ソードアート・オンライン 一人の騎士として   作:ロア

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2話

 フルダイブが完了し、目を開くと、まず最初に目に入ったのは巨大な黒い宮殿だった。

 おそらくあれは黒鉄宮という建物だろう、と推測した。この『はじまりの街』で一番でかい建物だ、と話に聞いていたのと同じだ。

 そして、俺は自分の身体を見下ろした。シンプルなシャツとズボンに、胸部を覆う革製のアーマー。初期装備らしさがぷんぷんのそんな装備に包まれた俺の身体は、入念なキャラメイクのおかげか、現実の自分とほとんど変わらないように感じられる。

 確か、メニュー画面の開き方は――

 

セドリック(cedric)!」

 

 思わず自分のプレイヤーネームを呼ばれ、驚きながらも振りかえる。

 そこには、二人のプレイヤーが立っていた。二人とも青みがかった黒髪だが、身長が違う。長身の方は左手を腰に当てて、もう一人はピースサインをこちらに向けている。

 

「……ソーヤ(soya)レイ(ray)か?」

「おう。相変わらず分かりやすい金色短髪だな。一目でわかったぜ」

 

 ソーヤが友人で、レイがその兄貴だ。いつもゲームで使っている名前と、普段の行動の癖。レイの方はよく腰に手を当てているし、ソーヤはピースサインを多用する。

 

「そっちこそ。顔は違うのにわかるものだな」

「まあ、7年来の付き合いだしな」

「あとお前いつも金髪だよな。なんかこだわりでもあんの?」

「いや、別に。……ともかく、どうするんだ、レイ」

 

 ソーヤの奇妙に整ったしたり顔を笑って流し、レイに視線を移す。

 

「まずは武器を買いに行くぞ。安い店知ってるからついてこいよ」

 

 手招きをし、俺達は後ろについて歩き出す。

 VRゲーム――仮想世界に来るのは慣れているので、この『アバター』を動かすのに不自由はない。どんなゲームでも、VRの身体の動かし方(きほん)は変わらないようだ。

 

「ああ、そうだ。ステータス開いてみろ」

 

 レイがそう言って右手を振った。そうだ、あれだ。あの動作がメニューを呼び出すアクションだ。俺とソーヤが右手の人差し指と中指を揃えて縦に振ると、メニューが呼び出される。

 

「おお、すっげー!」

 

 ソーヤが楽しそうに声をあげる。俺も同じ気持ちだったが、声をあげたりはしなかった。

 左側にメニューの項目が並び、右側に人形の――俺の装備ウィンドウと思われるものが出現する。

 ステータス画面を呼び出すと、更に項目が出てくる。

 

「そこにスキル、って項目があるだろ。それに自分の使いたいものをセットするんだ。ソードアート・オンライン(SAO)ではなによりもスキルが大事だからな。忘れずにセットしとけよ」

 

 俺は一番上に空いている項目に、『片手直剣』を選択する。

 

「レイ、盾はどうなんだ?」

「ああ……装備なら最初からできる。けど、盾もスキルが設定されてるし、セットすればソードスキルも使えるぞ」

 

 盾のソードスキルとは妙なものだ。じわじわ込み上げてくる笑いを堪える。

 

「いいのか? スロットは二つしか無いが」

「レベルあげりゃスロットも増えるから大丈夫だ」

 

 了解、と応え、二つ目に盾のスキルを選択する。

 

「槍……槍――あった、っと」

 

 隣でソーヤが設定したらしく、軽快にウインドウをタップした。

 

「オレは片手棍、と」

 

 レイがそう呟いてウインドウを閉じた。

 

「やっぱり同じだな。みんな好きだねぇ」

「いいじゃんか。槍は現実でも主兵装なんだから」

「まあ、現実でどうこうはともかく、個人の好みだろう」

 

 これらは全部、他のゲームでも共通して俺達の主要武器だった。ソード()スピア()メイス()。三人とも見事に好みが別れているが、大体のゲームでは斬撃・刺突・打撃と与えられるダメージが分かれていたりもするので、案外うまくいくのだ。

