雪国の先導者達   作:黄雀

12 / 44
今回は原作のキャラクターも名前だけですが、初登場しております。


覚醒するユキネ

 決戦の日曜日、じゃないけど伊達北高校との交流戦を終えた翌日。わたし達はまた、いつもの梅乃台での生活に戻ってきていた。

「おはよ〜、トウジ」

「うーっす」

 トウジは相変わらず無愛想だし。

「ミクちゃん、放課後ヴァンガードやろう?」

「部活には入らないって。昨日わたしが勝ったんだから」

「ヴァンガード部に入ってじゃなくて、ヴァンガードやろって誘っただけじゃん」

「どっちにしろやらない」

 ミクちゃんは相変わらず、ヴァンガード部に入るのを拒み続けている。

 ただ1つ変わったものといえば、わたしのデッキ。あんまり高いカードは買えなかったけど、テンデイズで伊達北のハルミさんにアドバイスをもらいながら強化したんだ。

 本当はミクちゃんにも見てもらいたかったんだけど、昨日とは違って、一切ヴァンガードに関わろうとはしなかった。もしかしたら、探していた撃退者使いの人が見つかったのかもしれない。

「なあユキネ、今日の部活どうする?」

 そんなことを考えていると、相変わらず無愛想なトウジが眼鏡を光らせ話しかけてきた。

「どうするって、放課後やるんでしょ?え、やらないの?」

「いや、俺はどっちでもいいけど。天原先輩、来ないんだろ?」

「あ、そっか」

 そういえばミコねえ、今日部活来ないってメール入ってたな。

「じゃ、休みにしちゃおっか」

「そんないい加減な……」

「いいじゃん、わたしとトウジしかいないんだし。じゃあ久しぶりにわたしの家来る?」

「はいはい。ま、暇だし行くよ」

「ミクちゃんも来る?」

「いかない」

 もう、つれないなあ。

 

 

 

 そんなわけで、放課後はまっすぐ家に帰ってきた。学校から田んぼと空き家ばかりの道を進んだ先に、わたしの家はある。集落にあるだいたいの道がそんなだけど。

「おばあちゃんただいまー」

「おじゃまします」

 檜屋の表札を横目に、今どき珍しいであろう玄関の引き戸を開けると、奥からおばあちゃんが迎えてくれる。

「あれ、お帰りユキネちゃん。トウジくんもいらっしゃい、ゆっくりしてってねぇ」

「すいません、突然」

 なぜだか分からないけれど、トウジはわたし以外に対しては愛想がいい。特におばあちゃんに対する態度なんかもう別人だ。

「ユキネちゃん、今日は早いんだねぇ」

「ミコねえが来ないって言うから部活休みにしちゃった」

「そうかいそうかい。後で部屋にお茶とお漬物もってくねぇ」

 おばあちゃんがにこにことしながら、お茶の用意をしに下がっていっていく。

「さ、ぼーっとしてないでトウジも上がって。新しくしたデッキ、早く試したいんだよね」

「お、おう……」

「?」

 

 

 

 部屋にあがるとヴァンガード関連雑誌や、ユーロリーグの有名ファイターのポスターがわたしを迎えてくれる。

「はーっ、やっぱりハイメ・アルカラスかっこいい……」

「…………」

「なに?何か文句が?」

「なんでもねえよ。さっさと新しいデッキとやらを見せてくれ」

 トウジがカバンをそこらに投げてデッキを取り出し、こたつのテーブルに置く。一応わたしの部屋なんだけど、ちょっとは遠慮とかないかね。この男は。

「はいはい、すぐ見せますよー」

 ま、いいや。わたしもデッキを取り出す。じゃんけんも雑に済ませ、こたつに潜り込む。

「それじゃ」

「ああ」

 

『スタンドアップ・ヴァンガード!』

 

「____あら、お邪魔だったかしら」

 というところでおばあちゃんがお茶とお漬物を持って部屋へと入ってきた。

「いえ、ちょうど始まったところです。お茶ありがとうございます」

 トウジがお盆を受け取り、テーブルの脇に置く。

「あとユキネちゃん、これ。また貰っておいたから」

「あ、ありがとう」

 こっちはわたしが受け取る。ヴァンガードの専門雑誌だ。集落唯一の美容院で、待合室用の雑誌が古くなると常連さんにあげているらしち。おかげで何ヶ月か落ちだけど、ただでヴァンガード雑誌が読める。もともと田舎の雑誌なんてちょっと古いんだ。何ヶ月かなんて差気にならない。

「じゃあオババは退散しますから、あとは若い二人でごゆっくり」

 意味もなく意味深なことを言っておばあちゃんが部屋から出ていく。

「じゃあ、仕切りなおしまして____」

 

『スタンドアップ・ヴァンガード!』

 

「春待ちの乙女オズ!」

「なんだ、いままで通りじゃねえか。士官候補生アンドレイ」

「ここからが全然違うんだから。早咲きの乙女ピアにライド!オズを移動」

 デッキの半分以上を違うカードに変えたんだ。ここから違う展開を見せていく。

 

 ________________________

 

【桐澤トウジ:ダメージ4/手札4】

【御堂ユキネ:ダメージ4/手札4】

 

