雪国の先導者達   作:黄雀

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遅くなりましたが、2章開始です。


日本サーキット予選へ
チーム梅乃台、始動


 新潟県十日町市梅乃台。その中央部にある集落唯一の高校、それがわたし達の通う県立梅乃台高校だ。少子高齢化が極度に進み、過疎も進み、限界集落と呼ばれるような辺境の学校では、どの部活動も「人数が足りた。足りたから大会に出られる」といった始末で、自分たちが勝てるとは誰も思っていない、勝とうとも思わない。そんな部活ばかりだった。

 でも、それじゃダメだ。おばあちゃんはいつも言っていた。雪の下でもしっかり根を張り、いつの日か花を咲かせる野草のように、田舎に生まれても希望をもって生きろって。

 そしてわたしには幸運にも、一緒に上を目指す仲間がいる。

「はい、じゃあ部会をはじめま~す」

 みんなを優しく包み込むように、いつもまとめてくれる上級生。ミコねえこと天原ミコト先輩。

「こういうのって部長が司会するもんじゃないのか?」

 いつも皮肉ばかりの意地悪メガネ、桐澤トウジ。

「いいからさっさと終わらせて早くファイトしましょ」

 絶対的エース、歌星ミクちゃん。

「それもそうだね、じゃあユキネちゃんお願い」

「はーい。今日は部会、というより作戦会議なんだけども。今月末にせまった日本サーキットの予選をどう突破するかについて話合おうと思うの」

「どう突破するかって、練習あるのみじゃねえのか?」

 トウジが頬杖をつきながらヤジを入れてくる。まったく偉そうなんだから。

「練習ももちろん大事だけれども。作戦を考えないといけない部分があるんだよ。ミコねえ説明してあげて」

「結局ユキネなんもしてねえな」

「うるさいなトウジは、さっきから」

「えー、こほん。説明するね。まずルールなんだけれどね」

 

 

 日本サーキットでは、⒑月末に行われる各地方の予選突破チームだけが冬休みに行われる本大会に出場可能である。予選通過基準は梅乃台高校の所属する北陸第1ブロックでは上位5チーム。予選・本大会ともにチーム戦でシングルファイト、タッグファイト、シングルファイトの順に行われ、先に2勝したチームの勝利となる。

 

「____っていうルールになっているの」

「ミコねえの言った通りです。でね、タッグを誰と誰がやるか決めちゃった方がいいと思うんだ。タッグファイトって独自の練習とか必要そうだし」

 それは伊達北高校との交流戦で感じたことだった。チームとして戦うからにはタッグを極めた人間が必要になってくる。

「なるほど、ユキネにしては考えたわね」

 ミクちゃんも褒め……てくれてるのかな、これは。

「それで?誰と誰が組むべきだと?」

「ミクちゃん以外の誰かと誰か!」

「やっぱり考えてなかったのね」

「考えたって!とにかくシングルでミクちゃんが1勝する作戦だよ!」

 人まかせとも言うけど。

「……はぁ。なんでこんなんが部長なんだか」

「と、とにかくいろいろ試してみようよ!」

 ちょうど4人になったからタッグの練習もできる。

「じゃあとりあえずペアは____」

「ユキネちゃんとトウジくんがペアで~」

 相変わらずマイペースなミコねえがさっと脇から入ってくる。

「わたしとトウジ?」

「そう。戦力のバランス的に」

 なぜかミコねえはニコニコだ。

「じゃあミクちゃん、よろしくね~」

 もうなんか決定みたいな雰囲気だしてるし。まあ、いいけど。お試しなんだし。

 

 

 

「それじゃー、みんな始めるよー」

「は~い」

 …………。目の前のミコねえしか返事をしてくれないけど、まあみんな準備できたでしょう。

「せーのっ」

 

『スタンドアップ・ヴァンガード!』

 

「春待ちの乙女オズ!」

「神宮衛士ヒハキ!」

「士官候補生アンドレイ」

「大望の宝石騎士ティファニー!」

 

 さて、それじゃあミコねえには悪いけどガンガン攻めさせてもらいますか。トウジvsミクちゃんでトウジが優勢になるのを期待するわけにもいかないし。

 

 ターン11

【天原ミコト&歌星ミク:ダメージ6(表4)/手札6&6】

【桐澤トウジ&御堂ユキネ:ダメージ7(表6)/手札4&5】

 

 トウジ、ミコねえがグレード3までライドし、わたしのターンが回ってくる。

「スタンド&ドロー!ラナンキュラスの花乙女アーシャにライド!」

 けっこうピンチだ。というのも、ミコねえの動きが思ったほど悪くない。ミクちゃんが合わせているのかもしれないけれど、とにかく一気に攻められるほどの隙がない。

「パドミニを切ってストライドする。この地に芽吹け吹雪にも負けぬ花、その名も希望。ストライドジェネレーション!春色の花乙姫アルボレア!」

 いよいよこのターンからストライドができる。

「アーシャのスキルでメアドリームを分身!」

 ここでできるだけ攻撃をしておかないとまずい。次はミクちゃんのターンだ。サンクチュアリガード・レガリアで流れをもっていかれる。

「メアドリームでクロイカヅチをアタック」

「アサルトダイブイーグルでガード」

「続いてアルボレアでヴァンガード!」

「ノーガード♪」

 おかしい。ミコねえのプレイにまったく迷いがない。ガードなんてわたしやトウジでもけっこう迷うところなのに。それも適当にやってる風でもない。

 トリプルドライブをしながら、ミコねえの変化に思いを巡らす。

「えっと、アルボレアのアタックがヒットしたからスキル発動。早咲きの乙女ピアを分身。ピアのブーストでメアドリームのアタック!」

「それもノーガード。ダメージチェック。あ、ヒールトリガーだ。じゃあミクちゃんの方のダメージ回復するね」

 ついでにトリガーも味方しているし。

「……ターンエンド」

 ミクちゃんの入れ知恵かとも思ったけど、当のミクちゃんも不思議そうにミコねえを見ていた。

 