 

「着いたぞ。ここがこの『はじまりの街』で一番お徳な安い武器屋だ――っと、先客だな」

 

 レイの言葉に見てみると、ファンタジーの勇者然とした黒髪の男と、変わったデザインのバンダナをした若侍のような二人組が武器を丁度買い終えたところのようだ。

 

「他のプレイヤーだ……」

 

 俺は初めて見るプレイヤーの姿に思わず見入った。キャラメイクができるゲーム特有の、整った顔のアバター。たまにエキセントリックなメイキングをする人もいるにはいるが、VRゲームにおいてはその数は多くない。

 つまり美男二人組は楽しげに話をしながら武器を装備し、バンダナの男は試しに鞘からカトラスを抜いて感激しているように見える。

 そこで、ソーヤが俺の脇腹を小突いた。

 

「おいおい、オレも『プレイヤー』だぞ」

「――ははっ、確かにな」

 

 見た目はともかく、話し方も仕草も現実とほとんど変わらないこいつらは、どうしても『友達』であり、『他のプレイヤー』と認識しにくい。

 ともあれ、その二人組は買い物を終えたらしく、俺達に手振りで「次どうぞ」と示してくる。

 俺は会釈を、ソーヤはありがとう、レイはどうも、と三者三様のアクションに向こうは好印象を抱いたようで、軽く手を振って歩いていった。

 

「よし、そんじゃ武器を買って、フィールドで練習だ」

 

 

 

 

 俺達は街を出てすぐのフィールドに出現する、イノシシ型モンスターの『フレンジーボア』でソードスキルの感覚を覚えると、レイの提案で街から北西部の森へ向かう。

 

「まっすぐ突っ込んでくるイノシシ相手なら余裕だったろ。次はもうちょい実戦的な『モンスター』を相手してみるぞ」

「まかしとけ!」

「ああ、楽しみだ」

 

 あのイノシシは慣れれば余裕で倒せるが、経験値効率が悪い、というのがレイの弁だ。初期ならすぐに上がるだろうが、初期だからこそ、多少苦労してでも強い敵と戦って慣れることが大事だ、と。

 

「まあ、効率で言うならソロが一番なんだがな。パーティを組んだ方がお互いのフォローもできるし、組んどいた方がいいぞ」

「りょーかい」

「それで、この森には何が出るんだ?」

「この森に出てくるのは、ネペントっていうウォーキングウツボカヅラみたいなやつだ」

「ウォーキ……」

 

 相変わらず、適当な英語を組み合わせた言葉を使う。しかしニュアンスでわかりやすいというのが、なんともおかしかった。

 

「切れる葉っぱを備えたツルを振り回してきたり、装備を壊す腐食液を吐いてくる。予備動作はでかいけど、範囲は縦に長いから距離をとるんじゃなくて横に避けろよ」

「ブレス攻撃みたいなもんか」

「ああ。それと、この森を抜けると『ホルンカ』っていう村がある。ホルンカにはお前向きの良いクエストがあるから、戦闘に慣れたら一回街に戻って、回復アイテム(ポーション)とかの道具を買ってから向かおう」

 

 お前向き、と言う際、レイは俺の肩を叩いた。

 ホルンカ、か。言われたことを頭に叩き込む。

 

「そろそろポップしそうだな。抜いとけよ」

 

 レイの言葉に頷き、俺は背中に背負っていたラウンドシールドを左手に持ち、右手で左腰の鞘に納まっているスモールソードを抜いた。

 

「特にセドリックはこれから出てくるネペントのパターン覚えとけよ。後で役に立つからな」

「役に……? まあ、わかった」

 

 その楽しげな笑みからして、悪いことではないだろう。この男は年上なのに冗談が俺より下手で、人を騙そうとするときは必ず悪い顔になる。今回はそれではないので、素直に従っておこうと思った。

 

「で、まだかよそのウツボさんは」

 

