雪国の先導者達   作:黄雀

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ようやくユキネが主人公しはじめた、と自分では思っておりますがいかがでしょうか。


終わりの歌

 両サイドに収穫の終わった田んぼを見ながら、だいぶ低くなってきた太陽に向かって二人して歩く。

「まさか、本当に着いて来るとは思わなかったわ」

 ミクちゃんが3歩先を歩きながら、低めのトーンで呟いた。

「そうかな?東京の人ってあんまり友達の家に行ったりしないの?」

 後ろ姿を眺めているとふいにそんなことを思ったりする。話している時はわたしとそんなに変わらない、ヴァンガードが好きな女子高生だなって印象だけれども、じっと姿を見つめているとやっぱりミクちゃんは初めて会ったときのキラキラした都会女子のままだ。

「全く行かないってこともないけど、外に出かけることの方が多いかしら」

「そっかー。出かけるとこいっぱいあるんだもんねー」

 梅乃台には放課後寄れるところなんてどこにもないから。そういうの憧れるなぁ。

「修学旅行、東京だといいなあ。わたし1回行ってみたいんだよね」

「ええ?東京かもしれないの?わたし何を楽しみに行けばいいのよ……」

「あはは、そうだよね。ミクちゃんにとってはよく知ったところなんだもんね」

 他愛もない話。こうやって話をしている分にはミクちゃんは日の打ちどころがない美少女だ。ヴァンガードファイターとしてのミクちゃんのような威圧感はない。

「さ、ついたわよ」

「あ、ここがミクちゃんの家?」

「うん」

 うちよりは新しいけど、古めの木造家屋だ。新築だとは思ってなかったから、特別驚きもない。

「あがって。どうせ誰もいないから」

 ミクちゃんがさっと鍵を開け、中へ招き入れてくれる。

「はーい、おじゃましまーす」

 中に入ると靴箱が目に入ってくる。

 ミクちゃんのものであろう靴と、大人の男性のものであろう靴の大きく2種類。たぶんお父さんじゃなくて、親戚の叔父さんか何かだな。

「わたしの部屋、先行ってて。2階の……まあ見れば分かるから」

「はーい」

 梅乃台に限らず、限界集落と言われるような超がつく田舎では家庭環境が複雑な子は珍しくない。わたしだって一緒に暮らしてるのはおばあちゃんだけだ。

 その中でも転校生となるとさらに複雑なんだろう。よくある「親の転勤」で引越してきたなんてはずがないのだから。梅乃台に職場なんかあるわけがない。

「えっと、ミクちゃんの部屋はー?」

 言われた通り2階に上がり、廊下を見回す。

「あ、あった」

 ミクの部屋とプレートが下げてある。

「おじゃましまーす」

 わりとためらいなく入ると、その部屋はなかなかに衝撃的な光景だった。

 部屋には展示品のように綺麗に並べられたギターが5本。わたし区別つかないからベースかもしれないけど。

 机に散乱しているのは楽譜だ。読めなくたって楽譜だということはわかる。あと、わたしと一緒で、この机で勉強してないのもよくわかる。

「ヴァンガード関連のもの、ないなー」

 あと目立つのは謎の黒いボックスだけど、これも音楽関係のものだろう。つまみの一つにボリュームって英語で書いてあるし。

「ミクちゃんのデッキ、見えるとこにあったらこっそり研究しようと思ってたんだけど」

 こればっかりはしかたないか。

 