【桐澤トウジ&御堂ユキネ:ダメージ7(表5)/手札4&8】

【天原ミコト&歌星ミク:ダメージ7(表6)/手札5&6】

 

「なんか、ミコトさんうまくなった?」

 ミクちゃんがスタンド&ドローしながら尋ねた。

「ん~、ちょっとだけ教わったからかな」

「教わった?」

 わたしも気になってつい口を挟む。

「うん、いとこにね」

「へぇ、ミコねえいとこいたんだ」

 ミクちゃんとトウジの方はファイトに戻っていったようだが、わたし達はついおしゃべりを続けていた。

「おい、ユキネ!喋ってねえでガード投げてくれ」

「へっ?」

 言われて隣の盤面を見ればいつの間にかダメージは8になっており。トウジの手札も1枚になっている。

「あと10000だ」

「えっと、フェアリーライトドラゴンでタッグガード」

 よく見ると早くもサンクチュアリガードレガリアの攻撃があったらしい。それとカウンターブラストが2つ使われているようだ。

「次、シシルスのブースト、ツインソードでヴァンガードにアタック。トリガーとレガリアのスキル合わせて30000。ツインソードのスキルで反対側のツインソードにそーどみーをコール。そーどみーのスキルでその後ろにシェリーに上書きする形でシンベリンをコール。シンべリンのスキル、レストしてそーどみーのパワー+10000」

 何事かと目を疑うような連携につぐ連携。タッグファイトでカウンターブラストがふんだんに使えるため、いつにも増して爆発力のあるデッキになっている。

「マグナムアサルトインターセプト!それと……」

「ディモルフォーゼ、ウーントタナップでガード!」

「ラスト!そーどみーでヴァンガードにアタック。パワーは28000」

 ああ、もうめちゃくちゃだ。日本サーキット予選もミクちゃんをタッグにした方が、もしかしたら強いのかもしれない。

「ダンガンマロン、フラワースクリーン、メアホープでガード!」

 た、足りた……。ものすごい枚数を削られたけどなんとか耐えた。ここからなんとか持ち直さないと。

「じゃ、あとよろしくね。ミコトさん」

「は~い」

 

【天原ミコト&歌星ミク:ダメージ7(表2)/手札5&8】

【桐澤トウジ&御堂ユキネ:ダメージ8(表6)/手札1&2】

 

「俺のターン、バタリーブームドラゴンを捨ててストライド。タイダルボアー・ドラゴンだ」

 トウジのサヴァスの上にGユニットが乗る。けれどこれ以上の展開はのぞめない。

「タイダルボアーでヴァンガードをアタック!」

「ホーリーナイトガーディアンで完全ガード」

「トリプルドライブ………よし、クリティカルトリガー!全部リアガードのバタリーブームに」

 残りの2枚はグレード1のケルピーライダーポロと、グレード2の戦場の歌姫ローデ。

「バタリーブームでヴァンガードをアタック!パワーは16000でクリティカルは2」

「ラシェルでガード」

 あっけなく全てを防ぎきられてしまう。これはかなり厳しい。まず次のターンを生き残らないと。

 

【桐澤トウジ&御堂ユキネ:ダメージ8(表6)/手札4&2】

【天原ミコト&歌星ミク:ダメージ7(表2)/手札5&5】

 

「じゃあわたしのターン。スタンド&ドローして~、ストライド!天翔ける霊獣麒麟!」

 わたしの手札にはアーシャとグラジオラス。合計のガード値はわずかに5000。

「神宮衛士アスハと神宮衛士スミヨシをコール」

 トウジの手札はさっきの3枚+なにか1枚。最大でガード値は30000。となると……合わせても足りない。

「麒麟でヴァンガードをアタック」

「ノー……ガード」

 タッグファイト、向いてないのかもしれない。

 

 

 

「あ、そうだミコねえ。いとこ紹介してよ、わたしもファイトしたい」

 ファイトが終わり、とりあえずわたしとトウジペアの実力が確認し終わったということでみんなで梅昆布茶のティータイム。

 そんな中、わたしは先ほどのミコねえの言葉を思い出したのだった。

「う~ん、紹介したくはあるんだけど……」

「?遠くに住んでるとかですか?」

 トウジも聞いてないフリして興味があったらしい。

「いえ、そうじゃなくて。と、とにかくそのうち紹介するから。練習の続き、やりましょう?」

「う、うん……」

 

 いつになく歯切れの悪いミコねえに、この時はわたしもトウジも首をかしげるしかなかった。

 

 To be continued……

 

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