 槍を両手で持ち、首の後ろに引っ掛けるように担いだソーヤがそわそわと発言する。

 

「いるぞそこに」

 

 レイの指さした先に、そいつはいた。なるほど、ウツボカヅラじみた植物を凶悪・獰猛にして歩かせれば、あんな感じのモンスターになるだろう。俺は不思議と納得した。

 

「お先!」

 

 ソーヤが駆け寄り、両手で握った槍を肩の辺りまで引き付けると、武器の穂先に光が纏う。ソードスキルだ。

 そのまま加速と共に突き出し、ネペントの凶悪な口の少し下、胴体のど真ん中に突き出す。

 それがヒットすると同時、ヒットポイントバーが一割ほど減る。

 

「ソーヤ、そいつ体かてぇからそこ攻撃してもあんまダメージ出ねぇぞ」

「えっ!? 先に言ってくれよ兄さん!」

「兄さんって呼ぶな!」

 

 この兄弟は仲が良いのに、レイは兄さん呼びは苦手らしい。まあ、兄の居ない俺には関係無い話だが。

 不意打ちをくらったネペントだが、即座に二本のツルを振り回して反撃する。

 それをソーヤは大きく距離をとって避け、槍を構え直す。

 

「じゃあ、弱点どこだよ? 教えてよ」

「茎と胴体のくっついてる場所だ。細くなってんだろ。そこをやれそこを」

「うえ、的ちっちゃ。あそこ突かなきゃなんないの? 槍にきつい世界だなぁ……」

 

 そんな憎まれ口を叩くソーヤに対し、ネペントが膨らむような動作を見せた。

 

「腐食液くるぞ!」

「了解!」

 

 口が開く瞬間を見切り、ソーヤは右に大きく跳んだ。ほぼ同時に液体が吐き出され、地面に触れると煙をあげる。

 

「うわ、食らいたくないな」

「盾で防いでも耐久削られるからな。気ぃつけろよ」

 

 俺の呟きに対するレイの忠告に、頷いて答える。

 

「うおりゃ!」

 

 今度こそ、ともう一度ソードスキルを発動し、ソーヤはネペントに突き込んだ。

 それはしっかりと接合部にヒットし、ネペントの体力をごっそり減らす。

 

「ツルが来るぞ」

 

 俺の呟きに、技後硬直が終わったソーヤは槍を回してツルを弾き、同じ場所にスキルを発動せずに槍を突き入れた。

 それよってヒットポイント(HP)ゲージが空になり、ネペントはポリゴンの欠片となって爆散した。

 やりぃ、とソーヤがこちらにピースしてくる。

 パーティを組んでいた俺とレイにも、割合は少ないが経験値が入る。

 

「なんかずりぃよなぁ。寄生プレイかよ」

「そのかわり、俺達が倒した経験値もお前に入るだろう」

 

 ソーヤの笑いながら言った言葉に、俺は呆れながら応えた。

 

「おっと、数が増えてきたな。各自、ちゃんと自分の花を剪定(せわ)しろよ」

 

 森の茂みから三匹のネペントが顔を出す。俺は真ん中のやつを請け負い、接近して対峙する。

 

「さて、と」

 

 俺は盾を構え、相手の動きを観察する。

 振り回してくるツルは片方ずつ、身体が膨らんだら腐食液を吐いてくる。

 

(――そこまで難しい攻撃はしてこない)

 

 突き出されてくるツルを盾で受け止め、腐食液を誘発させる。隙だらけのそれを大きく避け、右手の剣を大きく引いて構える。

 剣身が青く発光し、それを解放させる。『ホリゾンタル』という横斬りのソードスキルだ。スキルを発動させると、システムアシストによって自動的に身体を動かして攻撃してくれる。その動きに慣れれば、自分でその通りに動いてスキルを後押しし、威力をブーストさせる。これが基本だとレイに教わった。

 

「おおっ!」

 