「おまたせ。はい、コーヒー。インスタントだけど」

 勝手に部屋をきょろきょろ見回していると、ちょうどミクちゃんが追いついて部屋に入ってきた。

「コー……ヒー……」

「え?なによ、コーヒー苦手だった?」

「いや、人の家にお邪魔して日本茶以外の飲み物がでてきたのはじめてだったから……」

「なんの驚きなのよ、それ」

 ミクちゃんは自分の分のコーヒーを啜りながらベッドに腰掛けた。わぁ、ブラックで飲んでる。わたしは砂糖もミルクもだばーっするけど。

「悪いわね、なんもない部屋で」

「ううん、勝手についてきたんだもんわたし。それに、すごいね、ギター?がたくさん」

 ベースと区別がつかないのでどうしても疑問形になってしまう。

「ああこれ。自己紹介の時言わなかった?東京では軽音楽部だったって」

「ああ!そう言えば言ってたね!軽音楽部の人ってみんなこんなにたくさんギターもってるものなんだ。そんなシャレた部活梅乃台にはないから知らなかったよ」

 よかった、ギターであってたみたい。

「みんなってわけじゃないわよ。わたしは一応、プロを目指してるから……」

「そうなの!?ヴァンガードの方もプロ級なのにすごいね」

「別に。それにヴァンガードはもうやめたの。……さっさとファイト始めましょう。負けたらヴァンガード部にでもなんでも入ってあげるわ、負けないから関係ないけど」

 ミクちゃんは何かを誤魔化すように、部屋の脇においてあった折りたたみ式のテーブルを広げ始めた。

「前みたいに簡単にはいかないよ?」

「前みたいに手加減はしないわよ」

 言ってくれるね、ミクちゃん。あんなのが手加減だなんてそんなはず…………たぶん、ない、はず。

「本当は引退試合はあれのままにしておきたかったんだけど」

 誰にともなく呟くと、机の引き出しからデッキを出す。

「さくっと終わらせてあげる。先攻でも後攻でも好きな方をとりなさい」

 ファーストヴァンガードをパシッとテーブルに置き、戦闘モードのミクちゃんが現れる。

「じゃあ、今回は先攻もらおうかな」

 その気迫に負けないように、わたしもファーストヴァンガードを置いた。山札をシャッフルし、互いにカット。真剣勝負ならではの緊張感が漂う。

 手札の引き直しまでを終えて、一瞬の静寂の後に互いのファーストヴァンガードに手を伸ばす。

「行くよ、リベンジマッチ!」

「何度来ても返り討ちよ」

 

『スタンドアップ・ヴァンガード!』

 

「春待ちの乙女オズ!」

「大望の宝石騎士ティファニー!」

 

「わたしの先攻、スタンド&ドロー。開墾の戦乙女パドミニにライド!オズを移動してターンエンド」

 オズを先駆スキルでヴァンガードの後ろに移動しておく。いよいよ始まった。あとはもう全力をぶつけ切るだけだ。

 

【御堂ユキネ:ダメージ0/手札5】

【歌星ミク:ダメージ0/手札5】

 

「スタンド&ドロー。必中の宝石騎士シェリーにライド!ティファニーは移動」

 わたしのオズと同じように、ティファニーもヴァンガードの真後ろへと先駆で移動していく。

「さらにシェリーを手札からコール。そのままヴァンガードにアタック」

 リアガードのシェリーがアタックしてくる。パワーは7000。

 ここでダメージを受けていてはミクちゃんの切り札サンクチュアリガード・レガリアの巨大パワーを受けきれない。

「ダンガンマロンでガード!」

 ガード値的には少しもったいないけどケチってられない。

「ふーん、クリティカルトリガー増やしたのね」

「その方が扱いやすいって教えてもらったんだ」

 ハルミさんに。

「ま、その方がわたしにとっても倒しやすくて助かるわ。ティファニーのブースト、シェリーでヴァンガードをアタック!」

「そっちはノーガード」

「ドライブチェック、そーどみー。トリガーなし」

「ダメージチェック、こっちもトリガーないよ」

 メイデン・オブ・フラワーピストルがダメージゾーンへ送られる。ここまでは悪くないはず。

「ターンエンド」

 

【歌星ミク:ダメージ0/手札5】

【御堂ユキネ:ダメージ1/手札4】

 

「今度はこっちから攻めていくよ。スタンド&ドロー。ライド!仮初めの騎士メアドリーム!」

 新たにデッキに加わった新戦力。ジェネレーションブレイクのスキルをもっているユニットだ。

「さらに仮初めの騎士メアホープをコール。メアホープでヴァンガードにアタック!パワー7000」

 早めにダメージを詰めて早めに決着をつける。レガリア相手に長期戦なんて無理だよ。

「ノーガード、ダメージチェック。……トリガーはないわ」

 ダメージにはスターライト・ヴァイオリニストが落ちた。たしかあれはグレード2のユニットを呼んでくるスキルがあったんだっけ。

「オズのブーストしたメアドリームでもヴァンガードをアタック」

「それも受けるわ。ノーガード」

 よし、2ダメージ与えることに成功した!

「ドライブチェック、フェアリーライトドラゴン。ゲット・ヒールトリガー!」

 ダメージのフラワーピストルを回復する。ここまでは絶好調だ。

「ダメージチェック、ゲット・クリティカルトリガー。パワーをヴァンガードへ」

 炎玉の宝石騎士ラシェルがダメージへ置かれる。クリティカルトリガーだけど、もうこちらのアタックは終わっているからパワーの増加は関係がない。

「ターンエンド。このまま一気にいかせてもらうよ」

 気持ちでだけは絶対に負けない。それがわたしのヴァンガード。

 

【御堂ユキネ:ダメージ0/手札4】

【歌星ミク:ダメージ2/手札5】

 

