り過ぎ、ワープを終えると、風林火山のメンバーがキリトに追い付き――何やら言い争いをしていたようだ。
あのサムライ――顔は見覚えがあるが、名前がわからない――とキリトは知り合いのはずだが、何を争っていたのだろうか。アイテムや報酬が欲しいのなら協力(のフリでも)すればいいものを。
俺達を認識し、奴等に動揺が走った。まあ、三十人ほどの集団を見れば――しかもそれが友好的でないのなら――自分達の危機くらいわかるだろう。
「くそッ! くそったれがッ!!」
《風林火山》のバンダナを巻いたサムライが腰のカタナを抜き、キリトに先に行くよう言った。キリトはなにも答えずに背を向け、ワープしていった。
「ここは食い止める、か。オレ達の数を見た上であの気概はすごいな」
「――潰すか」
俺の呟くような言葉に何を感じ取ったのか、リンドが僅かにこちらを見て、
「セドリック……落ち着け」
俺の肩に手を置いた。
「なに?」
「そんなに肩を怒らせるなよ。確かにあのサムライは大きく出たと思うが……あの位で苛つくなんて、お前らしくもない」
なんだと、と言い返そうとした瞬間、
「《聖竜連合》の野郎共!」
バンダナがカタナをこちらに突き付け、叫んだ。
「おめぇらの目的もクリスマスのフラグmobだろ! だが通すわけにゃぁいかねぇ。ここを通りたきゃ、オレ達を倒してからいけ!」
「では――」
「待て待て待て待て! 待てやその騎士! 話は最後まで聞け!」
俺が剣の柄に手を掛けると、サムライは慌てて手を振って制止し、続ける。
「けどな! どう見たってオレ達の方が不利だ! そうだろう!? 数が違いすぎる! んなの卑怯だ!」
お前のギルドメンバーが少ないのは別にオレ達のせいじゃないんだが。
そんなリンドの呟きに、俺は呆れたように頷いた。
「そこでだ! 男らしく
「そんな申し出、受けると思ってるのか!?」
「受けねぇってのか!? それでも男かおめぇら!」
「下らないことを――」
「まあ、待て」
俺は手をかざしてリンドを制した。
「フラグmobを狩りに行くんだ。真っ向からぶつかって消耗するのもよくない。一騎討ちで済ませると言っている。所謂武士道精神、という奴だ。ならば、俺達も騎士道精神を見せるべきじゃないか?」
俺のからかうような言葉に、リンドは顔をしかめた。
「言いたいことはわかるけど、あの男は『クライン』だ。決して
「構わんさ。俺がやる」
「けど、お前は対人は……」
「特別得意じゃないが、できないわけじゃない。レベルも、俺はこの中では一番高いだろうしな」
「……わかった。頼む」
俺の言葉に納得してくれたのか、リンドはギルドメンバーに頷きかけ、俺の背を叩いた。
俺はその激励するかのような素振りに苦笑しつつ、一歩前に出てサムライ――クラインに答えた。
「デュエル、了解した」
「おっしゃぁ! お前ら、手ぇ出すなよ!」
クラインがメニューを操作し、俺の前にウィンドウが表示される。
【Klein から1VS1デュエルを申し込まれました。受諾しますか? YES/NO】
俺はYESを押し、《初撃決着モード》を選択する。剣を抜き、盾を背から外す。
開始までのカウントが始まる。奴との距離は十メートルほど。俺は特に構えることなく静かに佇んでいたが、クラインはカタナを掲げ、
「《風林火山》のクライン!」
名乗りをあげた。その辺りも武士らしい。
カウントが減っていくのを確認しながら、俺はヘルムの面頬を上げ、名乗りに応える。
「所属は無い。セドリック」
それだけを言うと、面頬を下ろした。
俺の名乗りを聞いてクラインは真剣な表情で頷き、
「あの騎士、セドリックって……おい、まさかッ!」
風林火山の剣士が慌てたように声をあげた。
「クラインさん! そいつ《
「ああ!?」
――それは、俺を指す名称だろうか。
「ふっ……黒騎士か」
『黒騎士』とは、単に黒い鎧の騎士という意味ではない。もちろん、ゲームやマンガなどでそう呼ばれる黒色の騎士は多い――現に俺の鎧も黒だ――から、そういう意味も含まれてはいるだろう。
だが――『黒騎士』とは本来、
俺にぴったりじゃないか、と自嘲した。レイも居ない、ディアベルも居ない。目的も見失った俺は、ただの騎士崩れの傭兵に成り下がっている。
自嘲し、笑った。この時の俺はきっと、酷い顔をしていただろう。フルフェイスヘルムを被っていたのは幸いだった。
「相手がなんだろうと関係ねぇ! 名乗った以上、戦うだけだ!」
「その意気や良し、とでも言っておこう。武士よ」
俺はからかうように肩を揺らし、
「「いざ、参る……ッ!」」
カウントが、ゼロになった。
17巻のクラインさんの登場シーンの格好よさは異常。クラインさんの実力ならつむじ風も竜巻に変わるのだ。