 短く気合いを入れ、斬り付けた。威力ブーストはレイに言わせれば「まだまだ」だが、こればかりは慣れるしかないだろう。現に、さっきイノシシに向けて斬ったときよりも、少しは威力が上がっている実感がある。

 同じように防ぎ、ホリゾンタルで斬りつけるという流れを三回繰り返すと、ネペントは爆散した。

 

「なるほど。だいたい覚えた」

 

 俺はそう一人ごちると、ファンファーレが鳴り響き、金色のエフェクトが身体を包んだ。レベルアップだ。さっきのイノシシの分が結構貯まっていたようだ。経験値と取得した素材アイテムを見てウインドウを閉じる。

 

「お、やったな」

「おめっとさん。レベルアップしたら、能力に振れるポイントが手に入る。ステータス開いてみろよ。おっと、痛ぇっ」

 

 俺に説明をしていたレイがダメージを負う。衝撃はあっても痛みは無いのだが、ガクンとした衝撃は奇妙に痛みのような錯覚を覚えさせる。

 モンスターは二体だけで、ソーヤとレイがそれぞれを相手している。今のところ余裕があるので、俺はステータス画面を開いてポイントを振ることにする。少し悩んだが、3ポイントを筋力に2、敏捷力に1と振り分ける。筋力重視で振っていくつもりだ。

 ソーヤがもう一体を撃破し、レイも同じタイミングでメイスを叩き付け、ネペントは爆散した。ソーヤも俺と同じようにレベルアップし、ポイントを振ろうとメニューを開く。

 と、そこでレイの背後に新たなネペントがポップしていた。

 

「レイ、後ろだ!」

「オーライ――うわ、やべっ!」

 

 レイは振り向き様にメイスを振るい、慌てた声を出した。

 次の瞬間、レイの辺りから強烈な破裂音と悪臭が漂ってくると同時、大量のネペントが出現する。

 

「うわ、なんだこの臭いは!?」

「くっさ!」

「悪い、実付きだった! ネペントが大量に出てくるぞ!」

「実――? ああ、なんとなくわかった!」

「ゲームではよくある設定だな。仲間を呼び寄せるタイプか」

 

 この悪臭とモンスターの量だし、間違いではないだろう。

 

「どうする? 逃げる?」

「倒せるだけ倒すぞ。オレが引き付けるから、お前らでやってくれ!」

「了解した!」

 

 レイの言葉に、俺はそう応えた。集まってきた20体ほどのネペントのうち、端のやつに剣で斬りつけてこちらへ誘導する。

 こうすれば、一体ずつ引き付けて処理が出来る。レイが耐えてくれれば、だが。

 

「一丁上がり!」

「次!」

 

 既にコツをつかんできた俺とソーヤは良いペースで倒していく。が、俺の視界左上に表示されている『ray』のHPゲージが赤く染まった。

 

「レイ! 大丈夫か!?」

「あー、無理っぽい。出来るだけ耐えとくから、急いで減らしてくれ!」

 

 俺は先程よりもキレが増した『ホリゾンタル』で、ネペントをもう一体撃破する。

 

「セドリック! あと何体!?」

「こっちは二体! レイのところに六体いる!」

「あっちゃぁ、こりゃやられるわ。デスペナは経験値の数割ロストとアイテムドロップだったかな」

 

 レイの思い出すような、そんな言葉が聞こえてくる。

 

「『死に戻り』したらはじまりの街に転送される。オレは戻ったら街で道具とかの下調べしとくから、オレの落とした素材拾って、街まで戻ってきてくれよ」

「りょーかい。困るよ兄さん、そんなミスしてぽんぽん死んじゃったらさ」

「うっせぇ、面目ねぇ」

 

 俺が二体のネペントを倒している間に、レイのHPゲージは更に減っている。確かに、これは間に合わない。HPを回復させるポーションは効果が出るのに時間が掛かるので、ローテーションしながら回復するのが基本だ。だが俺達は目の前の相手に手一杯なので、今から時間を稼ぐのは無理だ。