「悪くない序盤の動きだけど、相手のデッキを考えてやることね。スタンド&ドロー、ライド!宝石騎士そーどみー」

 ミクちゃんの第2ターン。ミクちゃんはここからの動きが速い。

「そーどみーをコール。スキル発動」

 そーどみーはコールされた時、宝石騎士を1枚カウンターブラストすることで、デッキからグレード1以下の宝石騎士をスペリオルコールするユニットだ。

「カウンターブラスト、そしてシェリーを後ろにコール」

 これでミクちゃんの盤面には4体ものリアガードが並んだことになる。

「まずはシェリーでヴァンガードをアタック。シェリーは他に宝石騎士のユニットが3体以上いる場合、アタック時にパワー+3000」

 もとのパワー7000と合わせてパワー10000。メアドリームの9000に届く。

「フェアリーライトドラゴンでガード!」

「次!ティファニーのブースト、そーどみーでヴァンガードをアタック」

「無理だね、ノーガード」

 無理なく、無駄なく、的確に攻めてくる。やっぱりミクちゃんはすごいよ。

「ドライブチェック、ゲット・クリティカルトリガー!クリティカルをヴァンガードのそーどみー、パワーをリアガードのそーどみーへ」

「ダメージ2枚チェック。1枚目、2枚目、ゲット・ドロートリガー!パワーをヴァンガードに、1枚ドロー」

 あっという間に巻き返されそうになっている。次のアタックのガードは……したら攻め手が止まっちゃう。

「シェリーのブースト、そーどみーでヴァンガードをアタック!パワー21000」

「それもノーガード。ダメージチェック……トリガーはない」

 グレード1の早咲きの乙女ピアがダメージへ。

「ふーん。だいぶデッキ変えたのね」

 ミクちゃんはそのダメージを見て少し興味を持ったようだった。

「うん。どうかな?」

「悪くないけど……遅いわね」

「遅い?」

「ま、そのうち分かるわ。ターンエンド」

 今のはアドバイスしてくれたのかな……?

 

【歌星ミク:ダメージ2(表1)/手札5】

【御堂ユキネ:ダメージ3/手札4】

 

「スタンド&ドロー。ライド!ラナンキュラスの花乙女アーシャ!」

 今回も無事に相棒であるアーシャにライドすることができた。

「ねえ、ミクちゃん」

「……なに?」

「こんなに強くて、そんなにイキイキとファイトしてるのにヴァンガードやめちゃうの?福原高校のレギュラーも取れそうだったくらいの腕なんでしょう?」

 話しながらも手は止めない。止めたら怒られそうだから。

 メアホープを後列に下げる。

「なんでユキネがそんなこと知ってるのよ……」

「雑誌で見たの。ミクちゃんのことが紹介されてた」

 下げたメアホープの前にメイデン・オブ・グラジオラスをコールする。

「はぁ……田舎なら誰にも知られないと思って来たのに。結局ダメなのね」

「有名人になるのが嫌だったの?あ、アーシャでヴァンガードをアタック」

 会話しながらのプレイっていうのはどうかと思ったけれど、ミクちゃんなら難なくこなすはずだ。

「ノーガード。そうね、わたしだけ先に有名になるわけにはいかないから」

 これは……部に入るのはいいけど、日本サーキットはダメっていうのに通じるのかもしれない。

「ツインドライブ……ゲット・クリティカルトリガー。クリティカルをヴァンガード、パワーをグラジオラスへ。先に有名になるわけにはいかないって、どういうこと?」

「そのままの意味よ。ダメージチェック。ゲット・ドロートリガー。バンドのメンバーみんなでプロを目指してるの。いつか売れてやろうって。まあ、現実には難しいんだろうけど。あ、パワーはヴァンガードね」

 めくったまぁるがるのカードでヴァンガードをトントンと叩き、ダメージゾーンへと移す。

「それで、バンドの方を優先してヴァンガードをやめようと?グラジオラスでヴァンガードをアタック」

「そうよ。バンドもヴァンガードも大事だけど、バンドはみんなのもので、ヴァンガードはわたし1人のものだから。ラシェルでガード」

 福原高校の1年生レギュラーがどれほどすごいことなのか、どれほど騒がれるのか、正直わたしには分かってない。バンドのことなんてもっと分からない。けど____

「でもミクちゃんっ____」

「お喋りはおしまいよ、スタンド&ドロー。雄叫びと断末魔で綴れ、我らがガンパレードマーチ!ライド!探索者シングセイバー・ドラゴン!」

 ミクちゃん、ヴァンガードは1人だけのものじゃないよ。伝えなきゃ……。でも弱いファイターのままのわたしじゃきっとミクちゃんの心には届かないから、まずはここを凌ぎ切る……!

 

【御堂ユキネ:ダメージ3/手札5】

【歌星ミク:ダメージ4(表3)/手札5】

 

 To be continued……

 

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