「この地に芽吹け吹雪にも負けぬ花、その名も希望。ストライドジェネレーション!聖樹竜マルチビタミン・ドラゴン!」

 新しいGユニットにストライドする。

「アーシャのスキル。仮初の騎士メアホープを分身する。そしてマルチビタミン・ドラゴンのスキル発動!」

 マルチビタミンのスキル。それはリアガードがコールされた時、そのユニットと同じ名前のユニットを3枚まで選びパワー+5000するというもの。

「メアホープ1体にパワー+5000。次はメイデン・オブ・フラワースクリーンをコール、スキル発動。ドロップからメアホープを山札に戻し、このターン中このユニットを仮初めの騎士メアホープとしても扱うよ」

「あ、ああ……」

「ん?どうしたのトウジ」

 トウジはなぜかぼーっとしているようだった。

「いや、お前だいぶ変わったなと思って」

「そうかな?ハルミさんにデッキを見てもらったからかも」

「それもあるんだろうけど……。まあ、いい。続けてくれ」

 トウジは納得してなかったみたいだけれど、とにかく今は目の前のファイトだ。

「そしたらオズもスキルを発動。ソウルに入り、カウンターブラストを払ってデッキからメアホープをコール」

 これで後列が全てメアホープで埋まった。

「この時、マルチビタミンのスキルで2体のメアホープとフラワースクリーンにパワー+5000」

 ミクちゃんもハルミさんも、こうやってスキルを繋いでいた。ただなんとなく遊んでいるだけじゃ気づけない楽しさがここにある気がする。

「フラワースクリーンでヴァンガードをアタック!パワーは14000」

「おいおい、ブーストし忘れか?ローデでインターセプト」

 違う。ブーストは後でつけるんだ。

「メアホープでブーストしたグラジオラスでヴァンガードをアタック!そしてグラジオラスのスキル発動!」

 カウンターブラストを1枚払い、リアガードを1枚選択することで、同名のユニットをコールすることができるスキル。

「さっきスキルのコストで戻したメアホープをフラワースクリーンに上書きコール!」

 アタックが終わったユニットに上書きすることで、アタック回数を増やす。こんな使い方、ミクちゃんに見せてもらうまで思いつきもしなかった。

「さらにマルチビタミンのスキル発動!3体のメアホープにパワー+5000」

 後列の3体のパワーがまた上がる。

「ブーストしているメアホープのパワーは22000。グラジオラスと合わせて31000でアタックだよ」

「すげえ……別人みたいだ。ノーガード、ダメージチェック。来たぜ、クリティカルトリガー。パワーをヴァンガードに」

「まだだよ……絶対に押しきって見せる!メアホープのブースト、マルチビタミンでヴァンガードをアタック!パワー38000」

「戦場の歌姫ファイドラで完全ガードだ」

「トリプルドライブ!」

 もっと強く……もっと強くならなきゃ……

 ミクちゃんさえ説得できれば日本サーキットはエントリーできるんだから。部長のわたしがもっと頑張らないと。

「1枚目、メイデンオブパッションフラワー。2枚目、ダンガンマロン…ゲット・クリティカルトリガー!全ての効果をメアホープへ。3枚目、ウーントタナップ、ゲット・ドロートリガー。これもパワーはメアホープへ」

 これで前列のパワーは17000、後列のメアホープもパワー17000。合わせて34000だ。これで決める!

「メアホープブースト、メアホープでヴァンガードをアタック!パワー34000のクリティカル2だよ」

「カロリーナとアレキボスでガード!」

 止め切られた……。やっぱりまだまだなんだな、わたし。

「あーあ、ダメだったか。ターンエンド」

「ダメだったかってお前、俺もう手札ないんだが。スタンド&ドロー……っと、やっぱりストライドすらできねえ」

「えっ?あ、本当だ……」

 そのあとはもう、あっさり返ってきたターンにこちらはきっちり超越して勝負を決めるだけだった。

 

 

 

「お前、突然強くなりすぎだろ。もう全く勝てる気がしねえよ」

「えー、そうかな」

 自分ではまだまだだなって思ってたけど。言われて悪い気はしないや。

 トウジはおばあちゃんの煎れてくれたお茶を飲みつつ、さっきわたしが受け取った数ヶ月落ちのヴァンガード雑誌を見はじめた。

「VF甲子園の予選特集かー」

 トウジがペラペラめくる雑誌を反対側からのぞき見る。

「優勝候補の学校は予選から特集されてるんだねぇ」

 特に数年前から特別に2校の代表選出をするようになった関東第3ブロックは特集校が3つもある大激戦区だ。

「今年の優勝校は……これか」

 トウジが手を止めたのは、名門中の名門。東京・福原高校だ。全国大会覇者のコーチが2人もついており、学校をあげてヴァンガードファイターを養成しているだけあって選手層が厚い。だから、VF甲子園が7人1チーム制になってからは無敵の高校だ。

「冬の日本サーキットからは1年生にもレギュラー入りの可能性あり、か」

 福原の支配人こと鳴海コーチのインタビューで、有望な1年生部員も紹介されている。

「わたし達と同じ1年生で王者福原のレギュラー候補なんて、やっぱり世の中にはすごい人がいるんだねー」

 ボリボリとお漬物をかじりながら相づちをうつ。中学時代はよくこうやってトウジと無為に過ごしてたなー。

「ん?おい、ユキネ。これ……」

 トウジが指さす先を見る。写真付きで小さく出ている期待の1年生の1人だ。

「え、この子。名前が……歌星ミクって」

 見た目がだいぶ違った。写真のその子は赤く染めた髪に金色のメッシュが入ったものすごく派手な外見をしている。

「ミクちゃん……なのかな……?」

 

 To be continued……

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。