 デスペナは痛いだろうが、あとで協力して許してもらうとしよう。まだ序盤だし、経験値ならいくらでも取り戻せる。

 

「ネペントはあと五体だ! お前らでも充分狩れるから、頼んだぞ! 俺の素材ネコババすんなよ」

「そんなセコいことはしないさ。ちゃんと渡す」

 

 俺が溜め息混じりに言った言葉に、レイは「ならいいけどな」と呟き、真横の死角から腐食液を掛けられた。

 気味が悪そうに顔を歪めたレイの身体をツルが貫き、HPが0になった。

 モンスターと同じように、しかし数割増しで大きなポリゴンエフェクトと爆砕音を残し、レイのアバターは消えた。いくつかのアイテムが落下した音も聞こえる。

 

「セドリック、タゲ任せたよ!」

「了解だ!」

 

 俺が前に出て息を吸い込み、吼える。『威嚇(ハウル)』という名前の、モンスターの注意を引くスキルだ。

 五体は一斉に俺の方を向くが、その横に回り込んだソーヤがソードスキルによって二匹同時に貫いた。槍を引き抜き、離脱。軽装の機動力を生かし、俺の後ろを回るようにして移動すると、反対側からも同じように槍で攻撃する。

 それを繰り返してネペントのダメージを稼ぎ、全体的に半分以上減ったら俺も攻勢に出る。左右に分かれて両端のネペントから一体ずつ同時に処理していき、最後の一匹はソーヤに譲ってやる。

 

「おしおし。中々いいね」

「ああ。槍、使いこなせてるじゃないか」

「やっぱ纏めて貫けるのが槍の良いトコだよねぇ」

 

 手の中でくるくる回し、槍を掲げてソーヤは笑った。

 俺も笑い返すと、剣と槍を打ち鳴らし、お互いの健闘を讃えた。

 

「あ、素材拾っとかないと。うわ、兄さん素材ドロップ少ないなぁ」

 

 確かに、落ちていた量は、俺が取得した素材アイテムの半分近くしか無い。

 

持ち物全てを落とす(全ロス)というわけでもないかもしれないが」

「どうだろ? 兄さん、幸運値(ゲームラック)はどんなゲームでも低いしなぁ」

「ベータテストに当選したのに、か?」

「それはリアルラックだから」

「それもそうか」

 

 で、これからどうする、と聞いてくる。

 

「もっと狩ってレベル上げて、兄さんに自慢してやる?」

「それも悪くないだろうが、もう五時半になるぞ。一度街に戻ろう」

「えっ!? もうそんな時間なんだ。早いなぁ……」

 

 時間を指摘した俺だが、あまりにも早く時間が過ぎたことに驚いている。体感では二時間そこらだと思っていたのだが、もう四時間以上経っている。

 俺は装備している『スモールソード』の表面をタップし、武器の情報を見てみる。

 

「耐久度も半分切っているしな。街まで戻るとしよう」

「りょーかいです」

 

 俺は頷きを返し、森を抜けると、街までの街道を歩き出す。

 

「しっかし、昼夜だけじゃなく、夕日まで再現されてるんだなぁ」

「ああ。見事なものだな」

 

 俺は鮮やかなオレンジを照らす夕陽に目を向け、予想以上に眩しい光に手で目許を覆う。

 

「オープンワールド特有の時間の変化は綺麗だよな! このまま月が出るまで眺めていく?」

「よしてくれ。夜になる前に街に戻りたい――」

 

 俺が続きをしゃべる前に、リンゴーンという、鐘の音のようなものが聞こえてきた。

 

「うわ、うるっさぁ……!」

「なんだ、この鐘は?」

「時間を知らせる鐘……じゃないっぽい? 今、中途半端な五時半だし」

 

 首をかしげ、肩をすくめたソーヤの顔を見て、俺も頷く。

 時間を告げるなら一時間置きに鳴ってもいいはずだ――と俺が言ったと同時、俺達は青い光に包まれた。

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